舌癌の手術によりどんな後遺症が残ったかを紹介します。
手や足等もそうですが五官(目・耳・鼻・舌・皮膚)も健常者の人は特に意識せずに生活している事と思います。
手術では舌以外にも不自由な箇所がでてきます。


肩がこる・腕が上がらない

首が回らない

会話が出来ない

食事が出来ない

味がわからない


●肩がこる・腕が上がらない


再建術(移植手術)により左胸の筋肉を取ったため左胸から首にかけて常に引っ張られるような、ツッパリ感があります。
腕(肩)は手術後3ヶ月間は真下から90度(前ならえの状態)位しか上がりませんでした。
その後少しずつ普段の生活の中で腕を使うようになり半年過ぎて、90度+45度まであがるようになりました。
それでも肩が以前のように真上まで上がる事はありません。
最初のうちは、肩が上がらない為お風呂で洗髪するのが非常に困難でした。
肩の自由はききませんが腕は曲がるのでさほど不便さはありません。
苦労した事はスポーツ車のマニュアルを運転する場合にシフトレバーの5速を入れるのが、うまく力が入らず苦労しました。普通の営業車等は問題なし。
やや寝た様な姿勢で肩を動かす時に不自由感を感じます。
また力を入れるとすぐに、肩の筋肉がツッテしまいます。




●首が回らない

悪性腫瘍摘出手術(舌の切除)で首回りを約半周(右耳から左耳の付け根まで)切開しました。
また放射線治療も行った為首回りの筋肉が硬くなり左右とも首が10度程しか回らなくなりました。上下方向の動きも悪く特に、上を向く事が非常に難しくなりました。
よって視野が極端に狭くなり目線の動きで周囲の状況を確認するしかありません。
街の人ごみの中を歩く時や、車の運転でバックをする時には慣れるまで注意が必要です。
乗用車の場合は多数ミラーがついていてそれ程視界も悪くないので、そんなに心配はいりません。
また首を上向きにするのが難しいことから、歩くときは下を向く事が多いので姿勢がどうしても前かがみになります。あまり良い姿勢ではありません。




