ビッグバン宇宙論懐疑派のざれごと
COLUMN
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新規:2010年6月29日
追記:2012年2月27日 宇宙項の話題を加えました
追記:2015年5月20日 気になることの追記です──単なる素人の思い過ごしかもしれませんが 削除:2015年9月23日
追記:2015年9月12日 銀河の渦巻き運動についての考察を加えました
追記:2015年10月28日 最後に主張の比較を一覧としてまとめました
追記:2017年1月5日 エントロピック重力理論を追加しました
追記:2017年4月13日 天の川銀河とアンドロメダ銀河の将来に追記の追記を追加しました
 
最初に
 私はビッグバン宇宙論に疑問を感じています。なので、これは懐疑派のざれごとと笑い飛ばしてくださって構いません。
 
 もっとも、かく言う私も、初めからビッグバン宇宙論を疑っていたわけではありません。というか学生時代に物理学を学んだ私は、宇宙論はビッグバン宇宙論でしか教わっていません。それに市販されている書物も、今も昔もビッグバン宇宙論一辺倒です。
 
 これが日本だけの現象なのか、それとも他の国でも似たような状況なのか、そのあたりはわかりません。
 
 という状況ですので、よほど調べる気にならなければビッグバン宇宙論以外の考え方に、紹介以外で触れる機会はないでしょう。しかも、その中には故意なのか調査不足なのか、間違った紹介のされ方をしているものも少なくありません。
 なので私も自然とビッグバン宇宙論が正しいものと考えて……というか、無批判に正しいと信じていました。
 
 ところが大学を出てから時間が経ったせいか、ビッグバン宇宙論のおかしなことに気づかされました。
 最初は理論的なおかしさではありません。主張するパターンが詭弁家のよく使う「有名な学者が言っていた⇒論理(歴史や過程)のすり替え⇒勝利宣言⇒対戦者の知性などへの人格攻撃」になっているため、「おや?」と思い始めたのが最初です。
 それで注意して耳を傾けていると、ビッグバン宇宙論者が語っている宇宙論の歴史(宇宙史ではなく科学史の方)などが、どんどん都合よく書き換えられているという、にわかには信じがたいことに気づきました。これはその時その時の宇宙論だけを見ていると気づかないところです。
 理論は確定するまで変わり続けるものです。これは科学のお約束です。
 ですが、自分たちが主張してきた過去まで、どうして書き換える必要があるのか。そして、書き替えるだけでなく、どうしてわざわざ勝利宣言までするのか。
 これを一度奇妙に感じ、そしてその後も気になるパターンと同じ行動が繰り返されると、この理論がどんどん胡散臭いものに思えてきます。
 
 こういう詭弁のような主張は、私の知る限りでは宇宙論以外で見たことがありません。
 せいぜい相対性理論で、コンピュータが動くのもGPSが動くのもハイテクは何でも相対性理論(と量子論)の勝利や賜物という傲慢な詭弁や、生物学の進化論で確証済みのように語る詭弁、それと地球温暖化論者の詭弁はありますが、仮説がたどってきた過去の経緯まで都合よく書き換えるような行動は見られません。それを集団でやっている例は宇宙論にしか見られないように感じます。
 だからこそ、なおさら胡散臭く感じるわけです。
 そして少数ですが、今でも定常宇宙論を主張している学者がいることを知り、調べているうちにそちらの方に傾いている自分に気づきました。その中には現役の学者として活躍していた時にはビッグバン宇宙論を主張しながら、学者を引退したあとにビッグバン宇宙論の懐疑本や、定常宇宙論の本を書く人が何人も見受けられるため、ひょっとしたらと……。
 
 ということで、そんな「おや?」と思ったところを話題に挙げてみたい思います。
 
 
 なお、ビッグバン宇宙論と定常宇宙論の意見の食い違いは、大雑把ですが宇宙空間という容れ物の違いとお考えください。
 ビッグバン宇宙論は宇宙空間という容れ物が、現在は膨張していると考える宇宙論。
 定常宇宙論は宇宙という容れ物の大きさは未来永劫変わらないと考える宇宙論。
 なのでよく定常宇宙論批判で見掛ける「星には寿命があるし、銀河も衝突するのだから、そもそも定常状態なんて有り得ない」という意見は、見当違いもはなはだしい詭弁・屁理屈とさせていただきます。
 
 なお第3の宇宙論と言われるプラズマ宇宙論は容れ物の論議には中立の立場を取って加わっていないので、補足程度の扱いにします。
 宇宙の膨張はまだ仮説であるので、それを前提に理論を組み立てるのは科学ではないという立場だそうです。
 とはいえ検索した範囲では「ビッグバンを否定する定常宇宙論寄り」とあったり、「暗黒物質と暗黒エネルギーを否定するだけで、基本はビッグバン宇宙論」とあったりで、まだ海のものとも山のものともわかりません。それ以前に、日本ではオカルト論者が適当に話を膨らませてくれるおかげで、すっかりオカルト扱いなのが……。
 また膜宇宙論?も第4の宇宙論になりそうなので、必要に応じて触れたいと思います。膜宇宙論はビッグバン以前を説明する理論なのでビッグバン宇宙論の一部ですが、加速膨張について「宇宙空間の山や谷、平地などの大きな空間地形を見てるだけでは?」という定常宇宙論寄りの考え方が出てきてますので。
 
 それと前置きの最後に。科学オンチのマスコミが映像的な見栄えが良いためだけに取り上げる科学観も論外としてください。あれを科学のように語られると収拾がつかなくなりますので……。
 
管理人の考える宇宙観
 このページを書くにあたり、私の立ち位置を明確にしておきます。
  (1) 宇宙は4次元以上の定常空間。
  (2) 重力は理論上は無限遠まで届くが、静電気より影響が小さくなるほど離れた天体の集まりは電磁流体として振る舞う。
 以上、2点が基本です。(2)に関してはプラズマ宇宙論に近いと思いますが、微妙に違うとも感じてます。(苦笑)
 
