拝啓、サンダーボンバーでございます。
お久しぶりです、本当にお久しぶりですね。
もう八万祝いから幾年月経過した事でしょうか。
管理人は何度殴っても殴り足りないぐらいです、実際は雷をぶつけてやりました。

「死ねごぉるぁああああああ!!!」

何 こ の 状 況 。



■クレイジーキャット・ノンストップ■



いや、ねぇ。
毎回の事だがな、毎回の事。
知らんヤツがいつの間にか忍び込んで来て、銃を乱射している訳だ。
なんだって、此処にはこうも侵入者が多いのか。
身内とかバグラー様の関係者だって毎回アポなしで来るから困ってるというのに。
珍客・敵対組織・その他もろもろ、居ちゃいけない人だって平然と来るからもっと困る。
最近はグランのどこで●ドア経由でファイヤーさんが頻繁に来るし。
シロボンなんか当たり前のようにフレイムの部屋に居るし。
ケルトさんも2・3回来てるなチビ二人が連れてきて、MAXと鉢合わせたときもこんな感じだったな。
ちゃんと丁寧に連絡くれるのはハリケーンだけだ、でもあそこもボスは目茶目茶だからなぁ。

「頭痛いな……。」

はい、現実逃避は終了だ。
今まで様々な人が侵入してきた我がシュヌルバルトだが、今回ばかりは性質が悪い。
何せ会話が出来ていないのだ、これは極めて珍しいパターンだ。
妙な反応があると団員たちの知らせを受けて、基地内を調べて回ったらこれだ。

「今日は、何が来たんだ…。」

俺は、いつもどおり。
鳴り止まない銃声の中、穴だらけの天井や壁を見ながら。
ため息を吐き出しながら、頭を抱えた。



   ※



「クロ!クロ!!」

引っ切り無しに響くマシンガン。
空気砲のソレと似た形の武器を前方に向ける。
彼の背後より駆け寄る、彼のよく知る人物の声。

「クロクロクロクロクロォオオ!!!」
「何だよミー君!今良いところだろ!!」

連呼されようと振り返らず、攻撃の手を止めることもなく。
銃声に負けぬ大声で呼び声に彼自身も大声で応える。

「マタタビ君が居ない!!」
「知るか!死にゃしねぇだろ!!」

前進しながら、キッパリ言い切る。

「……此処、何処なんだろうな。」
「宇宙人の宇宙船の中が妥当だろ、サイボーグ猫は宇宙でもレア物なんじゃねー?」
「うーん、これだけ高度な文明ならサイボーグのひとつやふたつありそうだけど……。」

立ち止まった相棒は、ポツリと呟く唯一の心配。

「……ゴー君、ちゃんと朝ごはん食べたかなぁ……。」
「真っ先に其処かよ。」

そこで彼は初めて、ちらりと後ろを振り返る。
はぁとため息をついて体育座りをしている腐れ縁の姿を見やり、自分もまたため息を漏らす。

「つかよ、そろそろ参戦してくれよミー君。いい加減弾切れ間近なんだけど。」
「なんでそう無計画に武器使うかなぁ……だから温存してたけど。」
「ま、長い付き合いだしな。」
「腐れ縁だけどな。」

物々しい場所に似合わぬ、淡々とした会話。
そう、其れが彼らのいつものスタイル。
何処に行こうが誰と戦う事になろうが、彼らは決して自分たちのあり方を崩さない。
とりとめのない問答の後、彼の右手のマシンガンが数回だけ回転した後にぷすんと音を立てて止まる。

「弾切れだ。」

分かりきった事を一応伝え、武器を外して宙に投げる。
カランコロンと、用がなくなった其れが自分が作った瓦礫を転がるのを確認することなく、彼は胸に手を当てる。
するりと、身の丈の三倍はありそうな剣を取り出し、駆け出す。

「援護頼むわ。」
「ウッカリ頭狙うかもしれないけど気にするなよ。」
「一発でも当たったらぶった斬ってやっから覚悟しとけよ!!」



   ※



「なんなんだ本気であの物体は!!」

硝煙と、穴だらけになっていく廊下。
いい加減耳も頭も痛くなってきた。

「サンダーサンダー!おれしゃまアレ欲しい。」

いつの間にかやってきていたフレイムの言葉に、頭痛が悪化する。

「殴られたいかフレイム、そうか殴られたいか。」
「もう殴ってんじゃんか〜!!」

取りあえず馬鹿をいうアホには制裁を下し、俺は攻撃の続くほうを見やる。
よりによって、こんな事態にバズーカ達は帰郷中。
いや、よくよく考えたら特攻しかねないから良かったかもしれない、またシュヌルバルトが崩壊するところだった。
策を練ろうと思案しようとすると、フレイムが声を出した。

