12月1日
 今日はお待ちかね、中島みゆき様の「夜会」に行ってまいりました。谷山浩子様もご出演なさっていて、もう、ファンにはたまりません。今年のお題は『ウィンター・ガーデン』。最近は海外を舞台にすることの多かった「夜会」が原点に帰って、北海道の原野が舞台です。
 谷山浩子演ずるヒロインが、不動産屋に売りつけられた家は、原野のまっただなかの一軒家でした。ある人との未来を夢見て買った家。しかしそこに妖しげな犬が一匹棲みついていた…。この犬がみゆきさんなのですね。この犬もどうやら誰かを待っている様子。
 それとあと一人、槲(かしわ)の木の精が登場します。これを演じるのは、本職の能役者。衣装も能の狩衣姿(って言っていいんでしょうかね)。科白廻しも能の舞台みたいに重厚。この重厚さと、みゆきの犬(着ぐるみではないぞよ、念の為)の軽々しさが独特の対比を生んで、面白いのなんの。
 テーマは相変わらず女の悲しみですね。裏切られどん底に落ちた女たちの悲しい叫びが、オリジナルの歌に乗せられて伝わってきます。先月の日記でご紹介したニュー・アルバム『短篇集』の中の曲、「天使の階段」と「粉雪は忘れ薬」がいちばんイイところで使われていて、涙が出そうになりました(T_T)。そーかー! あの「天使の階段」は死に別れの悲しい歌だったんだあ。せつないよう…。
 前作『海嘯』がどうしようもなく救いのない結末を迎えたので、色々と考えさせられたのですが、今度も負けず劣らず救いがありませんでした。だって、だって、最後で…。えーん…。
 粉雪は忘れ薬、すべての悲しみの上に降り積もるんだそうです。ひとりで見に行った私には、かなりこたえましたけど。ああ、もういっぺん見たいなあ…。Y×h××のオークションでチケットまた買おうかな。いえいえ、そんなお金はどこにもありません!

12月16日
 いや〜、酔った酔った。もう世界が廻るくらい、私が支配者になれるくらい(なんでやねん?)、酔いました。理由は、この歳(30歳、どくしん、アパート暮らし)になって舞い戻った大学の卒論が…終わったんです。あんまりいい出来とは思わないけど、これでしばらくはのんびり出来そう。積ん読になってた本も読めるし。ああ、極楽…。
 世の中は20世紀カウントダウンですね。私はいろいろと自分の人生がカウントダウンかしら、などと落ち込んでいましたが、なに、夢の21世紀だし、いいことあるでしょう。たぶん…。
 相変わらずビンボー暮らしで、ひいひい言ってますが、心はお大尽。また古本、えれえ値段で買っちゃった…。ものの本によると、愛書狂(ビブリオマニヤ)というのは立派なビョーキらしいですぜ。私は間違い無く治療の必要なビブリオちゃん。ああっ、こういうふうに略すと腸炎ビブリオ菌みたい…。
 ビブリオちゃんってどうやって治すんでしょうか。本を全部燃やすショック療法とか、本の山に埋もれて閉じ込めるとか、でも精神科医も困りそう。ほんとにそんな患者、治療したことあんのかよ。
 書痴の行きつく果ては、紀田順一郎先生のミステリ『古本屋探偵の事件簿』所収「書鬼」の矢口のように、家屋崩壊かな。本の重みで根太が抜けるのさっ! 最近、我が家の真下の部屋にお住まいの方の建付けが悪くなっているようですが、どういうことやら、私はとんと身に覚えはございませんことよ。
 ビブリオマニヤで20世紀も暮れるか…。何度生まれ変わり死に変わりしたところで、私はビブリオちゃんになりそうな気がします。
 さて、これからキングの幻の傑作『ザ・スタンド』の翻訳を読もうかと思います。思えば何年か前の正月は『IT』を読み耽って過ごしたっけ。大世紀末は、キング畢生のエピック・ファンタジィで暮れるようです。ああ、楽しみ…。

12月17日
 「20世紀のベスト10」を考えてみたくなりました。次の世紀にも残して欲しいもの。忘れたくないもの。いろいろです。ミステリに限ってということで、一応作ってみました。難しい〜〜〜っ!!! 私らしくベスト・ダズンにしてみました。  12月21日付記…これはあくまで謎解きミステリ&サスペンス系のみです。あとのジャンルもこれから考えます。

