『ナルニア国』再訪 6月9日 
 昨日『ナルニア国物語 第2部 カスピアン王子の角笛』を観てきました。二年前の第1部の時もここで取り上げているので、今回も。
 観終わっての感想は、戦闘場面などもう子供向けディズニーではない、というものでした。それくらい、迫力ある映画に仕上がっていました。ハラハラドキドキ飽きさせることのない、ある意味、原作の牧歌的雰囲気を離れたエンターテイメントですね。原作はさほど戦闘場面に頁は裂かれていなかったはずですが、映画はある意味、クライマックスに次ぐクライマックスで、目が離せませんでした。
 さて一番問題の改変はなんと言っても、タイトルロールのカスピアン王子。もともとは13歳の少年の設定だったはずが、背が高くりゅうとした、顎がケツの如く割れた、とんだイケメソに…。カッコ良すぎですわ。英国の無名新人、ベン・バーンズ君なる者がカスピアンを演じたのですが、こりゃー、全世界で人気が出そうな感じで、カスピアンが引き続き主人公の第3部の『朝びらき丸、東へ』も、もはや映画化決定したようなもんですなあ。もしかしたら、第3部には登場しないはずのペベンシー兄弟の長女スーザンまで登場するかも……この予想が当たったら、皆さんなんか私に下さいね(笑)。
 第2部は、第1部より数百年経ったナルニアが、テルマール人なる「人間」の侵略で魔力を失い荒廃しているという舞台設定。テルマールの正統な皇位継承者カスピアン十世王子が、父の九世を殺して王位を奪った叔父ミラースの刺客から逃れて、ナルニアの森に逃げ込むところから話が始まります。シェイクスピア書くところの、ハムレットと叔父クローディアスの時代からさんざん使い古された血族の因縁譚ですが、そこに、角笛で呼び出されたかつてのナルニア王である四兄弟が絡むのがミソ。
 四兄弟は長期休暇が明けて寄宿学校へ戻る途中の駅でナルニアに引き戻されて、最初は大喜びなのですが、ただならぬナルニアの荒廃ぶりにこれは何かあったのか、と探索に乗り出すのです。
 前回から一年後の出来事で、四兄弟もそれぞれ、ナルニアで成人した記憶を胸に秘め、まだ戦時中の実世界でも成長のあとが見られます。しかし現実に馴致して大人になりきってしまうと、パラレルワールドであるナルニアにはもはや呼ばれることはなくなってしまうというジレンマもあります。この辺が、三大ファンタジーの中でも、まるきりの異世界である『指輪物語』や『ゲド戦記』との違いでしょうか。大人になると失われてしまう国ナルニアは、言語学者として有名だった原作者C・S・ルイスが、唯一、子供たちのために書いたノスタルジーと冒険に溢れた桃源郷なのです。
 前作に引き続き『ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)』の特殊効果を請け負ったWETAが全面的に協力しているので、CGで作り上げられたナルニア住人たちの姿はまさにリアルそのもの。中世風の戦闘場面は先にも言いましたが、すごい迫力で、手に汗握りますね。こないだ観た『ライラの冒険』はちょっとその辺りがご予算的にアレでしたねえ。ケンタウロスやミノタウロス、パンやドワーフ、ネズミなんかが大活躍です。特にネズミの大将リーピチーフは、次作『朝びらき丸、東へ』でも活躍しますので、憶えておいて損はないっすよ。
↑ケツアゴ王子役
ベン・バーンズ
 原作では、ナルニアの創造主、ライオンのアスランはわりと早い段階で四兄弟の前に姿を現し共に行動するのですが、映画では最後の最後まで引っ張って、さながらデウス・エクス・マキーナ(機械仕掛けの神=オペラやギリシャ劇で最後の場面に機械的に登場して事態の収拾を図り悲劇を大団円に導く役割)として降臨したかのようでした。これはこれでヨーロッパ演劇の長い伝統に基づいた展開ですので、うちの相方みたいに「もっと早くにアスランが出てきたら戦争にならなくて済んだんじゃないか」という感想をお持ちの方、ひらにご容赦を。
 ちなみに相方はカスピアン王子役のベン・バーンズが、TOKIOの長瀬に似ているとのたもうてます。私はあんまり似てないと思うんですが…どっちにしろ、ケツアゴ((C)ぢごくみみ)のイケメソ王子、これから人気出るんでしょうなあ。
