「あははははっ何言ってんのさ利家〜!ばっかじゃないの〜?」
「だってよ〜!そんなに笑わなくてもいいだろ〜?あははは。」
猿と犬が話していた。
別に取るに足らない、いつもの光景だ。
だがふと違和感を覚える。
それは猿のあの態度だ。
明らかに俺と話してる時とは違う。
そりゃあ主君と家来の関係、家来同士の友人との関係じゃ態度に違いが出るのも当然かもしれないが・・。
それにしたって。
俺は猿のあんな笑顔は見たことがない。
「友人関係・恋人関係〜そんじゃ、入れ替わってみますか? 」
「犬、俺と入れ替わってみないか?」
「はい?」
織田家当主、織田信長が、あだ名が「犬」の我が家来 前田利家に声をかけていた。
それに対し、利家は驚ききょとんと訝しげな顔をした。
「入れ替わるんですか?何のために?」
信長はこほんと咳払いをして何かをごまかすように長々と述べた。
「猿が俺の監視下以外で何をしてるかどんな素行を取っているか主として抜き打ちチェックをしようと思う。
お前はよく猿と行動を共にするな。だからお前と俺が入れ替わり、お前になった俺が猿の動向を見てやるのだ。
別にお前と猿がよく楽しそうに話しているから親しみのある仲の会話がどんなものか試してみたいとかそういうわけではなくてだな・・・。」
言ってしまってますよ信長様。
それを聞いて利家はピンと来てにんまりと豪快に笑った。
「あっ!!!なんだ〜兄貴ってば妬いてんですか〜?心配しなくても俺は信長の兄貴がいる内は秀吉に手ださな・・・。」
「誰が妬いてるって?????????」
信長は凄い形相で利家の胸ぐらをつかんだ。
「ひーーー!!!!だ・・誰も妬いてませんっ・・・!!」
「つか今お前俺がいる内はどうとか言ってなかったか・・・?」
「いやいやいやいや気のせいです気のせい!!!!・・つかそれやっぱ妬いてるってことじゃん・・。」
「あぁあ!!!!!!!!????????」
「いやいやいやいやだから空耳ですって!!!!!!・・・・
・・・・そういや信長の兄貴・・光秀殿と秀吉が話してた時も似たような妬きもちを・・・・。」
ぶっちん!!!!!!
「誰が誰に誰の為にやきもち妬いてるって!!!!!??????あああああああああん!!!!!!!??????」
「ぎゃーーーーー!!!!!!!すんませんすんません誰も何も何でもありませんほんとにーーーーーー!!!!!!!」
織田信長と前田利家。
彼らは幼馴染であり、利家は信長を兄貴と呼び慕い、信長も利家を弟分として可愛がってる。
わんぱくだった頃は性行為をし合ったりと「そういう」関係だった時もあった。
でもそれは若さゆえの子供の性への好奇心からの物で、けして粘着的なものではなかった。
利家は一時期信長に本気で熱烈的に惚れ込んでいた事もあったが、今ではすっかり兄貴分に対する憧れに落ち着いた。
今でも「そんなこともあったよなー」と笑い飛ばしあえる仲。
そして利家は一織田家家臣として、信長に硬い忠誠を誓っている。固い絆で結ばれた主従関係がそこに合った。
また、この利家は秀吉とも「犬猿の仲という言葉はいずこ」という程に非常に仲が良く、親友関係であったりする。
そして今ではそれ以上の感情を利家は秀吉に抱いていたりする。
今度は信長の時のような強い者への憧れではなく、
か弱きものを愛しいと思い、守ってやりたい、自分のものにしたい、大事にしたい、
そんな衝動に駆られているのであった。
何より秀吉とは似た者同士気が合い、一緒にいて自然で楽しいのだ。
本当にずっと一緒に居たいと思っていた。
でも秀吉は信長の事が好きだし、信長自身の事も裏切れない。
だから今のまま「二人」の親友関係を保とうとしていた。
乱丸といい、そういう者もこの織田家家臣には多いのかもしれない。
どちらかに惚れたりどちらにも惚れようが、
信長と秀吉、「二人」の間に入るのは憚れる気がする。
それ程にあの二人の間には強い繋がり、絆を感じるのだ。
目に見えるものじゃない、運命のような何かを。
例え信長が秀吉にその気はないと言い張り邪険に扱っていても。
秀吉が信長を大好きと愛してると言い続け一途に慕い続ける。
信長もなんだかんだ言いながら秀吉を可愛がり大切に想っている。
それを見ると自然と応援したくなる。
とても魅力的に見える。
強く想う様も、強く想われる様も
そう・・その関係が。
「はあっ・・もう・・。