 
宇宙の膨張に気づいたのは誰?
 最初の「おや?」は、宇宙が膨張していることを発見して、報告した人です。
 
 一般にはエドウィン・ハッブルが、1929年に発見して、報告したことになってます。
 ところが最初に報告したのは、ローウェル天文台のヴェスト・スライファーです。すでに1912年の時点で遠い銀河ほど速い速度で遠ざかっているという現象に気づき、銀河の赤方偏移を詳しく調べた人です。そして遅くもハッブルが報告する4年前の1925年までに論文で発表しています。
 このスライファーは当時は著名な天文学者で、クライド・トンボーの冥王星発見を支援するなどの功績を残しました。
 ですが、どういうわけか今ではほとんどの功績が記録として残っていません。
 
 この不可解な記録の抹消ぶりを見ると、当時ないしはその後の天文学界で何かあったのか。ちょっと勘ぐりたくなってしまいます。
 
 
赤方偏移は宇宙の膨張以外に説明できないのか
 昔、大きな爆発があって、それで宇宙が生まれた。その爆発で、今も宇宙は広がり続けている。爆発による膨張であるから、どの観測点から宇宙を見ても遠くの天体ほど速く遠ざかっていく。(爆発はあくまでも比喩です。超新星爆発の爆発とは質が違います)
 観測された赤方偏移を、もっとも単純に説明したのがビッグバン宇宙論です。
 オッカムの剃刀(かみそり)という考え方があります。これはもっとも単純な説明が真実に近いと見做す考え方です。ただし、それが「観測を正しく説明していれば」という但し書きが付きますけど……。
 それとビッグバン宇宙論者が言うように、膨張以外で赤方偏移を説明できないというようなことはありません。
 
・光のエネルギー減衰説
 1950年にシカゴ大学のウィリアム・マクミランが提唱した説です。
 光が長い距離を飛ぶ間にエネルギーを失うため、エネルギーの高い青から低い赤へと変わる現象が赤方偏移になるという説です。
 なお、この変化は小さすぎるために、現在でもまだ銀河系内の星では確かめられていません。
 
・赤方偏移の量子減衰説
 1974年にアリゾナ大学のウィリアム・ティフトが報告した現象です。
 先に紹介した減衰説に似てますが、こちらは赤方偏移が72.4km/sの倍数で観測されているという説というか報告です。
 実際に観測されていると言う学者がいる一方で、まったく観測されてないと否定する学者が真っ向から対立しています。
 ちなみに、この量子減衰が実証された場合、ビッグバン宇宙論は完全に否定されることになるそうです。だからこそビッグバン宇宙論を信じている学者たちが、必死に否定してるのでしょうか。
 ただし定常宇宙論ではこの量子化が実証されなくても、理論を否定されることはありません。
 
・高次元の地平線説
 他にも宇宙が3次元ではなく4次元以上の空間である場合、空間のゆがみによって赤方偏移が起こるという説です。(提唱者未確認)
 これを地球上で考えると、水平線や地平線を考えるとイメージしやすいと思います。地面は平らなようで、離れるほど少しずつ傾いて見えるようになります。この傾きが3次元では光の赤方偏移になるという考え方です。
 また水平線や地平線の傾きは、遠く離れるほど加速度的に大きくなります。これを光の赤方偏移に当てはめると、宇宙が加速膨張して見えることになります。観測される加速膨張分が距離の3乗に比例していれば、その可能性はかなり高くなります。
 
 
ビッグバン宇宙論を最初に考えたのは誰?
 これについては1946年にジョージ・ガモフが言い出したという記述が非常に多いように感じます。
 
火の玉爆発起源説(1922年)
 提唱者は未確認ですが、たぶん上で取りあげたスライファーの報告から生まれたのでしょう。となるとスライファーの論文は1922年よりも前には存在したことになります。
 その後、この説はハッブルの論文(1929年)を組み込み、1931年に強化されたそうです。
 
 その他にもフリードマン・モデルで有名なアレクサンドル・フリードマンが膨張する宇宙に関する論文を出版したのが1924年1月。1927年にはジョルジュ・ルメートルもアインシュタインの相対性理論に基づいて宇宙の膨張について論文を書いています。
 いずれもハッブルが赤方偏移に気づいたという1929年よりも前に論文が出ているところが、おもしろいところです。
 
 
 なお、ビッグバン宇宙論と定常宇宙論の対立は、ガモフが提唱した1940年代後半から始まりました。ビッグバン、定常宇宙論という呼び名は、この時に互いに相手をバカにするために生まれた呼び方です。どちらも蔑称だったのでしょう。ところが、そのまま定着してしまいました。
 という経緯ですので、厳密には1940年代後半以前に出された論文をビッグバン宇宙論や定常宇宙論と分けるのは間違いですが、ここでは便宜上、呼び分けさせてもらいます。
 
 
アインシュタインの宇宙項(1922年)
 宇宙論の話題の中に、定常宇宙論を信じていたアインシュタインが自分の相対性理論の方程式を解いたら宇宙が拡大を続けることに気づき、宇宙が拡大しようとしないように宇宙項を加えたこと。そして後年、アインシュタインが書き加えた宇宙項を「生涯で一番の失敗」と語ってたという話が、まことしやかに語られています。
 ところが、この話については確認できる記録は存在せず、ビッグバン宇宙論者が使い始めた大嘘の可能性が高そうです。上で詭弁家がよく使うパターンとして挙げた「有名な学者が言っていた」の捏造の一つです。
 
 まず宇宙項はガモフがビッグバン宇宙論を提唱する1946年よりも、それどころかハッブルが宇宙の膨張を報告した1929年よりも前には、すでに存在していました。
 1922年。この年にアレクサンドル・フリードマンがアインシュタイン方程式を解いた時に、すでに第3項として存在していました。この式はフリードマン方程式として知られています。
 アインシュタインはハッブルが宇宙の膨張を報告した時、宇宙が0になるように宇宙項を定義すれば観測通りになると語っただけではないかと想像します。となれば、むしろアインシュタインは宇宙項の意味に疑問を感じたのかもしれません。近似解とはいえ、どうしてこのような項が導かれたのかと……。
 