 第3部『朝びらき丸、東へ』は、ナルニアの東の海に浮かぶ離れ島諸島を舞台に、ミラースの陰謀で追い払われた父王の側近7人の卿を探す、一大海洋冒険譚です。これはもう是非とも映像化してもらいたいものです。それを楽しみにしています。ケツアゴ王子もまあ、楽しみか(笑)。
ドラマ『BONES』が面白い 5月15日 
 GW中からパソコンの取替え作業で大変だったのだが、ようやく、HP更新できるようになりました。古いPWが記された紙を、泣く泣く探した日々でした。
 とか言いつつ、しっかりと好きなドラマのDVDは観てるんだなあ。アメリカ産の鑑識ものドラマ、と言や、『CSI』とか最近流行ってたけど、その流れを汲むオシャレ系グロドラマで今はまっているのが『BONES―骨は語る―』です。なんだか骨ミステリ言うたら、私の大好きなスケルトン探偵ギデオン・オリバーのシリーズ(作者アーロン・エルキンズ)を思い出しますが、こっちはもっと生々しいのです。ギデオンはあくまで人類学者なので、骨は古ければ古いほどよいのですが、『BONES』は、FBIに協力するジェファソニアン(スミソニアンのもじりだろ)博物館の特殊チームが活躍する話。
 そのチームを率いるのが、ヒロイン、テンペランス・ブレナン博士。個性派揃いのチームを牽引するだけの逞しい女傑ですが、FBIから派遣されてきたブース捜査官と性別を超えた相棒バディに…。この男女バディ・ドラマ(ムービー)ってのも、アメリカさんは好きですね。私がかねてからはまっていた『Xファイル』なんてのもモロこのバディ・ドラマでしょ? しかも、今回の主人公も、過去に両親が失踪しているという、シリーズ全体を覆う謎を抱えているのです。まるで妹をUFOに攫われた誰かさんそっくり。
 このテンペランス・ブレナン、実は、キャシー・レイクス(キャスリーン・ライクス表記もあり)というベストセラー作家の書いている、人気シリーズの主人公なのですが、小説から主人公の名前と職業だけを借りた、作者公認の別物なのです。原作者の本は日本でも、『既死感』(角川文庫)、『死の序列』(角川書店・絶版)、『骨と歌う女』(講談社文庫・絶版)が翻訳されてはいるのですが、本国ほどの人気はいまひとつ出ていません。私もドラマのクレジットを観て、はじめて、ああ、そう言えばそんな作家いたっけ、と思い出したくらい。
 シリーズの読者であれば、もしかしたらこの改変を許しがたいと思うのかもしれませんが、幸い、今回は原作は私の与り知らぬ作品だったので、全く白紙の状態でドラマに没入できました。
 骨ね…。要は、顔の判別も出来ないくらいの状態と化した被害者たちの代わりに、犯人と戦うのがチームの使命なのです。人間骨になってしまえば皆同じに思えるのですが、最新の鑑識技術と学者の鋭い洞察で、白骨が言葉を発し、歌い始めるのです…。昔なつかし、オースチン・フリーマン描くところのソーンダイク博士シリーズの、大変有名な短編集『歌う白骨』が想起されます。今では古色蒼然としたソーンダイク事件簿も、その時代には最新の鑑識技術で、骨に歌を歌わせる奇跡を見せてくれたのでした。そういう意味では、この『BONES』も間違いなく、本格ミステリのアップトゥデイトな発展形と言えましょうか。面白いです。
 なんだか、本格ミステリのひとつの流れを力説して語っている結果になってしまいましたが、フリーマン→エルキンズ→『BONES』と来た流れは悪くないですよ。日本の二時間サスペンスでも近頃は、上野正彦(『死体は語る』)博士の原作の鑑識ものとかやってますが、ああいうの好きな人におすすめです。ちょっとグロっぽくて、知的で、こじゃれたドラマ、そんな感じ。気軽に見られるミステリドラマで、楽しいです。
 ホネついでに、エルキンズも、現在早川書房から『古い骨』以降、『骨の城』まで12冊、翻訳されていて、どれも、骨にまつわるうんちくと世界の各地で事件の起こる観光ミステリの味わいたっぷりで、楽しいです。かつて英国のパトリシア・モイーズ(『死人はスキーをしない』『沈んだ船員』『ココナッツ殺人』などなど)が得意とした観光ミステリが、現在でも生き残っているのが嬉しいです。