俺からしたら・・・信長様の方が何十倍も何百倍も羨ましいんですからね!」
利家は伸びた着物の襟を治しながら、信長に向かって言い放っていた。
信長は何の事だか解せないときょとんとして訝しげな顔をしていた。
「でも、入れ替わるってどうやってですか?」
「何って、変装にきまってるだろ。」
「いや、バレます。」
速攻で却下された。
「俺のチャーミングなタレ目と信長様の魔王のような凶悪ツリ目の違いに一発で見抜かれますよ〜無理です・・」
「誰が凶悪ツリ目だあああああああああああ・・・・・・・・・!!!???????」
「それーーーーーーーーー!!!その恐ろしい怖い顔ーーーーーーーぎゃあああああああああ!!!!!!!!????」
利家はまた信長に胸ぐらをつかまれ鋭い眼光の先に地獄絵図を見せられた。
「まあ一理あるな。変装程度じゃすぐバレるだろう。
さてどうしたものか〜・・。なんかこう、「飲んだ者同士の心が入れ替わる薬」とかがあったらいいのにな。」
「・・・・あー!そういう怪しげ〜な薬の類なら作ってそうな奴知ってますよ☆」
「何?誰だ?そいつの所に今すぐ案内しろ!!」
そして利家に教わり信長が向かったのは、
明智光秀のとこだった。
「キンカン!いるか!」
勢いよくスパンと襖を開ける。
「信長様!そちらから御出でになされるとはっ、一体どうなされたのですか?」
光秀は信長の突然の来訪に目を見開いて驚いていた。
その目には彼が読書をする時や実験をしている時のみに使う、眼鏡が掛けられていた。
丁度何か薬品を調合しているとこだったらしく、すりこぎで植物をすりつぶしてかき交ぜていた。
その様を見て信長は問う。
「今日は眼鏡をかけてるのか。」
「はい。半兵衛殿がかけてたのが気になりまして。頼んで支給してもらいました。細部までよく見えて便利ですよ。」
その眼鏡の淵をくいと上げる姿がやたらと似合っていた。流石戦国の「知将」。
「利家に聞いたんだが、お前は薬剤師もしてるそうだな。それも珍妙不可思議な類の。」
「ああ、はい。日頃こうして手が空いた時は実験等をしてまして。」
流石に現代風の試験管等はないが、木材の入れ物に薬草類を色々混ぜては様々な珍妙不可思議な類の薬を開発してるらしい。
その様を見て信長は半ば呆れた声を出した。
「・・・お前はいつからマッドサイエンティストキャラになったんだ?」
「割と最初から。
生まれ変わりは普通に理系の眼鏡っ子だし、こちらでも裏設定として用意してたのですが、
結構読者の反応がいいので、ついつい出しちゃった。との事です。」
「作者め。」
「まあ何しろ私、明智光秀がマッドキャラが似合うと思ってるのはここの管理人だけじゃないらしいですしねえ。
・明智さんに白衣を着せたい
・明智さんに眼鏡をかけさせたい
・明智さんにメスを持たせたい
・明智さんに診察されたい
・奴は絶対外科医だ!
・奴は絶対メスを握ると人がかわる
某明智同盟より☆
こーんな活動条件内容の同盟も存在してるほどですので☆いやあびっくり☆
「私の目に狂いはなかった!ちっちゃい頃の私の直観凄い☆」
とかなんとかわけわからんナルシストな発言を漏らしてますよ。作者が・・・。」
「作者め・・。まああまりそっちに行かないことを祈る。」
「いや、わかりませんよ。何しろ私たちにこんな台弁弁解させちゃうような作者めですから。」
「作者め。」
「ほんと作者め。」
わーんゆるしてよう!!!!!(爆
「それで、飲んだ者同士の心が入れ替わる。そういう類の薬はないか?」
「ありますよ。」
「あるのか!!??」
「私はエリートですからね!!!」
光秀は得意げに眼鏡をくいっと上げて見せた。
信長は我ながらすげー部下を持ったもんだと感心していた。
反面ちょっと恐ろしくなったそうな。
『こいつにだけは謀反されたくないな・・・。』
THE・されます☆(笑
「さて、今薬を用意しますついでにお茶でも飲んで行きませんか?」
と立ち上がりお茶を用意しに向かう光秀。
信長は退屈そうに机の前に座って薬が用意されるのとお茶を出されるのを持っていた。
奥の部屋でお茶を用意している光秀だが・・その動きになにやら不審な影があった。
『こういうのを使うのはあまり気が進まないが・・。
まあ、天から与えられた武器は有効に使わねばな!』
そう心で自分のサイエンティスト能力に感謝しつつ
取り出したるは
THE・惚れ薬!!