「あ、止んだ。」

そこでサンダーは、銃声が止んでいる事に気が付いた。
おそらく、弾切れだろうか。
煙こそまだ晴れないが、侵入者を確認して捕獲するにも倒すにも丁度いい。

「俺が出る、お前はムジョー様達の所に行け。」
「えー…。」
「えーじゃない!!」

不平不満は無視し、俺は帯電し駆け出す。
何者かは知らないが、これ以上好き勝手なまねはさせられない。

「……サンダー、割りとバトル好きだよねぇ……。」

五月蠅い馬鹿。
内心呟いて、サンダーは先を急いだ。



   ※




 ―――――――…一方。

「ヤバいな……完璧にはぐれたか…。」

マントを羽織った猫一匹、THE☆迷子。
片目の彼は頭を掻きながらため息を吐く。
気が付いたらこんな場所に居て、訳の分からない物体を愛用武器で牽制しながら進んでいたら。

「……建物の中だったよな…。」

のどかな青い空に首をかしげる。
方向音痴、では無いはずだ。
けれど紛れも無く此処はあぜ道の上。
さてどうしようかと考えていると、重い足音に振り返る。

「んだ?」
「うっおぉお!!?何だテメェは!!」

見上げるほど大きな未確認生物に彼は身構える。
麦藁帽子を被り鍬を背負った大男は、小さな猫をキョトンとして見下ろす。

「オラはグランボンバーだ。」

誰だ、という問いにグランは答える。

「あぁグランボンバーな、長いからグラで良いかって違う!!一体此処は」
「猫だか?」
「おう、マタタビってんだ……ってだから此処」
「食うだか?」

まったく会話になっていないことに内心焦っていた彼だったが、差し出されたイチゴを見て動きが止まった。

「………頂きます。」

だってお腹すくもんね。



   ※



「ん?」

そこら中に刀傷だらけにしていたクロは、瓦礫と化していく視界の中に人影を見つけ動きを止める。
行方知れずのマタタビではない、勿論後ろから付いてきてるはずのミー君のわけもない。
キラリと輝く刃物のような輝きに、怪訝そうに顔をしかめる。

「なんだあの金ぴか眉毛……。」

この宇宙船の住人だろうか、と、一瞬考えてから身構える。
相手は明らかに戦闘体勢に入っている、何故だか身体全体が輝いているのが気になるが。
クロは剣の柄を握りなおす。
次の瞬間。

「何人たりと此処を荒らす者は容赦さん!!サンダーフォール!!!」

金ぴか眉毛から放たれた閃光に「ゲッ」と一言呟いて横に飛んで避ける。
自分が立っていた場所を通り過ぎていったものを見て、それが電撃であることを理解する。
サイボーグ、つまりは機械である彼にとってこれほど相性の悪い敵はいない。

「あっぶね危ねぇ!!精密機械なんだぞふざけんな眉毛!!!」

クロは、取りあえず攻撃してきた人物に怒鳴り散らす。
宇宙人なので言葉が通じるのか気になったが、どうやら通じているらしく雷眉毛が返事に怒鳴ってきた。

「誰が眉毛だ誰が!!!」
「お前だオーマーエ!!武器だろ実は!飛ぶだろ実は!!」
「飛ぶかぁああ!!!」
「まぁいい、テメェがボスキャラなのは良く分かったぜ宇宙人。その眉毛ぶった斬って突破口を作ってやるぜ!!!!」
「ふざけるな!誰が斬らせるか!!!」

シリアスな空気は、霧散。
眉毛を巡る馬鹿なやり取りをした後、眉毛を斬る斬らないで盛り上がり。
再度クロが駆け出し、サンダーが放電の準備を始めたときだった。

「んだ?危ねぇだ。」

ひょいと、上から声が聞こえると同時にクロの身体が浮かび上がる。

「うっわぁっおぁ!?摘まむな放せテメェ!!!」

長い剣の刃には、無骨な指。
横の道から現れたグランが通り過ぎざまに長剣を捕まえたのだ。
ぶら下がる形になったクロはジタバタと暴れるが、状況をいまいち読めていないグランは首を傾げるだけだった。

「あ、クロ。凄い無様だなー。」
「後で覚えてやがれミー君!!絶対ぶっ殺すからなテメェ!!」

マシンガンを携えて、ププッと笑うミー君に半ば切れたような声音でクロは叫ぶ。
いっそおなかでも抱えて笑ってやろうかと思っていたミー君だったが、突然現れた大男の肩に見知った影を見つけて、呆れたように呟く。

「それより……その人の肩。」
「マタタビ!!テメェ何敵にゴロニャンしてやがる!!!つうか何だ口の周りの何らかの食べかすはぁあああ!!!」
「え、あ、キッド!!?」

言われて視線を向けた先には、見慣れた片目の猫の姿。
クロは長い付き合いのソイツに何があったのか見当は付いたが、直接文句を言ってやる事にした。
ギャイギャイ喚きだした猫たちに、間に挟まれたグランは更に首をかしげる。
が、何かを思いついたのか剣から手を離し、ポンっと手を叩いた。

