今年のベストはちゃんと選べました 12月30日 
 わりと今年は本が読めた一年だったので、ベストダズンが選べました。ぱちぱちぱち……と自画自賛、毒書生活は楽しいなっ!
 まあどうしてもこのようなHPを作っている関係で、取り扱い作家の旧作を中心に読み返すことが多いのは仕方がないですが、それでも、新しい作家を楽しめる余裕もあります。昨年は道尾秀介さんが当たりでしたが、今年は傑作『赤朽葉家の伝説』(東京創元社)を出した桜庭一樹さん! でも奥付見ると『赤朽葉家の伝説』は昨年12月28日(こんなビミョーな日付にすな!)の刊行だったので、本年度のベストに入れるのを泣く泣く断念しました…。かわりに、桜庭版『少女地獄』(夢野?)と言われる『私の男』がランクイン。『青年のための読書クラブ』(新潮社)も面白かったがな。
 書物系HPのくせして全くもって本の感想とか書かれてない日記も困りもんですが(笑)、よくあるような読書感想ブログはやりたくないし、だいたいがああいうオナニーブログで垂れ流される「批評」は痛々しいばかりでまともに本も読めてないのが大半なので、恥をさらさせるのは勘弁して。オナニーするなら人には見えないところでしましょうね、AVぢゃないんだから。私も若かりし頃は、恥ずかしいことに「読書ノート」なるものをせっせと書き溜めてましたよ。引越しの際にブン棄てたのでもう見ることもないですが、さぞかし赤面ものでしょう。
 ブログという、開かれてるのか排他的なのかよくワカラン形式も、私には理解しかねます。おおかたのブログのコメント欄とかトラックバックとか、ああいう機能いらんやろ。炎上するとかしないとか、阿呆らしくってやっとられんわ。何か燃やしたいんやったら、カマガサキでも行って車でも燃やしたらええやん。と言う訳で、基本的に、相手の意思無視で一方通行にお届けするサイトが、この「幻想ミステリ博物館」でございます。
 さーて、楽しいベストダズンに行こうかなっと。

国内編
 6位 『ミサイルマン』平山夢明 光文社
 5位 『祝山』加門七海 光文社文庫
 4位 『私の男』桜庭一樹 文藝春秋
 3位 『倒立する塔の殺人』皆川博子 理論社
 2位 『人形が死んだ夜』土屋隆夫 光文社
 1位 『女王国の城』有栖川有栖 東京創元社

国外編
 6位 『襲撃者の夜』ジャック・ケッチャム 扶桑社ミステリー文庫
 5位 『水底の骨』アーロン・エルキンズ 早川ミステリ文庫
 4位 『灯台』P・D・ジェイムズ 早川ポケミス
 3位 『幼き子らよ、我がもとへ(上・下)』ピーター・トレメイン 創元推理文庫
 2位 『ナツメグの味』ジョン・コリア 河出書房新社
 1位 『失われた探険家』パトリック・マグラア 河出書房新社

 長年頑張っている作家の本はそれだけで推したくなるものですが、90歳の土屋と85歳(発表時)のジェイムズのおそらく最終作は、熟成した時間を感じさせる力作です。搦め手の倒叙、という新機軸を編み出した『人形』と、イギリス伝統の孤島ミステリに久々挑戦した『灯台』、どちらも時間があるときにゆったりと読み進めて、流れる時を楽しみたいものです。特に土屋先生におかれては、前作『物狂い』(現・光文社文庫)で最後と思っていたので、この思わぬ新作には涙がちょちょ切れました。さすがに甘い楽観的な作品ではありませんが、長年活躍したダルグリッシュ警視の人生に一条の光が仄射すような終わり方には、そりゃあ『灯台』だけあって光が導くでしょう、とオチを付けたくなりますね。
 今年は何故か、本格謎解きが無性に読みたくて、幻想系がちょっと疎かになったかもしれません。国内1位の『女王国』もまた、流れる時間と共にある本格ミステリ。読者にとっては、江神さんシリーズを待ち続けた15年の思いが詰まった作品でしょう。少々展開がタルいとか、ロジックの詰めが甘いとか、粗は探せばみつかるでしょうが、出版されたことにこそ意義がある一冊です。横溝翁の晩年の作品と一緒で、せっかちに読むもんではありませんね。いつ出るのかわからない次作では、ついに江神さんの家族の謎が明かされるのかもしれません。どきどき。アメリカのエルキンズ、アイルランドのトレメイン、いずれも地味な本格ものながら、シリーズの次回作を待つ楽しみを味わわせてくれます。
