那須野妖狐紀行

第三夜 お猿の愛らしさにメロメロ

 那須第二日目はこうして、雨男の呪いの中に始まったのですが、泊まった「おおたか」さんで気の利いた「温泉ホッピングチケット」をいただいておりました。有効期間中に使うなら、那須、板室、塩原の指定された宿の中から、それぞれ一軒づつ、立ち寄り湯ができるというなかなかステキなチケット。それぞれの温泉の泉質の違いを肌で味わってもらうためのチケットですとな。ブラボー!早速、那須湯本の「中藤屋」で使わせていただきました。
 湯本の町は、湯川の流れに沿って山から麓へ流れ下るように旅館がぎっしり並んでいて、傾斜のきつい一本道の街道を車がけっこうなスピードで飛ばしてきますので、途中の旅館に車で入るのが難物だったりしますが、それでも、立ち寄るだけの魅力はありますよ。
 中藤屋さんは老舗で、なんだかいい感じの鄙び具合で、立ち寄り湯の時間に少し早かったので、中で待たせてもらいました。実は宿泊先をいろいろ考えていたとき、ここも候補のひとつだったのですが、まあ、湯本の硫黄泉は鹿の湯で充分だろうと思って、大丸のほうにしたのですが、やはり硫黄のお湯は肌に効きますね。とぅるとぅるになります。あらほーのおっさんがお肌つるつるさせても空しい気もしますが、がさがさよりはいいでしょう。
 立ち寄り湯一番乗りと思ったら先客がおりましたが、どうやら従業員だったようで、すぐに出てしまいました。おかげで、鹿の湯では撮れなかった白濁のお湯をここにパチリと収めております。
 窓の外は民宿街、その向こうに紅葉が見えて、露天ではありませんが、風情は満点でした。鹿の湯から源泉を引いておりますが、多少は温度が下がるのか、相方もゆったりと入れるくらいの適温でした。もう、とろけるまで浸っていたいくらいです。
 チケットは来年3月いっぱいまで有効。板室と塩原と、それまでに訪れてみたいな〜〜〜。


 山を下って私たちは、南が丘牧場に行きました。生乳で作ったソフトクリームを湯上りに食したい、と思ったからでした。ここはまあ、なんというか、入るのにお金は一切要りませんが、さほど広くない敷地内に観光客のケツの毛まで抜くがごときお店の数々が、口を開けて待っておりました。さながら食虫植物の群生。お客はもちろんそこをふらふらと行き過ぎるハエ?日曜日だったので、犠牲の虫のみなさんがてんこ盛りでした。入場タダ、の言葉に眩んで、財布の紐が緩くなっていらっしゃる(笑)。
 ソフトは濃厚で旨かったです。ここでニジマスやジンギスカンを食いたい衝動を抑えつつ、御用邸を見に行きました。あ〜、あぶねえな、南が丘牧場。
 御用邸はさすがにかなり手前から立ち入り禁止線が張られておりまして、門構えすら拝めなかったのですが、街道に戻ったところのコンビニで栃木名物「レモン牛乳」を購入しました。
 前日も栃木県内のSAなどで探したのですが、道路公団が締め出しているのか、このホンモノはまるで売ってなくて、違う会社の「おいしいレモン」ばっかりでした。
 前日飲んだ味を思い出しつつ飲んでみると、なんかこっちのほうが香料が多いような。ん〜…お部屋の芳香剤が牛乳に間違って落ちたかのような…。つまるところ、「おいしいレモン」のほうがオイシかったかも、と相方も言っております。
 まあこればっかりは人の好みの幅ですね。
※ 最初「おいしいレモン」を「レモン入り牛乳」と間違って記していました。相方からの指摘があったので訂正がてら、なんとなく気になって調べてみました。よく見りゃ、この画像に写ってるのも「レモン牛乳」ではないのですね。「関東・栃木レモン」…なんと生乳100%ではないために、かつて親しまれていた「レモン牛乳」を、2002年から名乗れなくなっているそうな。馬鹿だろ行政!U字工事もテレビで怒れよ〜。