光秀は信長にほの字なのさ!!!!
だからって惚れ薬と来たかこのマッドサイエンティスト!
そんなんで信長の心を操ろうとは卑怯すぎるぜこの野郎ーー!!
「うるさい黙ってろ!!!」
等とナレーターに突っ込みを入れながらも
熱く湯気のたつお茶めがけて・・
惚れ薬!!!!投入!!!!!!!!
「信長様、お茶が入りました。」
「うむ。」
何食わぬ顔をして信長に惚れ薬入りのお茶が入った湯飲みを渡す光秀。
信長も何も知らずに茶を飲もうと湯飲みに口を付ける。
『これを飲めば信長様は俺にほの字に///////////////////』
そう期待をふくらませて
ドクン・・
信長の喉に湯がそそがれるのを
ドクン・・
今か今かと待ち望んでいた。
ドクン・・・
その瞬間。
バーン!!!!!!
「兄貴ーーー!!!薬もらえやしたーー!!!?」
入口から利家が入ってきた。
「おおもらえたぞー。」
そして信長が五トンと湯呑を机に置いた。
光秀はずるっ!と滑って冷や汗を流して机の上に突っ伏していた。
「これで入れ替わることができますねー☆」
「おう。」
にこにこな利家と話しながら、信長がまた何気なしにお茶を飲もうと片手に湯飲みを持った。
今度こそ!!!!!!と期待の色を目に浮かべて身を乗り出す光秀。
が、その瞬間!!!!!
バーン!!!!!!
「こらーー!!!利家ーーー!!!どこで油売っとんじゃーー!!!訓練の時間だぞーー!!」
「わーーおやじごめんよー!!今日は信長様と大事な実験があるからー!」
今度は入口から柴田勝家が入って来て利家に説教。
またも信長はそれに気を取られてゴトンと湯呑を置いた。
「なら仕方ないのお。」と去っていく勝家。
光秀はまたずるっ!と滑って机の上に突っ伏す羽目になってぴくぴくと痙攣していた。
また湯呑に口を進める信長。
光秀は身を乗り出して拳を握りしめて熱く闘志?を燃やす。
『今度こそおお!!いけ!!そこだ!!GO!!!!』
バーン!!!!!
「ゴ――!!と信長様ー!書類の整理終わりましたー!
あと入る時の「ゴー!!」って掛声やめていいですかー?」
訳わかんない台詞と共に森乱丸くん登場。
「おーもう飽きたからいいぞーご苦労ー。」
『なんだそりゃ!!!!!?????????』
光秀は窓から庭へと吹っ飛びたい気分だった。
どうやら信長は乱丸に「部屋に入る時は「ゴー!」と掛け声をかけるように」という極めて訳のわからない命令を遊び半分に出していたそうだ。
ゴトンとまた湯呑を置く信長。
再び机に伏せって痙攣している光秀に気にも留めず乱丸が部屋を去った後。
光秀は冷静に髪をかき上げたかと思ったら、急に鬼のような形相になって利家に刃を突きつけた。
「フッ・・・
殺していいか?」
当然の光秀の行動に利家は疑問符浮かべて額から冷や汗をだらだら垂らしていた。
「え?何?よくわかんないけど全部俺のせい?」
せいと言えばせいだが全部がそうではなく最初の二回だけである。
理不尽な光秀の行動に、利家は両掌を前に出して後ずさっていた。
そんな二人に向かって信長は大きな声を張り上げる。
「犬!何やってんだ、用は済んだ!行くぞ!!」
「あ、はーい!」
「金柑!薬は頂戴していくぞ!」
信長に言われて慌てて愛想笑いをして対応する光秀。
「あ、はい!!!どうぞ存分にお使いくださいませ!!」
そんな光秀の内の様々な心境など知る由もない気の止める事もない信長はぴしゃりと戸を閉めて去ってしまった。
結局一口も湯呑に手を付けることなく・・。
しんとなった部屋の真ん中で愛想笑いしたまま硬直している光秀は。
「・・・見事に失敗しちゃった☆・・・・」
がっくりと力が抜け畳に項垂れるのであった。
悪いことはできないねえ☆
さて、話はそれたが本題へ行くとしよう。
「じゃあ、いくぞ。」
「はい。」
「「せーのっ!!」」
ゴックンっ・・!!!