●会話ができない

舌の手術状況や術後経過の個人差で非常に障害の程度が分かれる部分です。
参考に舌を全摘出した私の場合は・・・
普段舌を使っている事を全く意識していないのでまさか会話が不自由になるとは思ってもいませんでした。
まず舌が会話でどのように使われているかといいますと
舌は全ての発音で使用しているわけではありません。
・舌を十分に動かして発音する場合
・舌は動かさず口のスペースを小さくして発音する場合
・舌を全く使用しない場合
等、普段発音に応じて自然と舌を使い分けています。
舌がまだある方は、舌を意識していろんな五十音を発音してみて下さい。
たとえば「あ」と言う音は声帯が残っていれば舌を全く使わず発音できますよね。
でも「か」や「た」は舌を動かさないと発音できませんよね。
このように、舌がないと発音できなかったり、発音が不明瞭になったりする事が出てきます。
専門的に言えば
@口唇音(ま行、ば行、ぱ行等)
A歯音・歯茎音(さ行、た行、ら行)
B歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)
C軟口蓋音(か行、が行等)
で分類されるようです。
私の場合は、
・「か行」「が行」「た行」などがほとんど発音できない
・「ら」と「な」、「か」と「は」の区別がつかない
等他にも多数聞きとれない音があります。
手術後は全くしゃべれず「あー」とか声をだす(声帯を震わすだけ)事しか出来ませんでした。
日常生活で会話をしていけば、それなりに舌を使わず擬似的に似たような発音が少しずつ発生できるようになってきます。
簡単に言えば、口笛で楽器と同じようにドレミが吹けるように、口の開け方や唇の動き等でなんとなく似たような音が出てきます。
ですから全くしゃべれなくなる事はないと思います。
基本はゆっくり、丁寧にしゃべる事です。
発音しずらい単語は身振りを交えたり、別の言い方に変えたり工夫をすれば多少もどかしい所はありますがなんとか生活できます。
話が通じない時は、手に障害のない方は筆談をすればいいのです。
筆談といっても、文章を書くのではなくキーワードの単語を数個書けばたいていは通じます。
個々の発音(五十音)は不明瞭でもそれが単語から文章になると前後の意味合いからだいたい会話は成立します。
それでも会話の前後に意味のない言葉や、数字、固有名詞(地名・人名)、外国語、専門用語等はなかなか理解してもえない事が多いです。
また、電話での会話もかなり困難です。
・相手に自分が障害者だと認識されない
・身振り・手振りができない
・筆談ができない
・音質が不明瞭
等の問題点があります。
現在の私の生活では・・
・妻とはゆっくり話したり、繰り返して伝えればほとんど理解してもらえる。
・3歳の子供は、玩具やお菓子など自分に興味のある話であれば理解してもらえる。全体の1/3から1/4は理解してもらえてる感じです。
・1歳の子供も名前を呼んだりすれば「はーい」と返事をするので全く通じない事もないようです。会話はまだまだこれからでしょうが・・・
・会社の人は復職して3ヶ月経過した事もあり妻と同等レベルで理解してくれる人も数人います。全体では1/3から2/3は話が通じていると思います。通じない専門用語や固有名詞等は筆談で行ってます。
電話も同僚とならある程度会話が可能です。
でも外部からの電話にはでる事ができません。
考えてみれば、家族より会社の同僚といる時間が長いので通じるようにもなるのでしょう。
最近思うのは、私のような話し方を理解できる人は最初から会話が成立し、理解できない人は何ヶ月経っても話が通じないようです。
これは、病院の先生や看護婦さんとの会話でも感じる事です。
聞き取れる音は、個人差があり、ある程度生まれ持った感性に大きく左右されるようです。
ようは、相手の理解力でも大きく変わってくる事です。
障害を持って以前よりは当然口数は減りましたが、なるべく多くの人と話す事がリハビリの第一だと思います。




