『葦牙Journal』No.97.
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『葦牙』の会/編集・牧梶郎
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No.97
巻頭言 コンプライアンス
コンプライアンス、普段あまり馴染みのない言葉であるが最近はよく耳にする。本来は「遵守」「従順」といった意味の言葉であるが、メディアはもっぱら「企業の法令遵守責任」の意味で使われている。この言葉がお茶の間にまで入り込んできたのは、読売ジャイアンツの清武前代表の電撃的な記者会見以来である。
この会見で、清武氏は読売グループ総帥のナベツネこと渡辺恒雄会長の球団人事への不当な介入を指弾し、その横車はコンプライアンス違反であると断じた。これに対してナベツネもまた、まだ決定以前のコーチ人事を勝手に公表した清武の側こそコンプライアンスに反する行為であると文書で反論し、その権力を行使して清武氏を解任した。この抗争自体は、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』で言い表した「毒虫と毒虫の争い」でしかない。ただ、コンプライアンスということでは、もっと注目すべきニュースが他にもあった。そのひとつはオリンパスの巨額損失の隠蔽を図った不正経理問題である。
発端は、過去の企業買収に関し疑義を呈したイギリス人社長の解任であった。
会社側は当初「不正はなかった」としていたが、最終的に、バブル崩壊時に発生した証券取引による一千億以上の損失を不当に先送りし、買収の際に補填した不正経理操作を認めるに至った。この事件は、オリンパスの株価下落だけでなく、日本企業のコンプライアンスに関して世界的な不信を招くこととなった。もうひとつは大王製紙の前会長により百億をこえる資金の私的流用である。
この創業者の孫にあたる男は、頻繁に子会社に電話して数億の金を個人口座に振り込ませ、その金のほとんどをカジノでの遊興に浪費したという。いくら創業者一族の会長に対してであろうと、電話一本で担保もなく数億の金を融通するなどということは、会社として許されるはずがない。これらコンプライアンス三題噺に共通する土壌は、普段は権威や権力にはっきり物を言えない、「長い物には巻かれろ」といった日本の社会風土であろう。これら情けない話を嗤うのは当然にしても、まずは「隗(かい)より始めよ」を心したいものである。
(牧 梶郎)
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目次
No.97
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巻頭言 コンプライアンス 牧 梶郎 もうひとつの冤罪「福岡事件」
――再審運動を支えた人びと 上枝 典近藤宏子『重治・百合子覚書』を読む
(その二、あるいは、前書きの続き)……菱田 彰第十三回文学フリマ参加の記 尾張 はじめ
原発事故と大衆運動復活の芽生え(3) ……野村喜一
●初めて文字となった人間の真実〈中国の古典から〉第十四回
陶淵明の喜び――農夫として生きるA ……下定 雅弘
第35回《葦牙ふぉらむ》報告 ……尾張はじめ
第36回葦牙ふぉらむ 〈報告の骨子〉
バブル時代を描いた恋愛小説「ぼぎちん」
――その特殊と普遍
三浦聡雄●自分史のなかに「市民社会」を考える(五)
ポリス――「ゾーオン・ポリティコン」――の教え……黒沢惟昭
詩・アポリア 石黒 忠
原発事故の初動を考える 酒井 浩朗
小 説 結婚の形態 橋本 敏夫
photo©k.y
――頒価350円(送料共)
【葦牙ジャーナル】第97号・2011年11月15日発行 【編集】「葦牙」の会=牧 梶郎 東京都新宿区百人町2・18・6・401
【発行】いりす 東京都文京区本郷1・1・1・202
【定価】350円(送料共)
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