 そうしてああだこうだと言いながら、最終目的地の「那須ワールドモンキーパーク」を目指したのです。ところが、街道を外れ、りんどう湖を越えて、行けども行けどもなかなか着かない。看板だけは絶えずあるんだけどね。行楽の楽しい気分が不安に押し潰されそうになる頃、ようやく、間道に「モンキーパーク入口」の看板が。そして、農道を走ること数分、ようやく街外れのゴルフの打ちっ放しみたいなところに、モンキーの園が。しかしここ…野○ボ?
 ここねえ、はっきり言って、立地判り辛いです。りんどう湖にやって来たファミリーがついでに寄りたくても、途中で不安になって引き返してしまいそうな。しかもけっこうな入場料を取ります。大人お一人様、2600円!豪気ですな。系列の「那須サファリパーク」の1000円割引券がついてはいますが、それにしてもねえ。入場タダの南が丘牧場の後だけにね。
 あちらは確かに、湯本の町と「サファリパーク」や遊園地「那須ハイランド」の中間にあって、立地条件がたいそうよろしいのですが、正直コンセプトの見えない名前だけの「牧場」です。こっちはお猿に特化した冒険的テーマパークですが、おサルの園は全国ほかにも、愛知県犬山市の「日本モンキーセンター」などありますので、人気がないわけではないと思いますがね。
 しかも客ぜんぜんいねっ!いくら雨もよいとは言え、行楽シーズンの日曜のまっぴるまの、人気観光地なのに…。大丈夫か?おでむかえのゴリラひとりが、うほうほと強気な感じです。
 土用波のように襲い来る不安と戦いながら入場しますと、いきなりメインの「サル劇場」で「モンキーパフォーマンス」が始まるとか。急いで階段を上ってカーテンをくぐると、…やっぱり客少なっ!
 劇場の客席は前のほうにちらほらと家族連れとかがいるだけで、これはやばいかも、と思いつつ、腰を下ろします。すると間もなく、ブルドッグの新人さんと野良猫だったという猫の障害物競走が…。足の短いブル君が、よちよちとレンガを飛び越える健気さに涙ぐむわたくし。門前に棄てられていた野良猫をパフォーマンスに参加させるとは、なかなかコストパフォーマンスが素晴らしいかも。
 続いてオマキザルのマーガリンちゃんが登場、トレーナーのおねえさんの言うことを聞いてんのか聞いてないんだか、多動児っぷりを発揮しつつゴミの分別に成功。
 ニホンザル(名前忘れた)の空中ジャンプショーがあって、ようやくチンパン登場。でも昔テレビCMに出演していた人気スターのスモモちゃんではありませんでした。妹分のボタンちゃんとか言ってたなあ。
 ショーの内容は可もなく不可もないのですが、MCでトレーナーさんが、「入場料も高いし、入場者数も減ってるんです」とか、ギャグでも言わないほうがよろしいかと。引き攣ったような笑いとともに、お客さん、ドン引きでした(泣)。


