7月16日(月)

 D にて起床。午前中は周囲をうろうろ。

 しかし海がきれいである。砂浜に降りてみる。八重山の海と変わらないくらい美しい。

 午後は友人 D を訪れる。彼もいろいろ話したそうだったけど、仕事が忙しく、結局ほとんど話せなかった。

 夕方 B という街に移動。この街で月曜日に行なわれるセッションは前出の F 氏が仕切っていて、そのせいか集まるミュージシャンも多く、いうなればこの地域の中心的なものとなっている。

 やはりものごっついエネルギー。ただやっぱり昨年のほうがよかったかな。みんな疲れぎみなのかも。

 ミュージシャンも多いけど聴いてる人間も死ぬほど多い。ほんま取り囲まれている感じ。おそらくほとんどが観光客だろう。

 何のために音楽をするのか、誰のために音楽をするのか。聴きに来る人がいるのなら、聴きたい人がいるのなら、その人達のために演奏はするべき。でもその前に、自分のため、そしていっしょに音を出す仲間のため、があるべきだと思う。それを失った演奏に何が残っているのだろう。

 微妙ないら立ちを抱えながらセッションは続いていった。

 しかし、一瞬空気が変わる。

 S が後ろに座っていたおやじにギターを渡す。I だ。素晴らしいシンガーにしてギターリストにしてソングライター。人間も素晴らしい。

 彼が歌い出す。話に興じていた観光客達もすこしづつ彼の歌に耳をすまし始め、ついには彼の声とギターだけになる。
 そしてリフレインに。どうやらそれは有名な歌らしく、その場にいるほとんどの人が歌い始めた。
 
 推定人数100名。その声はパブの中に響き渡り、ついにはパブ自体を楽器に代えてしまった。

 ものすごい空気感。いままで味わったことのない空気感。本日のパブの唯一にして最高の瞬間。

 「同じ感動なんて2度もいらないし2度と手に入らない」
 
 その後、何ごともなかったようにセッションは続き終了。

 終了後 I に挨拶。3年連続の対面。どうやら覚えていてくれたらしい。あの空気感のことを伝えようとしたが、言葉で表現できるはずもなく、ましてや英語。のばしてくれた手をただしっかり握りしめるだけだった。
 


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