新型コロナウイルスの
正しい理解のために【初版】
(大切なお知らせです。最後までご覧ください。)

1)新型コロナウイルス感染症とはどんな病気か
2019年12月、中国武漢市で、原因となる病原体不明の肺炎の発生があり、またたく間に湖北省、そして中国全土、さらに全世界に拡大しました。
日本国内では、1月16日に初めて感染患者が報告され、その後日本全国から発生報告がなされており、北海道でも3月30日現在で176人の感染者が確認されています。
テレビのニュースや新聞で新型コロナウイルスの報道が連日されており、重症化や死亡する症例もあり、市民の皆さまの中にも不安を抱えておられる方が多いのではないかと思います。
そこで、本稿では本感染症に関する現時点での情報を、できるだけわかりやすくまとめてお伝えしようと思います。
これまでヒトに感染するコロナウイルスは4種類知られており、感冒の原因の10〜15%を占める病原体として知られていました。
2002年中国に端を発した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2012年にアラビア半島で最初に報告された中東呼吸器症候群(MERS)も原因病原体はコロナウイルスのグループでした。
今回の武漢市で発生した原因不明の肺炎も、コロナウイルスの新種(COVID-19)(図1)が原因であることが判りました。
SARSやMERSのような重篤な肺炎を引き起し、死に至らしめることは、武漢市やイタリアからの報告で明らかです。
北海道でも3月30日現在7名の死者が出ています。ただ、感染者の8割は軽症で、多くは上気道(鼻、のど)の感染で、無症状ですむ人もいると考えられています。
感染を受けてから発症までの期間(潜伏期)は、数日から長くて12.5日(平均で5日程度)と考えられています。
新型コロナウイルス感染症が重篤化するリスクは、高齢者や基礎疾患(心不全、糖尿病、慢性呼吸器疾患など)のある方などで高くなるとされています。
文献(1)
SARSやCOVID-19は、ヒトのアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞内に侵入します。文献(2)(3)
ACE2受容体は、心臓、肺、腎臓、消化管等に存在しており、これらの臓器はCOVIT-19の感染を受けやすいとされています。文献(4)(5)
また、「THE LANCET」という世界的に権威のある医学雑誌に掲載された論文は、喫煙はACE2受容体の発現を著しく増加させることを指摘しています。文献(6)
以前から、喫煙はCOPDなどの肺組織へのダメージや免疫機能の低下を介して、インフルエンザなどの感染症を重症化させることは周知の事実であり文献(7)(8)、新型コロナウイルス感染症でも重篤化の重要な因子であると考えられています。文献(9)(10)
WHOは、3月20日の事務局長談話で「タバコは吸わないで下さい。喫煙は、あなたが新型コロナウイルスに感染した際に重症化させるリスクがあります」と警告しています。文献(11)
紙巻きタバコだけではなく、加熱式タバコ、電子タバコでも同様の危険性が危惧されています。文献(12)(13)
2)感染を予防するためには
このウイルスは、感染した人から、咳、くしゃみ、会話などで出る飛沫に含まれて拡散します。 空気中に飛沫としてしばらくの間とどまるほか、いろいろなものに付着してしばらくの間は感染力を持ち続けます。
また、感染した人の手に飛沫がついて、そこから物に付着することも考えられます。
こうしたウイルスが他の人の身体に入って感染が起こります。 手を石鹸でしっかりと洗うことはもちろん、手で顔を触らないようにすることもとても大切です。 手指のアルコール消毒も効果が期待できます。
飛沫を吸い込むこと(飛沫感染)、そして付着したウイルスをさわって(接触感染)感染しますが、身体に触れただけで感染するわけではありません。 さわった手の皮膚を通しての感染はありません。手を眼、鼻、口の粘膜やその周辺に触れることでこれらの粘膜から感染が起こります。 飛沫感染を出来るだけ受けないために、
@人が密集するところを避ける
A換気が悪い空間での人の集まりを避ける
B飛沫の出やすい機会(会話、発声、歌う、応援するなど)を避ける
ということが大切であると思います。(図2)