 マグラアの短編集成『失われた探険家』は幻想ファン必読の怪著。かつて翻訳されていた『血のささやき、水のつぶやき』(河出書房新社、89年刊行)にその後発表された作品を追加したものですが、いやあ、キモチワルイのなんのって。ちょうど、今年私が注目した春日武彦氏の幻想系評論『無意味なものと不気味なもの』(文藝春秋)でも取り上げられた「長靴の物語」とか超イヤモスキー。ゲンナリするかハイになるかは読者次第。おなつかしやジョン・コリアの『ナツメグの味』もまた早川の異色作家シリーズの落穂ひろいで、幻想ファン必読。こういう海外ものの叢書だと、マシスンの『不思議の森のアリス』やボウモントの『残酷な童話』、スレッサーの『最期の言葉』などが出た論創社のダーク・ファンタジー・コレクションと並んで、この河出書房の奇想コレクション&KAWADE MYSTERYはマニアックなラインナップに財布の紐ゆるみっぱなし。原書房、国書刊行会、新樹社、論創社のクラシックミステリも相変わらず凄いけど、なかなか一年で読み切れないのが玉に瑕。
 子供向きの叢書なのに子供に読ませるのはどうよ? という毒の強さが売りの『倒立する塔の殺人』は皆川ワールド炸裂。理論社のYA!シリーズは他にもクラニーせんせの『ブランク』とか怪人マキノの『水銀奇譚』、山田正紀『雨の恐竜』、永井するみ『カカオ80%の夏』、鯨統一郎『ルビアンの秘密』など、怪作目白押し。新本格&メフィスト系中心の講談社のミステリーランドとは一線を画す幻想系変格系のラインナップに期待大です。
 加門七海嬢の『祝山』は小品ながら、かつて彼女の語りおろした実話怪談集『怪談徒然草』(現・角川ホラー文庫)で冒頭に紹介された「あの橋を渡って」や「後味の悪い話」をもとにした実体験(!)ホラー。近年増加している中途半端なオカルトヲタの生兵法が、ホンモノの魔性に触れた時、如何に恐ろしい結果を招くかという、とても身につまされる話。この本、マジ、ヤバいっす(笑)。
 という訳で、思いがけず赤江瀑がベストから漏れたり、幻想系が意外と少なかったり、とりこぼしの多くなった今年のベスダズ(略すとヘンね)でした。それだけ読んだ作品にハズレがなかったってことよ。
 ……え? 触れてないのが二冊あるって? どっちも6位のケッチャムと平山? ぐふぐふぐふ、それは、言わぬが花というものでしょう。キチクはさりげなく本屋の平棚の上に目立つように置く、それが私の流儀でございます。ベスト1には絶対出来ないので、一番目立つ6位に据えたのですよ。この正月休みに、どこかのどなたかが、ベスト1と勘違いして平山ケッチャムを手にとって、「なんちゅうもん読ませるんじゃああああ!!!!」と激昂されるのが目に見えるようでござますわっ。邪悪でダークな世界にようこそ。あ、でも、国外編1位も相当邪悪でダークだわー。どうしよう? 牧歌的なウッドハウスの『ブランディングズ城の夏の稲妻』(国書刊行会)と差し替えましょうか? 愛くるしいブタちゃんと、おつむのネジの緩んだエムズワース伯爵と、お城で戯れてもらいましょうか?
 そして、最後ですが、今年は思いがけなくも、まだ五十代の服部まゆみ氏の訃報に接し、涙を流しました。服部氏が遺された著書は作家生活20年でたったの10冊。国会図書館で調査しましたら、未刊行の短編が10編あまり。主に東京創元社と角川書店の刊行物に発表されたものです。だいたいの調査が済みましたので、年頭より、追悼サイトとしてご紹介できたらと思います。もちろん、未刊行作品が今後本にまとめられる公算は大きいのですが、万が一、埋れることのないように、不世出の幻想文学者が忘れ去られないための、遅過ぎたささやかな顕彰として(涙)。
 では、皆様、よいお年を。初春は初詣の記事でお会いしましょう。平山ケッチャムでも読んで、最悪の初夢でも見ててください。
 ボナネ!
 プロージット・ノイヤール!
 フェリス・アーニョ・ヌエボ!