●食事が出来ない
舌を切除した事により以前のように食事をする事ができなくなりました。
「別に舌がなくても食べられるよ」と私も最初は思っていました。
でも現実は厳しく、とかく食事に関しては相当重要な役割を果たしているようです。
食事の時に意識して舌の動きを気にする事などないと思いますが、まだ舌のあるみなさんは一度意識して食べてみてください。
食べるのに結構舌を使用している事がわかります。
まず私は、移植手術の為舌の歯が全てないので噛む事が出来ません。
これは、手術の仕方によっても変わる事です。
しかし歯があっても食事するのは大変です。
これは移植筋肉(腕、腹、胸)が残った舌とうまく合体すれば、食事もだいぶ楽に出来るようです。
残った舌の大きさで障害の程度も変わってきます。
舌の1/2切除しても前と殆ど変わらず食事は出来るそうです。
そして舌の2/3切除では障害がかなり残り食べにくくなるようですが、全く食事が出来なくなる事はないようです。
お粥や、柔らかい煮物など食事の形態はある程度制限されるようですが・・
そして私のように舌が全くない場合、以前のような食事と呼べるような物は全く期待できません。
そればかりか、口から物を摂取する事が全く出来ないのです。
考えただけで恐ろしいですが・・・
なんでこのように障害がでるかといえば、人は物を歯で噛みますが歯で噛めるようにしているのは舌だからです。
食べる動作は、
@口の中に食物を入れる
A舌で歯と歯の間に食物を持って行く
B歯で食物を噛む
C舌で唾液と混ぜ合わせる
D再び歯で噛む
E舌で噛み終えた食物を喉奥に押し込む
F飲み込む
おおまか以上の動作で人は物を食べています。
思った以上に舌を使って食べているんですよね。
舌のある方は実感してみて下さい。それでも舌を動かさなくてもなんとか食べれるように思う方もいますよね
私も舌がある時に実際手術後にどうなるのかと思い、舌を動かさずに何度か食べました。食物の形状さえ選べばなんとかなると思いました。
実際手術しても何とか食べている人も多いようです。
それは@〜DがあまりできなくてもEとFができれば物は口からある程度食べれるのです。
もちろんステーキは無理ですが、お粥やカレー等ゆっくり時間をかければ食べれるようです。
歯の代わりは入れ歯やインプラントで代役はいくらでも出来ます。
でも問題はEとFなのです。
Eでは特に私のように舌を全摘出した場合に問題になります。
移植した筋肉が舌のようにボリュームよく盛り上がってくれれば飲み込みはだいぶ楽なようです。
説明は難しいですが、移植した筋肉にボリュームがあれば食物を口の中に溜めて、自分のタイミングで喉に押し込めるのです。
押し込む筋肉(舌)がない時は首を傾けたりして物を喉におくります。
でも私のように移植した筋肉が痩せていたり、手術後に筋肉のボリュームがなくなり、たれてしまうと、物を飲むのが著しく困難になります。
自分の意思に関係なく物が喉に流れて詰まったりむせてしまうからです。
健康な人は日常意識しないですが、水を飲む時も一度口の中に水を入れ舌でせき止めて、タイミングを計って飲んでいるのです。
もし思いがけずいきなり喉に水がくると、肺に水が入りむせてしまいます。
最悪の場合肺炎になります。実際私も一度なりましたが、食物をうまく食べれない人は、この誤嚥性肺炎になる心配が多いようです。
そしてFの飲み込む動作です。
本当に大事なのはここで、物を最終的に飲み込めるかにかかってきます。これは、手術で舌を切除したり、口の中の筋肉を切除(悪性腫瘍の切除)すると、筋肉が減った分どうしても今までより口の中の空間が増します。そうすると、飲み込む時の圧力が低くなり飲みにくくなるのです。また私のように嚥下(飲み込む)する為の筋肉を切除した場合も当然飲み込みが難しくなります。
実際手術後3ヶ月は唾液も飲む事ができず、ティッシュペーパーで拭き取っていました。その後徐々に唾も飲めるようになりました。
舌がない事は思った以上に苦労させられました。
他にも、うがいをする事ができない、ストローが吸えない等いろいろ不自由があります。
詳細な嚥下障害については、専門書がいろいろあるので本屋さんで見られてください。

最後に、嚥下障害になり飲みやすそうで、飲めないのが水です。
何故水が飲みにくいか?
理由や原因は人それぞれ、障害の程度、種類で異なると思います。
よく言われるのが、「水がさらさらしているから」という理由です。
でも、自分が実際になって感じたのは、水がさらさらしている理由だけではありません。
ドロッとしてれば、いいとも限りません。
「さらさら」や、「ドロッ」は、飲み易くする為の形状でしかないのです。
嚥下するのには、まず嚥下をさせる為の無意識的な刺激(はんしゃ)が必要なのです。
特に嚥下機能が鈍った人には、なおさら嚥下させる(開始)為の刺激が重要だと思います。
感覚(感じかた)でいうと、水と空気は、一番自然なんです。
つまり、何も感じないんです。
感じなければ嚥下する機能は、はんしゃ(動き)しません。
水は、
@さらさら
A温度が常温(特に冷たくもなく、暖かくもなく)
B味がない
C匂いがない
D少量(スプーン等で与える)
なのです。
これが原因で、飲みにくいと私は思います。

病人には
お腹が冷えたら大変だからと、冷たい水を与えない
火傷したら大変だから、お湯は与えない
むせたから、少量しか飲めないと決め付ける。
誤嚥による肺炎が危険だから、不純物の入っていない水を与える