喫煙所は、タバコ煙や喫煙にともなう咳、くしゃみなどの飛沫が充満する極めて危険な濃厚接触場所です。喫煙されている方は、今こそ禁煙を真剣にお考えください。
私たち医療者は、必要な方の支援と禁煙治療を行います。喫煙所の閉鎖といった社会的対策も少しずつ進んでいますが、早急な広がりが望まれます。
3)これからどうなるのだろう
このウイルスに対するワクチンはまだ完成していません。また、特効薬も現在いろいろな薬剤が試みられていますが、まだ臨床試験の段階です。
ドイツのメルケル首相は、「人口の60〜70%の人が感染して免疫を獲得するまで終息しない」と述べています。仮にそうであるとしても、それが急速に起こると、社会の崩壊、医療の崩壊になってしまいます。
社会全体として、感染の拡大を出来るだけ緩やかにして、社会生活や医療体制を維持し、その中でリスクの高い人への感染を出来るだけ抑え、この病気の犠牲者を少なくするということが求められています。
そのために、皆さんが感染の予防に努めることはもちろん、自分が感染者となる可能性を常に考え、他の人にうつさないようにすること、具体的には咳エチケットや、体調が悪い時には外出しないことなどが大切です。
とくに、周りにリスクの高い方々、つまり高齢者、基礎疾患のある人、喫煙者がいる場合は、とくに注意しなくてはなりません。
4)私たちはこれからどうしていけばよいだろう
今後、感染の押さえ込みが失敗し、不幸にして感染爆発が起きた場合、自分はもとより家族や友人など身近な人が感染者となる可能性も否定はできません。
今、感染した人やその周囲の人々への極端な拒否反応、差別が出てきています。そうしたことは意味の無いことであるばかりか、人々が協力して感染予防をしてゆく上でマイナスになります。
学校が一斉休校になりましたが、これは人々への注意喚起としては有効だった側面がありますが、一部に子供からの感染が感染拡大の要因という誤解を与えた可能性もあるように思います。
子供の感染は少ないですが、少数の報告もされています。でも、大人から子供への感染事例はありますが、子供から大人への感染の事例は、まだはっきりとはしていないようです。
国内のクラスター(集団感染)の事例などを見ると、むしろ壮年期、中年期の方々からの感染が多いように思えます。 子供が外で遊ぶことへの嫌悪感を持つ人もいると報道されていますが、人とすれ違うくらいで感染は起こらないと考えられています。 無用な社会の分断を起こさずに、冷静に対処することが大切です。
また、高齢者や基礎疾患のある方などへの感染予防を徹底することはもちろん、その方々へのサポートもしっかりとしていかなくてはなりません。 基礎疾患のある方は、その治療をしっかりと継続して、よい体調を維持することもリスクの軽減に必要です。
5)PCR検査について
最後にPCR検査について述べます。感染が疑われる人の喀痰、鼻咽頭ぬぐい液などを採取し、ウイルスの遺伝子を増幅して診断する検査です。文献(1)
メディアでは、希望者全員にPCR検査を行うべきであるとの意見も聞かれます。確かに、検査をもっと進めて診断をつけることは大切なことですが、いくつか問題があります。
一つは精度の問題です。現在行われているPCR検査の感度は、50〜70%程度と言われています。つまり、感染した人の10人中3人から5人は陰性と判定(偽陰性といいます)される可能性があるということです。
ですから、たとえ陰性、という結果でも感染していないとは断定できないということです。クルーズ船の乗客で、はじめは陰性であとから陽性が出たとか、一旦陰性になった人がまた陽性になったということの一つの要因かもしれません。
二番目の問題は、検査時に感染を引き起こしてしまう可能性があるということです。検査時は、どうしても患者さんが咳やくしゃみをしてしまい、飛沫が発生します。 それによる医療従事者への感染が大きな問題で、それを予防するためには、高性能マスク、ゴーグル、帽子、長袖ガウン、手袋などの防御用具が必要です(図3)。
しかし、防護用具は不足しており、それらを用意できる施設は限られています。
また、万一医療従事者が感染したら、その医療機関は14日間休診となる可能性があります。
文献(1)
三番目の問題は、現在の「新型コロナウイルス感染症」の扱いの問題です。新型コロナウイルス感染症は現在指定感染症で、医師は診断した場合保健所への届け出義務があり、また患者さんは指定医療機関への入院勧告ということになります。
たとえ軽症でも、現体制では原則入院が必要になります。検査数が多くなりウイルス陽性者が増えると、入院のベッドが足りなくなることが危惧されます。重症者を治療するベッドがなくなり、結果として手遅れとなる患者さんが出てくる可能性があります。
また、新型コロナウイルスだけでなく、現在、癌や循環器疾患、脳血管疾患などをはじめ、慢性の疾患で治療を受けている多くの患者さんがいます。これらの方々への治療も、しっかりと継続していかなければなりません。
そのためにも、医療体制を守り、維持していかなくてはなりません。そのため、今後PCR検査を拡大していく前提として、軽症の感染者を指定病院への入院ではなく、他の方法で治療観察できる体制の整備を国が行うことが、必要不可欠なことであると考えます。
6)最後に
今後、新型コロナウイルスの感染動向がどうなるかは、私たち医療関係者にも明確に見通すことが出来ません。
しかしながら、日本は世界の中でもトップクラスの医療体制を整備していることは確かなことです。過度な不安を持つ必要はありません。大切なことは、正しく感染予防を行うことだと思います。
地域の医療システムを崩壊させないためにも、正しい知識を得て冷静な行動を取ることをお願い致します。

