2・ 近代美術と前近代文化との類似


 近代美術の一つの大きな特質は、その前時代に支配的だった大きな物語―神話形式が終焉をむかえ、主題が日常的モチーフへ下降したことと、再現的表現がやはり終焉をむかえ、より即物的、より造形的、より抽象的表現へ移行してきたことだろう。
 そういった近代ならではの特質は、ある意味で民俗文化に諸相に近似し関連してくるものであったし、近代の多くの作家達もそうした民俗文化から影響を受けてきている。

 民俗文化の造形は、古代ギリシャの美意識が理想とされる時代においては、ひどく原初的素朴、未発達なものとして評価されずに無視される傾向にあった。しかしひとたびそのような伝統的枠組みが崩されるや、民俗文化への評価は一変していく。
 例えばピカソはアフリカの造形的な仮面彫刻に影響され、マティスはオリエントの色面的装飾性、ゴーギャンはタヒチの民俗へ、カンデンスキーはロシアの民画やイコン、あるいはブランクーシ―、ヘンリームアー、イサムノグチ、、、など、彼らの民俗文化からの影響関係は枚挙にいとまがない。下部イサムノグチの石の彫刻などは、右写真の日本の神社などにある手洗い石とほとんど同じである。

 いわゆる脱神話、脱ギリシャ的な民俗文化全般の様々な造形を貪欲に吸収、抽出していくのである。
それは神像表現にかぎらず、建築物、民具、道具、衣装などその影響関係は様々だ。それらはおおむね、非自然主義的あるいは非再現的であり、また造形的、抽象的造形である。そういった無駄や装飾性の少ない原初的でいわゆる「プリミティブ」な造形感覚は、近代美術とシンクロしていったのである。