「友達だか?」
「「友達じゃない!!」」

肩の上のマタタビと、自由落下して地面に墜落したクロの声がはもった。
その反応に対してミー君がまた一人プププっと笑ったが、剣とブーメランを投げつけられたのに気づくと難なく避ける。

「……グラン、そいつをどうしたいんだ?」

一方、やや取り残され気味になったサンダーは、弟を見やりながら尋ねる。
聞けばどうだろうか、真っ黒な瞳をキラキラに輝かせていた。

「飼ったら駄目だか?」
「駄目に決まっとるだろうが馬鹿者……。」

こんな危険生物、絶対嫌だ。
騒がしい猫たちをよそに、サンダーはため息を吐いた。
取りあえず、騒いでいる間に全員とっ捕まえてしまおうか。
そう思い三度攻撃のために放電の準備にかかろうとした時。
彼は、気づいてしまった。


―――――この物語は、そう簡単に終ってはくれないだろう、という事に。


そう、奥の壁から『突っ込んできた』宇宙船を見つめながら、またため息を吐いた。

「「ギャアアアアアアアアアア!!!?」」

そこに居たのは、見知った先輩の姿。

「プラズマさん!?」
「あとプリティのおばさんじゃん。」

目に映った黄色とピンクの二人組の名を叫ぶ。
プラズマボンバーと、プリティボンバー。
凶悪ボンバー五人衆がリーダーと紅一点、合体ボンバー四天王たちにしてみればある意味大先輩である。
呼ばれ方に不服だったのか、コクピットからひらりと舞い降りたプリティはフレイムの真横まで来て。

「失礼でしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

怒鳴った。
大声、とはいえ彼女の其れは常人の其れとは大きく異なる。
簡単に説明するとしたら、某ピンクの悪魔が放つマイク並みの破壊力を誇る全体化攻撃なのだ。
当然至近距離で食らったらたまったものではなお。

「お……おれしゃま……耳死にそ……。」
「女性に向かってそういう事言ってたら、ジェントルマンになれないんだからねー!」

耳を押さえる余裕もなく頭をクワンクワンと揺らすフレイムに、プリティはぶーぶーと文句を喚いている。
ジェントルマンって何だ、ジェントルマンって。
サンダーはため息混じりに、微動だにせずに宇宙船から此方を見下ろすプラズマに声をかける。

「ところでなんで、こんな所に……。」
「ブレインがねー、異世界の人を召喚しててねー、違う世界の人が此処に来ちゃったんだってー。」

応えたのはプリティだった。
だが、その内容は理解しがたい。

「………はい?」

一体この人は何を言ってるんだろうか、サンダーは首をかしげる。
よく分かっていないのはフレイムも同じのようだった。

「だからねー。」
『プリティ、私が説明しますから静かにして下さいよ。』

もう一度1から話そうとする彼女の声を遮る様に、聞こえてきたのは機械音。
厳密にはスピーカから聞こえるような、どこかガサガサと遠い感じの音だ。
だが、このどこか淡々とした敬語にサンダーは聞き覚えがあった。
聞き間違える訳がなかった。

「ブレインさん……。」

ブレインボンバー。
プリティやプラズマ同様五人衆の一員にして、マッドサイエンティストな参謀役だ。
サンダーは、気付かれないように溜め息を吐く。
ここでこう絡んでくる段階で(慣れとは恐ろしいもので)彼こそが元凶なのだろう。

『まぁ、今彼女が言った通りですよ。暇つぶ……様々な人種のデータ採取の為に異世界の住人を転送してみたのですがね、面白そ……ちょっとした手違いでその転送先をソチラに設定されてしまったみたいでして。』

その通り過ぎて、今度はあからさまにため息が出る。
暇つぶしとか面白そうとか言ってるぞこの人。
なんだって自分の周りのボンバーマンはこうもトラブルメイカー過ぎるのだろうか。

「………どうすれば良いんですか?」
『彼らの居場所の座標が分かれば大丈夫ですよ、様はそこに居ると分かったんで得に問題ありません。』
「ですか……。」

よく分からないが、スカーフ二人組が此処に来たから大丈夫という事だろうか、多分。

「なんだ!?ソイツが黒幕か!?」

宇宙船の下から這い出てきたクロが、食って掛かるようにパソコンをひったくる。
どうやらグランが一緒だったおかげでどうにか無事だったらしい。
他の二人も遅れて現れて、マタタビはプラズマに文句を喚き、ミー君はクロをなだめるように肩をたたいた。

「間違ってはいなそうだけど、話を聞いた方が良いみたいだよ。」
『迷惑をかけましたね。』
「謝罪は当然だけどな、んな事どーでも良いから早く帰らせろ。」

珍しく素直に謝ったブレインだったか、しれっとして言い切る。

『あ、それは無理です。』

沈黙。

「「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」」

後に、絶叫。
画面を見ていた二匹の猫の声がはもる。
クロにいたっては真っ白になりかけている。
二匹の背後からパソコンを眺めていたグランが、首をかしげながら尋ねる。