 そして2012年現在、問題の宇宙項は加速膨張を説明するものとして利用されつつあります。
 
 
宇宙マイクロ波背景放射(1964年発見)
 ビッグバン宇宙論の本を読むと、ほとんどのものが背景放射がビッグバン宇宙論を証明したと書いています。その中にはビッグバン宇宙論だけが背景放射を説明できると断言している本まであります。
 さて、それは本当でしょうか?
 たぶん、ビッグバン宇宙論を疑っている人の多くが、この背景放射に関する歴史の捏造に、強い不快感・不信感を持っています。
 そこで、まず1965年にアーノ・ペンジアスとロバート・W・ウィルソンによって背景放射が報告される前の理論予想を比較してみます。
 
 まず最初に背景放射を理論的に予想したのは、ビッグバン宇宙論ではなくて定常宇宙論です。ビッグバン宇宙論との対立が始まる前から、定常宇宙論では観測から間接的に温度を試算していました。
 
 最初に背景放射を試算したのは、イギリスのアーサー・エディントンです。この時に試算された背景放射の温度は3.2Kです。続いてドイツのエルンスト・レゲナーが1930年頃に2.8Kと予想し、1941年にはカナダのA.マッケラーが2.3Kと予想します。
 これらを並べると、以下の通りになります。
予想年 背景放射の温度 試算した学者
1926年  3.2K アーサー・エディントン(英)
1930年頃 2.8K エルンスト・レゲナー(独)
1941年  2.3K アンドリュー・マッケラー(加)
 
 一方でビッグバン宇宙論の方は、定常宇宙論との対立の中で、対抗するように試算されることとなりました。
 最初に試算したのはアメリカのジョージ・ガモフで1947年のこと。定常宇宙論で最後に試算したマッケラーよりもあとで、その時の予想温度は28Kでした。その後ガモフは、2度にわたって計算をやり直しています。
 ビッグバン宇宙論の予想温度についても、年代順に並べてみます。
 予想年  背景放射の温度 試算した学者
1947年 28K ジョージ・ガモフ(米)
1949年   5K以上 ルフ・アルファ、ロバート・ハーマン(米)
1953年 7K ジョージ・ガモフ(米)
1956年 6K ジョージ・ガモフ(米)
 
 そして1964年に背景放射が発見され、その時の観測値は3.5Kでした。そしてその後下方修正され、宇宙の背景放射を3K放射と呼ぶ時代が長く続きます。
 この時、一番近い予想を出したのは定常宇宙論の3.2Kないし2.8Kで、誤差は0.2Kです。それに対してビッグバン宇宙論の予想でもっとも近いものでも5Kでしたので、誤差は2Kになります。誤差が1桁も違うのは理論的には完敗です。
 
 余談ですが、もしも1914年に第一次世界大戦が始まらずにクリミア半島で皆既日食が観測できていたら、アインシュタインの一般相対性理論は間違った仮説として消滅していたと言われています。これはアインシュタインが致命的な計算ミスをしていたためです。この時の日食で光が太陽の重力でどのくらい曲がるかを測定する予定でした。その時に観測された星の位置が理論とはまったく違っていたら、当然、仮説が間違っていたとされて棄却するのが理論物理学の世界です。戦争は人類にとっての悲劇ですが、科学にとっては幸運でした。
 
 閑話休題。余談前に書いた通り背景放射の観測により、ビッグバン宇宙論は理論的に完敗したはずですが……。
 ところが、この頃からビッグバン宇宙論の詭弁が始まりました。上の一覧を見て定常宇宙論よりも観測値に近い予想を出した事実がないのに、ガモフが1947年の論文に3Kと書いたと言い出しました。だから背景放射を見事に言い当てたと。
 そして今でもガモフが1947年の論文に3Kと書いたとする本が出回ってますが、そのような論文は存在しません。なお、1947年当時に出たソ連の学会誌か科学誌の中にガモフが3Kと計算したとされる記事が載っているそうですが、それが事実でも上の表に並べた経緯から考えて、たぶん数字の写し間違いか、誤植ではないかと思います。もしかしたら、誰かが小数点を書き込んだだけかも……。
 それと宇宙の背景放射の温度ですが、現在では2.73Kとされています。
 
 
インフレーション宇宙論(1981年発表)
 ビッグバン宇宙論を正しいと考える人には、この突拍子もない発想が救いの神でしょう。このコロンブスの卵的な理論の登場により、それまでのビッグバン宇宙論の抱えていた矛盾の多くが解消されました。一例を挙げれば、
 
   ・宇宙の一様性 〜 観測できる宇宙よりも実際の宇宙ははるかに広いので、見かけ上は一様に見える。
   ・宇宙の暗さ  〜 インフレーションがなければ観測できる一番外側は宇宙が晴れる前の光の世界なので空は明るいはず。
             それが地球から見えない理由の説明になる。
 
 等々です。
 ただし、光の速さを超える物はないと定義しながら宇宙は光の速さを超える速さで膨張した時期があるとするのが、インフレーション宇宙論の肝であり、大きな矛盾です。
 ところが、ほとんどの本はこの矛盾には触れず、ただインフレーションがあったとだけと記しています。
 それでも数少ない矛盾の説明として、
 
   (1) 現在の物理法則が完成する前の現象だから、光速を超えても問題はない。
   (2) 光速を超えたのは空間であって物質ではないので、光速を超えても理論とは矛盾しない。
 
 という2つの考え方があるみたいですが、他にもあるのでしょうか?
 余談ながら最近の書籍等を見ていると(2)の考え方で統一されたように思えますが、実際に統一されたのでしょうか?
 これを物理的に正しい見解と見るか、詭弁と感じるか。それは人それぞれとは思いますが、私にはまるで天動説の周転円のように感じます。
 
 ちなみに今でこそケプラーの法則が正しいとされていますが、ニュートンが万有引力の法則を見つけるまでは、ケプラーの法則よりも天動説の周転円で計算した方が星の運動を正確に表現できたそうです。これはケプラーの法則には、他の惑星から受ける重力の影響が含まれていないためです。
 ですが、当時の学者は周転円がどのような原理で存在しているのかを説明していません。それに単純な周転円だけではケプラーの法則よりも正確に計算ができないため、更に従円、もっと小さい円……と数を増やすという、かなり複雑な補正を加えています。
 
 このあたり、インフレーション宇宙論やこの後で語る暗黒物質などとかなり似ているように思えるのですが、いかがでしょう?
 