信長と利家はそれぞれ薬を飲みほした。
飲み終えて特に変化はないなと自分の体をまさぐっていると、急に目の前が暗くなって立ち眩みがした。
その立ち眩みから立ち直り目を開けてみたら、
そこには紛れもない自分自身が立っていた。
「「うわああ!!???本当に上手くいった!!!????」」
二人同時に声を上げた。
上手くいくと思ってなかったんですか。
「あたりめーだ!俺は無神論者だ!!」
と、叫んでいる利家の姿をした信長。
「いやあ、実は俺も面白半分だったんだけどな〜。光秀の奴すげーな。」
と、頭を描きながら答える信長の姿をした利家。
「全く末恐ろしい奴よ・・。」
まあ、謀反人ですからね☆(関係ないって
ということで、各人分かれて目的の行動を取ることにした。
利家はまあこれといった目的もないので、「その辺をうろついて皆の反応を見てくる」と、心底面白そうに軽快な足取りで去って行った。
オイ、俺はそんな浮かれた足取りはしないぞ、もっと第六天魔王らしくどっしり構えていけよ。
と突っ込みたくなったが既に遠く離れていたのでめんどくさくなり、まあいいかと自分もそこを後にする事にした。
そんな中身が信長の利家も、利家らしくもなく腕組をしてどっしり構えて威圧感を放ちながら道を闊歩していたそうな。
さて、目的の秀吉の所へ向かおうとしたが、体が利家になって気まで小さくなったか、柄にもなく緊張する。
『別に猿に会うだけだろうが。』
そう言い聞かせてみたがどうにも落ち着かない。
一度利家の様にぶらついてみてからにするかと後ろを向いて方向を変えようとした次の瞬間。
「利家!」
ぱんっと後ろから小さな手のひららしきものが背を叩いてきた。
少し驚いて振り返ってみるとそこには目的の人物、秀吉が立っていた。
元気よく笑って顔の横にぱっと手を上げて軽快に挨拶してきた。
「よっ♪」
その瞬間ぱっと花が咲いたように見えた。
信長は驚いていた。
秀吉にこんなに軽々しく挨拶されたのは初めてだった。
いつも「おはようございます!」とかしこまってるものばかりで。
いつものそれもけして悪くないが、
そのフレンドリーさ溢れる仕草は新鮮で茶目っ気があってなんだかとっても可愛らしく思えた。
それこそ他の人に対してやってる所はよく見たことがあったが、よもや自分にやられる日がこようとは・・。
そう少し動揺したまま固まってる利家を見て秀吉は小首を傾げた。
「どしたの?利家。」
「い・・いやなんでもないっ・・!よう、さ・・秀吉。元気か?」
「うん!元気!ねえねえ利家!今日も市場にかわいこちゃんウォッチングに行こうよ♪」
「へ・・・・・・・・・・・・?????????
かわいこちゃんウォッチングう・・・・・・・・?????????」
奇声を上げた信長利家に対して訝しんだ秀吉を何とかごまかして、
その例の「かわいこちゃんウォッチング」をしに二人は市場まで足を運んで来ていた。
なるほど確かに市場には活気があふれていて、かわいい子や奇麗どころな女の子が沢山歩いていた。
そんな女の子達を見てなんとも無邪気な顔ではしゃいでいる秀吉がいた。
「見てみてあの子かわいーーー!!!
声かけてみよー♪
ねーそこの君かわいいねー☆
お嬢さんお茶しないー?」
ウォッチングから一気にナンパまで行っていた。
ちなみに今の我が家の秀吉はTHE・女の子です!
この小説だけまた男に戻そうかどうかかなり迷ったが、
今後も同じようなシーンが出てくる度に性転換させてたらきりがないので、
女の子になっても女の子が大好きな女の子な秀吉ちゃんで我が家は行かせていただきます!!(爆!!
まあ昔も某女好き猿顔泥棒男をモデルに女キャラを作ったせいで女の子もナンパする女好きな女怪盗ちゃんなんて作った事ありますしねーv(爆
なんて作者の戯言はどうでもいい!
