Kick/Kick-Man

KickKick-Man

 このゲーム、確かに風船割りには違いないですが、ゲーム内容はエキシディのそれとは異なり、むしろアタリの「アバランシェ」の発展形と言えるでしょう。


操作系

 トラックボールとキックボタン。ボールで一輪車に乗ったピエロの左右移動、ボタンで物体をキック(詳しくは後述)します。左右方向の移動しかないのにあえてボールを使ったのは、一輪車の乗りにくさを表現しようとしたのでしょう。ボタンはボールの両側に2つ付いていますが、どちらも機能は同じです。右利き、左利きで使いやすい方を選べる、ってやつです。コイン投入後、スタートボタンを押す前にキックボタンを押すと、詳しいインストラクションが表示されます。
面あるいはレベル

 このゲームでは、 "Rack" と呼びます。(決して "Rank" の間違いではありません。)

 第1 rack では上から落ちてくる風船を、帽子の先端の尖った部分で受け止めて割ることが目的となります。風船が地上に落下するとミスとなり、一輪車に乗ったピエロはコケます。ただし、地上に落下する前に、キックボタンを押して風船を蹴り上げることで、リカバー可能になっているのが大きな特徴です。風船をキックすると、(基本得点)×3点が加算されます。キックは何度でも可能ですが、得点が入るのは最初のキックに対してのみです。すべての風船をキックしてから割ると、スペシャルボーナスとして2000点が入ります。なお、キックした風船がビルの壁に当たると反射します。

 第2 rack 以降ではゲームの様相はガラリと変わり、今度は上から落ちてくる風船、パックマン、モンスターを帽子の上に重ねてのせることが目的となります。帽子の上にくっついている物体の数が多いほど、落下距離が短くなるので、キャッチするのが難しくなります。風船とモンスターに関しては、キャッチする毎に (基本得点)×(rack 数) だけの得点が入ります。パックマンについては、キャッチする毎に最高1600点までの”パックマンボーナス”が入ります。また、帽子の上に物体がいくつか重なっているときにパックマンをキャッチすると、その物体をむしゃむしゃと食べて消してくれて、このときそれぞれの物体につき (基本得点)×5点が入ります。

 帽子の上に物体が8個重なる毎に、一旦パックマン以外は消えてなくなりますが、このときそれぞれ (基本得点)×(rack 数) だけの得点がさらに加算されます。パックマンはミスしない限り、いつまでも帽子の上に残っています。ミスしてピエロがコケると、帽子の上のすべての物体はクリアされます。Rack 内のすべてのパックマンを帽子の上に重ねたまま rack を終えると、”スペシャルパックマンボーナス”として1600点がさらに加算されます。なお、ここでもキックによるリカバリーは有効ですが、ビルの壁のみならず、帽子の上に重なった物体も壁となって、当たると反射するので注意が必要。また、第1 rack 以外では、キックしても得点にはなりません。パックマンはキックすると、元の位置に戻ってしまいます。

 Rack 2つごとに、チャレンジ rack があります。ここでは、左右のビルのバルコニーからランダムに投げられる風船を頭の上に重ねることが目的になります。ただし、時々爆弾も投げられ、爆弾をキャッチするとミスになります。8個重ねると、(基本得点)×(直前の rack 数) がボーナスとして加算され、チャレンジ rack は終了します。また、ミスするとボーナスなしで終了しますが、この場合のミスはミスとしてカウントされません。なお、デフォルトでは3回ミスするとゲームオーバーで、ミスするごとに一輪車が1台づつなくなっていきますが、10,000点に達した時、及び以後10,000点毎に一輪車が追加されるよう設定されています。これらの設定はディップではなく、サービスモードで変更するようになっています。

 Rack が進むと、落下速度が早くなり、また、複数の風船が同時に落ちてきたり、風船が斜めに落ちてきたりして、難易度はどんどん高くなります。
基本得点表
得点落下速度
黄風船5点遅い
赤風船10点中位
青風船15点速い
モンスター25点速い(若干斜めに落下)
1匹目2匹目3匹目4匹目
パックマンが4匹のrack200点400点800点1600点
パックマンが3匹のrack400点800点1600点---
パックマンが2匹のrack800点1600点------
 パックマンボーナスはオリジナルのシステムを踏襲し、上記のように倍々で上がっていきます。ただし、サービスモードにおける難易度の設定によって、1つの rack 内に登場するパックマンの最高数は異なります。
歴史的なことを少々

 このゲーム、もともと「Catch 40」というタイトルの白黒ゲームだったそうです。「Kick」としてリリースするまで3年かかったということで、「Kick」が1981年ですから、「Catch 40」は1978年になります。内容は、”上から落下してくる物体をひたすら受け止める”というものだったそうで、アタリの「アバランシェ」そっくりです。「アバランシェ」のリリースが1978年だったことを考え合わせると、真似ゲーだった可能性大。

 「Catch 40」では、ゲームが進むとだんだん落下速度が早くなるようになっていたらしいのですが、ロケテストでは、あっという間にプレイ不能なほどの高速落下になってしまうため、全くの不評に終わったそうです。そして、オクラ入りになり、約2年が経過します。

 80年代に入って、「Catch 40」は再び息を吹き返すことになります。Midway 創設者達の1人である Hank Ross 氏は、ミスした物体をキックしてリカバーするというアイデアと、当時 Midway 社の大ヒット作であった「パックマン」のキャラを登場させるという、ある意味掟破りを導入しました。隠れキャラとしてこっそり忍ばせるならまだしも、”パックマン登場”というのを前面に押し出して売りにしてますから、恐れ入ります。パックマン人気にあやかろうとしたセコい根性丸出しです。そして、ゲーム名を「Kick」と変えてリリースすることになるのですが、そのロケテストは再び悲惨な結果となります。というのも、難易度が低すぎて、平均プレイ時間が数10分という長いものになってしまったのです。そこで、風船の落下速度を早めるなどの難易度調整を行って、やっと市場に出回ることになります。

 なお、アップライト型筐体のシリアルナンバー1600番から「Kick-man」とタイトル変更されましたが、ゲーム内容は特に変わっていないようです。ちなみに、MAME でサポートしているのは「Kick-man」ではなく、初期の「Kick」です。

 ゲームオーバー  アト1カイアソベマス