 サワディー・ピー・マイ!
 クナ、シンニョン!
 新年好!
 Поздравляю с Новым годом!(読めん……)
「徴兵制は必要」なんて口が裂けても言うべきではない 12月8日 
 あまり時事ネタは書きたくないと最近避けてはいるのだが、書かずにはおれないし書かなければいけないと思ったのでペンを執る。それはあの東国原宮崎県知事の「徴兵制は必要」発言である。要約すれば、「近頃の若いもんはたるんでるので、徴兵制でも行って軍隊みたいなところで、義務的に社会規律を教え込んだほうがよい」、という発言である。
 たけし軍団時代からの東のスキャンダルを見聞きしていたある年代以上の人ならば、なんとまあ、思い上がった発言だと思うだろうし、せっかく素人政治家知事としてテレビでアピール振り撒いていたのに、帳消しにならないかと冷や冷やするが、規律を教え込む機関として「軍隊」を選択するあたりに、彼の内面のアナクロニズムな勘違い振りが伺えるものである。軍隊は規律を教え若者を正しく導く場所ではないのだ。彼らの人生を誤らせ戦場へ首に縄つけて引き出し命を奪い奪わせる。そんなこともわからないのか、あの知事は。
 わざとこの話題を真珠湾の日に持って来てみるのも、私のあざといところかもしれないが、実は私のプライベートなことで恐縮だが、この間の沖縄旅行の影響もあるのだ。
 私の母方の伯父の一人は沖縄戦で死んでいる。英語の表現なら“He Was Killed in the Okinawa War.”である。戦死した、なんて天災かなんかで死んだようなレベルの話ではない。殺されたのだ。私が生まれるより四半世紀も前のことだが、遺族である母の里の一家は沖縄に足を踏み入れたがらないくらいで、傷は残っている。文学を愛する学生だった彼は学徒出陣し、ハタチそこそこの身空で戦場の露と消え、あの混乱の沖縄戦の中で死んだ場所すらわからないのである。
 今回の旅行で私は初めて南部戦跡に足を踏み入れ、伯父の死んだ場所を探してみたのである。摩文仁の丘の平和祈念公園の碑に伯父の名はあったが、公園内の検索システムで探しても死地がどこかははっきりとわからなかった。
 このような遺族感情が時と共に風化してゆくことで、東のような暴言をさも正しいことのように言う輩が増えて行くのだと思うと、はらわたが煮えくり返るような怒りを覚える。戦争も軍隊もそれを容認する者も、この世からなくなればいい。軍産国家も独裁者も、地獄へ落ちればいい。
 今の私は、沖縄から帰って以来、いわば亡くなった伯父が乗り移ったような状態なので、こういう怒りを覚えるのかもしれないが。だってそうだろう、人生のこれからという時に、愛する文学を奪われ、命を奪われ、遺骨すらないのだ。このような状態を沖縄の古い言葉で「骨身蓋霊(フニシンフタバ)」と言うらしい。戦争や水難などで死んで遺骨が見つからず、霊が成仏するのを蓋がれた状態。まさしくそうだろう。伯父の霊がいるとしたら、魂魄この世に止まって、我を死に追いやった為政者たちを呪っているに違いない。
 近頃、あの戦争を美化したい、正当化したい勢力が論壇に台頭してきているようで、旅行の直前にも、そうした勢力に影響された出版社が、沖縄戦の直後の集団自決を軍部の先導ではない、とする一文を教科書に載せたとして、沖縄の人々から激しい批判を浴びた。まだ怒り冷め遣らぬ地を旅してきた訳だ。
 東国原知事のことに話を無理矢理戻せば、早速失言したことを謝罪してしまったようだが、おそらく、本質的に自分が悪かったなんて反省はしていないだろう。不適切なことを言ってしまった、というだけでうわべだけの謝罪をする近年流行の連中の一人に名を連ねただけである。過ち多かったおのれの青春を反省して、後進の若者を鍛えてやりたい、というならば知事の愚挙を止めはしないが、根っこに戦争や軍隊を美化する考えを持っているとしたら恐ろしい。彼のようにテレビなどに常に登場して世間に影響力を持っている人間が、このような不適切なことを口走るのは、断じて許せないのである。私(死んだ伯父か?)は大変怒りを覚える。
