今年のベストダズン 12月30日 
 おずおずと今年のベストダズンをば。今年の年間新刊読破量内外併せて140冊余り。では、レッツ・ダズン・スネイク・カモ〜ン!

   
国内編
 6位 『魔羅節』岩井志麻子 新潮社
 5位 『傀儡后』牧野修 早川書房
 4位 『白光』連城三紀彦 朝日新聞社
 3位 『シャドウ・オーキッド』柾悟郎 コアマガジン
 2位 『ロンド』柄澤齋 東京創元社
 1位 『グラン・ヴァカンス』飛浩隆 早川書房
   
国外編
 6位 『イリーガル・エイリアン』ロバート・J・ソウヤー ハヤカワSF文庫
 5位 『キスしたいのはおまえだけ』マキシム・ジャクボヴスキー 扶桑社ミステリー文庫
 4位 『妖香』ジョン・ソール ヴィレッジ・ブックス文庫
 3位 『第四の扉』ポール・アルテ ハヤカワミステリ
 2位 『飛蝗の農場』ジェレミー・ドロンフィールド 創元推理文庫
 1位 『アシッド・カジュアルズ』ニコラス・ブリンコウ 文春文庫

 ちょっとSF寄りにシフトチェンジした趣のあるベストになってますね(国内編は半分SF)。ミステリはもうお見限り? これ以上メフィスト系がのさばると、そうなるかもしれませんね。要はライトノベル系ミックス作風ミステリが嫌いなだけ。で、やはり耽美というかエロな話が混じってます(岩井シモネタ女王志麻子とか、牧野祝SF大賞修とか、復活柾悟郎&飛浩隆とか、エロスリラー巨匠ジャクボヴスキーとか、すけべノワールなブリンコウとか、相変わらずのジョン・ソールとか(-_-))。
 それぞれ1位を軽く解説。国内1位『グラン・ヴァカンス』はネット空間に存在する、地中海ふう架空リゾートでの物語。リゾートの情景描写がとても官能的です。人間の客の歪んだ欲望に対応するAIたち(こういうとミもフタもないが、まあ、手の込んだエロゲーかね。)が主人公。「蜘蛛」と呼ばれるプログラムに蚕食される世界で、AIたちが戦うのですが、実は…。J・G・バラードの『ヴァーミリオン・サンズ』シリーズを彷彿とさせる作品です。耽美、硬質な文体が魅力。
 国外1位『アシッド・カジュアルズ』は前作『マンチェスター・フラッシュバック』に続くイギリスのアンダーグラウンド・スリラー(翻訳の順序はともかくこっちが処女作だが)。人工美女(♂)の殺し屋が秘密の使命を帯びて、故郷マンチェスターに帰ってくる。そして激しい殺し合いが始まる、というハナシ。いま流行の「ノワール」なエロティック・アクションです。
 「私はエロティックでない哲学を信じない」というのは、ポーランド人亡命作家、ヴィトルド・ゴンブロヴィッチの至言です。おしなべて、文学にエロティックでないものを見出したくないのは、私とてゴンブロと同じ。エロティックでない小説じゃ子供の食い物。あえてそういうものは食べたくないと思うようになった、今日この頃です。いつか書かれるべき自分の小説もさぞかしエロいものになることでしょう。
 では皆様、よいお年を。
神秘!カスピ海ヨーグルト 12月20日 
 最近、知人から貰った「カスピ海ヨーグルト」を育てています。なにやら最初は、私の子供の頃に出回った「紅茶キノコ」のような胡散臭さを感じたのですが、実際、作ってみると、あ〜ら不思議、一日半でヨーグルトがいとも簡単にできちゃう。市販のヨーグルトとの違いは、その粘り気。納豆みたいに粘るのよ、ヨーグルトが。しかも味わいはまったり。酸味が少なく、まろやか。これはいいものを教えてもらったものです。
 カスピ海沿岸の長寿村から某大学教授が持って帰ったという話(なんか都市伝説っぽいぞ)も伝わっております、このヨーグルト、実に身体にもよいのです。便通がよくなり、肌はツルツルになり、体調もよくなってしまうから、お嬢さん、不思議不思議ですよ〜(俺はみのもんたか…)。少しは信じるものは救われる式の思い込みもあるでしょうが、それにしても、タネを牛乳パックにほりこんだだけで出来てしまうのには驚き。昔、自家製ヨーグルトに挑戦して保温器とか買って見事に失敗させた苦い経験を、すっかり払拭してくれました。