 余談ですがケプラーが第1、第2の惑星運動を発表したのはガリレオの地動説裁判より前、第3法則の発表は地動説裁判の最中です。
 このローマ教皇庁による地動説裁判も実は科学界からの要請で行なわれたもので、本当は教皇庁とガリレオの関係は良好でした。裁判は一種の茶番劇だったそうです。その証拠が、ジョルダノ・ブルーノのように火あぶりにされなかったからとか。
 そのブルーノが火あぶりにされたのも地動説を唱えたことではなく、思想・信教の自由を唱えていた哲学者であったせいだそうです。たしかに教皇庁にとっては思想はともかく、信教の自由を唱えられたら無視できません。
 話ついでにブルーノが地動説で訴えられてから、裁判が開かれるまで7年以上もかかってます。さて、この間に何があったのか……。 
 
 
グレートウォール(1989年発見)
 かつてビッグバン宇宙論では説明できない現象とされていた宇宙構造ですが、いつの間にかビッグバン宇宙論以外では説明できないと論調が変わったものです。
 もっとも、実際には今もビッグバン宇宙論では十分に説明できていません。仮説があるというだけです。
 
 まずは定常宇宙論では宇宙の大構造をどのように説明しているのでしょう。
 まあ、定常宇宙論での説明は簡単です。重力の相互作用によって自然と泡構造ができて、それで落ち着くというものです。
 ただし、重力だけでこの大きな泡構造が作られるためには、800億年から1500億年もの時間がかかります。ビッグバン宇宙論が算出した宇宙の年齢では完成しません。
 
 次にビッグバン宇宙論の説明です。2種類確認しました。
 1つは宇宙誕生直後に生まれた泡がそのまま広がり、それが宇宙の大構造になったという考えです。
 泡が生まれるというのは、ビッグバン直後に起きた物質と反物質がぶつかり合って消滅する対消滅のことです。この対消滅は一斉に起こったのではなく散発的に起こったため、空間に泡構造が生まれてグレートウォールができたという説明です。
 もっとも、この考えには泡の発生は一斉ではないと言いつつ、泡構造の大きさが均一すぎるという問題を説明できません。また対消滅のあった場所が泡構造のヴォイド部分になると説明していますが、対消滅した中にも物質は残ってますし、グレートウォールになった部分にも反物質はあったはずなので、説明は初めから破綻していると思います。
 
 そこで生まれた(?)のが、もう一つの考え方です。2006年以降に生まれた、新しい考え方でしょうか。
 この説明ではビッグバン後に新たに生まれた空間が、のちの天体の少ないヴォイド部分になると説いています。新たな空間が生まれる現象がインフレーションで、それは今も起きているから加速膨張していると考えているようです。
 
 この大構造、取り敢えずビッグバン宇宙論、定常宇宙論では説明できていますが、新しく出てきたプラズマ宇宙論ではまだ説明できていないという情報が流れてます。でも、これは明らかなウソです。これもビッグバン宇宙論者によるウソでしょうか。
 プラズマ宇宙論は天体の大構造を電磁流体力学で扱う理論です。天体は電磁力でまとまり、重力が粘性のように働くイメージでしょうか。粘性のある液体のように糸を引いたり、シャボン玉のような膜を作るという考えです。銀河の渦やグレートウォールを説明するためにできたような理論ですから、それが「説明できない」はずがありません。
 この大きなスケールの構造。直感的にはわかりやすいのですが、重力だけで泡構造を作る場合に比べ、どのくらい早く落ち着くのでしょうね?
 
 それと最後に一点。このグレートウォールが説明できなかったのは初期のビッグバン宇宙論であって、インフレーション宇宙論の登場によって(グレートウォールを)ビッグバン宇宙論でも説明できるようになったという記述を見つけました。
 理論的に予言したのであればともかく、インフレーション宇宙論の登場よりも、あとから見つかった大構造を先に発表された理論で説明できるようになったって、なにか矛盾のある物言いです。
 ここにもビッグバン宇宙論者が行う歴史の捏造が見て取れます。
 
 
宇宙の加速膨張(1998年発見)
 この発見以前のすべての教科書には、やがて宇宙は重力の影響で減速すると書かれています。もちろん、ビッグバン宇宙論の話です。
 ところが、1998年に赤方偏移で見ると、宇宙は遠くにある天体ほど強く加速しながら離れていっていることがわかりました。
 この現象についてビッグバン宇宙論を信じる学者の間から、「誰も予想してなかった」という言葉が漏れ、2006年ごろまでに出た科学系の番組や書籍では、たしかにそのように語っています。
 
 しかし、その言葉が2007年ごろから変わってきました。
 どういうわけか「宇宙は我々の予想した通りに加速膨張していた」と言い出す学者(科学番組や書籍)が増えてきました。
 2010年6月末時点では、まだ「以前は予想していなかった」と学者が語っている番組が流れていますが、これまでの流れを考えると、やがて宇宙の背景放射の時のように「予想していた」ことにされ、「ビッグバン宇宙論の勝利」と書かれた本や科学番組が大勢を占めるのでしょう。
 これは現在進行形なので、注意していれば変化を見守れます。
 
 なお、定常宇宙論ではすでに上の赤方偏移の項で挙げたように、事前に加速膨張を予想する考えは出されていました。
 それと量子論の中には、光速は波長が長いほど速いという理論的な予言があります。その考えによれば、光速を一定とする前提の元では赤方偏移によって加速して見えるという解釈になるそうです。
 
追記(2015.5)
 この加速膨張で、気になることに気づきました。
 地球から遠いところにある天体ほど、本当に距離の比例よりも速く遠ざかっているのでしょうか?
 考えてください。地球から見えるのは過去の速度です。今現在の速度が見えるのなら、遠いほど加速して遠ざかっているのは、そのまま加速膨張です。でも、遠い天体ほど過去を見てるのですから、昔ほど速く、今へ近づくほど減速してるのは、重力による減速そのものではないでしょうか。
 となると暗黒エネルギーを想定する意味がなくなります。
 本の説明などで、書いた人が「加速膨張だから、遠くの天体ほど速いんだろ」と思い込みで書いてる可能性はありますが……。
 
