12月30日 今年のベスト12 
 今年読んだミステリの新刊書は、国内外併せて約150冊でした。一時期よりは読書量が減ったな、と思いますが、それでも大方の皆さんよりは熱心に読んでるのでは?
 その中から私がおすすめできる幻想ミステリ系ベスト6を独断と偏見で(こういう決り文句もやだねえ、ベストなんたらと言ったら独断と偏見しかないのよ)選ばせてもらいます。死んでも『このミス』とはダブりたくありません(笑)。では、いきますわよ。

   
国内編
 6位 『BAD』倉阪鬼一郎 エニックス
 5位 『冬のスフィンクス』飛鳥部勝則 東京創元社
 4位 『ジュリエット』伊島りすと 角川書店
 3位 『ペニス』津原泰水 双葉社
 2位 『古川』吉永達彦 角川書店
 1位 『六色金神殺人事件』藤岡真 徳間文庫
   国外編
 6位 『M・R・ジェイムズ怪談全集』M・R・ジェイムズ 創元推理文庫
 5位 『洞窟』ジェイムズ・スターツ 早川ノヴェルズ文庫
 4位 『不眠症』スティーブン・キング 文芸春秋
 3位 『女占い師はなぜ死んでゆく』サラ・コードウェル 早川ポケミス
 2位 『トード島の騒動』カール・ハイアセン 扶桑社ミステリー文庫
 1位 『さらば、愛しき鉤爪』エリック・ガルシア ヴィレッジ・ブックス文庫


 珍味というか、見事にヘンな本ばかり選んだような気がしないでもないですが、いまさら『ミステリ・オペラ』や『ザ・スタンド』を挙げるのもねえ。他の人がいろんなところで推薦してる本はここには挙がっておりません。でもお断りしておきますが、ムリヤリ穴狙いで選んだのでもなくって、多分、どこで聞かれても私はこのベスト・ダズンを挙げるのではないでしょうか。それに鳴り物入りの超大作には、はっきり言って食傷していますしねえ。
 内外の1位について軽くコメントいたしますと、幻の作家・藤岡真氏の第2作にあたる『六色金神』は壮大な伝奇ミステリで、半村良もかくやという作品。六色金神祭の最中の青森県のひなびた町が雪で閉ざされて密室状態になり、そこで怪奇な連続殺人が出来する。そこに絡んでくるのが、宇宙の神秘を解いた謎の「金神伝紀」である…。
 かたや『愛しき鉤爪』は恐竜ハードボイルドというゲテモノ(誉めてるんですよ)。絶滅を生き残った恐竜たちが人間に擬態して、人間社会に混じって住んでおり、主人公もそのひとり、ロサンゼルスで私立探偵をしている。彼の相棒が殺されて…。続編もあちらでは出版されていて、映像化も決定しているそうですが…。
 すいません、こうやって粗筋書いててもやっぱりヘンだな、と思いましたです。どちらもあんまり売れなさそうな本なので、近所の書店で見かけたら一度は手にとってみて、よさそうならお買い求めください。「バカのきわみだな」と思いましたら、その場でせせら笑ってやってくださいまし。
 では皆様、よいお年を。
12月28日 今年の抱負?? 
 今年はまじめに生きるつもりでした。
 今年は人並みに朝起きるつもりでした。
 今年は疲れても癇癪を起こさないようにするつもりでした。
 今年は人間として恥ずかしくない生き方をするつもりでした。
 なんのことはない、ぜーんぶあきまへんわ。この年の暮れに思うのは、やっぱりいつもの年とおんなじでした。という後悔だけです。でも後悔するくらいなら死んだほうがマシです。しおらしく反省するのもイヤです。なんか世の中は騒がしかった一年ですが、いろいろと思うことあれど、唇寒し、の喩えもあり、私は口を閉ざしています。来年は占いによると(2000年3月12日項を参照)とてもよい年になるそうな。ん〜、喩えて言えば
バラ色?