 いい気になって料理にも使ってみました。カレー、タンドリーチキン、ラッシー(インド風ヨーグルトドリンクね)、サラダのドレッシング。美味い…。やはり酸味が少なくコクがあるというのが利いているのですね。普通のヨーグルトだとちょっと酸味が立ってしまいますが、これは大丈夫。
 今は季節のりんごの自家製ジャムを入れて毎日食べています。遅ればせながら、皆様も、どうかお試しあれ。……で、さあ、
カスピ海ってどこだっけ。ぶひぶひ…
もうすぐサロメの夜 12月8日 
『虚無への供物』初版。家が火事に
なったら私はこれを持って逃げます。
 中井英夫が故郷たる異界へ帰って、もう10回目の冬です。『虚無への供物』の開巻に1954年12月10日の「サロメの夜」が描かれていて、それから40年目の1993年12月10日、中井英夫は自らの作品世界へと旅立ったのでした。それから10年…
 最近、個人的な趣味で、テネシー・ウィリアムズ、トルーマン・カポーティ、カーソン・マッカラーズといったアメリカ南部作家の伝記を集中的に読んでいるのですが、彼らに共通しているのが、繊細な耽美性、完璧さを求める文学的理想の高さ、成功と裏腹の孤独な晩年、そして同性愛です。
 これらの要素は全部、中井英夫にも当て嵌まります。だから、中井も彼らと同列のイノセントな天使のひとりに加えて欲しいと私は思っています。
 中井の没後、「助手(実際はボランティアのヘルパーのようなもの)」の本多正一氏の写真集『彗星との日々』(BeeBooks)、文集『プラネタリウムにて』(葉文館出版)が出版されました。ここで、一中井ファンだった本多氏が、やむにやまれず中井宅を訪ね当てて、偶然中井本人と出会い、助手として面倒を見ることになる経緯が語られています。
 本多氏と中井の出会いは1989年6月、世田谷区羽根木の中井宅だそうですが、中井はここに永年居を構えて自ら洒落て「ハネギウス一世」を名乗り、酒と薔薇の日々を送っていたのです。しかし、この年、大家が地上げに屈して中井は住み慣れたこの家を追われました。

 本多青年が中井家を探してうろついていたと恰度同じ時期、私も隣町の世田谷区大原に住んでいて、中井家を見つけようと夜な夜な歩き回っていました。それは徘徊といったほうが相応しい夜歩きで、その年大学に入るために上京してきたばかりの私は、周りの環境に馴染めず、孤独な毎日を送っていたのです。
 同じ、やむにやまれぬ気持ちを抱えたひとが、ここにいたのかと、私は本多氏の著書を読んで、ひとり涙したのを覚えています。
 取るに足らない昔話で恐縮でしたが、私にとって中井英夫は特別な作家です。没後知った「小説は天帝に捧げる供物、一行でも腐っていてはならない」の一文は、深く心に刻み込まれています。あさっては中井英夫の10回忌。一晩中、『虚無』の初版本でも手許において、詩吟酒にでも耽りたいと思います。そしたら、夢の中でもうすぐ、黒いビロードのカーテンが揺れて、ほら、サロメの夜が始まるのですから……
中島みゆき紅白初出場 11月28日 
 ほんとに驚きましたね。TV出ないアーティストの筆頭たるみゆき様が、なんと暮れの紅白歌合戦に出るというニュースが列島を駆け抜けました。私もここ数年は見なくなっていた紅白ですが、今年はビデオまで設定してのお楽しみになりそうです。
 だいたい、あの番組(NHKに物申す!)、国民行事だの暮れの風物詩だのと言われて、長い間勘違いをしてきたような番組で、実質的な売上のない演歌歌手ばかりトリを努めさせて、あんまり印象のよくない番組に成り下がっていました。小林&美川の衣装合戦も、もう飽きちゃったしねえ…。
 それでも大晦日はだいたいのご家庭がだらだらとTV付けっ放しで、そのおかげで視聴率をキープできてたようなもんでしょうねえ。マンネリズムに甘えてたんだよな、NHK。
 だからたまにマジでちゃんとしたアーティストに交渉して、出演させてもいいんじゃないの? 以前、長渕剛が出たこともあったしねえ。今年はみゆき。来年は桑田圭祐あたりにお願いする?