 こういう失敗は「人工衛星と地上で、どちらの時間が遅く流れるか」という話題で、多くの本が「人工衛星の方が速く動いてるから時間の流れが遅い」という間違いを書いていた例があります。今はGPSの利用によりその現象が科学的に知られ、そういう間違いの本は減ってきましたけど……。
 
追記の追記(2015.9)
 加速膨張の一次論文のグラフをあたったところ、やはり観測した学者は遠くにある銀河ほど赤方偏移が小さいため、「見かけは減速だが、それは過去の話なので現在ほど加速」としていました。私の気になった通りでした。
 ということで、予想通り書かれた本の方が思い込みで説明していた間違いだったようです。
 
 まあ、元の論文に使われたグラフですが、本来ならば横軸に『天体までの距離』、縦軸に『赤方偏移の大きさ』とするべきですが、それが逆になっていました。そのため目盛りが逆になってるのに気づかず、直感的に「本当だ、加速してる」と書いてしまったとしても仕方ないかと思います。
 
 
暗黒物質、暗黒エネルギー(2015年時点では未発見)
 暗黒物質は観測されたという報告がある一方で、あれは通常物質による重力レンズを観測しただけという反論があるみたいなので、取り敢えずは未発見の扱いにしておきます。
 まあ、それはともかく……。
 
 この2つについて、定常宇宙論ではどのように考えているのでしょうか?
 このあたりに触れた文献を見たことがないので、まったくわかりません。たぶん暗黒物質と暗黒エネルギー(真空エネルギー)はビッグバン宇宙論を理論的に正当化するためだけに想定されたものなので、定常宇宙論ではまったく語ってないだけかと思います。
 
 この暗黒物質、暗黒エネルギーの考え方によれば、宇宙にある96%もの物質は見えない物質でできているそうです。
 暗黒物質23%、暗黒エネルギー73%だそうです。
 
 この疑問は、ここまで触れずに来ました。理由はグレートウォールに触れたのあとの方が良いと思ったからです。
 これはビッグバンで爆発膨張したのではなく、空間が広がっていると言い出したことから生まれた疑問です。
 一点からの爆発膨張で広がってるためなら、太陽系や銀河系は局所的な存在なので、膨張していないことが説明できます。
 ところが、暗黒物質などを持ち出して空間が広がっていると言い出したことから、この疑問が生まれました。
 
 2010年に入ってすぐ、この暗黒物質が未発見のヒッグス粒子ではないかという説が出ています。
 
 なお、プラズマ宇宙論では、これについて単純明快に説明しています。
 暗黒物質と暗黒エネルギーは天体の運動を重力だけでは説明できないために想定した仮想の質量物質と謎の反重力エネルギーです。
 でも、宇宙スケールの天体運動を重力だけで考えているのは大間違いです。
 太陽系内では静電気の影響は小さいため、ほとんど重力だけで天体の動きを計算できます。ただし人工衛星ほど小さくなると静電気の影響を受けるため、時々軌道の微調整が必要になってきます。太陽風や光の圧力の影響という説明をしてますが……。
 私たちの直感では重力は大きく静電気は弱いと考えますが、実際には重力は電磁力より10の38乗も弱い相互作用ですので、扱うスケールに対して天体が十分に小さい場合、静電気の影響は無視できない大きさになると考えられます。
 人工衛星のスケールですら、今の私たちの科学知識では静電気の影響を正確に計算できません。静電気が発生するという知見はありますが、それが軌道にどのような影響が出てるかまで計算できず、出てきたズレを小まめに補正しているだけです。この影響が銀河腕や、銀河団のスケールになったら、どれほどの影響が出てくるでしょうか。
 つまり、ちゃんと静電気の影響を考慮すれば、暗黒物質を想定する必要はまったくない。暗黒物質とエネルギーが計算上では宇宙の96%にもなるのも、静電気を無視した影響というわけです。まさに塵も積もれば山になります。
 
 言われてみると、宇宙スケールでの運動の議論を、私たちは重力でしか考えてませんよね?
 ある程度以上のスケールになったら、電磁流体力学で考えるべきという話です。
 また重力そのものが存在しないというエントロピック重力理論も提唱され、それでも暗黒物質はないと考えています。
 
 
ミニブラックホール(2015年時点では未発見)
 2007年からスイス・ジュネーブで行なわれているLHC(大型ハドロン衝突型加速器)による実験で、ミニブラックホールの発見が予想されています。
 というよりもビッグバン宇宙論にとっては、見つかってもらわないと困る存在だそうです。
 もしもミニブラックホールが見つからなかった場合、はたしてビッグバン宇宙論はどうなるのか……。
 
 たぶん、また理論を手直しして生き残るだけと思いますが……。
 
 

定常宇宙論の問題
 
定常宇宙論にも問題はある
 ……と、ここまでビッグバン宇宙論の問題ばかり並べてきましたが、一方の問題だけを並べるのは不公平なので、最後に定常宇宙論の問題点についても書いておきます。
 この2つを比較して、宇宙論を考える一助になればと思います。
 
 
宇宙に果てがあっては困る
 定常宇宙論にとって最大の弱点は重力の存在です。
 それが問題となるのは、宇宙に果てがある場合です。果ての近くにある天体には、果ての外からの重力は働きません。そのため重力で中心方向へ引っ張られるため、いつかは重力で宇宙が潰れるビッグクランチを起こしてしまいます。これは宇宙は永遠という定常宇宙論そのものを否定する現象です。
 そこで宇宙が3次元空間(開いた宇宙、平坦な宇宙)である場合、無限の広がりが必要になります。ですが、そうなると次に触れる「オルバースのパラドックス」という問題が出てきます。
 ただし宇宙が4次元以上の空間で惑星の表面のように閉じたものであれば、定常宇宙論が成り立つための果てのない宇宙は可能となります。
 
 
オルバースのパラドックス
 定常宇宙論を否定する理屈に「オルバースのパラドックス」というものがあります。これは宇宙が無限に続いているとしたら、夜空は明るくなるはずという逆説です。
 星の明るさは距離の2乗に反比例して弱くなります。ですが、その距離にある星の数は2乗に比例して増えます。つまり差し引きゼロです。
 そのため宇宙が無限に続いているとしたら、空に見える星の間がどんどん埋まって、やがては全天がまぶしいほど明るくなっているはずという理屈です。
 乱暴な計算では全球が太陽なみの明るさになるので、空の明るさは18万倍。真昼の明るさは現在の4万倍になるそうです。
 