 サル劇場のあとは、園内をあちこち散策しました。が、どこに行ってもなんか薄ら寒い…。秋の哀しい雰囲気に、もののあはれを味わえますなあ。特にサル山。寒空に身を寄せ合うニホンザルたちの姿に、昨今の不況に揉まれてひっそりと身を寄せ合うわれわれ自身の姿が重ねられて、思わず落涙。「しのぶべき人もなき身はある時にあはれあはれと言ひやおかまし」なんてね。
 さて、そんな意気消沈した気持ちをぶっ飛ばすのが、サルとのふれあいコーナー!
 このために相方はわざわざ私の分までよれよれのウィンドブレーカを持ってきておりました。さすが、焼き牡蠣食うときビニールの手袋を持参した周到なお方です。サルが乗っかるので服を汚されないように、だそうです。お見事。
 リスザルのケージの中で、お客さんはみな、頭の上にサルがてんこ盛りになるという、あり得ない体験をします。リスザルの餌になるひまわりの種を幾らかで購入して入ると、もう大変な歓迎っぷり。身軽なリスザルたちが頭の上から上へとぽんぽん飛び移る様子は、子供でなくても童心に帰って楽しめます。かわいいけどなんか意思の疎通あるんかいな、と思っていたところ、さも、餌を握っているかのように掌をこぶしにしていると、サルたちがわらわらとたかってきました。あっという間に肩から上はサルまみれ。
 えへへへ、持ってると見せかけて、実はないんだよーん、と掌を開けますと、とたんにサルたちは飛び散っていきました。飛び散りざまに「キャッ!!」と怒られてしまいました。騙してすまんな、サル。
 その隣、エリマキキツネザルのケージに入りますと、こっちはなんだか動きがスローながら、餌だけで人を判断するような現金さとは無縁で、癒し系のサルでした。ただ、私の肩に一匹が飛び乗って、そこをカメラで撮ってもらおうとしていると、いきなり、ヒトの耳の穴をベ〜ロベロ舐め始めました。ななななな、なんだなんだ、こいつ、耳舐め攻撃とは、予想外。くすぐったくてウヒャウヒャもだえてしまいました。温泉の塩分でも残ってたんでしょうか。おいしかったのでしょう。サルの舌攻撃なんだか気持ちえかったりして(恥)。
 その奥のワオキツネザルはなんだか動きがなくて、無愛想。なんだか人馴れし過ぎていて、オヤヂのように前をどーんとほりだしたまま、木の股に座っていました。ちっとは愛想振りまかんかいコラ、とかまいに行って無視されました。


 ケージの外にもおサルさんはおりまして、ベンチのところにウーリーモンキーがいました。だっこをねだってしがみついてくるのですよ。つぶらな瞳でじっと見られると、おっさんであっても思わず胸だしてチチを与えたくなるくらい、可愛い。長ーいシッポの内側がぷにぷにとしていて、手のようにものを掴めるようになっているのでしょう。そのシッポもくるくると腕に絡ませてきたり、もうたまらないくらいかわいいですね。生後二歳くらいでしょうか。顔も表情豊かで、人間の赤ちゃんより可愛いかもしれません。
 ウーリーちゃんの虜になった相方が、めろめろになりつつ、ケータイで撮ったのが左のベストショット。他にも撮ったのですが、これが一番かわいい表情をしています。たぶん、相方は、このケータイ画像を取り出しては、ウーリー君のかわいさを思い出して涙ぐんでいることとお察しいたします。
 昔、故マイケル・ジャクソンさんがチンパンのバブルス君を飼っていて話題になりましたが、ほんと、おサルさんはかわいい。人間のクソガキなど毛頭かわいくもなんともありませんがね。なんだかすっかりサルをペットに飼いたくなったわたくしたちでした。


 寂れ放題とか悪口言ってましたが、なんだか最終的には非常に満足して、モンキーセラピー成功です(笑)。遅めの昼にジンギスカンを「サッポロビール 那須森のビール園」でガハハと食べ放題しましたが、さっきのサルのてんこ盛り(&耳舐め)がさすがに気になって、またもや温泉に浸かる事に。「日帰り温泉 源泉那須山」というスパ銭っぽいところに寄りました。ここも温泉はよくって、身も心もとろけました。温泉さいこうです。人間は温泉に入り浸るサルだったのですね。…ってどんな締めくくりじゃ。地獄谷のニホンザルかよ。
 狐で始まり猿に終わった那須紀行でした。その後、すっかり温泉中毒になって、うわ言のように「温泉入りたい…」と毎日呟いているわたくしです。われわれのすさんだ日常に欠けているもの、それは温泉とサルです(笑)。だからみなさんもぜひ、那須へ行かれた折は、「ワールドモンキーパーク」でおサルに触れ合ってみてください。多少の入場料の高さはあっという間にチャラになりますから。
 といいますか、本気であの寂れ具合は心配になります。たくさんいるおサルさん―かわいいのもかわいくないのも含め―たちの居場所をなくさないためにも、ちょっと那須インターで降りたら、サルの園に行ってみてはいかがでしょうか。個人的には、ロープウェイとか一回で充分だけど、また温泉に浸かって最高級の肉食ってウーリー君だっこして癒されたいなあ。

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