2006/3月:記)

経済時評 (11)構造偽装という大地震

一般社会を騒がせる問題となった“構造偽装事件”ですが、過去の時 代の制度疲労が露見した事件となりました。実際に当事者となられた方は全面的な被害者であり、国の補償や行政の対策支援が必要でしょう。耐震強度不足の建 築物の 取り壊しをすることで、この事件は単なるデータ捏造事件ではなく、“人為的な大地震”と同様の結果をもたらしました。
阪神淡路地震では、ダブルローン、再 建時の資金負担などの問題が発生しました。近代社会はインフラや社会資本の蓄積を高めてきましたが、その結果回復には高額な負担を伴うことになりました。 結局10年以上経過しても街の完全な復元が難しいという状況になったのです。やはり大震災の復興には補償や債務減免が必要なのです。今回の構造偽装問題 は、新たな社会的リスクの発生を予見するものと言えるでしょう。

通常マンションは耐震等級1ですが、これは阪神淡路 地震で倒壊しな いというだけであり半壊する可能性も充分あります。今回はこれをクリヤーしていないばかりか、70%、50%の強度しかない建築物件が造られたのです。確 認申請を取れば足りるとして、限りなく耐震等級1を狙ってギリギリの構造設計をすることに何の疑問も感じなくなったのです。本来、耐震等級は2等級、3等 級を目指すべきなのですが、最低限の基準値に目標をあわせているため、実際には半壊の可能性がある建物が多く存在するものと思われます。関東大震災で東京 駅の旧丸ビルは全く影響は無かったことを思うと隔世の感があります。

国は耐震偽装に対する法的判断を明確にしませんが、もともと建築確認が無効であれば契約は無効です。確認申請が虚偽の報告に基づくものであれば瑕疵担保 の扱いはできません。委託先にも求償できませんし、国の過失責任は免れません。契約が無効であれば手付金は返還、ローン契約は解除となりローンの組み戻し により白紙の状 態になるはずです。耐震強度50%以下で取り壊す必要があっても、建替え費用を居住者に求めることは絶対にできません。国は偽装による詐欺罪で直接賠償請 求す ることはできません。違法建築物の壊し費用は国が負担し、住宅 ローンを含めて契約を白紙に戻すことが当たり前なのです。建替えは新たな契約としてやり直すことが正しいのです。今回の偽装問題もローンはそのままで、建 て替え費用を自己負担させるのは不条理な話です。購入者は手付契約金の返還請求だけ心配すればいのです(損害は過失の割合で販売会社、または建築確認許可 をした国が負担すべきです)。今回の偽装問題では一体どこに制度上の欠 陥があったのでしょうか?これは古い一律の許認可制度であることからすべての問題が発生しています。

重要なことは全てを一律基準にするのではなく、住宅 の優劣を評価し、住宅ローンの借入金額、返済期間、更に地震保険料等をランク付けし、より高い等級ランクを目指すようにすべきなのです。昔と違い建物の強 度測定装置や方法が開発されています。理論上の構造計算ばかりでなく実測値も重要な基準です。

また耐震強度の差は被災時の建物の担保価値に大きな違いとなりま す。震災る免れる建物もあれば、全壊や半壊で建て直しをせざるを得ない場合もあるでしょう。特に半壊の場合は建物の資産価値がゼロとな り、ダブルローンの状態となって過大な負債を抱えるケースとなります。重要なことは、震等級の高い優良マンショ ンの耐久性に合わせて返済期間も長くし多くの借入額が可能となるようにするべきです。耐震等級2であれば借り入れ期 間40年、借り入れ金額4000万 可能とし、更に耐震等級3であれば借り入れ期間 50年、借り入れ金額5000万可能とするのが合理的で適切ではないでしょうか。大地震で倒壊する建物が少なく、損傷が少なく居住可 能な建物が多ければ大都市の復興は出来るのです。

今回の構造計算偽装事件ではダブルローンの返済額月額35万円との 報道もあり、自己破産という手段も検討せざるを得ない状況に立たされました。耐震偽装は契約無効となって当然ですが、一時的な措置としては、国の責任で金 利の減免を適用し住宅ローンの残債は返済繰り延べにより先送りす べきでしょう。銀行には信託部門もあるはずですが、正しく抵当権設定の価値判断が出来ていません(銀行ローンの抵当権設定も不備がある)。建築確認済みと いうことで、建築物の耐久性に関する基本的な評価基準が出来ていないのです。建築物は正しい鑑定評価があって、初めて抵当権の価値判断が出来るのではない でしょうか(現状では土地の評価と同じです?)。いずれにせよ住宅ローンは白紙にもどすのが当然でしょう。

実際の大地震の場合には予測の付 かない事態も発生します。倒壊した場合は、抵当権の自然消滅により利息の免除が必要となります。また地震保険以外の任意の保障制度セーフティーネットも作 るべきでしょう。ま た 建築物に対する責任として、建設会社やデベロッパーも保険以上の基金など何らかの新たな方法も検討すべきです。リスクが大きすぎると考え免責にするのでは なく、評価に値する優良建築 物を目指すためにあらゆる方法を考えるべきなのです。建築確認制度はそれらを促進する機能がなければ全く意味がありません。


建築時には:耐震等級ランク付け→担保物件の格付け→住宅ローンの 優遇策  
被災時には:倒壊時の補償→ローン繰り延べと金利の免除→保障と復興支援 
(将来の復興へ繋がることが重要です)


一律の書類を主にした今の建築基準は、品質を向上させないばかり か、再び違法建築を招くことになります。すれすれの違法建築がまかり通るのです。マンションに比べて大手の軽量鉄骨の戸建住宅は耐震等級3が一般的です が、マンションの耐震等級も2〜3を目標にすべきなのです。
今回の事件は構造設計の専門家が意図的に建築基準を下回るデータを 捏造していたことが後で発見され、一般の居住者など社会的に大きな不安を与えました。そして何の罪もない善良な市民達が人為的な災害により再起不能な状態 に陥りました。建築確認制度は民間ではなくあくまでも国の制度なので国の賠償責任は免れません。昔の制度の盲点が露呈した事件となったといえる 事件で、現代のインフラ高度化社会にはもう機能不全の制度なのです。一律皆同じで良かった時代は既に終わりました。ごくあたり前のことが 分からない談合のまかり通る体質の 省庁はもう要らないと思います。(税金の無駄)
詐欺罪を立件できるのは、販売会社のH社だけです。通謀虚偽の事実があれば建設会社や建築事務所も共犯ですが、行為の時点では被害者の特定ができませんの で立件は不可能です。建築法違反の訴求しかできません。したがって建築確認制度に脆弱性や瑕疵があれば国の賠償責任は免れません。


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