格付け ラブ・レター   108min
BB
’98日
監督:森崎 東 原作:浅田次郎(集英社刊/『鉄道員(ぽっぽや)』より)
脚本:中島丈博

出演:中井貴一/山本太郎/耿忠/根津甚八/柄本明/倍賞美津子/大地康雄
あらすじ»

高野吾郎は、新宿の歌舞伎町でしがない裏ビデオ屋の店長を任されている。楽しみといえば離婚した女房との間にいる一人娘と会うことぐらいだ。ある日、世話になっている佐竹というやくざに頼まれて中国人女性・白蘭に妻の籍を売ることになる。偽装結婚である。ひょんなことから留置場に入れられてしまった吾郎だが、出所の日に看守長から妻の死を告げられる。てっきり別れた女房だと思っていたが、佐竹と会って死んだのは偽装結婚をした、白蘭であったことを知る。やむなく吾郎は夫として、白蘭の遺体を引き取りにいくと、わずかな遺留品の中に自分宛の手紙を見つける・・・・・・

作は浅田次郎の「鉄道員」の中に収められている30pちょっとの短編。それを2時間の映画に膨らませているため、様々な工夫、ドラマの付加があるのだが、決定的に違うのは映画では吾郎がかつて結婚していた経験があることと、吾郎と白蘭が会ったことがあること。そしてこの2つは物語としては致命的な意味を持つ。よりリアリティを持たせるために設定したのだろうけど、小説では白蘭が一度もあってない吾郎を、写真と人柄を聞かされて好きになるということで、彼女の孤独な環境を浮き彫りにしており、また吾郎が涙するのは、今まで長年積み重ねてきた根無し草で孤独で普通でない生活への嫌気に突然気付いたから。それがバツ一ではまたニュアンスが違う。両方を楽しむなら、順序としては映画を先に見たい。