鬼束ちひろに没入中 11月24日 
 先月末日、鬼束ちひろのほぼ5年ぶりのアルバム『Las Vegas』が発売されました。いや〜、このアルバムが出来るまでが本当に長かった。声帯ポリープ手術に事務所移籍騒動、週刊誌騒動に、本人無視のベストアルバム発売ショック、精神病、挙句の果てに自殺未遂……。もうアーティストとして再起不能かと、一時期覚悟しましたよ。でも復活の日がついに来たのです。
 プロデューサーはミスチル、サザン、マイラバなどでご存知の小林武史氏。会社移籍前の羽毛田丈史氏のアレンジを神格化していたファンも多かったので、どうなることかと固唾を呑んで見守っていましたが、コバタケ氏のもとで、実に繊細でかつ逞しい新しい世界を切り拓いたというのが、正直な私の感想です。素晴らしい。
 この半月、鬼束嬢の渋くなった歌声に魅了されて聞き入っていたのですが、そろそろなんだか歌詞の分析などしてみたくなりまして、ちょっと沖縄行きの荷造りの手を止めて、ひさびさ、日記の更新と相成った次第です。
 先行して二枚のシングルが出ていますが、今回のアルバムのメインは「Angelina」という現在の心情を吐露するかのような名曲。本人のコメントなどによると、この曲は彼女がハタチの頃に書いた原曲があるそうで、タイトルのアンジェリーナは、佐野元春のアレではなくて、映画「17歳のカルテ」だか「悲劇のスーパー・モデル」だかのアンジェリーナ・ジョリー(ブラピ夫人!?)にインスピレーションを与えられたそうな。
  ♪隙間を埋める花々(はな)が欲しい/満ちても麻痺するばかりじゃない/
    私はまだ死んではいない/死んではいない(全歌詞はこちら
 「死んではいない」の言葉がチェロとピアノの重々しい伴奏でリフレインされて、ある種荘厳な雰囲気さえ醸し出していますが、2004年の活動停止前の最後のシングル「育つ雑草」では、こんなことを言っています。
  ♪経験を忘れる 育つ雑草/気分は野良犬/綺麗だと何度でも言い聞かせて/落ちるように浮き上がる
    これじゃ始まりも終わりも無い/気分は野良犬/私は今死んでいる(全歌詞はこちら
 騒動の渦中のあの頃は、まるで生きながら死んでいるようなヤケクソの気持ちだったことがよく判りますね。しかもこの「雑草」がキイワード。2001年のNYテロ事件を予言したと言われる衝撃的な「infection」から。
  ♪「何とか上手く答えなくちゃ」/そしてこの舌に雑草が増えて行く(全歌詞はこちら
 雑草はまさに衰退と死の暗喩。雑草でない花を欲する今の彼女は、病や死への衝動を乗り越えつつあるのでしょう。もちろん、そのような暗部が彼女の歌からなくなることはあり得ないでしょうが、実生活をも破壊するようなスランプはもう去ったのだと思いたいものです。
 まだ鬼束嬢は27歳になったばかり。だのに、こんなに含蓄に富んだ晦渋な詞を得意としているのですから、たいしたもの。これからもますます没入してしまいそうです。
 思えば金曜ナイトドラマの「TRICK」で「月光」を知って衝撃を受けてから、随分経ったなあ、としみじみ思いますが、まだアーティスト生活10年にも満たないのですか……そうですか。私の意識の中ではみゆき様に次ぐ「ニホン語の達人歌手」という位置づけなんですが、多少アレンジや歌唱法が変わっても、この歌詞がある限り付いて行こうと思わせる罪な人ですね。
羊肉でモンゴリアン・チョップ! 10月6日 
キュウリサラダ。モンゴリアン・
チョップで叩き割られてます(笑)
牛乳酒。炭酸のないカルピス・
サワーのような感じ。薄甘い。
モンゴル小籠包「ボーザ」。
汁がじゅわっと出てきます。
モンゴル・ビール「チンギス」。
ヨーロッパのビールみたいな味。
羊の旨煮「チャンスンマハ」。
塩だけの味なの?うっそ〜〜〜!!
この店の名物「行宮焼ホルホグ」。
肉に味が染み渡り旨すぎる…
ヨーグルト「アイラグ」。わりと酸い。
一口啜ると大草原が眼裏に!