史実の豊臣秀吉は無論男なので正当派な好色化だったと言うだけの話なのだが、
秀吉は女になっても秀吉だったらしい。
まあ男にしろ女にしろ、信長への恋と女の子への好意は全くの別物と考えていたらしいが。
信長利家はそれを見て呆然とつっ立っていた。
こいつが大の女好きという事は知っていたはずだがこう目のあたりにするのは初めてかもしれない。
「俺」の傍にいる時のこいつのイメージといったら「俺」の事しか見てない。見えていない。
四六時中しつこいストーカーの如しに(笑)恋する乙女の目で瞳を潤ませキラキラさせながら「俺」を見つめてくる。
俺以外は眼中なし。はっきり言ってそんなイメージしかない。
そんなこいつが色々な対象に目を向け瞳を輝かせて愛嬌をふりまいている。
それがこいつの持ち味と、ほんとに知っていたはずなのにこうして見るとやたら新鮮だ。
そうぼんやりしていると秀吉がまた小首をかしげて信長利家に声かけてきた。
「利家ー?どうしたの?今日ノリ悪い・・というか元気ないじゃん?」
「え・・?そっ・・そうか??」
普段の利家は今の秀吉と同じぐらいにナンパに精を出しているのだろう。
利家は秀吉に負けず劣らずの女好きのナンパ好きだ。
そういう性格だとはよく知っているし、そういう光景が目に浮かんだ。
二人で一緒に「かわいこちゃんウォッチング」
それがこいつらの日常か。
その様も二人肩を並べて仲むつまじくかと思うと少しむっとなった。
そう不機嫌そうに口を結んでいると秀吉が心配そうに眉を下げた。
「利家ほんとにどうしたの〜今日は・・凄く大人しい・・・
というか威圧感放っちゃってるよ・・!?なんかまるで信長様みたいなっ・・!!!!」
怯えながらも鋭いビンゴな突っ込みを入れてきた秀吉に驚いて信長利家は必死に否定した。
「な!!??そ・・そんなことはないぞ!?」
そういいつつも確かに背中からずごごごごと黒く渦巻く妙な威圧感を放っていた。
さっきの不機嫌さがまだ残っているようです☆
「もう!そんなんじゃ女の子怖がって寄ってこないじゃんー!
さっきだってせっかくかわいこちゃんゲットしかけてたのに「お連れさんは気分のらないみたいだから・・」って帰っちゃったんだよー!?
もーー!!利家のせいだーーー!!!!」
そう言って秀吉はぽかぽかと小さい手をぐーにして信長利家の胸を叩いてきた。
非力で全然痛くはないが。
本人も力を入れてないのだろうじゃれあう感じの程度の仕草。
こんな態度を取る秀吉というのも新鮮すぎて不覚にもドキッとしてしまった。
「な!?悪いっ・・!///////」
顔が熱い。
今日は秀吉の新鮮な姿ばかり目のあたりにする。
やはり友人と主人では態度に差が出てしまうのか。
そう思うと少し物悲しくなった。
こんなに自分の知らなかった秀吉がいる。
それを他の奴は知っていた。
そう思うと・・・・・・。
反面、その知らない秀吉一面を今新たに知ることができる。
それが内心楽しくて仕方がなかった。
『少しむかつくが、どうせなら徹底的に知り尽くしてやる。
猿の奴め、俺のいない所ではどうしてやがんだか、
じっくりこの目で確かめさせてもらうからな。覚悟しろよ。』
そう信長利家がにやりと悪鬼めいて笑っていた。
さらに利家らしくないその表情に秀吉はびくっと怯えていたような。
『それにしてもさっきの言葉だと、威圧感を放っている俺はおなごが寄ってきにくいという事にならないか?
失礼だな!これでも俺は何人もの女を射抜き落してきたぞ!そうだ、こっちから行くからだ!女が向こうから来ないだけだ!』
それは結局「寄ってこない」という結論になってますよ魔王様。
秀吉はそんな一人でうんうん自問自答してる信長利家をまじまじと見つめてきた。
こころなしか頬が赤く染まってる。
「ん?どした?」
「ん・・いや・・なんかさ・・・・・今日の利家・・・近寄りがたい感じだけど・・その分・・なんか・・かっこいい感じかも・・。///」
そう少し俯き加減に瞳を潤ませて言ってきた。少しだけ「いつもの」猿の姿が見えた気がした。
それは紛れもなく利家ではなく「俺」に対する発言だった。
『!!!!
・・・そう面と向かって言われるとな・・。//////』
信長利家の顔も赤く染まっていた。
『ほ、ほーらな、威圧感放つ俺ってかっこいい☆(オイ
ってよくねえ!!!今は犬なんだぞ!!俺らしさ全開にしてどーすんだ!!ばれるだろ!!;;;』
そこからはがんばってちゃんと利家の演技をしよう。
そう決めたのだが・・・。
しばらくたっても信長利家からは威圧感が取れなかった。
「利家〜?大丈夫〜?」
どうにも信長には演技と言う物が向かないらしい。
どうしても利家らしくすることができなく、いつもの自分通りクールに振舞ってしまう。
それが秀吉から見たら「利家が元気ない」ように見えてしまってるらしい。
『こ・・これではいつもの二人の様子を探れないじゃないかっ・・!しっかりしろ!俺!』
自分に気合を入れさせてみるが、それが余計に力が入って威圧感に代わる。
利家はもっと気の抜けた感じに振舞わなくちゃいけないのに・・だーもう!!やりにくい!!!!!!!