 ほんまか、おい? 責任とってよね。
 今年の日記も多分、今日で終わると思いますが(まあ気分次第でまだあるかもしれませんけど)、皆様にとって来るべき年がよい年でありますように。私にとっても当然ね。ふふ、来年が楽しみです。待っててね池袋の母よ。
12月21日 歯医者の恐怖 
 十数年ぶりに歯医者で歯を抜かれました。神経を十年程前に抜いてあった歯なので、痛みはさしてなかったのですが、穴がごろんごろんになってモノが食べ辛かったのでね、近所の歯医者に行って診てもらったら、腐ってましたの。ほほ。
 世に歯医者ほど嫌われる職業はなかんべ〜、と悲しみを感じつつ(全国の歯科医関係の皆様ごめんなさい、すべて私の妄想です)、私は歯医者の椅子でじっとその時を待っておりました。身内にも歯医者は何人かいましてね、そういや弟も歯医者ですね、ああ、みなさん、お手柔らかに…ととりとめもなく考えておりますと、いきなり、麻酔注射を
ぶすっ。そして歯茎に麻酔が行き渡るよにごーりごり。思わず椅子のふちを握り締めてしまいました。
 そういや映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のサド歯医者は凄かったよな(スティーブ・マーティン演じる)、とか、知り合いの歯医者で診察中に嘉門達夫をかける趣味の人がいたな、あれは患者が笑うに笑えず悶絶するのを見て楽しんでいるのだな、などと考えがどんどんエスカレートしてゆきます。やはり映画『マラソンマン』では歯を抜く拷問があったよなとか……!!!
 私の大臼歯ちゃんは、真ん中がお腐れになっているので、ふたつにぽっきり、歯を抜く恐怖も二倍増!たまりませんね。歯をやっとこで抜こうとするとどうしても顎の骨まで引っ張られてしまって、ぐいぐいごりごりとそれはもう先生、おおしごと。
 みごと抜かれた歯は、
血まみれで、とってもエクスタシーでした。みなさん歯は大切にしてくださいね。
12月16日 『日本の異端文学』 
 『日本の異端文学』というタイトルの新書が出ておりました。なんとなくキッチュなタイトルで、ありがちな本かしら、とぱらぱらページをめくって、おや? 中井英夫と日影丈吉が取り上げられておるではないか。ほな、ここで紹介しまひょ、と思い立った次第。
 著者は川村湊氏。新書のニューフェイス、集英社新書の今月の新刊です。川村氏はなんとなく韓国評論家・マイノリティ評論家的なイメージが私の中にある評論家でしたが(中上論とかも書いてるしね)、このシブサワっぽい感じの新書で、あにはからんや三角寛とか取り上げられています。章立てして取り上げられている作家は、前述の中井、日影、三角のほかに、山田風太郎、小栗虫太郎、橘外男、国枝史郎、中里介山、渡辺温、尾崎翠、そして団鬼六と宇能鴻一郎です。なんとまあ…。
 中井はその人外世界を主に論じられ、日影は台湾ものが俎上にあげられていますが、なかなか読み応えのある新書でした。常識的な文学史から激しく逸脱した作家ばかりこう並べてみますと、やはり「純文学」のサイドで論じられてきた「文学」そのものの虚しさを感じます。中井が赤江瀑の文庫の解説で引用していたソログープの詩の一節、「なぜ静かに魔法に耽ってはならないのか」という呟きが聞こえてきそうな本です。このHP、幻想ミステリ博物館も、恣意的にそのような「異端」の作家ばかり選んで書誌をのっけて、たまには書評も書いておりますので、この新書もぜひ皆様に読んで頂きたいものです。
12月12日 どこでも首は吊れます 
 人間って死に魅入られるとどんな形ででも死ねるんですね。私の出身の町は某関西の山の中の寒村なのですが、人口あたり首吊り自殺の率の高さで日本一という、まことに不名誉な記録をもっております。柿が主な農作物の村なので、柿の木に縄引っ掛けて…というのも結構多いとか。
 そんな首吊りの話なのですが、父はそんな田舎の町で警察の嘱託の検死医もしておりましたもので、かつては年間に何体も検死していたのです。
 だから様々な死にざまを見たらしいのですが、意外と人って、高いところから首は吊らないんですね。タンスの取っ手の環っかとか、物干し台とか、仏壇の取っ手とか、ドアノブ(!)などなど。そう言えば、XJapanのHideもドアノブかなんかで吊っていたんでしたっけ。
 死にたい気持ちが生まれると、どうやっても人は死へと近づいてしまうものなのです。不況下の年の瀬、近所の駅でも数日前の朝、飛び込みがありましたが、きっとそんな人は死神に魅入られているんでしょうね。怖い話です。山本まゆりのマンガ『魔百合の恐怖報告』に出てくる霊能力者の寺尾玲子氏は、死神を見たことがあるそうな。怖い怖い……。