「んだ?なんでだ?」
『いやーこの装置はですね、物体を交換する事で違う世界の人を違う世界に運ぶんですがね…。』

装置の説明を簡単にして、じっくり間を空けて苦笑する。

『向こうに誰が転送されたか、分からないんですよ♪』

笑顔で、物凄く楽しそうにいう言葉なのだろうか、コレは。
一瞬の沈黙の後、クロが目を見開いてパソコンをにらみながら、サンダーを指差す。

「って事はこんな眉毛みたいな危険人物が俺らの世界に居るってのかよ!!」
「眉毛呼ばわりするな!!」

ギャーギャーとまた騒ぎ出す二人に、ミー君は呆れたようにため息を落とすとブレインにたずねる。

「方法はなにもないんですか?」
『送られた場所が場所なんでソチラの方だったりするかなーと思うんですが、誰か居ない人はいませんかね?せめてその見当がつかないとどうにも…。』

うーんと困ったように唸ってるけど何故だろう、なんか全然楽しそうなんですけど。
初対面のミー君も、この曲者な科学者の性格をなんとなく把握していってるようだ。
頭抱えたくなりそうになっていると、そんなミー君の後ろから今の今までずっと大人しかったフレイムが喋りだした。

「はーいはーい!おれしゃま凄い心当たりあるー!!」
「本当かフレイム。」

フレイムは元気よく手を上げて言い、その言葉に会話に戻ってきたサンダーが彼に尋ねる。
フレイムは満面の笑みで、答える。

「MAX見てないよ、あとマーメイドも。」

沈黙。

「手遅れか……。」
「ドンマイだ。」
「何が居るんだよマジで!!何が行ってんだその落胆っぷりはよぉおお!!!」



   ※




 ――――― 一方そのころ、北海道にて。

「ど……どうしよっか。」

小さな子供と丸っこいおっさんが居た。
二人は朝のランニングに出かけた帰り、朝ごはんを作って待っているだろう愛妻(笑)の元へと急ぎ足で帰ってきたのだが。

「凄く恐そうな人だね…。」
「………まさか人間のサイボーグなのか?」

彼らの目の前に居たのはいかにも普通の人間とは程遠い容姿をした謎の人物。
真っ黒いボディに赤い目、雰囲気からに物凄く怖そうで強そうだ。
二人は物陰に隠れて、謎の人物を伺っている。

「どんな技術なのかな?」
「基本は変わらないと思………いやいや、今はそんな事は良いんだ。」

科学者らしい論議を一瞬始めそうになったが、そう、それどころではないのだ。

「………どいてくれないかな……。」

謎の人物が居るのは、彼らの家の屋根(笑)の上だった。
向こうは此処が自分たちの家だとは思っていないのだろうが。
非戦闘要員である彼ら、ましてやちょっと出かけに行っただけで武器などを殆ど持ってきていなかった二人に為す術は無い。
さて、どうしたものか。
丸っこい大人・ゴー君も、小さな子どもコタロー君も、考えは一緒だった。

「「……やりすごそう。」」

とりあえず気付かれないように大人しくしながら、相手が立ち去るのを待つことにした。
だが。
そうすんなりいくほど自分たちの世界が都合よくない事を、彼らは忘れていた。

「クロちゃん何処ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!?」

突撃☆電車一両編成。
二人の真後ろ(直撃じゃなかったのがせめてもの救い)の壁に乗り物がぶつかる。
こんなに豪快な事をやらかす女の子の知り合いは、そう多くない。

「ねぇ!!クロちゃんは!!?クロちゃんは何処ー!!」
「な……ナナちゃん!静かに!!」

そう、ナナちゃんだ。
小さい身体で長い耳や尻尾をブンブン振り回しながら、愛しの人が居ないと大騒ぎだ。

「クロちゃんが何処にもいないの!事件よ!何かまた面倒な厄介事とかに巻き込まれたか飛び込んで大暴れしてるのよー!!」
「落ち着いてって何で静かにしろって言うのに余計に騒ぐかな!!」
「ふ…二人とも!!」

いつもの(ツッコミ兼用)の怒鳴りあいをするチビッコ達にゴー君が制止に掛かる。
だが、時は既に遅かった。
状況の分かっていないナナはキョトントしたままだが、残りの2人は恐る恐る振り返る。
紅の眼光が、真っ直ぐに此方へと向いていた。

「………見つかった?」

視線合っただろうが、とナナは心の中で呟く。

「どどどどうするの!?ミー君も居ないのに!!!」
「オイ。」
「「ヒィイイイイ!!!」」

赤い瞳の男は、淡々とした口調で言った。

「………此処は何処だ。」
「「…………ハイ?」」



   ※



「ホッカイドー?何処よソレ。」
「知らん。」
「意味ないじゃないの……どうやって帰るのよ。」

どうやら宇宙人の迷子さんだったみたいだ。
あ、僕コタロー。こっちが剛くん、こっちがナナちゃん。
そして僕の目の前に居る二人は、MAXさんとマーメイドさんというらしい。
なんだか知らないけど気が付いたらこの辺に居たらしいんだ、大変だよねー。
でも、クロちゃんやミー君が居ないから僕らじゃどうする事もできないもんなー。
技術的に?ううんテンション的に。