「利家?悩みでもあるんだったら相談に乗るよ?」
顔を覗き込んできた秀吉にドキッと鼓動が高鳴る。
「え?ああ・・いや・・大したことじゃない・・。そんなに心配しなくても・・。」
「心配だよ!だって親友じゃん!」
「!」
力強くいってきた秀吉のその言葉は信長の心にずしりと圧し掛かってすうっと引いて行った。
『親友か・・・。』
気力まで吸い取られた感じ。
面と向かってその言葉を言われたのは自分であって自分じゃない。
自分と猿は「親友」ではない。
そう思うとまた俯いて黙り込んでしまうのだった。
「まあ、話せないならそれでもいいけど・・・
じゃあさ、嫌な事は忘れて、遊んじゃお♪」
ぎゅっ。
また驚いた。何気なしに自然と手をつないできた。
そしてその手を引いて前へと元気に駆けだした。
こうして無理やり引っ張られて行く感じも悪くないと思えた。
こんな体験、人の上に立ってる身としては滅多に味わう事は出来ない。
特に目の前の猿からなんて。
そう目の前で自分の手を引っ張りながら小走りに駆けている秀吉の顔をのぞいたら、にこっと優しく微笑み返してくれた。
「あーん♪ぱくっ♪
おいひーー☆」
秀吉が何とも幸せそうに木の長椅子に腰かけて串団子を口に頬張っていた。
無論その隣には中身が信長の利家が腰かけている。
手には串団子が乗っかった皿と反対の手にはお茶が入った湯飲みを持っていた。
そう、ここは団子屋。
秀吉が利家を元気づけようと連れて来てくれたのがこの店だったわけだが、
当の利家よりも明らかに秀吉の方がその団子の味をとくと楽しんでいる。
というか自分が食べたかっただけじゃないのか?
そう言いたくなるほどほっぺたを落としそうにしながら実に美味しそうに団子を食べている。
醤油味やあんこ味など軽く20、30本は平らげようとしている気持ちのいいほどの大食らいぶり。
それを見て呆れもしたが、同時にそんな幸せそうな秀吉を見ると本当にこちらまで和んでくる気分になった。
穏やかな気分で信長利家は秀吉を眺めながらお茶をすすっていた。
ふと秀吉がこちらを見やる。
「利家全然食べてないじゃん。まだ元気でない?」
「ああ・・いや・・。」
曖昧な返答をする利家を見て息をついた秀吉は自分の皿から串団子を一本取る。
そしてそれをこちらに向けてきた。
「もう、しょうがないなあ。
はい、あーんして♪」
ぶっ!!!!!!!!!!!!
信長利家は勢いよくお茶を吹き出した。
『それは親友の域なのか!!???
もうバカップルの域じゃないのか!!????』
そう顔を赤らめて取り乱してると、例によって手に持ってるお茶もひっくり返し、自分の足へとまっさかさまに落ちて湯をぶっかけてしまった。
「あちちちちいいい!!!!!!!!!??????」
ガアン!!!!!!!!
「っ!!!!??っていってええええええええええええ!!???」
その上驚いて立ち上がった拍子に長椅子の足の部分に自分の足首を思いっきりぶつけてしまった。
そしてあまりの痛さに足を抑えて転げまわりながらのたうちまわる。
かと思ったら立ち上がって憤怒し、凄い勢いで椅子を蹴りあげる。
「このバカ椅子!!!!!!痛かったじゃねーかこの野郎!!!!!!!」
ガアン!!!!!!!!!!!!!!!
「いってええええええええええええええ!!!!!!!?????」
当然痛みを帯びていた足はさらなる痛みを倍浴びることになり
また足を押さえて転げまわりながらのたうちまわる羽目になった。
「ちょっ・・だいじょうっぶっ・・あはははは!!!」
秀吉は一瞬心配しかけたが、あまりの壮大なパフォーマンス張りの落としっぷりぶつけっぶり、
そして怒りっぷりさらなるぶつっけぶりにツボに入ったらしく、お腹を押さえて大きく笑い声をあげていた。
「やーっもうっ・・おかしっ・・
利家ばっかだねえ♪
でもやっと元気出たー♪いつもの利家だー♪」
『これでいつものあいつなのかよっ・・!』
それにしても・・・・
ほんとに自然に笑ってた。
こんな猿は見たことない。
想像がつかない。
犬と猿は・・・・・自然に何でも話せる関係・・・・。
じゃあ、俺と猿は・・・?
