サスペリア版



テレビ初放映版であるが……なんと音楽が違う作品のものに差し替えられているというとんでもない代物。

放映日は80年10月16日(木)、木曜洋画劇場の枠で21:00〜22:54、東京12チャンネル(現テレビ東京)系列で放映された。解説は深沢哲也、 吹き替えは内海賢二(ピーター)、石丸博也(ロジャー)。しかし、番組欄では「1978・伊」であり、「ジョージ・A・ロメロ監督ほか」となっている。
読売新聞の紹介によると
「七八年、イタリア。ケンフォーレ。宇宙からの怪光線を受けてよみがえったゾンビ(死者)の群れが人間に挑戦。地球存亡の危機にさらされる。ジョージ・A・ロメロ監督ほか」
となっている。通常は監督のみ表記するので、ほか″とは共同監督の事を指しているようだ。

最大の特徴は音楽の全差し替え。確かに音楽を担当したゴブリンのものではあるが、ダリオ・アルジェントが監督した「サスペリア」のBGMになっている。
放送後にクレームが殺到したそうだが、それも当然であろうか。尚、2ヶ国語放送であり、副音声ではオリジナルが聞けたようである。
また、タイトルが「ゾンビ―地球SOS 死者が甦った日―」と副題がついており、「ゾンビ」の文字も従来使用されているものとは 別のものが使用されている。
木曜洋画劇場アバンタイトル  サブタイトル 深沢さん
(提供は大京観光のみ確認。また、解説では通常の音楽[サラトゾム]が流れている)

CMの入りは都合5箇所。
CM1  CM2 CM3
CM4  CM5
(CM入り)

CM1  CM2 CM3
CM4  CM5
(CM明け)

日本版のみに存在するのが、冒頭の惑星爆発シーンである。ゾンビ発生原因はオリジナルの劇中では語られていないが、日本版では「惑星イオスが爆発し、その光線で蘇る」とされた。 惑星爆発シーンはこれの事だろうが、日本オリジナルの展開である。一応、前作の「NIGHT OF THE LIVING DEAD」でも宇宙線が原因ではないか、という箇所が存在するのだが……。
この爆発シーンは「煙→煙から閃光→閃光から再度閃光→爆発」を3回繰り返す。ただし、3回目のみ最後の爆発がない。噂では、「メテオ」という映画から持ってきたシーンと言われているが……。
惑星爆発シーン1 惑星爆発シーン2 惑星爆発シーン3
(冒頭の惑星爆発シーン)

タイトル後に日本語のキャスト・監督クレジットが出てくるが、、監督クレジットも共同監督としてクレジットされ、ロメロ監督が下に来てしまっている。これは公開当初名の売れていた アルジェントを全面に出した名残で、実際はロメロ単独監督である。
CM1  CM2 CM3
CM4  CM5

本編中でのキャスト紹介
フラン本編キャスト  スティーブン本編クレジット  ロジャー本編クレジット

ピーター本編クレジット
(ピーターとロジャーは第十三親衛(新鋭)部隊″で一緒だった知り合いという独自の設定)

アパートの説明など、説明テロップが3つある。第二分署は本来巡視艇基地で「第二分署」という名称は与えられていない。恐らくピーターとロジャーのSWAT隊員という設定からきた警察署と考えられ、テレビ版のみの独自設定と思われる。また、着陸場所も屋上ではない。
アパート  分署屋上  分署無線室
(アパート、第二分署屋上、第二分署無線室。ヘリと同じ場所にロジャーとピーターのパトカーが来るので屋上ではない事が判る)

本編中で2回ほど「二ヶ国語放送」のテロップが出る。
二ヶ国語放送1  二ヶ国語放送2

来週の映画予告テロップも同じく2回。
予告テロップ1  予告テロップ2 予告テロップ3
予告テロップ4  予告テロップ5 予告テロップ6
予告テロップ7  予告テロップ8 予告テロップ2回目
(1回目はモール内のゾンビ掃討直後、2回目は豪華ディナーのシーンから)

ここで疑問が出てくるのが、OPクレジットである。日本版はアルジェント版をベースにしているはずだが、ロメロ版を踏襲している。が、それも中途半端な形になっている。 というのも、途中でクレジットがなくなるからである。どうやらアルジェント版のOPクレジット終了部分までロメロ版を使い、以降はアルジェント版を使用しているようだ。 残念ながら、何故こういう形になったのか明確な答えはないようだが……。
アルジェント版 ロメロ版
(左のアルジェント版はロメロ監督のクレジットのここで終了。サスペリア版はこの次のシーンでタイトルクレジット。再放送版は共同監督クレジットになっている) アルジェント版 ロメロ版
(右のロメロ版はこれ以降も続く。)