 もっとも、実際には星間ガスなどによって光は減衰するため、それほど明るくなりません。
 それでも宇宙が平坦で無限に続いていれば、光の届く距離に限界がない限りは、今よりも明るくなるはずだそうです。
 
 
 この明るさに関する逆説は、ビッグバン宇宙論にもありました。ビッグバンで生まれてそのまま膨らんでいる宇宙では、観測できる一番外側ではまだ宇宙は晴れ上がってないので、その光で宇宙はもっと明るいはずというパラドックスです。
 現在、インフレーション宇宙論によって、晴れ上がる前の宇宙は見えないために暗いという解釈があるようですが、こちらもその説明だけではもっと明るく見えるはずだそうです。
 また赤方偏移で遠くにある星は人間の目に見えなくなるから暗くなる。その見えなくなった部分が宇宙の背景放射だという説明もありますが、そう……でしたっけ?
 
 なお、どちらの宇宙論でも宇宙が平坦ではなく曲がっていれば、宇宙は暗くて良いそうです。
 それなのに最近のビッグバン宇宙論派は、何度も「宇宙は平坦だ」という記者発表を何度も繰り返していて……。
 
 
元素の存在比を説明できない
 これも定常宇宙論の弱点になります。恒星は水素を燃料にして輝いています。なので宇宙が生まれてから時間が経てば経つほど、水素は少なくなるはずという理屈です。
 その考えに基づくと、現在の宇宙には水素が多くありすぎです。
 
 ですが、これにも突破口はあります。ブラックホールの存在です。
 ブラックホールはすべての物質を呑み込むのではなく、降着円盤とは鉛直方向へ水素や電磁波を放出しています。銀河も中央から円盤面とは鉛直方向へ長い水素の帯を出していますが、これが銀河中央にあるブラックホールによるものとは考えられないでしょうか?
 と書くと「ブラックホールはどんどん増えるんじゃないのか?」「ブラックホールは蒸発するけど、それまで何十兆年もかかるんじゃなかったか?」という意見が来るかと思いますが、それはあくまでも吸い込むものがなくて活動が休止したブラックホールの話です。
 星を吸い込むブラックホールは、その強い潮汐力で物質を引きちぎり、最終的には素粒子や電磁波レベルまで分解します。ですが、分解されたもののすべてがブラックホールに飲み込まれるわけではありません。ブラックホールは径が小さいため、重力で加速された素粒子や電磁波が重力を振り切って脱出します。それが降着円盤とは鉛直方向へ吐き出される水素や電磁波です。相対論効果もあって、ほとんどが宇宙空間へ戻されるのではないでしょうか。となれば、恒星が消費する水素とブラックホールが吐き出す水素が、どこかで拮抗(きっこう)して安定するはずです。それが今の元素の存在比であるとも考えられます。
 
 なお、この元素比ですが、実はビッグバン宇宙論にとっても大きな弱点になっています。ビッグバン宇宙論の標準理論では、水素とヘリウムの元素比は説明できても、3番目の元素であるリチウム以降の存在比が大きくなりすぎる弱みがあります。
 特にリチウムの存在比は、理論の3分の1もありません。
 
 
宇宙論のその他の話題
 
E = mc2
 この数式はアインシュタインが見つけたものとして、大変に有名です。
 でも、実はニュートンが研究した力学と光学を統合すれば、いつかは出てくる方程式でした。そして、その2つの物理学をつなぐ関係式は、19世紀末までにはすべて見つかっています。あとはそこから「誰が最初に E = mc2 に気づくか」という状態でした。
 ただアインシュタインは並べられた数式の中から簡潔な方程式に気づいたのではなく、独自に思いついたところがすごいところです。
 
 でも、最初にm = E/c2 と仮定して、式を変形しただけで証明終わりって……。
 なかなかオチャメな論文を書く人でした。
 そして、そんな論文でも受け入れて誉めちぎってしまう物理学界も、大変に(ふところ)(ひろ)い……のかな???
 
 
ブラックホール
 ブラックホールは相対性理論によって予言されたと書かれている本が多くありますが、実際には18世紀末にはすでに予言されていました。
 次に並べるのが、ブラックホール(超重力星)を予言した人と、論文を発表した年です。
   1784年  ジョン・ミッチェル(英:天文学者)
   1796年  ピエール・シモン・ド・ラプラス(仏:数学者、物理学者)
 ただし、これは重力からの脱出速度が光の速さを超える天体があったらという仮定です。ここから光も重力で曲がるという仮説が出てくるのですが、相対性理論ではこの重力の強さで光が曲がるだけでなく時間が遅れるという新しい予言を加えたわけです。
 
 それとブラックホールをアインシュタインが予言したと書いている本もありますが、相対性理論を使って理論的に導いたのはドイツのカール・シュバルツシルトという学者です。
 
 
超光速はあるか?
 一般に相対性理論では光速を物質の最高速度と定義したとされています。でも、これはまったくの間違いです。
 相対性理論は単に現在の世の中はすべて光(電磁波)で観測するため、その光でどのように観測されるかを示した理論にすぎません。
 もちろん、相対論効果で時間の遅れなどの現象が起きているのは事実ですが。
 それと重力波については、アインシュタインはかなりいい加減な扱いをしています。 光速と同じ振る舞いとして扱っていたり、瞬時に伝わる力(正しくは伝わる時間を考慮してない)として扱ったりしたりと、2つの解釈が混在しています。そのため将来的にこの部分の修正が必要になるでしょう。
 
 それはともかく、この世界ではほとんどの現象を光(電磁波/電磁力)を通してでしか観測できません。加速器で粒子を加速する時も、化学エネルギーで加速する時も、結局は電磁力ですから、最高速度は光速が限界になります。光速に近づくほど重くなるように見えるのも、電磁力での加速では限界があるため重くなったように感じるのでしょう。
 でも、だからと言って光速より速いものがないとは言えません。電磁力を使わずに加速する方法が見つかれば、光速を超えられるかもしれません。それに実際に超光速のものがあっても、今は気づいてないだけかもしれません。 
 ちなみに現在、超光速に関して次のような予言が出ています。
 
