絵画行為論
― 浮世絵のプラグマティクス
| 岸文和 著
『絵画行為論――浮世絵のプラグマティクス』
定価 本体3,620円+税 B5判・上製・総頁442頁 2008年4月5日刊行 ISBN978-4-925185-27-1
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内容紹介
浮世絵を描くことにおいて/よって、絵師はいったい何をしようとし、何をしてきたか。美術史学と美学と文学の領域を横断し、言語行為論の視点から、絵画の実用性を検証する。
目次
序章
第一部 絵画の機能
第一章 絵事の逸話――予備的分析
- 第一節 紫の上の絵日記
- 第二節 鳥羽僧正の諷刺画
- 第三節 弟子法師の興画
- 第四節 信実の似絵
- 第五節 広貴の書写上人像
- 第六節 川成の似顔絵
- 第七節 傅説の似顔絵
- 第八節 反魂香と李夫人像
- 第九節 掃守在上の首絵
- 第十節 菱川の遊女絵
- 第十一節 毛延寿の王昭君像
第二章 絵事の構造
- 第一節 絵事のコミュニケーション図式
- 第二節 注文主
- 第三節 制作者
- 第四節 仲介者
- 第五節 受容者
- 第六節 コンテクスト
- 第七節 絵画
- 第八節 コード
第三章 絵画の機能
- 第一節 関説的機能
- 第二節 心情的機能
- 第三節 動能的機能
- 第四節 メタイメージ的機能
- 第五節 美的機能
- 第六節 美的把握と非美的把握
第二部 浮世絵の機能/浮世絵師の行為
第四章 浮世草子が語る浮世絵/浮世絵師イメージ
- 第一節 西鶴にとっての「浮世絵」――春画/若衆画/扇絵
- 第二節 「菱川」の春画と官能性
- 第三節 「花田内匠」の若衆画と当世性
- 第四節 「祐善」の扇/書絵小袖と機知性
- 第五節 西鶴以後の浮世草子が語る浮世絵/浮世絵師イメージ
- 第六節 浮世絵の東西――『風流鏡が池』と『寛濶平家物語』の浮世絵史観
第五章 浮世絵のコミュニケーション図式
- 第一節 発注――注文主としての版元
- 第二節 生産――制作者としての浮世絵師・彫師・摺師
- 第三節 流通――仲介者としての絵草紙屋
第六章 『宴遊日記』に見る浮世絵の機能――絵画行為論に向けて
- 第一節 正月と浮世絵――顔見世絵本/草双紙/錦絵/道中双六
- 第二節 男性/女性と浮世絵――春画と役者似顔絵
- 第三節 読まれ/見られる浮世絵――絵本と黄表紙
- 第四節 画像の機能と絵画行為論
- 第五節 主張型の絵画行為――真を写す
- 第六節 指令型の絵画行為――人を動かす
- 第七節 表出型の絵画行為――情を表す
第三部 浮世絵の絵画行為論
第七章 宣伝・広告の絵画行為論――【提案する】美人画
- 第一節 広告テクストの言語行為論――依頼/主張
- 第二節 戯作メディアの読者――部屋方/町娘/芸者
- 第三節 広告イメージの言語行為論――提案/約束
- 第四節 広告イメージの絵画行為論――美人画/役者絵
第八章 寛政六年の笑い――【穴を穿つ】役者絵
- 第一節 写楽の伝記――悲劇の芸術家
- 第二節 写楽の画業――進化論的歴史観
- 第三節 作品解釈――観相術の伝統
- 第四節 制作目的――優越の理論
- 第五節 真を写す――役者大首絵の絵画行為論
- 第六節 嘲笑の笑いとユーモアの笑い
- 第七節 穴を穿つ――写楽はどこに
第九章 風景を描く理由――【助言する】名所絵
- 第一節 〈写生の絵師〉への三つの異議申し立て
- 第二節 名所絵によるコミュニケーション状況
- 第三節 コードとしての遠近法
- 第四節 〈意匠家〉と〈臥遊の絵師〉の絵画行為論
- 第五節 〈抒情の絵師〉の絵画行為論
- 第六節 〈旅の絵師〉の絵画行為論
- 第七節 「観光のまなざし」と名所絵
第十章 病と闘うメディア――【警告する】【祝意を表す】疱瘡絵
- 第一節 疱瘡と視覚像――『馬琴日記』を手がかりに
- 第二節 絵師と馬琴のコミュニケーション――礼拝のためのメディア
- 第三節 病人と疫病神のコミュニケーション――魔除けのためのメディア
- 第四節 縁者と病人のコミュニケーション――見舞いのためのメディア
第十一章 神仏とのコミュニケーション――【依頼する】【感謝する】絵馬
- 第一節 祈願と感謝の言語行為論
- 第二節 絵馬の歴史的展開
- 第三節 絵馬の絵画行為論
- 第四節 絵馬の比喩的解釈
- 第五節 呪詛のための絵画
第十二章 浮世絵師の理想像――【哀悼の意を表す】死絵
- 第一節 死絵の絵画行為論
- 第二節 国貞の肖像に見る浮世絵師の理想像
- 第三節 国貞略伝のテクスト的性格
- 第四節 国貞の略伝に読む浮世絵師の理想像
結章
註
図版一覧
主要参考文献一覧
索引
後記