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1 児童虐待防止法の改正

 「児童虐待の防止等に関する法律」は、平成12年11月に施行されましたが、施行後の実情を踏まえ、より強化する方向で改正され、平成16年10月から施行されています。 改正までの実情と改正の要点は次のとおりです。
(1)改正までの実情
 施行後2年半の間に発生した125件の死亡事件のうち7割は、児童保護の専門機関である児童相談所が関わっていながら、子どもを救えなかったのです。 親子の再統合を促す役割を担っている児童相談所としては、子どもを返せという親からの執拗な要求に対して、断固とした態度をとりにくいという事情もあるかもしれません。 都道府県知事は、親に対し指導を受けるように勧告することもできるのですが、強制力がないため実施されたことがなく、 結局、第一線の児童相談所が矢面に立って奮闘せざるをえなくなります。 しかし、児童相談所は困難な事件が増大する一方なのに、専門性のある職員は不足し、手が回りかねているのが実情のようです。 被虐待児童の発見、保護のための通告や警察の援助要請などの規定が不徹底で、児童相談所、学校、保健所、警察、裁判所などの連携が十分でないことも指摘されていました。 このような事態に対処するためには、より踏み込んだ対策が必要であるとの社会認識が高まり、今回の改正となりました。
(2)改正の要点
 改正の主な内容は、@保護者以外の同居人による虐待の放置や配偶者に対する暴力などが児童虐待に含まれることとした、 A児童虐待の通告義務の対象がこれまでの「虐待を受けた児童」から「虐待を受けたと思われる児童」を発見した者にまで拡大された、 B児童の安全確認、確保のため相談所長は必要に応じて警察署長に援助要請が「できる」ではなく「しなければならない」とした、 C保護者の同意に基づいて施設入所の措置がとられている場合、保護者の要求によって児童を引き渡すと虐待が行われると認められるときは、 一時保護することができるとされた、ことです。さらに、通告先は、児童相談所のほか、新たに市町村が加えられ、 通告を受けた機関は速やかに児童の安全確認を行うよう努めるとされました。
 児童福祉法では、児童虐待防止対策の強化のため相談体制の充実、児童福祉施設・里親等のあり方の見直し、 家庭裁判所の承認による福祉施設への入所の期間の上限(2年間)とその更新などの改正が行われ、平成17年4月に施行されます。
 以上のように、児童虐待防止に向けての対策は、親子への支援の面では改善されたところもあるのですが、 虐待家庭への立入りなど強制的な介入については今回の改正でも現行法の域を出ておらず、司法機関の関与についても施設収容の継続承認以外新たな規定が加わったわけではないので、 どの程度の実効性があるか今後の推移が注目されるところです。


2 DV防止法の改正

 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(略称DV防止法)は、平成13年10月に施行されましたが、施行後の経験を踏まえて、 被害者の保護を拡大する方向で改正され、平成16年12月から施行されています。改正の要点は次のとおりです。
(1)暴力の範囲の拡大
 暴力の定義に「心身に有害な影響を及ぼす言動」も含むこととされ、威嚇的な言動などの精神的暴力による被害も保護の対象とすることになりました。 ただし、保護命令は身体的暴力を要件としているので、精神的暴力のみを理由として申し立てることはできません。 また、改正前は元配偶者からの暴力による被害は保護の対象になっていませんでしたが、婚姻中に配偶者から暴力を受け、離婚後も引き続き元配偶者から暴力を受けている場合には、 元配偶者に対しても被害者への接近禁止や住居からの退去を命じることができるようになりました。
(2)子への接近禁止
 配偶者が被害者と同居している幼年の子を連れ去る恐れがある場合、配偶者に対し、被害者への接近禁止と併せて子への接近禁止を命じることができるようになりました。 これは被害者が配偶者の子との面会交流の要求に応じざるをえないとすると、配偶者との接触を余儀なくされることを防止するためです。
(3)退去命令の期間延長等
 加害者の住居からの退去命令による退去期間が、これまでの2週間から2か月に延長されたほか、 一定の場合には以前は認められていなかった再度の退去命令の申立ても認められることになりました。併せて、当該住居付近の徘徊が禁止されます。
 これらの改正の必要性は、本誌「ふぁみりお」第26号で既に指摘していたことですが、これで被害者の保護は万全ではないにしても、著しく改善されたと言えるでしょう。


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