「粗茶ですが。」

ナナちゃんがほうじ茶の入った湯飲みを二人の前に置く。
いや、まぁお客さんて言ったらお客さんだけど、口ないよ二人とも。
いや飲んでるー!湯飲みの中身減ってるー!どうなってんだろうこの人たち。

「あらどうも、オチビちゃん。」
「失礼ね!誰がチビよ!!」

マーメイドさんの一言にナナちゃんは腕を振り回して怒っている。

「駄目ねぇ……そんな事ですぐカッカしちゃいけないわよ。
大人の女は、クールじゃなくっちゃ。見込みあるんだからちゃんと自覚しなきゃ、お嬢さん♪」
「そ……そうかしら…。」

艶かしげに左肘を突いて顔に寄せて、開いた右手の人差し指でナナちゃんのあご辺りを撫でながら言う。
いや、駄目でしょこの人。ボンボンに出せる人じゃないでしょ。マガジンレベルでしょ。
色っぽいマーメイドさんに、流石のナナちゃんも真っ赤になってる。

「(あのナナちゃんをサクッと言いくるめた……。)」
「(……何者なんだろうね、一体。)」

僕と剛君はボソボソ言い合う。
少なくともこの二人、兵であるのは間違いないだろう。キャラ的に。

「という訳だ、暫く世話になる。」
「「えぇえ!!!?」」

今まで黙ってたMAXさんが、偉い突然そう言い出した。

「アタシ達、行く所無いのよね…大体此処が何処なのか見当もつかないんだもの。」
「別に悪そうな感じじゃないし良いじゃない。」
「ナナちゃん……。」

すっかり印象が良くなったのか、ナナちゃんまでそんな事言い出すし。
正直な話、僕としてはこの人たちをあまり長くとどめていたくなかった。
帰る場所があるなら早く返してあげたいのもあるけど、クロちゃんと出逢ったらどうなるか分かったもんじゃない。
いや、分かってる。絶対バトルだ。
もう家壊されるの困るし、直すの面倒だし。
どうしたものかと考えあぐねていると…。

ぴぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!!

「!」

突然、甲高い警報が鳴り出した。

「何の音?」
「おぉ!!こんな時の為にミー君に備えつけてた通信機が!!!」

剛君が思い出したように手を打って、部屋中引っ掻き回して音源を捜し始める。
いつの間にそんな細工を施していたんだろうか。
マーメイドさんが僕を見ていた。
うん、貴女の言いたい事はよく分かる、僕らと初めて関わる人はたいていこんな顔になる。

「なんか……安直というか都合が良いというか、なんというかねぇ。」
「僕らいつもこんな感じだから。」

暫くして剛君がピタゴラ装置みたいな箱を来て取り出して、機械に向かって叫び始めた。

「もしもし?もっしもーし!!!」
『ゴー君!?やった!繋がった!!』
「おぉミー君!!そっちは大丈夫!?」
『大丈夫!そんな事より朝ごはん食べた?歯磨きした!?』
「したよー!ランニングもしたよー!」

相変わらずのラブラブッぷりである。
微笑ましいんだけど話が進まないし、なんかMAXさんが舌打ちしてるのでさっさと動く。

「あぁもう!ゴー君代わって!!ミー君!クロちゃんは!!?」
『居るよ、マタタビ君も一緒!!』
「何処にいるの!!」

僕が尋ねれば暫く戸惑うような雰囲気が伝わってきた。
なに、何処に居るの君ら。

『えーっと…異世界?』

沈黙。

「ハァ!?またタブー!?」
『いやちょっと違』
『代われ!オイ!コタロー今から俺の言う通りに動け!』
「クロちゃん!!!」

クロちゃんの声がして来た、どうやら元気らしいので良かった。
にしても、異世界ってどういうことなんだろう。

「騒がしいわねー。」

クロちゃんがかくかくしかじか説明してくれる間、マーメイドさんの呆れた様な声が聞こえた。
だよね、僕もそう思う。

『という訳でそっちにコッチの世界の奴が行っててソレ捜さないと俺ら帰れないらしい!!』

どうやら三人は今居る世界の誰かさん三人と場所が入れ替わって向こうに居るらしい。
通信が取れたからその異世界の三人を探し出せば、クロちゃんたちは帰ってこれる。
そういうことらし。
僕は振り返って、先ほどからウチに居座ってるマーメイドさんとMAXさんを見た。
恐らく彼女らが異世界人なのは間違いない、だって画風が全然違うもんね。

「…………クロちゃん、居るよ。」
『マジか!!!』

僕は素直に答える、喜ぶ声が聞こえてくる。
でも、でもね。
ひとつだけ物凄く恐ろしい事が起こっていたんだ。
もう、みんな分かってると思うけどね。
僕は。
ゆっくり間をためて、伝えた。
物凄く、悲しい事実を。

「で……でも……。」

二人しか、いないよ?