信長利家は長椅子に腰をかけなおして、秀吉に向かって呟くように問う。
「あのさ、秀吉は・・・俺のこと・・好きか?」
こんなこと聞いてどうするんだ。
秀吉は満面の笑みで答えてくる。
「好きだよっ勿論♪」
そりゃそうだ。
こんなに楽しそうに話してるんだ。
俺は利家の振りをして兄貴と呼ぶか様づけすることも忘れてその名の奴のことを聞いた。
「じゃあ・・信長・・・・・・の事は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
少し間が空いた。
風が吹いて空気が一瞬にして変わった気がした。
秀吉は口を結んで、頬を赤く染めて、拳を握りしめて、座りながらもこちらに身を乗り出してくる。
俺の瞳をじっと見つめて
この世で最も大切にしている言葉を絞り出すかのようにその口を開いた。
「好きだよ、勿論。
大好き。
愛してるよ・・!
信長様のこと・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!」
秀吉の表情は真剣だった。
さっきの利家に対するあっけらかんとして言ったものとは偉い差。
でもそれが・・・嬉しかった。
猿が他の奴と遠くで楽しそうに笑ってる。
それが羨ましかった。
いつも猿はどこか俺に緊張してるみたいで。
だけど、
それは、
いつだって
俺を愛しく思っている。
そんな思いが伝わってくるようだった。
今はそれが、ない。
『信長様っ!』
『信長様ぁ・・。』
『信長様・・///』
信長はいつもの秀吉の様々な姿を思い浮かべる。
そして利家に言われた言葉が浮かんできた。
『俺からしたら・・・信長様の方が何十倍も何百倍も羨ましいんですからね!』
「クッ・・で、あるか。」
そうだよな。
そうして時折俺に見せてくれる楽しそうで幸せそうな笑顔の方が、何十倍も何百倍もかわいいもんな。
・・・って・・何考えてんだ・・!俺はっ・・。
「利家?ねえ、どうしてそんなこと聞いたの?」
「ん・・?なんでもねえ。」
戻るか。
こうして心のもやもやが晴れたらしい信長様は、利家と体を元に戻そうと思いました。
が。
一方、信長になった利家は・・。
「はっはっはあ〜〜〜♪♪♪/////猿〜〜〜秀吉〜〜〜〜い☆俺にひざまずけえ〜☆あーっはっはっはっはっは☆☆☆☆」
鞭でビシーン!!!!バシーン!!!!!!ゲシーン!!!!!!!!!
「痛いっ痛いっ痛いっ・・!?暴力はいつもの事ですけどっ・・なんかいつもと違って変ですよーー怖いですよおお信長様あああっ・・!?きやあああああ!!!!;;;;;」
秀吉に出会った途端ちゃっかりSM主従関係にハマり込んでおりましたv
「コラーーーーーーーー!!!!!!!犬ーーーーーーー!!!!!!!?????戻ってこーーーーーーーい!!!!!!!????;;;;;」
ちゃんちゃん♪
ではなく後日談。
「猿・・・・。」
「何でしょう?信長様。」
「バカって言ってみろ。」
「は????????猿めをですか???????」
「違う。俺に言ってみろと言ってるんだ。」
「・・・・・・・ええええええええええ!!!!!!??????無理無理無理無理!!!!!!絶対無理です!!!!!!!
信長様にそんなこと言えるわけないじゃないですかあというかなんで!!!???」
「いいから言えっつってんだよ!!いつも利家に言ってるみたいによ!!!!」
「ええ・・・あの・・・その・・・じゃあ・・・・こほん・・・。
ばーか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「誰にんな口聞いてんだ猿ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
バッコーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!
「えええええええええええ!!????自分で言えって言った癖にいいいいいいい・・・・・・・・!!!!!!!!!!みいやあああああ・・・!!!!!!!」
結局こうなる。
やっぱり俺にはこっちの方が性にあってるようだ。
こいつの、緊張して、怯えて、それでも愛おしそうな眼差しを向けてくる。
健気で一途でひたむきで甲斐甲斐しい。
そんなコイツを見れるのは俺の特権。
そしてそんなコイツを殴る俺♪
それも俺の特権☆
信長はもう一発と秀吉にパンチを食らわしていた・・・。
この外道魔王!!!!!!!!!!!