・チェレンコフ光
 飛行機が音速で飛ぶ時に衝撃波ができます。同じように光の速度が落ちる物質中で粒子が超光速で動くと、チェレンコフ光が出ることが確認されています。
 ただし、まだ真空中から観測したという報告ありません。そこで、今のところは超光速は存在しないことになっています。
 これは見つからないのではなく、単に気づいてない、その影響だと思ってないだけで、見過ごしてる可能性もありますが……。
 
・光速は平均値?
 量子力学では数式を解くと、光は波長によって速度が違うとか、光速は平均速度なので平均以上で飛ぶ光子もあるという解釈が出てきます。
 この解釈が正しければ超光速は十分にあることになりますが、はてさて……。
 ないのであれば、超光速が出ないように数式には修正が必要になるでしょう。
 
 
アンドロメダ銀河と天の川銀河の将来
 私が面白いと感じるのは、アンドロメダ銀河と天の川銀河の未来に関する予想です。
 ここにはビッグバン宇宙論と定常宇宙論の影響が入り込む余地がないように思います。ところが、たまたまなのか関係があるのか、どうも予想に影響が出ているように感じます。
 ビッグバン宇宙論を唱える学者は、アンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突すると考えているようです。観測からアンドロメダ銀河は秒速約120kmもの速さで近づいているのはわかっているので、これはまっすぐ衝突するぞというわけです。
 一方で定常宇宙論を唱える学者は、2つの銀河は800億年周期でめぐっていると考えているようです。スペクトル分析をすれば距離の変化は求められます。でも、横の変化はまったくわかりません。衝突すると考える人は横の変化が検出されないからゼロと考えていて、そうでない人は検出されないのは小さいだけで横の動きはあると考えて2つの銀河が楕円軌道で回り合っていると仮定し、今の青方偏移の大きさや距離などから800億年周期と導いたのでしょう。
 ダイナミックな現象を求めるビッグバン宇宙論派と、調和の取れた安定した世界観を求める定常宇宙論派の好みが、こんなところにも現れているのでしょうか。興味深い意見の違いと思います。
 
追記の追記(2017.4)
 2017年3月、セントアンドリューズ大学の研究チームから、アンドロメダ銀河と天の川銀河の公転周期ですが、ビッグバン宇宙論からダークマターの質量を加えて110億年と考えられるという仮説が出てきました。それによると今から70億年前にニアミスしていて、40億年後に再び最接近(場合によっては衝突)するそうです。
 
 
銀河の渦巻き
 銀河の渦巻きは不思議な動きをしています。銀河内を回転する星々の速度が、中心からの距離に関係なく同じ速度で回っています。
 経験則で考えると太陽系の惑星運動のように、外側の星ほどゆっくり回っても良さそうです。
 現在、定常宇宙論では、この運動の説明はお手上げのようです。言及してないと思います。
 一方でビッグバン宇宙論では、この運動を暗黒物質とダークエネルギーによって説明しようと試みられています。
 
 さて、最初に「不思議な動き」と書いた星の動きですが、よく考えると私たちにはなじみ深い動きです。
 実はこれ、ティーカップを攪き混ぜた時の回転する液体の動きや、川の流れと同じです。流体は曲がる時、流れの場所に関係なく同じ速度で動きます。
 つまり星の動きを重力だけで考えたニュートン力学で見ると不思議ですが、液体の動きとして見ると不思議でも何でもありません。これはまさにプラズマ宇宙論の唱える電磁流体力学です。プラズマ宇宙論が、すべて電磁流体力学で説明してるわけではありませんが。
 するとティーカップを攪き混ぜた時に溶け残った砂糖やお茶っ葉などが真ん中に集まるのと同じで、銀河の中心にある巨大ブラックホールも回転運動によって真ん中へ寄せ集められたものと解釈できそうです。これは現在の宇宙論で考えられている、巨大ブラックホールの周りに星が集まって銀河ができるという考えとは、まったく逆です。となると銀河の中では、銀河平面に近い場所では星が内側へ向かう動きがあり、反対に円盤の表面では外側へ向かう流れがあるのかもしれませんが、どうなのでしょう。
 それと中心からの距離に関係なく同じ速度で回っているということは、中央のブラックホールに吸われて、別の次元へ飛ばされるような動きはないということです。ちなみに中心へ行くほど速くなっている台風は、中心まで平面運動で回っているのに、真ん中でいきなり第3の次元への動き──上空へ吸い上げられてますもんね。
 
 
太陽系に残された未知の惑星
 太陽系内ですでに見つかっている天体の運動から、現在、海王星の外側に未知の惑星Xが想定され、多くの天文学者が探しています。
 現在、予測される惑星はいくつかありますが、重力作用の逆算から有力視されている惑星は以下の通りの特性を持つと考えられています。
   ①太陽から100天文単位〜200天文単位以上離れ、近日点と遠日点の距離が5割以上違う楕円軌道を描く。
   ②公転軌道は大きく傾いている。20〜40度、または140〜160度(逆行)。
   ③惑星の大きさは地球の0.7倍〜4倍。
 なお、NASAが2012年3月の観測で「26,000天文単位の範囲内に木星サイズより大きな未知の惑星は存在せず、10、000天文単位の範囲内には土星サイズの未知の惑星も存在しないことが確定した」と発表していますが、予測される惑星は、この発表とは矛盾しません。
 
 ところが、この未知の惑星について、存在しない可能性が示唆されています。
 予想される公転軌道の傾きが、銀河平面ないし、銀河平面の鉛直方向であるところから、太陽系外からの影響が考えられるからです。
 そこで銀河系内にある暗黒物質の質量が影響しているのではないかという説があります。
 他にも太陽系の銀河系内での運動が影響しているという仮説もあります。
 そして、プラズマ宇宙論で考えると未知ないし想定外の天体運動による重力の影響ではなく、海王星ほど離れると、太陽系外から受ける電磁場の影響が無視できないという解釈になるのだろうと思います。
 