   ※



「「「…………。」」」

長い沈黙が続いていた。
そう、沈黙。
沈黙の果てに、静かに視線が動き出す。
通信機代わりのミー君の尻尾、それから互いの顔。
三匹の猫も、ヒゲヒゲ団も、沈黙。
プラズマとプリティだけは暇そうに辺りを見回したりしているが、見事に沈黙。

「つまり……二人しか帰れないのか……?」

耐えかねたマタタビが、ぼそりと呟く事実。
一人に対して一人の場所が入れ替わるなら、人数は三人ずつじゃなければならない。
だが、実際向こうで見つかったのは二人、此方は三人。
二人しか元の世界に戻れない。
そう、たった二人だけ。

「そういう事みたいだね。」
「だな……。」

ミー君とクロも頷く。
深刻な空気に、残りの面々も心配そうに様子を見ていたが、いらぬ心配抱っことにすぐ気づいた。
猫たちの目の色と、空気が変わったからだ。

「「クロ(キッド)!悪い死ね!!!」」

躊躇も何もなく、マシンガンとブーメランが至近距離で発射される。
そう、味方にも容赦ない、其れがサイボーグクロちゃんである。

「やっぱりそう来やがったか畜生ォオオオ!!!」

間一髪跳んでよけたクロは、着地と同時に廊下を駆け出す。
態勢を立て直すためには一目散に、集団から離れていく。
当然ミー君もマタタビも、クロを追いかけていく。
そう、今までの空気は嵐の前の静けさでしかなかったのだ。
フレイムもグランも嵐を見送っていたが。

「暴れるなと言ってるだろうがぁあああああ!!!!」
「あ、兄貴!!?」

もう一個、至近距離で大嵐が生まれたのに気づいてグランが声を上げる。
嵐さえ生ぬるい、おぞましい殺気の篭った雷の塊は一声叫ぶと三匹を追いかけていった。
そんな兄弟をも見送って、フレイムがぼそりと呟いた。

「今日のサンダー、テンション高い。」
「ストレス溜まってるんだねー!」

プリティのアッケカランとした声が響いて、事態は悪化の一途をたどる。



   ※



一方その頃、北海道。

「MAX、何処行くの?」

町の中、すたすたと歩いていくアンドロイドに少年は尋ねた。
いつもの通りに居るのは、MAXとコタロー、そしてマーメイドだ。
通信が盛大な音とともに途切れ、おおよそ予想する展開が起こっているだろうと想像していたら。
急にMAXが家を飛び出したのだ。
其れを追いかけてコタローとマーメイドはMAXを追いかけて出て現在に至る。
MAXはすたすたと歩きながら、ちらりとコタローを見やり、自分の見解を説明する。

「もう一人、此方の誰かが別の場所に居る可能性がある。」
「あぁなるほど!」

そうだ、じゃなければ向こうに三人居るのがおかしいもんね。

「じゃあ僕が町を案内するよ!もしかしたら僕らの知り合いの所を巡った方が早いかもしんないし!!」

コタローがそう提案すると、頼むといってMAXが速度を緩めた。
さぁ、まずは何処に行ってみようか、そう思案するコタローに向けてマーメイドが囁く。

「それもコッチの世界でよくある事?」
「まあね!」


というわけで、まず僕らはジムんちに行ってみた。
だいたい、いつものパターンの可能性から考えてみて此処とクロちゃんちと学校ぐらいが一番厄介ごとがおきてそうだと思ったからだ。
まぁ、そういう意味では一番確率が低い場所でもあるんだけど、外れていたとしてもまた何かあったら困るしめぐみさんとか戦力になる人が居たらいいかなって思ったのもある。
勿論、彼女が何もやらかさない保証もないんだけどね。
そう思ってうやってきたのに。

「やっぱり人んちでやるガンプラは楽しいなぁ…。」
「あ!先輩は買いましたか?携帯のヤツ!!」
「にしても変わった知り合いがいるね、アンタも。」

事態は急展開してしまったようです。
ジムの家にはジムとめぐみさんが居た。
問題なのはそれだけじゃなくって、全く見たことのない人が居る事だ。
その人と三人、楽しそうにガンプラ囲んで笑ってる。
僕はそっと、連れてきた二人を盗み見た。
マーメイドさんが苦笑してるのはいいとして、MAXさんの形相といったら。キレたミー君より怖い。

「一発だったみたいだね。」
「……………。」

この黒い人は、どうやら彼らの知り合いらしい。
それも、あまりいい方向の知り合いではないみたいだ。

「見なかった事にしよう。」
「コラ。」
「いや、むしろ亡き者にした方がいいか。」
「ジムはともかくめぐみさんが可哀想だからやめてよ。」

今にもハイパープラズマボムでも打ち出しそうなMAXに、僕はやんわりと制止の声をかける。
マーメイドはそんな僕を見下ろして、ポツリと尋ねてきた。

「慣れた?」
「うん、僕の知り合い物騒な人多いし。」

そっかー、そうだよー。
互いに微笑ましくやんわりと笑っていると、MAXが部屋の壁を思いっきり叩いた。
壁が崩れる音に中の三人もやっと気づいたのか、僕らのほうに向き直った。
すると黒い人が物凄く驚いた顔をして後ずさった。

