『葦牙Journal』『葦牙Journal』

No:38

2002年2月25日発行

発行:『葦牙』同人会

編集:吉田悦郎

さいたま市上小町374−6

中野信子/武藤 功/牧 梶郎/山根 献/上原 真/年譜・吉田悦郎/著
『堀田善衞――その文学と思想』

文学沈滞への異議申し立て 山根献

       
 アジアのなかの日本人として、戦中と戦後の体験の、絶望の虚妄なる状況との格闘のなかから、近代国家という妖怪と対峙し、国家と民族の枠を超えることができる言語の思念する真理の領域を堀田は切り開こうと死力を尽くしたのだ。その内的な深さにはけっして外的な広がりを欠くことなく、支配するものと民衆との力関係の全体性をつねに描き出そうとし、戦中から2次世界大戦後、冷戦下のアジアとヨーロッパを疾走した戦後日本のなかの稀有な作家だった。この作家の仕事をいまどう読み解くかが問われているのである。

 刊行後の反響は悪くない。去る2002年1月29日、出版を祝うささやかな会が、上原真が馴染みの東京・上野のパブを借り切って持たれた。そこには、同人ではないが共著者の一人である中野信子も九州・福岡から駆けつけ、司会をつとめた中野健二は、病気療養中で欠席を通知してきたいいだももの葉書の短い走り書きを読み上げることでこの会を始めた。

「……小生はたまたま戦後の早い時期に、上海から引揚げてきたばかりの、当時無名の堀田善衞と出合いました。彼の文学がインターナショナルな未来的意義をもっているという『堀田善衞―その文学と思想』の今日的評価に大賛成です。このように『葦牙』同人のみなさんが評価し顕彰されること自体が、今日の文学の非文学的沈滞に対する大きな異議申し立てになっています。」  

この文はそこに参加したものの心を深いところで揺さぶる力を持っていた。乾杯の音頭をとった小原耕一は、生前の石堂清倫が『葦牙』に期待し寄せていた熱い言葉を紹介した。一気に会は高揚し、武藤功に届けられた田口富久治の丁寧な批評をはじめ、それまでに寄せられた感想などがいくつか報告され、また、大江健三郎からの間違いについての指摘も披露された。参加者の一人で牧梶郎の親しいドイツ文学者高村宏は、山根献の見解にひとこと苦言も呈した。発起人のひとりである信楽の在の作家木下正実からは美酒が届けられ、日本酒を普段は飲まないはずの山根がこの祝い酒を独り占めしていたというはなしが後日伝わって、この酒への礼状は山根が書け、ということになった。あの美酒の味は格別だった、と書き送ったが、決して一人で全部飲んでしまったわけではない、と私は書き添えた。

( 同時代社刊、¥3、800)

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“堀田善衞”

その文学と思想

中野信子/武藤功/牧梶郎/山根献/上原真

「日本から世界へ」という知的態度によって生き、その自覚によって世界に働きかけることのできた最初の作家であるといえる堀田善衞の真髄に迫る初めての論集

\3,800+税・発行:同時代社

〒101-0065東京都千代田西神田区2-7-6

03-3261-3149/ Fax 03-3261-3237

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『現代の危機と文学』(1981年)

山根 献 著

著者による直接頒布

『民主文学』四月号問題直前に刊行された問題含みの著作です。

送料は著者が負担します。頒価 \1,500.

〒226-0005 千葉市緑区誉田町2-6-54-107

/Fax 043-293-6177

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