12月10日 クリスティーこぼれまつば 
 アガサ・クリスティーの最後の短編集が、この度ハヤカワミステリ文庫に入りました。『マン島の黄金』です。ハヤカワのクリスティーの装丁を担当されていた真鍋博画伯が今年亡くなられたので、装丁がどうなることかと思っていたら、真鍋氏ふうのイラストのカヴァーで、並べてみて遜色なくってとても喜んでおります。
 これで全短編が早川書房の文庫で読めるようになったという訳で………は、実はないんですねえ。
 新潮文庫から出ていた『青い壷の謎』に入っている
「白木蓮の花」、これがねえ、他では読めない貴重な作品でして。『死の猟犬』や『リスタデール卿の謎』の短編を思わせる幻想的な作品で、もう、この短編集が絶版になっているため、書店では手に入らないのですな。むはむは。あと、「愛犬の死」という短編も中村妙子氏のエッセイ集『鏡の中のクリスティー』(早川書房)に訳載されています。こちらは純文に近い作品です。また「四辻にて」という未収録短編があると長いこと言われていたのですが、これは近年、クィン氏ものの「愛の探偵たち」の別題であることが確認されております。
 この『青い壷の謎』自体、”アガサ・クリスティー・アワー”なる英国のTVドラマ・シリーズに原作として使用されたものを集めたもので、企画ものだった訳ですね。
 というようにクリスティーも早川書房の文庫がほぼ全作品を網羅しているのですが、若干こぼれたものもあるのです。ここではそういうこぼれたものを、好事家の皆さんのために記しておきます。
 まず戯曲で翻訳があるもののうち、
『殺人をもう一度』が光文社文庫(絶版)、『そして誰もいなくなった』が新水社(こないだ復刊されました)、雑誌掲載では『評決』『アクナーテン』がハヤカワミステリマガジンに訳されております。『殺人をもう一度』はポアロものの傑作『五匹の子豚』をポアロ抜きで戯曲化したもの、『そして誰も…』は小説とは別ヴァージョンのラストが用意されていて、どちらもクリスティー・ファンにはたまらないはずです。あと、これは珍しい『アクロイド殺し』の他人による戯曲化作品『アリバイ』がハヤカワ・ポケミスで遥か昔に出ていましたっけ。
 また、クリスマス・ストーリイ集
『ベツレヘムの星』と中東紀行『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』が早川の単行本で出ております。この二冊はまだ現役です。
 クリスティーはほんとに親しみ易いミステリ作家で、初心者もマニアもともに喜ばせることの出来る作家です。そして、クリスティーを極めるならやはりここまで読んでいただきたいなと思うのですが…。
12月2日 女帝誕生 
 今上天皇は神武より数えて125代目となるのですが、その長い歴史の中で女性の天皇は6人いるのです。2人は再祚しているので計8代、女帝がこの国に君臨したことになります。
 33代推古天皇、35代皇極天皇(再祚して37代斉明天皇)、41代持統天皇、43代元明天皇、44代元正天皇、46代孝謙天皇(祚して48代称徳天皇)。これらは奈良時代以前に在位した方々です。動乱の時代、女帝を擁立することで、なんとか骨肉相争う戦いを避けようとした経緯が見られることも多い時代です。
 一方、江戸時代にも女帝は2人、109代明正天皇と117代後桜町天皇です。女性による宮廷文化華やかなりし平安朝にも女帝は誕生しませんでしたが、この時代になって俄かに女性天皇が擁立されたのも、やはり過渡期としての混乱があったのでしょう。殊に幕府との力関係が微妙な時期に女帝が果たした役割というのも大きいのではないでしょうか。
 そして昨日、東宮妃雅子様に女のお子がお生まれになりました。現在の皇室では1969年の紀宮様以降、女のお子しか生まれていないのです。天皇の即位の順列などを決めた「皇室典範」第1条では女性は皇位継承権を有さないとなっていますが、これではとても現在の実情に即した結果は得られないのは、火を見るより明らか。
 おそらく今上天皇、次代のお二方が天寿を全うされて次の天皇が必要となる頃には、皇位継承権を有する天皇家の男性はみな、お年を召されて或いはもうこの世にいらっしゃらないという可能性が強いのです。その時こそ、昨日お生まれなさった女宮様が久々の女帝として君臨することとなるのです。お雛様のような女帝がもし見ることが出来るとしたら、中古文学を専攻する私には、個人的に感慨が絶えません。
 新しい時代を担う女性天皇を一目見たいが故に、長生きしようと思う今日この頃です。