 みゆき様も現在ロングランヒット中の「地上の星」がNHKの『プロジェクトX』の主題曲、って恩もあって、出ることに踏み切ったんでしょうね。『プロX』のドキュメンタリーさながら、みゆき様ご一行が黒部ダムから中継ってウワサもあるぞ。
 裏の夢のない暴露話はともかく、これで、「夜会」抽選外れてがっくしの私にも、年末のみゆき関係の楽しみが確保できたってことで、めでたい、めでたい。あとは和田アキ子を押しのけて、紅組のトリをお願いしたいな。なーに、和田アキ子も実はみゆきファンらしいから、たまにはトリを譲ってやってな。頼んます。
名前がこわ医 10月19日 
 病院の名前でちょっとネタを思いつきました。関係者の皆様、これを読んでもお気を悪くされたり、Warihikoに対して怒らんといてつかあさい。
 私の住む街・S玉県の志木には、都丸産婦人科という病院があります。お産が
トマル、産婦人科な訳ですね。入院中に読むのはやはり京極夏彦の『姑獲鳥の夏』がよさそうですね。出るものも出なくなりますね。便秘にはあかんが、下痢にはよさそ・・・って、あう・・・シモネッタ・ド・ゲヒンビッチ嬢降臨?
 でー、隣の朝霞台には、塩味病院という総合病院があります。
シオアジ
病院では、高血圧の方は入院できませんねえ。私も関西人で薄味好きなので、遠慮します。でも病院食の塩気の薄いのにウンザリなさってる方はどうぞ。でも病院食ってなんであんなにマズいんでしょうかね。老人病院のミキサー食なぞ、うちのバアさんは鳥のフンそっくりって・・・いやん、ばかん、マドモワゼル・シモネッタこないでっ!!!
 さて今日、私は面白いものを見つけました。東上線で朝霞・和光と来て、都内に入りますと、成増の駅の近所で、世にもオソろしい整骨院を発見しました。その名も「さど整骨院」。
サド、だよ。マゾぢゃないんだよ。まるき・ど・さど、なんだよ。こええええ。整骨院ってけっこう荒っぽい治療(一般論ね、個人攻撃じゃないからね)だったりしますよね。サドだったのね〜、納得。もうムチでぶって、脱臼ハメて、電気ショックかけて、首筋を伸ばして、お灸をぼんのくぼにすえて、ってカンジ〜〜〜! サドマゾ家畜人やぷ〜〜っっっ!! マドモワゼルも昇天〜〜〜〜〜〜っっっ!!! ひいいいいいい、いくいくいくううう!(今日のWarihikoさんたらほんっとにおゲヒン)。
 しかもここ、まじ、ひらがなで「さど」って書いてあって、私、バスの中で目がテンになりました。ま、カタカナにしなかっただけましですけど、漢字で書いたら佐渡さんなんでしょうかねえ。指揮者の佐渡裕とおなじかしら・・・
 しかもサド整骨院の最寄のバス停、「
六道の辻」ってんですぜ。あの世とこの世の境目じゃ。ここが地獄の一丁目じゃああああああああああ〜〜〜〜〜! ぼっけええ、きょうてえええよおおおお!
 PS 関係者各位どの ほんまにえらいすんません。芸風ですのでカンベンして。なんならシモネッタ・ド・ゲヒンビッチ嬢のキッスで許して。
小林聡美のエッセイ 10月9日 

これが噂の処女作
 小林聡美さんの新しいエッセイが出てた。『キウィおこぼれ留学記』(幻冬舎文庫)って紀行文らしい。ほんとうにこのヒトも好奇心旺盛ちゅうか、いろいろやるねー、と思いながら買ったら、行きし戻りの電車で完読でやんの。短い…。160ページちょい。
 面白かった。このヒトの言語感覚ってかなり興味深い。寂しさで身体が震えるの「インコ震い」とか言ってるし、カルい文体が絶妙。私、このヒトの文章、もろにツボです。
 その辺にいるオバ…もといオネーさんでありながら、微妙に女優のヴェールを使いこなしてるって感じですね。発泡酒のCMでもこの感覚は健在だが…。『転校生』以来のファンとしては言うことなしです。あと、『やっぱり猫が好き』マニアとしては、室井滋(『むかつくぜ!』文春文庫ほか)、もたいまさこ(『猿ぐつわがはずれた日』幻冬舎文庫)両嬢のエッセイもいいよって、付け加えとくね。
 何を読んでも面白いのだが、私のお気に入りは『マダム小林の優雅な生活』(幻冬舎文庫)。愛するオット三谷幸喜氏との結婚後初めてのエッセイで、猫二匹と暮らすつれづれを、絶妙にスケッチしているのですな。
 ちなみにウチにあるコバヤシエッセイの数々をここに載せておきます。処女作『サボテンのおなら』(扶桑社文庫)は絶版のレアもん。でも近所のブックオフで100円棚にあったっけ。この本を探してる小林ファンは北朝霞のブックオフへGO!