私もそうですが、上記の理由から医者や介護人は最も飲みにくい水を与えているケースが多いのです。
そして、水が飲めないから口ではもう飲めないと思ってしまうのです。
お年寄り等、肺炎は命の危険があるので、誤嚥性肺炎には十分に気をつけなければなりませんが、でも何時もと違ったものを発想を変えて少しだけチャレンジさせてみるのも回復の1歩だと思います。
水に少しだけレモン汁を入れる。
冷蔵庫で冷やした冷たいお水。
少量をコップに入れて飲ます。
等すれば、少しは水も飲み易くなると思います。
スプーンからの少量の液体は、たらたらと喉にゆっくりと入り、そして唾液と一緒にいつまでも口腔内に留まります。
健康な人は、常温の水をスプーン1杯飲んだ事などないと思います。
意外と飲みにくいと思います。

水を飲む事に何故こだわるかと言えば、
私みたいな病気になり医者がまず嚥下で確認するのが水だからです。
手術後は後遺症により嚥下機能に障害がないか、口から食べれるか検査をします。
これを、「がっか造影検査」といいます。
検査はバリウム入りの少量の水を飲み、それをレントゲンで確認する方法です。いわゆる胃とおしのバリウム検査と同じです。
喉の動きと水の動きが一目で判ります。
この時、飲めずに肺に入ると、肺炎の危険があるので、極少量のバリウム水で検査をします。
まず、10cc。
注射器で、たっらと口へ入れられます。
当然私は、むせました。
私の場合はこれで飲めなかったので、次の50cc、100ccの検査はされず、少量の水が飲めないからそれ以上の物を口から取ることは出来ないとされました。
人は飲むのに口腔内に一度溜めて、タイミングをはかって飲むものと医者は決め付ける人が多いです。
だから、溜める役割をする舌のない自分には飲めないと・・
でも現に今私は、毎日1回(1品)に250ccは一揆に飲みほします
検査した時と何も体はかわりません。舌がはえたわけでもなく・・・
何故飲めるか、それは、
飲むタイミングは、自分で口に物を入れたときに測ればよい事。
少量は、自分の力で喉のおくに送らなければならないが、大量の液体なら後から波のように押寄せて、重力の力で喉の奥へ自然と液体を運んでくれます。
ですから、今でも私は10cc等の少量は飲む事ができません。
最後の口に残った少量の液体は、必ず吐き出します。

飲みやすくする事は、液体の形状だけでなく飲みやすい感覚を口腔内に与えてあげる事と私は思います。
その感覚は、味、匂い、温度、感触等なんでもいいと思います。
感覚があって飲めないとわかった時は、むせて吐き出せばいいのですから。
必ずしも水にこだわる事はないと私は思います。





●味がわからない


やはり舌を一部でも切除すると味の感覚は鈍るようです。
その度合は当然ですが舌の切除範囲で決まります。
移植した胸の筋肉等では当然味は感じませんので残った舌の大きさで決まります。
しかし私のように舌が全くなくても味を少しはわかります。
それは舌以外にも口の中で味覚を感じる部分があるからです。
上あご、ほっぺた、喉等です。
感覚は鈍りますが、甘い、塩辛い、唐辛子辛い、酸っぱい等ある程度わかります。
また人は食べ物を食べる時に味だけでなく、匂い、見た目、触感等いろんな感覚を使って味わって食べています。
例えばカレーやチョコレートは匂いで甘み等を感じる部分が大きいです。
お吸い物等もだしの風味(匂い)を感じて味わいます。
お刺身は固めの触感、牛肉はとろけるような触感が楽しみで食べている事と思います。
特に最近感じるのは記憶です。まだ味がわかった頃に食べた事がある物であれば、多分こんな味だろうなと記憶がよみがえり味覚の補助的な役割をしてくれます。
嫌いな食べ物を見た時は思わず身震いしたり、おいしいデザートを見ると唾がでてきたりたりしますよね。梅干も唾が出ますね。
多分そうゆう事だと思います。




手術後の後遺症