終
と思ったらさらにおまけ。
信長と秀吉が一緒に薪を拾いに行ってた時のこと。
ふつうは家来の秀吉だけに薪を拾いに行かせるものだが。
たまに信長も手伝ってくれたりする。
上下関係を気にしない。それが織田信長のいい所。
まあ只の気まぐれだったりするのだろうが。
だが、信長は不機嫌そうだった。
太い薪を大量に抱えてる秀吉を後ろにつれて、
同じく太い薪を大量に抱えてる信長様。
何が不機嫌なのかと言うと薪を運んでることに対してなわけじゃなく。
林に木々が生い茂り過ぎてて、枝が時折頭にぶつかって邪魔なのであった。
それで不機嫌そうにイライラしていた。
そしてそのイライラが頂点に達した。
「だーこの枝わさわさ邪魔くせええんだよこの木!!!」
ガコン!!!!!!!
と拳で思い切り殴ってやったら、当然痛かった。
「・・ってえ・・・。」
苦肉の表情で手をぶらつかせて痛みをやわらげようとする。
なんか凄いデジャブだ。
利家と入れ替わって秀吉の隣で団子を食べてた時の・・。
「ぷっ・・あはははは!!信長様おもしろい♪」
そしてまたあの時と同じように秀吉が無邪気に笑っていた。
そんな秀吉を呆けながら見て信長は思った。
『笑ってるとこぐらいは結構見てたのか。俺。』
それに気付くと安堵を覚えたようにふっと優しく笑みを浮かべ。
次の瞬間には悪戯っぽくにやりと邪悪な笑みを浮かべていた。
「猿・・今バカにしたな?」
「ほえ!?してませしぇんっ・・・!!!」
急に詰め寄られて秀吉はビクッと小動物の様に身を縮こまらせて泣きそうな顔をしていた。
そんな秀吉にお構いなしに、寧ろその反応を待ってたかのようにさらに詰め寄り肩を抱く。
「クックッ・・お仕置きだ。」
そして取り出したるは、黒く輝く鞭☆☆☆☆
「いいいいいいいやああああああああああああ!!!!!!!!???????」
あ、結局そういうオチですかい。
今度こそ
完
書くの異様に時間かかっちゃった;;;;;;;;;;;(泣
我が家で戦国ジャンル初めてすぐの頃から書きとめといたストックだったんですがやっと完成しました。そういうのもまだまだ多いので完成させていきたいなー。
秀吉と前田利家は史実でも言われてる通り仲のいい親友です。そんな二人の仲むつまじさを見てやきもきしちゃった信長のお話でしたv
「入れ替わりの薬」なんて出ちゃったりもうなんでもありだこの戦国wつーか光秀が凄すぎる(笑)光秀の信長への本格アタック?の様をやっとかけて楽しかったv
基本は一緒に「かわいこちゃんウォッチングに行く☆」それが秀吉と利家の通常仲(笑
利家は史実で信長とも幼馴染であり一時期いやん☆な関係だったりと、結構色んな人と交友持ってる人だなって思います。
「友達」にしたい人NO1って感じ。誰とでも仲良くなれてフレンドリーで女好きでナンパ好きでユーモアがある人。
てことで結構秀吉と結構似た者同士。だから好相性で秀吉といい「親友」なのですv
そんな仲良く笑いあってる、秀吉の笑顔を見て信長はやきもきしちゃいましたとさv
中身が信長の利家が面白いことしてるの見て秀吉が笑ってるのに信長はいつもそんな笑顔を利家には見せてるのかとやきもちやいちゃってましたが。
信長もあの部分は地でやってただけあって結構面白いこともしちゃうような人です。
そしてそんな信長を見て秀吉は結構笑ってたりするのですよ。
結局バカにしたな?ってお仕置き食らうんですけどね(笑)でも笑ってくれたことは実は嬉しい信長様。
秀吉が笑ってるとこは結構実は見たことがある信長様。今日は結局「秀吉と気兼ねなくバカにし合える関係」に憧れてたようです。
でも基本程良い緊張があるのが「恋人関係」の醍醐味だと思います☆「センゴク」で千石から見て
「秀吉さま緊張しておられるのか!?でもお二人の間から一緒にいたいって気持ちが伝わってくるようじゃ。」と
秀吉と信長のことを言ってたのに死に悶えた萌え死んだ!!!!!!!!!!/////////(爆
2010年4月14日
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