「うぉおおお!!!?なんだ!?なんでお前ら此処に居るんだよビックリすんなぁおい!!」
「五月蠅い奴だ…死ねば良いのに。」
「お前、俺に会うたんびそれ言うよな。」

相当仲が悪いらしい。
呆れたようにため息を吐く黒い人にMAXさんの殺気はより濃くなっていく。
でも喧嘩するなら元の世界でやって欲しいな、一人減ったら黒ちゃんたち帰れなくなっちゃうし。
そう思っていると、ジム(恐る恐るMAXと黒い人を交互に見つつ)が僕に尋ねてくる。

「そっちにの二人は誰だい?」
「MAXさんとマーメイドさん、遠いところから来たんだって。その人は?」
「先輩ですよ、ケルト先輩!先輩はガンプラは勿論プラモ作りの神様なんですよ!」
「まぁな。」
「あのケロン人と互角なんですよ!?壮絶な戦いでしたよねー!早組み立て大会!!」

一体何処でそんな大会があるのか、そしてコイツラは何をやってんのかは、まぁおいて置こうね。
この、ケルト先輩という人は一体何者なんだろうか。
MAXさんたちと一緒に来たにしては、ジムと親しすぎるし。

「………異世界人とも知り合いというお前が末恐ろしい。」
「は?何言ってんだオマエラ。」

MAXのため息交じりの一言に、バカにしたように首を傾げる。
盛大に舌打ちするも掛かってこない彼と、やれやれといった感じのマーメイドとコタローを見ると。

「あー分かった、そういうことか…。」

何かを察したのか、ケルトはめいっぱい間を空けてから言った。
それこそ、今の彼らにとって衝撃的な事実を。

「北海道は、地球だぜ?」



   ※



またまた一方、シュヌルバルト。
勝手知らぬ宇宙船で、クロは四苦八苦しながら逃げ回っていた。
少し広い部屋(メインルームね)に来たところで、出口の扉に鍵が掛かっていた。

「流石にコイツラ相手に二対一はキッツイか……。」

こっちは剣一本のみ、向こうは温存していたマシンガンとブーメラン。
やや分が悪いか、と振り返ればマシンガンを構えたミー君が立っていた。

「悪いけどゴー君が待ってるんだ、譲れないね。」
「ヘッ!お互い様だ!」

ギリギリの間合い、ジリジリと詰める二人。
だが、そこでふと気が付いたようにクロが呟く。

「……それだったらマタタビが残ればいいんじゃねぇか?」
「………あ。」
「とりあえず帰る帰らない云々抜かして、殴っても良いかキッド。」

送れて部屋に入ってきたマタタビが、クロの問題発言に突っ込む。
その一言にミー君が一瞬クロと視線を合わせてから、向き直る。
ターゲットが変わった瞬間だった。

「じゃあ、そういう事で。」
「サヨナラマタタビサン(棒読み)。」
「ふざけんじゃねぇぞ貴様ら!!拙者だって地球に帰りてぇ!!」

更なる混戦の幕開けかと思いきや、此処がシュヌルバルトである以上そうはいかなかった。

「サンダーフォール!!!」

雷が飛ぶ。
地面に平行に、すれすれを飛んでいく放電。
何とかよけた三匹は、廊下のほうからやってくる相手のほうへ振り返る。
やってきたのは勿論サンダーである。

「貴様ら……全員其処に並べ、背の高い順に雷喰らわせてやる。」

オプションに般若の形相くっつけて。
誰にしようかなというように、バチバチと放電する指をまっすぐ猫たちに向ける。

「いや同じぐらい同じぐらい!!」
「いや、はなっからいっぺんにって事じゃねぇか?」
「考えてみたら今までで最悪の天敵かもね、雷眉毛さん。」
「生にも機械にも毒だからな雷眉毛は。」
「雷眉毛言うな!!!」

更に放電量が増す、散々基地を荒されてサンダーのストレスはピークに達していたようだ。
基本的に言ってる事が挑発的、其れがサイボーグクロちゃん。
そろそろ本気で基地が壊れるんじゃないかって、誰もが思っているときだった。

「兄貴ー!落ち着くだ!」

唯一、雷眉毛の放電を無効化できる末弟が、両手で兄を抱えて動きを塞いだ。

「ナイス!グラ!!」
「ええぃ放せ!グラン!!」

マタタビの声とサンダーの怒鳴り声が被る。
ジタバタ暴れる兄に、弟は何があったのかを告げる。

「兄貴、MAXから電話あっただ。」
「はぁ!?」

グランはごにょごにょとサンダーに耳打ちする。
その言葉に、サンダーの放電がとまった。
三匹の猫たちはなんだなんだと様子を伺うが、サンダーは空気の抜けた風船みたいにグランに抱えられたままだ。

