ギンガムチェック(水色)

TEA TIME

無言館
2,000.7.03記

ちょっとこちらに来る用があったので上田に寄った。一日だけだがまあいいだろう。
どこに行くか。
少々天気が不安定だが何とかもっている。
それどころか、ときおり日がさし、猛烈に蒸し暑い日だ。
前山寺にでも行ってみるか。
前に行ったのは20年位前だった。長男がまだ幼稚園のころだったか。
あの日も暑かった。バスをおりて畑の道を歩いたっけ。
やっと着いて、そこで食べたクルミ餅の美味しかったこと。

そんな想い出をたどり別所行きの電車に乗る。
ワンマンカーにも驚かない。松代行きで経験済みだ。
「塩田町でおりて30分位です。タクシーもあります。」
ホテルで聞いた時そんなふうに言っていた。
塩田の駅をおりたがタクシーなんかいやしない。もっともタクシーに乗ろうとは思ってもいなかったが。
歩こう。バスも来ないし。
塩田町の駅から・・・この先は別所温泉だ

暑いので帽子を買う。この帽子、何年店番をしていたのだろう。
「無言館に行くのですか」
店のおばさんが訊ねた。
「ええ、デッサン館にもいくつもりです」
ホントは前山寺なんだよな。ちょっと気取ってしまった。
「この道をまっすぐ行けば40分位かしらね前山寺まで、無言館はちょっと山の上だから・・・」
ホテルで聞いたよりより10分も長くなっている。

まっすぐ行けば良かった。そうすれば前山寺に着くはずだった。

おばさんに見栄をはった手前、無言館を覗いてみることにした。
案内板をたより歩く。風景は信濃の国だ。
ぐるっと山、緑、緑、緑・・・いいなあ、でも暑いな。汗が噴き出す。年をとったら顔から汗が出る。
歩いているのは私一人。
やれやれ・・・まさかあの山の上ではないだろう。 途中に神社があった。道祖神もある。

歩くこと30分、無言館の看板があった。
やっと着いたかと思ったら、登り口。やれやれ。
ともあれ、方向音痴の私としては無事たどりついた。
登り口だ。まだ道はつづく・・・

入場券はどこで買うの。
扉がある。左右にある。どちらを開ければいいの。
どぎまぎしながら左側を押し開ける。

えっ、入ったらいきなり展示室だ。思ったより人が多い。
なんと表現したら良いのだろう。美術館特有の晴れがましさがない。
感動と悲しみが一緒になったような・・・

絵を見て行く。戦地からの頼りがある。そして戦死通知。
家族を描いたものが多い。
無理もない。二十五、六の画学生だもの。
妻の像も多かった、恋人のもある。
「後5分、もう10分、もう行かなければならない。後は帰ったら必ず完成させるから」
恋人をモデルにしていた彼はそれっきりかえらなかった・・・

「俺は東條は嫌いだ」
父がぼそぼそっとつぶやいたことがある。

父は学徒出陣組だ。南支からベトナムに転戦したらしい。
よく戦時中の話をしていた。
勇ましい話はなかったがこれといって悲惨な話もしなかった。
「戦争は負けていなかった、気が付いたら本土が負けていた」
とも言っていた。
そんな父が突然いったのでびっくりしたのを覚えている。
それにつづけて
「あいつのお陰で、友達がうんと死んだ」

あの時の父のさみしそうな顔と声をここに来て思い出した。
そういうことだったんだ。

展示された作品が無言で私達になにを伝えようとしているのかな。
見ているそれぞれの人達の受け取り方次第かもしれない。

ここの作品はまだまだ完成されものではないのだろう。
専門家がみれば稚拙かもしれない。

戦争は、少なくてもここにあるだけの才能がなくしてしまった。

何だか、この日一日何となく優しくなったような気がする。
今まで生きてこられて感謝しなければ。

見栄できた無言館が主役になってしまった。
寺や城跡はどうでもよくなった。
後は体力だけでこなすだけだ。
バスでもこないかと後ろを振り返る。
無言館





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