高加減速車のウソ
高加減速車のウソ
困ったものだ。全く困ったものである。
「何でもかんでも料金不要クロス車導入」と「京急以外の関東の鉄道も関西同様高速運転すべき」は、川島令三以前から登場していた議論であり、以前からきちんとした考えを持てる人もいた。しかしここでヤリ玉にあげている「何でもかんでも高加減速車を導入すべき」は、川島が誤った提言を公共交通界にバラまいた為広まったものであり、それまで特におとがめ無しだったJR103系次いで登場した209系を、完全に悪だと決め付ける温床になっている。
さらにもっと困った事には、この加速度至上主義をそのまま飲み込んだ「よしりん」なる人物が、あちこちの掲示板でもはや公共の交通政策とは言えず、悪口を通り越してギャグにしかならない「103系こきおろし」をかましまくった事だ(いろいろ考えたんだけど、特にタチが悪いので名前を出させて頂く事にした)。幸いにもよしりんはある理由で、この暴言としか思えない言論をやめたが(その理由の原因自体も感心出来んが、必要悪か反面教師として受け取っておこう…)それでもこの考えが伝染した何人かは事あるたびに「加減速の低い車両は絶対悪」を公言してはばからない。まぁ自分のホームページで主張している事については、緩衝いや干渉するつもりはありませんが…。
※なおこの考察(つーか反論)をするにあたり、折に触れて書ける事が結構あるのだが(殆どが「間違いだらけの川島提言とそのコピーをする連中」についてだったりする)それを全部書いてると書く方も読む方も疲れるので、今回は極力基本的な部分のみとした。略した部分については、後日機会があればまたお見せしたい。
さて加速度至上主義達の主張をもう一度見てみよう。「高加減速車を導入すると、所要時間や列車の必要本数が減る為、どこから見てもより良い鉄道になる」のだそうだ。生まれ育った地元の阪神電車のやり方が全て正しいと思い込み、路線毎の立地条件を考えず、何がなんでも阪神と同じ高加減速車や12分サイクルや千鳥停車を導入すべきと一辺倒の主張しか出来ない川島の提言が、本当に正しいのだろうか?
これについては様々な条件が絡んで来る為、判断し難く見える部分もあるのだが、都市間電車と郊外電車の考察を大々的に持ち出す程でもない。実は高加減速車は、以下の4つの条件が揃った時だけ効力を発揮出来るものであり、どれか一つでも欠けていれば、プラスになり難いどころかマイナスなのだ。
- 都市間電車タイプの路線である
阪神が高加減速車ジェットカーを導入した実績がよく強調されるが、同時期に同じ高加減速車ラビットカーを導入した近鉄南大阪線が、すぐこれから撤退した事については誰も触れようとしない。近鉄南大阪線は郊外電車タイプの路線なので、高加減速車で所用時間が1〜2分縮まった所で、大して輸送力は増えないのだ。それならローコストの車両で輸送力を増やした方が、会社も客も上手く行く。屈曲の通勤路線として知られる小田急も同様に、高加減速中型車2200形の導入をすぐにやめ、大型車2600形を作っている。国鉄中央線の101系を始め、第1〜2次高性能車ブームの最中に全電動車方式をやめた鉄道会社は多い。
- 平均駅間距離が1km前後と短い
- 1つの複線を優等と各駅停車が両方走っている
この2つは主にJRの場合がそうだ。東海道(東京は京浜東北)線の優等列車は、どうせ複々線で別々の線路を走っているので、いくら各停が遅かろうが一定の速さで走れる。だから別に加速度は平均か多少遅くても充分だ。またこれらの各停は競合する私鉄の主要(あるいは下位)優等と同程度の停車駅数や駅間距離なので、各停でも評定速度が50キロをこえる事もある。
- その1つの複線において、各駅停車にのみ使われる
加速度至上主義者達は導入理由を「高加減速車そのものがはやく走る為」と勘違いしている。実はそうでなく「各駅停車が高加減速車を使って早く待避線に入る事によって、優等列車の追抜きが秒単位ではやく出来る為」が目的なのだ。
例えば高加減速車パイオニアの阪神に対し「阪神の電車は全て高加減速車」と勘違いしている人が多いが、阪神の高加減速車は全車両の3分の1程度を占める各停専用車しか無い。残り3分の2の急行用赤胴車や、同じ都市間電車のトップクラスとして知られるお隣JR西日本の221・223系、京急2100形等は優等列車用の為、加速度はそう高くなく、むしろ長時間高速で走る性能に比重が置かれている。
もう少し詳しく触れると、阪神の赤胴車にはローコスト車体もあり、電気ブレーキの付いていない系列も多く存在した(逆に103系は電気ブレーキが付いていたりする)京急2100形もよく「抜群の加速度」と評する人が多いが、確かに国鉄型や郊外電車タイプの私鉄よりはやいものの、各停用の800・1000・1500形より加速が低い(これは注意しながら乗り比べてもわかる)あと各停用だが現行の4連では加速が遅くて使えない700形がいた事も、都合良く忘れないようにね。
そんな高い性能の走行機器は、導入もメンテナンスも金食い虫なので、路線条件の適さない線に入れた所で無駄なだけだ。ある路線から最も古い系列が全廃になれば、運転曲線は次に古い世代の系列で引き直すので、所用時間はおのずとはやくなって行く。
話を少し変えるが、私は決して103系を全面的に弁護・賞賛している訳ではない。確かに大手私鉄の同世代の車両と比べ、製造当初はほぼ同レベルだったが、時代がたつにつれ陳腐化が早かったのだろう。だから103系が残っている路線でも、暫く残すか早めに無くすかは様々だ。JR西日本も223系だけに頼らず、更新等で103系を意外と多く残している事は比較的知られている。東日本だと鶴見線は長く残っただろうが、逆に利用率の高い武蔵野・南武線あたりは、103系の淘汰を極力急がねばならないのは当然だろう。
209系の問題は前述通り走行性能にはなく、むしろ「安かろう悪かろうと勝手に決め付けられた性能」と「安っぽく見えるデザイン」が混同されている点にあるのではと思われる。内装が灰色で暗い事が時々挙げられるが、これは勿論走行性能と関係無い。また個人的には209系0番台の外観が、500番台やE231系より安っぽく見えている。これは0番台で流行りのブラックフェイスや凹み窓を思いきって巨大にしたり、側面のコルゲートを減らしたのが、結果として安っぽく見えた為ではないかと思う。その証拠に500番台ではこれらのデザインが改善され、東急8090系に類似する落ち着いたデザインに見える。川島は209系を「デザインは良くなったが性能は悪くなった」と評しているが、機器面のローコストの誹謗を強調する為だけに、無理矢理デザインを誉めている様にしか見えない。
未だによしりんの後を追い「走ルンです叩き」を続けている彼らは、加速度を語る事は出来ても、大量輸送とローコストを本当に認める事は、一生出来ないだろう。
彼らは、公共の交通政策に対する思考回路の「加速度が遅い」のだ。
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