「………………マジか?」

彼が一言そう呟いたとき、事態は静かに収束へと向かっていった。



   ※



『普通に考えて下さいよ、そんなもの作れる訳がないでしょ?』
「この黒マントォオオオ!!!殺す!!絶対殺すテメェエエ!!!」
「落ち着けってクロ……。」

しれっと言い切る紫マントと、画面に今にも殴りかかりそうな黒猫と其れを止める機械猫。
今回もブレインさんのお遊びが偶然が他の地域の人を巻き込んだだけだったようだ。

「単なる物質移動装置だったわけですか。」

そう、確かに三人は転送されてきた。
ただし其れは異世界なんて途方もない場所じゃなくって、同じ世界の地球とシュヌルバルトの距離でしかなかったのだ。
ケルトにその事実を教えられたMAXは、すぐさま自分の通信機を使って(思えば何故その存在を忘れていたのか不明だが)連絡をして来たのだ。
だからわざわざ装置を使わなくっても、宇宙船で全然帰れるのだ。

『それじゃあ、地球まで送ってあげて下さいね。』
「帰るぞ。」
「ハイハーイ!」

ブレインさんがそういって通信を切ると、あわせるようにプラズマとプリティは宇宙船に乗り込み帰ろうとする。

「あ、プラズマさん!彼らを連れて行ってあげて下さいよ!」

サンダーが慌ててクロを抱えて差し出しつつ、二人に向かって言う。
だが、ピンクとイエローのコンビは互いに一瞬顔を見合わせると、キッパリ行ってきた。

「無理だ。」
「無理だよね。」
「なんでだよ元はと言えばお前らの仲間のせいだろうが!!!」

また剣でも抜きかねない形相のクロに、二人は更に言い切った。

「……自動操縦だからだ。」
「アタシもプラズマも運転出来ないもんねー!」
「…………。」

一体彼らは何しに来たのだろうか、きっと暇つぶしだ。あぁ畜生。



こうして、違う漫画を巻き込んだわけの分からない場外乱闘は。
猫たちの帰還(見送るのも面倒なので宇宙船一個あげて自動操縦にして放流)によって幕を閉じた。








■おまけ


「やっと帰って来れた………。」

宇宙船に揺られる事、約一日。
狭い船内を飛び出した三匹は思い思いに身体を伸ばしていた。
ちなみに。

「わざわざ突っ込まなくてもいいと思うんですけど。」
「自動操縦だ。」
「いや、めぐみさん居ないみたいだしジムなら平気じゃんてクロ言ってたよ。」
「わざとじゃないですか!!」

ジムの家に。
見五トン火直撃したのか、ボロボロのジムがジタバタしながら文句を言う。

「あ、そうだ師匠ー!紹介します先輩です。」
「よぉっす。」

呼ばれて瓦礫の中から(なぜか無傷)ケルトがひょっこり出てきて、クロは身構えた。

「ゲッ!!?さっきの連中じゃねぇか!!」
「近いけど無害だから。帰る前にコイツが師匠に会ってけってうるさいからさ、良い面してんな。」
「フン……茶でも飲んでくか?」
「わかりやすいなぁ、クロ。」

最初あからさまに警戒していたのに、良さそうな表現されたらすぐコレだ。
呆れたように呟くミー君を見て、五月蠅ぇとクロちゃんは剣をブン投げた。
とりあえず粗茶ならくれてやるというクロにケルトは連れられていく。
途中心配してきた剛君たちに迎えられたミー君たちと別れ、たどり着いたは一軒家。

「(やっと帰ってこれたな。)」

クロは安心したように、心の中でつぶやく。
そこはクロの家。
大事な大事な人たちが住む、大切な家。

「まったく……此処は何処なんじゃかなぁ……。」

が、感傷に浸ってる暇はなかった。
全く聞きなれない声に、クロは玄関を通らず庭を見る。
陽に面した、日本家屋独特の縁側に座っていたのは、老人が三人。
普段より、確実に一人多かった。

「アンタも大変ですなぁ。」
「羊羹はどうですじゃ?」
「あー、有りがたく頂く。」

爺さんと婆さんの間に挟まれて、立派な白いヒゲのヤツが粗茶をすすっていた。
そう、事実を忘れてはならなかったのだ。
自分たちが飛ばされたときに使われた物質転送装置は、それぞれの場所から三人を入れ変えたのだ。
どんなに帰れる距離であろうと、その事実は変わらないのだ。
クロは、思わず振り返る。
ジムの先輩らしき黒い男、ケルトが物凄く視線を逸らしていた。

「……………知り合いか?」

返事はない、その代わり分かりやすいぐらい知り合いだって横顔が語っていた。

「……じゃあ、そういう事で。」
「連れて帰れ。」


※バグラー様は帰郷していた元祖四天王が責任を持って連れ帰りました。






終わり!!!!