格付け ガタカ  GATTACA 106min
AA
’97米
製作:ダニー・デビート/マイケル・シャインバーグ/ステイシー・シェール 監督・脚本:アンドリュ−・ニコル 撮影監督:スワヴォミル・イジャック 美術:ヤン・ロルフス 音楽作曲・指揮:マイケル・ナイマン 衣装デザイン:コリーン・アトウッド
出演:イーサン・ホーク/ユマ・サーマン/アラン・アーキン/ジュード・ロウ/ローレン・ディーン/ゴア・ヴィダル
あらすじ»

そう遠くない未来。発達した遺伝子工学により、優性な遺伝子のみを持つ子どもを出産することがあたりまえになっていた。しかしビンセントは両親がそうした操作をせず自然に生れた’神の子’であり、そのため、遺伝子的に劣等な“不適正者”とされ、幼い頃から宇宙飛行士になることを夢見ていたが彼には不可能な話だった。だが“適正者”である弟に遠泳で初めて勝ったときに自らの宿命に抵抗する決意をした彼はDNAブローカーとの取り引きし、“適正者”でありながら事故で下半身不随になったジェローム・ユージーン・モローと出会う。ジェロームの遺伝子で宇宙開拓会社「ガタカ」に入社したビンセントは着実に夢に近づいていく。だが、あと1週間というときに社内で起こった殺人事件がビンセントを窮地に追い込んでいくのだった・・・・・・
ゥルーマン・ショーで脚本を手がけたA・ニコルの初監督作。バイオ技術が進んだ近未来を舞台にした、素晴らしい人間ドラマに仕上がっている。主人公ビンセントは不適合者のレッテル(というより社会的格付け)を貼られるが、自らの可能性を信じ努力によりそれを打破していくというストーリー。だがこの映画の優れたところは単純な被差別者の成功物語でないところで、遺伝子差別により有利なはずの適合者も実は同様にレッテルを貼られる被差別者だということを示している点である。またその適合者の姿にこそ人間いや我々一般の現代人の姿が重ね合わせられる。適合者の代表として登場するユージーンとビンセントの弟にはその恵まれた環境にもかかわらず人間らしい弱さ(泥酔、怠惰、虚勢)を描いており、常に努力と冷静さを失わないビンセントとは対照的である。象徴的に扱われる水平線への競泳、そして宇宙への旅立ち。人間いや人類の遺伝子はいつの時も限界に挑み続けてきた、そして挑みつづける・・・その我々の限界とは、可能性とは、そしてそれ故生じる挫折とはと非常に示唆に富んだイマジネーション豊富な映画となっている。役者陣も秀逸で特にユージーン役のJ・ロウが存在感ある複雑な役どころを演じている。またユマ・サーマンのクールな美しさもこの映像にぴったり。更に特筆すべきは音楽。この音楽の力により我々はA・ニコルが意図する近未来の世界への想像的旅行に自然に誘われる。とにかく掘り出し物の大傑作映画!!!


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