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TEA TIME

夏の終わり
2,000.8.31記

今年の夏は暑い。蒸し蒸しして、ちょっと外に出かけるだけで汗が吹き出す。
休みに家でおとなしくしていることのできない私には最悪の夏だ。
街を歩いていると、案外都心でもせみの鳴き声を聞く。「まだ生き残っているな」なんて嬉しくさえなる。
しかし、まあ、やはりせみの声は涼やかな森の木陰で聞きたいものだ。
夕暮れのカナカナぜみなんか、なんとなく侘びしくて、芭蕉翁ではないが一句ひねろうかという心境にもなるのだが、
なかなか現実はそうもいかない。
カンカン照りのビルの壁面でジージ―と発しているアブラぜみが関の山だ。

毎年、夏の終わりに高円寺で阿波踊りが開催される。
ねじめ正一氏の小説「高円寺純情商店街」の舞台でもある町だ。
私の住まいする阿佐ヶ谷の隣町。なにかにつけてちょっと張り合うことが多いかな。
阿佐ヶ谷の七夕、高円寺の阿波踊り。どちらも東京名物と銘打っている。

高円寺という名の由来は、杉並区史によると
「その昔、阿佐ヶ谷から中野に向かって流れる小さな沢があったため、古くは小沢村と呼ばれていました。
江戸時代の始め頃、武州多東郡中野郷小沢村は幕府直轄の天領であり、
江戸城から3里(約12km)離れたこの地は、
将軍の鷹狩りの場として絶好の地で、徳川三代将軍の家光も鷹狩りに度々訪れ、
休息にはこの村にあるお気に入りの
古寺「曹洞宗高円寺」(駅の東南歩いて5分の所にあります)に立ち寄っていました。
その後、その寺の名が有名になり、武州多摩郡高円寺村になりました」とある。
なかなか古い歴史があるのだ。

現在は、大型スーパーやら100円ショップ、若者向けのジーンズ店、古本屋、八百屋、魚屋は勿論、
商店街の裏手は怪しげな飲み屋がひしめいている。

暑い暑いといいながら年中行事には顔をだす。今年は会社の同僚と一緒だ。
6時、駅に着くともう鉦、太鼓の音が響いて来る。
ものすごい人の数だ。開始は6時半なのだが、あちこちの広場で踊りを披露している。
参加の連の数は77連だという。全国から集まって来る。
今回で44回ともなるとそれなりに有名になったのだろう。

阿波踊りと一言でいうがそれぞれの連でリズムも振り付けも違う。
ひょうきんに踊っているもの、勇ましくやっているもの、怒ったように太鼓をたたくもの、さまざまだ。
兎に角あの音は心を騒がす。聞いているうちにウキウキしだすのだ。
思わず踊りの中に踏み出しそうになる。
そんな人のためには飛び入りだけの連があるという。「かって連」というのだそうだ。

この行事は阿波の蜂須賀藩の城下町で始まったという。
江戸時代という特殊な封建階級社会の中で、この一時、男女が一緒になって踊り狂うのだから
民衆の不満のはけ口には持って来いだったに違いない。
なになに、そんな堅苦しいことを考えなくてもよいか。楽しめればいいじゃないか。

男おどりと女おどりがある。
腰をおとして八方破れにおどるのが男おどり、笠をかぶって両手を上に上げ集団でおどるのが女おどり。
どちらも見ていて楽しいが個人的には女おどりが好きだな。オジサンだから…。
笠の内の顔はみんな美人にみえる。


駅前の大通がメイン会場で審査も行われることから各連の踊りも趣向を凝らしてみせてくれる。
一斉回頭したり、奴凧が風に舞う様を表現したり芸術的でもある。
しかし、観客が多すぎてなかなか思うようには見られない。そこで、商店街のアーケード内で見ることにした。
これが思ったよりも正解。すぐ目の前を行列が通るのだ。

次から次ぎに出て来る。ひょっとこ連、葵新連、江戸歌舞伎連、花道連、…
でんわ連はNTTだろうな。郵便局連も、区役所連も来る。おいおい明日は仕事だぞ、どうするの。
ちょっと気づいたことだが、前には銀行や信用金庫の連が案外目立った。
今年はそんな関係を一つも見なかった。ご時勢かな、自粛なんてことなら悲しいね。
そのかわり新しい連がぞくぞく登場してくる。みんな生き生きして飛び跳ねている。

立ち尽くすこと3時間。9時半にその場で一斉に終わる。
まさに嵐が吹き抜けたようだ。観客からは大きな歓声と拍手。

「おい来年は俺達もやろうよ」同僚がふいに言った。



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