幻想ミステリ博物館館長日記 特別編 沖縄じゅうしい紀行(三) 2014年2月14日

ローカル・フード骨汁

 いろいろな汁が沖縄にはあるのですが、とりわけ興味をそそられていたのが「骨汁」です。ホネのシルって、九州ラーメンのトンコツ・スープと同じものと思いきや、違うんですねえ。事前に調べたところ、沖縄本島の中頭(なかがみ)地区にこの汁を出す食堂が多いとか。すなわち、ローカル・フードの王様、隠れ名物!

 沖縄本島をライフルに見立てると、その弾き金に見える勝連半島の根っこ辺り、沖縄市・うるま市に骨汁を出す店が集中しています。なぜこの辺りに骨汁が多いのか、ざっと調べてみたものの、理由は分かりませんでした。北部の山原(やんばる)地区に比べるとなだらかな地形が多いので、家畜産業が盛んだっかからかもしれません。豚の骨を沖縄そばの出汁にしたあとの部分を食べ尽くすようです。

 骨汁とは、主に、豚の背骨まわりの肉を塩味か味噌で煮込んでトロトロにして、それを汁ごといただくというワイルドな料理で、まさかの骨を喰う訳ではありません。骨に残った肉をこそいで喰うのです。韓国料理の「カムジャタン(甘藷湯)」にも似ていますが、あちらはその名の通りジャガイモを入れるのが一般的ですが、こちらは芋は入らないようです。とは言え、店によってバリエーションがあるのでわかりませんが。

 相方が下調べで店を厳選して「ここがええ」と決めたのが、沖縄市コザのグラウンド通りにある「グランド食堂」。二日目のお昼前に着くように那覇をレンタカーで出ました。おもろまちでレンタカーを借りる時、ちょっと迷ったので時間をロスするかと思いましたが、無事開店直後に着きました。しっかし、ここの店の駐車スペースの難易度の高いこと! 路駐はあんまりおすすめしませんし、車で行かれる方はお気を付け下さい。

 いざ入って見ると、地元の人の憩いの場らしい食堂です。車を停めるのに手間取っていて先客に先を越されましたが、二番手で入ります。メニューは壮観。しるしるしるしるしる〜〜〜〜!!!(イントロの章で載せた画像の右のほうがこちらのお店)。

 その中でもイチオシがやはり骨汁のようで、有名人の色紙にも「骨汁美味しかったです」などと記されていて、いやが上にも期待が膨らみます。ただ問題は、我々が車で移動できるのは本日日曜のみなので、今日の日中にもう一か所食堂を廻る予定。だから、おばちゃんに「代金そのままでいいんで、ゴハン抜きにして下さい」とお願いしました。こちらのわがままを、気前よく聞いていただけました。いざ来てみると、ゴハン抜きでなぜか漬物が添えられてました。お口直しかしら。

 そして数分、運ばれてきた骨汁が圧巻の…え? レタスてんこもり? くたっと煮られたレタスの下に紛れもない骨発見! バラバラ事件の始まりです。ブースっ、ジェファソニアンに連絡よっ(『BONES』の見過ぎ)! …豚だからね、いいんですよ、鑑識課呼ばなくても。菜っ葉の下にごろごろ入った骨がまさに偉容(異様…ではないと思います。だって見るからに美味しそうだから)。

 汁は味噌仕立て、野菜の旨味が溶け込んで、豚の脂っこさをいっさい感じません。むしろ思っていたよりもさっぱりしていて、これはどなたでもペロリと平らげられます。レタ山の天辺に乗った山盛りのおろし生姜がまたいいわ〜。汁に溶かして啜ると、さらに爽快感が増します。デフォルトのゴハンを頼めばよかったかな〜と少し後悔しましたが、まあ、体のことと腹の容量を考えて我慢しました。

 肉の部分はそんなにたくさんありませんが、肉を食べたきゃステーキハウスでも行きますよ。ここへは骨汁を食べに来てるんです。骨のまわりに残った肉をこそげ落とし、ちゅうちゅう吸い、しゃぶり、そしてドンブリの中で憩う野菜たちを美味しくいただくのです。冬瓜がとろとろに溶けていて、旨いねえ。レタスのシャリシャリがちゃんと残っていて、食欲を増進させます。骨汁にたっぷり野菜って、けっこうヘルシーなのでは?

 これは夢中で食べました。ホテルの朝食をセーブしてパン一個とかで備えていたので、軽々といただきました。こんなワイルドなようで繊細な食べ物、家で作りたくても材料がそうそうないです。やはり沖縄のこの地方へ来ないと食べられない。こうなるとこのグランド食堂さんの他の店も気になりますね。味付けが塩味の店もあるようで、シンプルな料理なのに意外と奥深くて、シルの奥義を垣間見たような、そんな気がしました。テビチもナカミもいいけど、骨はええダシ出てまっせ、ホンマ。

 店を出ようとする時、別のお客さんに運ばれてきた中身汁が、ドンブリにきらきらと輝いて見えて、次はアレを食べたいと思うのでありました。汁は煩悩深いです。
First Juicy Third Juicy

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