良く判らないのは一番最初のクレジットだ。ロメロ版を踏襲しているなら同じであって良いはずだが、何故か違っている。ビデオリリース版だからだろうか?
サスペリア版 アルジェント版 ロメロ版
(左からサスペリア版・アルジェント版・ロメロ版。ローレルは北米地域担当なのだが……)

テレビ放映に際して、大幅にカットされている。カット部は大きく1・シーン丸ごと 2・細かいカットに分けられる。以下にカット部を紹介。左がカット開始箇所、右がカット終了個所である。

1・シーン丸ごと
巡視艇基地(テレビ放映では「第二分署」)出発後の民間人と軍共同のゾンビ狩り〜給油基地シーン
カット開始 ゾンビ狩り カット終了
(正確には左のヘリでの会話から右のスティーブンが倒れているシーンまで。右のシーン直後のヘリ内での会話は残っている。しかし、流れ的におかしなことになっている。 右のシーンは射撃の得意でないスティーブンがピーターに襲いかかろうとするゾンビを倒そうとするものの、何も言わずに撃とうとした為にピーターに怒られたシーンである。 それを受けてヘリ内のピーターが「味方の弾にも気をつけないと」と皮肉ったセリフにスティーブンが怒って振向き、ロジャーが諌めるもののピーターがニヤッと笑う。それが テレビ版では「四人で力を合わせてやってみよう」というセリフになっている為、スティーブンの振向きとピーターの笑い顔が意味不明になってしまっている。真ん中のゾンビ狩りは前作「NOTLD」を思い出させるシーン)

ショッピングモール内のゾンビ掃討戦後の生活シーン
カット開始 買い物 カット終了
(ちょうどフランのつわりでのCM入り〜CM明けのロジャーが暴れるシーンまでの間が丸々カット。束の間の休息シーン)

暴走族がやってくるのをピーターとスティーブンが確認するシーン
カット開始 屋上から暴走族を確認 カット終了

暴走族がトラックをどかすシーン
カット開始 トラック移動を断念 カット終了

2・細かいカット
アパートで黒人の旦那が奥さんの腕を噛み千切るシーン
暴走族がゾンビに食われるシーン
のようなゴア(残虐)シーンカット部分が大きく占めるが
ヘリの練習シーン直前のフラン化粧シーン
のようにちょっとしたシーンのカットもある。
奥さんに噛み付き フランの化粧 暴走族の作戦会議
(右のショッピングセンター襲撃会議のシーンもカットされている箇所)

カット以外にストップモーション処理が2箇所、超トリミング処理が1箇所ある。
奥さんに噛み付き止め ドライバー突き刺し
ロメロワイド版 アルジェント版 サスペリア版
(左がロメロ版[ワイド仕様]、真ん中がアルジェント版、右がサスペリア版。シーンも短くなっているので、正直何をしてるか判らない)

また、面白い事に独自のシーン入れ替えを行っている。「ドアの鍵をマシンガンで破壊→暴走族のバイク進行→警報装置」の流れが「暴走族のバイク進行→ドアの鍵をマシンガンで破壊→警報装置」になっている。
暴走族のバイク進行 マシンガンで破壊 警報装置
(本来は左と真ん中のシーンが逆。警報装置の直後にマシンガン野郎がドアを開けて中に入るので、サスペリア版の方が流れとしては判りやすい)

さて、肝心要の音楽であるが、以下の表の通りで、サスペリアからは都合4曲ほど使われている。しかし、有名な「サスペリアのテーマ」は使用されていない。

シーンタイムテーブル使用時間使用曲
アパート突入08:17-10:1600:38エレナ・マルコス
アパート内での戦闘10:17-11:4901:10悪魔達の囁き
店への突入26:07-27:3102:20悪魔達の囁き
お買い物28:01-29:1300:12エレナ・マルコス
強行突破31:55-32:1001:11暗黒の森
強行突破32:14-33:3701:11悪魔達の囁き
民族ゾンビ強襲38:27-39:2502:37エレナ・マルコス
トラック置場での戦闘46:22-48:0501:57エレナ・マルコス
ロジャーVSゾンビ52:07-52:5501:08悪魔達の囁き
ゾンビ掃討55:16-56:1500:06エレナ・マルコス
自動車までの戦闘57:05-58:4001:32悪魔達の囁き
ゾンビ殲滅60:34-61:1100:31闇の饗宴
ロジャーの苦悶64:41-65:0902:14暗黒の森
暴走族との戦争80:32-82:4102:05悪魔達の囁き
ピーターVS暴走族VSゾンビ84:06-84:2800:26闇の饗宴
暴走族退却84:34-82:5002:05闇の饗宴
スティーブンゾンビ化88:19-89:5300:26闇の饗宴