雑居ビルの奥にある入口の看板。
飾り気なくひっそりとたたずむ。
 大相撲で一大勢力となっているモンゴル出身の力士たちが、スタミナ補給に来るという、モンゴル料理。それは如何なもんか、と相方と食いに行ってきました。
 昔、絵本『スーホの白い馬』を読んで、楽器になった愛馬の運命に涙した子供だった私は、さて、モンゴルというとその程度の知識しかないのですが、色んな国の食べ物に興味があるので、楽しみにしてました。
 池袋の「故郷(ノタガ)」。この店は前々からチェックしてたのですが、あの朝青龍関もモンゴルへ帰ってモンゴル飯食べて元気になったというし、それなら我々も元気を貰おうじゃないの、ってことで。
 北口の歓楽街を抜けたビルの奥に店がありました。こじんまりとした店。飾り気のない店内。先客は何やら聞きなれぬ言葉で店のお姐さんと話してます。ネイティヴの方が来る店は期待大ですね。
 お通しの薄甘いクッキー(?)も、かすかに羊のバターらしい香りが漂って、羊好きの我々は上げ気分。相方と、今日は羊をどっさり食うぞ〜!と気合入っています。
 まず飲み物を頼みました。私は牛乳酒。度数が色々あって、ま、最初ですので一番度数が低いのを。相方は生中。牛乳酒は薄っすら白濁してカルピスみたい。味は乳清の甘味。空きっ腹に沁みるのなんの。
 つまみに頼んだキュウリサラダは、叩き割った断面ににんにくが沁みて、酒の肴によろしい。
 羊の塩煮「チャンスンマハ」が出されて、骨どかーん、肉どどーん、のワイルドなビジュアルに、まるで、キラー・カーンからモンゴリアン・チョップを脳天に喰らったアンドレ・ザ・ジャイアントのような衝撃を受けました(笑)。
 ガマンしきれず、肉を口に運ぶと、旨味と羊の脂の味と素朴な塩が口腔に広がり、腹ペコさんにはゴチソウでした。もの凄く高級なコンビーフって感じかな。あっと言う間に食っちゃったよ。そのうちモンゴル・ビールもやってきて、酔いそうなイキオイ。
 次に蒸し餃子「ボーザ」が登場しました。これがまたアツアツを頬張ると、中から熱い羊汁がじゅわっと出てきて、ウマイ。肉汁はあくまで羊味。私は不覚にも餃子を箸でつまもうとして、汁をぷちゅと出してしまいました。
 そしてついにメインの「ホルホグ」がどどーんと出てまいりました。芋〜!ニンジン〜!羊〜〜〜!!!さっきの「チャンスンマハ」と違い、軽く煮汁の色がついたうまそな肉。ほろほろと崩れるほど柔らかくて、羊が生きていた時に食んだ草原の草の香りが、鼻腔を駆け抜けます。そうよ、この味、覚えていたわ、私、前世はモンゴルの羊だったのよ、ってくらいにデジャヴな味〜。
 もうけっこう肉で腹いっぱいだったけど、食えたね。前世がモンゴルの羊なら共食いだが、そんなことどうでもええやん、とはぐはぐと羊を食べまくりました。ずいぶん食ったメ〜〜〜!!!
 皿を下げる時、お姐さんが骨についた肉を見て、「モンゴルだったらこの肉も綺麗に食べます」と言うので、食われた羊に感謝しつつ、歯でこそげて食べ尽くしました。
 最後にヨーグルト「アイラグ」を飲んで締め。プレーンとオレンジミックスと二種類頼んでみたら、相方はプレーンはちょっとダメ。羊の乳なのか、塩味がして酸味もあり、ほんとのヨーグルトでした。コンビニで売ってるヨーグルトとは名ばかりの砂糖の塊より、ゼッタイ身体にいいでしょうねえ。口に含むと、まなうらに大草原が映りました。「ゲルも見えてるか〜」と相方が茶々を入れますが、ほんとに大草原のテントと、広大な草原に馬や羊が散っているのが見えました。見えたの。嘘じゃないって。脳内に馬頭琴の悲しい調べが…。す、スーホっ??
 もう満腹で他の料理にチャレンジできなかったので、お会計の時にお姐さんに気になった「モンゴル茶漬け」のこと聞いたら、前のお客の食べ残しを出して見せてくれました(笑)。おおらかだねえ。
 羊好きにはたまらん店です。また来ようね、と言いながら店を後にしました。羊食いすぎで、マザー牧場で羊の群に囲まれてリンチ喰らってもかまうもんかい!
 ところで、キラー・カーンって怪しげな辮髪だったけど、あれって日本人だったの?