・文中又は画像等に引用の参考文献
(文中の該当箇所には番号を赤字で表示しております)

1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版
(厚生労働省 2020年3月17日発行)

2)Yan R, Zhang Y, Guo Y, Xia L & Zhou Q : Structural basis for the recognition of the 2019-nCoV by human ACE2. bioRxiv. 2020.

3)Liu Z, Xiao X, Wei X, Li J, Yang J, Tan H, Zhu J, Zhang Q, Wu J & Liu L: Composition and divergence of coronavirus spike proteins and host ACE2 receptors predict potential intermediate hosts of SARS-CoV-2. J. Med. Virol. 2020.

4)Imai Y, Kuba K, Rao S, Huan Y, Guo F, Guan B, Yang P, Sarao R, Wada T, Leong-Poi H, Crackower MA, Fukamizu A, Hui CC, Hein L, Uhlig S, Slutsky AS, Jiang C & Penninger JM : Angiotensin-converting enzyme 2 protects from severe acute lung failure. Nature. 2005.

5)Zou X, Chen K, Zou J, Han P, Hao J, Han Z. Single-cell RNA-seq data analysis on the receptor ACE2 expression reveals the potential risk of different human organs vulnerable to 2019-nCoV infection [published online ahead of print, 2020 Mar 12]. Front Med. 2020;10.1007/s11684-020-0754-0. doi:10.1007/s11684-020-0754-0

6)Yang Xia, et al., "Risk of COVID-19 for cancer patients." THE LANCET Oncology, doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30150-9, 2020

7)Altzibar JM, Tamayo-Uria I, De Castro V, Aginagalde X, Albizu M V., Lertxundi A, Benito J, Busca P, Antepara I, Landa J, Mokoroa O & Dorronsoro M : Epidemiology of asthma exacerbations and their relation with environmental factors in the Basque Country. Clin. Exp. Allergy. 2015

8)Watanabe T : Renal complications of seasonal and pandemic influenza A virus infections. Eur. J. Pediatr. 2013

9)Guan W, Liang W, Zhao Y, Liang H, Chen Z, Li Y, Liu X, Chen R, Tang C, Wang T, Ou C, Li L, Chen P, Sang L, Wang W, Li J, Li C, Ou L, Cheng B, Xiong S, Ni Z, Hu Y, Xiang J, Liu L, Shan H, Lei C, Peng Y, Wei L, Liu Y, Hu Y, Peng P, Wang J, Liu J, Chen Z, Li G, Zheng Z, Qiu S, Luo J, Ye C, Zhu S, Cheng L, Ye F, Li S, Zheng J, Zhang N, Zhong N & He J : Comorbidity and its impact on 1,590 patients with COVID-19 in China: A Nationwide Analysis. medRxiv. 2020

10)Covid-19: The role of smoking cessation during respiratory virus epidemics. BMJ 2020

11)WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19 - 20 March 2020

12)Garcia-Arcos I, Geraghty P, Baumlin N, Campos M, Dabo AJ, Jundi B, Cummins N, Eden E, Grosche A, Salathe M & Foronjy R : Chronic electronic cigarette exposure in mice induces features of COPD in a nicotine-dependent manner. Thorax. 2016

13) Gotts Jeffrey E, Jordt Sven-Eric, McConnell Rob, Tarran Robert. What are the respiratory effects of e-cigarettes? BMJ 2019

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