エレナ・マルコス5回、悪魔達の囁き6回、闇の饗宴4回、暗黒の森2回となっている。この他、悪魔の囁きのバックに流れている叫びが10回使用されていた。 ただ、残念な事に検証に使用した「サスペリア 完全版」には叫びのみというものがなかったので、違うものに収録されているものを使っているのかもしれない。
この他に「麻薬大捜査線(原題:LA ViA DELLA DROGA)」からも何曲か使用されているが、CDに収録されている物は同じ曲のショートバージョンや曲と曲のミックスみたいな ものもあり、完全には判別できなかった。ラストで使用されているメインタイトルは「ゴブリンコレクション1975-1989」に収録されているバージョン。

また、独自の効果音も使用しており、アパート前のサイレンやフランとスティーブンの射撃練習時の銃声等。特にピーターが屋上でテニスの壁打ちしている時のボールの跳ね返り音は 「ポニョーン」といったもので、何とも言えぬ味わいがある(笑)

そして忘れてならないのがラストのセリフ。本来は
ピーター:How much fuel do we have?
フラン  :No much
ピーター:All right
と、こんな会話である。ロメロ版では「燃料は?」「わずかよ」「いいさ」、アルジェント・DC版では「燃料は?」「少しよ」「まあいい」と訳されているが サスペリア版は一味違う。
ピーター:赤ん坊を育てる場所を見つけなきゃ
フラン  :そうね
ピーター:任しときぃ
……超意訳である。しかし、この訳が出てくる背景がちゃんとある。フランの妊娠は中盤で判明するが、このシーンで既に超意訳が炸裂している。 ロジャーは「医者に見せよう」とほぼ本来の役回りであるが、他の3人が全然違う。本来スティーブンとフランは中絶するか迷っている。確かにフランは出来るなら産みたい派″、 スティーブンは中絶も仕方ないのかなぁ……″とかなり消極的な中絶賛成派。ただ、どちらも戸惑いを感じて決めかねている。なのに、サスペリア版のフランは 「産みたい」ときっぱり言い切り、「堕ろしたいの?」というフランの問いに「そうだ」とこれまた言い切るスティーブン。そして「中絶のやり方を知っている」 と中絶派のピーターは「大丈夫、何とかなる。男が3人もついている。じゃ、異議ないな(スティーブンが怪訝そうな顔「あっ?」)……フランに子供を産ませるんだな。後になって文句を言うなよ」と正反対の役回りに。 「後になって文句を言うなよ」は中絶するなら今しかないぞ″と取れなくもないが、文脈からして「文句は言わせない!」という堅い決意と見るべきで、 死人が蘇り追い詰められて行くという絶望的な状況下で、新たな生命の誕生を阻止するとは何事だ!という訳者のこだわり(勝手な改変ともいう)が感じられるのは気のせいだろうか……。

このように音楽といい、セリフ・設定の改変(設定の改変は再放送版解説も参照されたい)といい、真の「第3のバージョン」といえ、世界に誇れる代物である……本当か(^^;


このサスペリア版には亜流が存在する。一つはタイトルが白いもの、もう一つは「偽造サスペリア版」である。

仮に「タイトル白仕様」とさせて頂くが、基本的にはサスペリア版と変わらない。違っているのは「タイトルが赤ではなく白」「キャスト・スタッフクレジット」 「テロップがない」である。最大の特徴であるタイトルは全く同じものであり、タイミングなども同じであるが、色だけが何故か白に変更されている。「キャスト・スタッフ クレジット」はピーター役のケン・フォーレとロジャー役のスコット・H・ラインガーのみがクレジットされ、監督クレジットも文字の大きさや配置が違っている。「テロップ」に関しては、 CM明けのロゴ、本編でのキャスト紹介テロップ、『プエルトリコ人のアパート』以外のテロップ無し、次週映画紹介のテロップ無しである。
また、検証に使用したものにはカウントダウンが入っている。放送されたものの録画ではなく、素材をダビングしたものなのだろうか。
白タイトル キャストクレジット 監督クレジット
(タイトル・キャスト・監督クレジット)

カウントダウン1 カウントダウン2 カウントダウン3
(カウントダウン。ビデオでは「6」から始まっている)

「偽造サスペリア版」は音楽が元に戻った2回目以降の放送されたものに「サスペリア」の音楽を挿入したもの。使用箇所及び使用曲については近日中に上げたいが、 これはこれで味があると言えるだろうか……。
「偽造サスペリア版」は以前あるHPで「サスペリア版」と称して売られていたものだという。 何やら様々なビデオを大量に売っていたようであるが、商売する気があるのかないのか判らないような所であった。残念ながらそのHPのアドレスは 失念してしまったが、今でも存在しているのだろうか……。

*素材が不完全なこともあり、日本語製作スタッフ等の詳細なデータは判明しなかった。ビデオの出自も含め、引き続き情報・資料収集に当たりたい。






戻る