鮎川先生訃報その後 10月1日 
 近所のさしてでかくもない駅の本屋さんでも、わざわざポップを作って「鮎川哲也追悼」コーナーが出来ていました。正直そんなに関心を持って扱われるとは思っていなかったので、少し嬉しかったです。
 この3日ほど、三番館シリーズを何冊か再読し、ユーモア溢れる鮎川テイストに思わずにやりとしていました。これこれ、これなんだよなあ。本格ものって結構悲愴な味付けの一大トラジェディックな作品が昔から多いのですが、鮎川先生はそういう大時代的な作風には流れないで、最後まで理知的なユーモアを常に心がけていたのです。ユーモアって最も、理解できない人たちには理解し辛い要素です。その辺がわからない人たちにはただつまらないだけなのかもしれませんね。人の好みは千差万別ですが、私はそういう楽しみがわかる感性を天から貰ったことに感謝しました。
 稚気溢れる作品群を前にして、私は「これだけ楽しい本格推理を沢山遺してくれたんだもの、悲しくないやい」と思いました。芦辺拓氏の公式HPで鮎川先生の葬儀の様子が芦辺氏によって報告されていましたが、なんとなく「大往生」という言葉が心をよぎりました。
 ところで某ちゃんねる(ばればれか(^^;;))の鮎川追悼スレッドに、評論家の某氏とおぼしき人の書き込みがあって、三番館全集全5巻で企画進行中だそうです。ガセネタでなければ、ばんばんざいですね。名前だけ知ってて読めなかった方には朗報ですね〜。また詳しいことがわかりましたら、鮎哲ニュースのほうで…。
鮎川先生の訃報 9月27日 
 最近あんまりネット日記をつけてなくて書くこともなかったのですが、居ても立ってもいられず、この文章を書いております。
 鮎川哲也は戦後推理小説界最後の巨人でした。新本格以降しか知らない読者にも色んな形で名が知られていましたが、長い作家活動の最後の20年弱(長かったのか短かったのか…考えると目が潤んできます)をリアルタイムで付き合ってきた元若輩者としても、最高のリスペクトを注ぎつづけてきました。当サイト、幻想ミステリ博物館のコンテンツとしては異例のリアリズム推理の作家のようにも思われがちですが、そうじゃないんですよね。やはりミステリって基本が高級なファンタジーだし、何より先生のその志の高さには敬服するしかないんですよ。
 ここ数日なぜか胸騒ぎがして「鮎哲読まなきゃ」みたいな気分にかられていたのですが、偶然とはいえ切ないですね。『黒いトランク』を光文社文庫の初刊バージョンで読んでみたり、三番館ものを何冊か拾い読みしたり。積ん読だった『りら荘事件』の改訂前バージョンも読んでみました。久しぶりに読むものが多くてとても楽しかったですが、今にして思うと、先生の最後のささやかな贈り物だったような気がしてなりません。ほんとうにありがとうございました。
 直接先生の謦咳に触れていた訳でもなく、いつか鮎川賞を取れるような謎解き本格を書ける体質でもなく、夥しい先生の作品も正しく理解できているかどうかも心もとない限りです。このようなHPを果たして誰が見ていてくれるのだろうかという無力感も日々感じています。ただネットに垂れ流しの情報にだけはならないよう、精一杯、更新を続けていけたらいいな、と思うのみです。
 生きて同じ空気を吸っているというだけで幸せにしてくれた先生の死に際し、感無量です。