11月19日 半七とホームズ 
 岡本綺堂の『半七捕物帳』が捕物帳の元祖だということは周知の事実です。そしてその第1作「お文の魂」にかような一文があることもよく知られています。「彼(半七のこと)は江戸における隠れたシャアロック・ホウムズであった」。綺堂は「ストランドマガジン」に掲載されたホームズ短編を、リアルタイムで読んでいて、その面白さ・新しさに着目していたのでした。そして、新しく連載を始めるにあたって、日本でもホームズのような探偵小説が書けないものかと思って、時代を江戸に移し、捕物帳という新しい形式の小説を編み出したのでした。
 半七はホームズほどの奇人ではありませんが、その推理眼は人よりぬきん出ており、まさしく快刀乱麻を断つごとき解決が見られる訳です。この半七、発表4作目の「湯屋の二階」で早くも失敗談を披瀝していまして、ホームズの「黄色い顔」を彷彿とさせるのですが、他にもホームズと共通点が見られます。
 シリーズが中断したことがある点などまさにそうでしょう。ホームズはご存知「最後の事件」でライヘンバッハの滝から落ちて読者の前から姿を消しますが、半七は派手な退場はなかったものの、作者が大正14年、45作目「三つの声」で捕物帳の筆を折ってしまいます。そしてほぼ10年後、復活します。ホームズは復活までの空白期間に長編『バスカヴィル家の犬』が書かれていますが、半七も番外編・養父吉五郎の登場する長編『白蝶怪』が書かれています。因みにG・K・チェスタートンが書いたブラウン神父のシリーズも空白期間があることは意外と知られていません。まあ、ひとりの探偵で長年書き続けると、愛着とは別に飽きが来るのも事実でしょうね。
 綺堂は幕府御家人だった父親が開化とともにイギリス領事館つき筆記者となったような環境で、江戸趣味と英国文化の交差する中で、育ったのでした。そんな綺堂がホームズを江戸に置き換えたのも、なるほど彼ならではと思わされます。半七全69編。ホームズ全60編、どちらも再読三読してまた楽しきかな。
11月5日 ハイジに疾走する牛たち 
 この連休、皆様はどこかへお出かけになられましたか? 私は近場の秩父高原牧場に家族で行ってきました。ここはもう行くの3回目なのですが、未だに名物のソフトクリームを食したことがありません。きっとこの世では巡り合えない運命なのでしょう……。嗚呼! まだ見ぬ運命の人ソフトクリームよ、今いずこ!!!!……
 それはさておき、夕方頃に行ったのですが、人気のない高原のあちこちに、目のかわいいお牛さんが、のんびりと草を食んでおりました。その向こうにスモッグけぶるTOKYOが見えてます。いいロケーションです。
親と行くもんじゃありません(爆)
 でも牧場の施設はもはや全部閉館状態。何しに来たんだろーなー、と自省の念噛み締めつつマキバのたそがれを眺めておりますと、突如、鳴り響く音楽が……。
 
よ〜ろよ〜ろれっいっひっ お〜れいひっよれいひっ
 よ〜ろよ〜ろれっいっひっ お〜れいひっよれ〜〜〜っ
 どこかで聞いたことあるヨーデルだぞ! そして世にも稀なる風景がっっっ!!!
 牛たちが四足駆動軽やかに、疾走しているではありませんかっ! あんなのにぶち当たったら痛いだけでは済まないぞっ!!
 おお! これがウワサの○牛病? い〜え、そうではありませぬ。なんとこれから牛たちの晩御飯。あの紛れもない
ハイジのヨーデルは牛集めの音楽なのでした。牧場の柵に思わず脱力してすがりつくWarihiko一家。もう牛の姿は一頭もないっちゅうに、高原にしつこく鳴り響くよ〜ろよ〜ろれいひ。ここもまた彼岸の風景が…。
 この連休、皆様はどんな思い出を作られたことでしょうか。私は……ちょい悪夢でした。