 
エントロピック重力理論(2010年)
 2016年11月、オランダのエリック・ヴァーリンデによって提唱された、重力は存在しないという概念モデルです。創発的重力理論とも訳されます。
 現在の物理学では重力、電磁力、強い力、弱い力の4つを基本的な相互作用としてますが、その中で重力だけが極端に弱く、かつ力を伝える重力子がいまだ見つかっていません。そこで基本の相互作用としての重力は存在しないことを前提に組み立てられました。
 この理論によると重力はあくまで近距離での見かけの力で、宇宙の大構造の中では重力は存在しないものとして考えた方が良いそうです。結果としてはプラズマ宇宙論と同じでしょう。当然、暗黒物質や暗黒エネルギーを想定する必要もありません。
 オランダのライデン大学ではこの理論の検証方法を考え、約3万個の銀河を観測して2016年11月(19日?)の新聞記事で検証実験に成功したことを報じました。
 
 なお、アインシュタインが一般相対性理論から予測した重力レンズですが、まだ暗黒物質を想定した方が観測を正確に表すそうです。
 ただし暗黒物質には自由に変えられる変数がいくつもあるのに対し、エントロピック重力理論には自由変数は1つもありません。
 このあたりはケプラーの地動説に対して、周転円・従円を4つも5つも重ねて「こっちのほうが正確だ」と言っている天動説と同じ状況です。
 ということでケプラー理論のあとニュートンの重力理論が出て地動説が完成したように、エントロピック重力理論も究極理論まであと少しなのかもしれません。
 その時は重力は存在しない見かけの力となりますから、その時はそれまでオカルトだった反重力理論が実現するかもしれません。
 
 
学者のほぼ全員がビッグバン宇宙論を信じている
 たぶん現役の宇宙物理学者の中から、ビッグバン宇宙論に疑問を感じている人を見つけるのは難しいでしょう。
 だからと言って、それを理由に「ビッグバン理論は正しい」と早合点するのは間違いです。
 これはビッグバン宇宙論が正しいからではなく、今の時点ではビッグバン宇宙論に異を唱えると学者になれないという科学倫理の問題です。
 少し考えてみましょう。学者は狭い世界です。そこが自分とはまったく考え方の違う人を受け入れるでしょうか。天動説の時代に地動説を唱えたガリレオを、学界はどのように扱ったでしょう。素晴らしい考えだとは思わず、教会を利用して異端審問にかけさせるほどの拒絶反応を示した話は、に書いた通りです。実際に正しいかどうかとは別の理由です。
 よって、今はどの学者に尋ねても「ビッグバン理論は正しい」という答えしか返ってきません。良心的な学者なら語尾に「と信じられている」と付け加えるでしょうが……。
 
 
どうして日本が宇宙論の中心?
 このページの最後に、科学とは無関係ですが、どうしても気になることを書きます。
 それは1990年代以降、日本が宇宙論の中心地となっているという事実です。
 これを日本の理論物理学が世界一優れていると安易に受け取っていいのか、少し悩むところがあります。
 その悩む理由は地政学的に見られるパラダイム・シフトという現象です。
 
 パラダイム・シフトとは、新しい考え方が生まれ、それまでの考え方が一気に時代遅れになるという現象です。
 考え方というものは、時代とともに変わる宿命があります。それは前に起きたパラダイム・シフトの中心地にとっては当たり前の話ですが、そこから離れた場所ほど「考え方は変わるもの」ではなく「確定した真理」と思い込む傾向があるからだそうです。
 そのためパラダイム・シフトが起こる時期が近づくと、考え方の中心地というか先進地域が、これからパラダイム・シフトの起こる場所からもっとも離れたところへ移るというガラパゴス化現象が起こります。
 
 これを工業化社会を例にとって考えてみます。産業革命はイギリスで起こりました。それによって最初に工業化社会へ突入したイギリスが、世界経済の中心地となります。この後、工業化社会の中心地はアメリカ、日本、中国と移ってきました。では、現在の中心地である中国が世界経済の中心地かというと、それは誰もが違うと答えるでしょう。工業化社会の中心地が日本に移った時、日本ではバブル経済が起こりました。ところが、ほぼ同じ時期にアメリカでは情報化社会へのパラダイム・シフトが起こり、その後も世界経済の中心地の地位を保っています。
 これと似たようなことが、宇宙論でも起こりかねません。
 
 ひょっとしたら宇宙論は次の段階へ進もうとしているのに、日本だけが時代に取り残されているのかもしれません。
 実際に2000年以降、欧米ではプラズマ宇宙論で考える学者が増えているのに、日本では皆無どころか専門の書籍すら存在しません。
 今の日本でプラズマ宇宙論を探すと、オカルト系や新興宗教のものばかりが出てくるんですよねぇ。本でもネットでも……。
 まるでマックスウェルの電磁気学が電波の存在を予言してる時、イギリスでは電波はオカルトだと言って研究が出遅れたような……。(苦笑)
 そして2016年11月、オランダから「重力は存在しない」というエントロピック重力理論の実証実験成功の報告が出てきたのに、日本では反重力理論もオカルトだと……。
 
 

主張比較
 
 最後にビッグバン宇宙論と定常宇宙論の比較を一覧にします。
 第3第4の宇宙論であるプラズマ宇宙論、膜宇宙論も併記します。
空間について ビッグバン宇宙論 定常宇宙論
宇宙 真・ビッグバン宇宙論 膜宇宙論 プラズマ宇宙論 真・定常宇宙論
宇宙の容れ物 約138億年前に生まれ膨張中 膜の地形がある (中立) 宇宙空間は定常で変わらない
赤方偏移 宇宙が膨張しているため 宇宙の空間地形の影響 --- ・光子のエネルギー損失
・高次元の地平線
加速膨張 暗黒エネルギーの影響 --- --- 高次元のゆがみの影響など
背景放射後付けで修正------1941年までに計算
宇宙の大構造 宇宙膨張の影響 ---プラズマの流体力学で説明可能 時間をかければ重力のみで形成可能

暗黒物質・エネルギー

重力の観測から存在を確信 ---電磁力を考慮すれば存在せず 存在せず
銀河の渦巻き 暗黒物質の影響 --- 流体としての動きそのもの ---
海王星の軌道の乱れ ・未知の惑星の影響
・暗黒物質の影響
--- 太陽系内外の静電気の影響 ・未知の惑星の影響
・太陽系の空間運動の影響