 海外編
1 『幻の女』ウィリアム・アイリッシュ ハヤカワ・ミステリ文庫
2 『ギリシア棺の謎』エラリー・クイーン 創元推理文庫ほか
3 『ウッドストック行最終バス』コリン・デクスター ハヤカワ・ミステリ文庫
4 『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー ハヤカワ・ミステリ文庫ほか
5 『スイート・ホーム殺人事件』クレイグ・ライス ハヤカワ・ミステリ文庫
6 『火刑法廷』ディクスン・カー ハヤカワ・ミステリ文庫
7 『ウィチャリー家の女』ロス・マクドナルド ハヤカワ・ミステリ文庫
8 『リプリー』パトリシア・ハイスミス 河出文庫ほか
9 『わが目の悪魔』ルース・レンデル 角川文庫
10 『料理長が多すぎる』レックス・スタウト ハヤカワ・ミステリ文庫
11 『わらの女』カトリーヌ・アルレー 創元推理文庫
12 『古い骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫
別格 ホームズ&ブラウン神父(全部好き好き大好きさ。でも19世紀の発表も多いのさ

 国内編
1 『黒いトランク』鮎川哲也 角川文庫
2 『虚無への供物』中井英夫 講談社文庫ほか
3 『影の告発』土屋隆夫 創元推理文庫ほか
4 『大誘拐』天藤真 創元推理文庫ほか
5 『人形はなぜ殺される』高木彬光 ハルキ文庫ほか
6 『大いなる幻影』戸川昌子 講談社文庫ほか
7 『戻り川心中』連城三紀彦 ハルキ文庫ほか
8 『女の家』日影丈吉 徳間文庫
9 『オイディプスの刃』赤江瀑 ハルキ文庫ほか
10 『恋』小池真理子 ハヤカワJA文庫
11 『11枚のとらんぷ』泡坂妻夫 創元推理文庫ほか
12 『占星術殺人事件』島田荘司 講談社文庫ほか
別格 金田一耕助&乱歩(これが嫌いな人がおろうか。横溝は金田一以外はあんまり読んでません)

 あう…、国内編、絶版本が3冊も入ってしまった。それに好きな作品が沢山、洩れたような気がする…。でもしょうがないよね。海外はハヤカワ一人勝ち、国内は創元とハルキ。これらはひいきの出版社なの。でも作品が先にあってこその支持です。あと、海外に女流サスペンスが3冊(ハイスミス、レンデル、アルレー)入ってるのと、国内に耽美系が2冊(赤江、小池)入ってるのが私らしい選択かな。
 

12月21日
 最近、私が子供の頃読んだマンガが懐かしくて、古本サイトで探したりしているのですが、んまあ、高価いの何のって。また、古本としても流通していないものもあり、なかなかあの頃の感動に出会えません。そんなに昔のことではないと思っていたけれど、いつの間にか昭和は遠くなり、思い出が手にはいらなくなっていました。20世紀の終わり、すこし寂しい思いに暮れています。
 私の幼少期の思い出の品々は、実は何一つ残ってはいません。近所の家の倉庫を借りて、そこに子供の頃のオモチャとかマンガとか、ありとあらゆるものをそこに預けていたのですが、火事で燃えちゃったのです。
そこのうちのおじさんが、ガソリンかぶって放火して、自分もろとも焼いてしまったのでした。夫婦ゲンカで興奮して発作的にやっちゃったようなのですが…。私の思い出はどうなるんでしょうか。
 田村信というギャグマンガ家がお気に入りでした。意味不明の擬音続出(「ちゅどーん」とか「びびびびーん」とか「しりしり〜〜〜」とかね)の、子供が喜びそうな作風でした。代表作の『できんボーイ』は今年復刊されたからいいのですが、その他が…。あと、子供新聞に連載されていた園山俊二の『がんばれゴンベ』とか、探しても探してもないんですよねえ。
 思い出がいつのまにか、高価で手の届かないものや、探せど見つからぬものになっていくことが、人生と言うものなのでしょうか。だとしたら悲しいですね。

12月30日
 年も押し迫り、20世紀もあと一日ちょっと。感慨深いものがあります。私といえば、風邪を引いてしまい、吐き気と熱に襲われての正月になりそうです。
 来年はこの日記も小見出しをつけて、もっと読みやすくするつもりです。今のままの泡沫サイトを脱却するためにも、もう少しキャッチーのなろうかと思っています。まあ、どこまで出来ますかねえ。乞うご期待。
 日影丈吉の晩年の長編2作(『地獄時計』『夕潮』)を読み、これぞ小説、といった感想を抱いております。ミステリとての結構は破綻しているのですが、それでも傑作の名に恥じない作品ですね。全然毛色の違う2作でしたが、小説を読む悦びを味わえますね。最近、本を読もうとしてもなかなか没入できないという状態だったのですが、これで少しはリハビリになったでしょうか。でもまだスティーヴン・キングの『ザ・スタンド』に再挑戦する体力はございませんことよ。
 では皆様、よいお年を。