台湾ザオファン紀行(二) はじめての夜市 2010.6.4

 台北に着いた夜、初めての「夜市(イエシィ)」に行きました。お昼の便で成田を発ったので、桃園到着が夕方、台北入りは結局夜になってからでした。晩ご飯は夜市で、ということです。
 週末ではないこともあって、人出がさほど多くないだろうと、かの有名な巨大夜市「士林(シーリン)観光夜市」に行きました。
 ホテルを出て最寄りの「捷運站(地下鉄の駅、MRTとも言う)」でイージーカードなる、JR東日本のSUICAみたいなプリペイドカードを購入し、意気揚々と夜市へ。劍潭駅で降りて、目の前に明々と賑わう夜市へ。ここは「美食廣場」なる食べ物屋ばかり集めた巨大フード・コート。平日の夜なのにえっらい人出。混沌の巷から立ち上るのは、嗅いだ事のない異邦のかほり。正直、まだ着いて数時間だし、馴れていないので、びびりました。
 それでも勇を奮って人をかき分け、市場の中へ分け入りました。みんな、なにやら汁物やら麺やらご飯ものやらを、わっしわっしとせわしなく口に運んでいて、生理的欲求のままに啖っているがごとき形相で、それも私をびびらせるのに充分でした。
 正直ね、この士林の夜市は畏怖を感じるけど、翌日訪れた、ホテルの近所の寧夏路(ニンシァル)の夜市の、家庭的なほのぼの感はありませんでした。天下の一大フード・コートとしての気負いというか、観光客の客引きに必死な、どこぞの温泉街を彷彿とさせます。
 店同士の客引きもなかなか熾烈なようで、我々が座った店のテーブルには二種類の價目表(値段の載った書き込みリスト)があって、片方の表にビールを書くと、やって来たおばさんが、こっちの表にも同じのがあるから書きなおせ、みたいなことを言うので、書きなおす。それぞれが別の店のものだとわかったのは、勘定をする時で、なんだかなー、という気分でした。
 従って、料理もふたつの店の料理が並ぶこととなったのですが、全然分からずオイシク頂きましたね。今でもどっちがどっちのものだったのか、判然といたしません。
 画像にあるのは、左上から順に、檸檬愛玉、十全羊肉、魯肉飯、臭豆腐、紅油抄手、そして豚の脳みそ入り麺、です。
 この中で愛玉はまたの機会で、豚脳は別の店でわざわざ探して食べたのですが、はっきり言って味が薄くて、なんだかぼやけた感じでした。台湾はどうやら味がわりと薄味で、こと、このトンノーに関しては、塩か醤油を多少垂らして食べたかったです。お脳じたいは、ふわふわとした白子のような触感で、臭味もなんもありませんでした。
 あと特筆すべきは、夜市のアイドル臭豆腐。豆腐を干したものを、くさや汁みたいな発酵液に漬けて香りを付けた、好き嫌いのはっきり別れるシロモノです。台湾では一般的に油で揚げて甘辛のタレを絡めて、上に酢漬けのキャベツなどをのっけて食すとかで、まさに事前に調査したまんまの品が出てきました。
 夜市に足を踏み入れた瞬間から時折鼻を打つ、納豆のようなウ○コのようなビミョーなかほりも、この臭豆腐のものでした。ああ、この臭豆腐のかほりが、初台湾の我々への洗礼なのだ、と、腹をくくって豆腐を口に入れました。揚げてあるのでそんな強烈に臭いとは思いませんが、やはり今まで食ったことのない、えも言われぬかほりが口腔に広がります。納豆とくさやを足して二で割ったようなかほりです。豆腐自体は厚揚げをさくさくした食感、嫌いではありません。でも、向かいに座る相方は、臭豆腐を一口味わうと、「もういいかも…」と、ぼそり。普段から厚揚げの煮物を常備菜としている私は、臭豆腐、全然OKでしたが、相方はだめだったようです。
 紅油抄手は水餃子の胡麻だれかけで、意外とさっぱりとして、十全羊肉はまんま日本でも馴染みのバクテー(肉骨茶)味、魯肉飯はちょっともの足りない感じでしたが、後日別の場所で食べたときも可愛い茶碗で出てきました。台湾の人に日本の「すき家」の「メガ牛丼」とか見せたらのけぞるかもしれませんねえ。値段はどれも20元から50元くらい、メッチャ安いです。夜市の魅力はこの安さ。
 調子に乗って、士林のもうひとつの夜市へ行こうとしたのですが、我々は臭豆腐のたたりか、それとも朝の埼玉出発以来トイレへ行ってなかったせいか、便意にみまわれ、途中のゲーセンのトイレで、台湾トイレのオソロシサに戦慄することとなりました。ここはあくまで美味しいものの話をしたいので、詳しくは書きませんが、私はあまりのことに泣く泣くホテルへ引き返したのでした。相方はその後予定していた胡椒餅やかき氷が食べられず、ちょっとふくれていました。
 まあ、士林の夜市はいずれ、リベンジの必要があるかもしれません。