91〜2年頃、Dinosaur Jr.やNirvanaをきっかけに80年代アメリカのインディ・ロックを遡って聴き始めた時に、その手のアーティストで僕が最も強く惹きつけられたのがHusker
Duだった。繊細なメロディや内省的な歌詞をパンク譲りの荒々しい音で聴かせる彼らの音楽は間違いなくその後のロック・シーンに多大な影響を与えたはずだし、そしてまた、彼らに影響されたオルタナティヴ・ロック勢の大半が足元にも及ばない素晴らしいソングライターだった。その頃既にHusker
Duは解散しバンドの中心人物だったボブ・モウルドはソロ活動を始めていて、彼がソロやその後結成したSugar、そして再びソロに戻って発表した作品も聴いていたけれど、ライヴを体験するのはこの日が初めて。妙に緊張しつつ過去の作品を改めて聴き込んで、当日は初めての会場で道に迷ってしまいつつどうにか辿り着く。 前座の地元の男性ソロ・アーティスト、キム・サーモンの退屈な弾き語りを2階席で眺めた後1階に移動。ステージでセッティングしている坊主頭の男はもしかして本人?と思っていたらやっぱりそうで、準備が整うとあっさりとライヴ開始。ソロのショウと宣伝されていたとおりバック・バンドはいなくて、アコースティック・ギター1本抱えて弾き語り。とはいってもギターをつまびきながら大人しく歌う、というようなものではなくて元々激しい曲ではアグレッシヴにアコギをかき鳴らしながら叫んでいる。新作"Modulate"も一人でレコーディングされていたし、きっと今の彼は一人ですべてやりたい気分なのだろう。こういう演奏のされ方だと歌と歌詞がむき出しになるわけで、そうなると"I Apoligize""Hardly Getting Over It""Too Far Down"といった、やはり個人的に最も思い入れの深いHusker Du時代の痛切な歌詞の曲がとりわけ胸を締めつける。 ライヴの半ば頃にエレキ・ギターに持ち替えて「バック・バンドも無いのに?」と思ったら、そこからは最新作"Modulate"の曲を打ち込みのバッキングに乗せて披露。"Modulate"は歌メロや歌詞は今までのモウルドらしいくせに背景にはなめらかな(?)テクノが全面的に流れるという異色作で、要するに新作からの曲はアルバムと同じ音で披露されたということ。しかし、CDで聴くとなんだかんだ言っても声に惹きつけられて聴けてしまうのだけれど、ライヴで聴くと打ち込みのありがちさ・単調さをどうしても感じてしまった。本人はエレキに持ち替えてからはステージ上を跳ね回って激しくプレイしていたけど、昔の曲をこのスタイルでやらないでくれて本当に良かったというのが正直なところ。そのスタイルのまま本編が終了し、2回のアンコールでは再びアコギに持ち替えてプレイしたが、特に最初のアンコールではSugar"If I Can't Change Your Mind"にHusker Du"Celebrated Summer" "Makes No Sense At All"の3曲が演奏され、選曲の素晴らしさもあってほっとさせられた。やっぱりこのスタイルの方がしっくり来るよ。名曲を生々しい姿で聴けた前半&アンコールだけなら本当に素晴らしいライヴ、と言えたんだけれども。 とりあえず、次のアルバムでは是非音作りを考え直すべきじゃないだろうか。あと、会場で買ったライヴ・アルバム"Live Dog 98"(ライヴ会場かネット通販でしか買えない、モウルド本人のレーベルから出ているCD。即席サイン会もやってたので本人のサイン付き。)を聴くと、次はバック・バンドを従えてのライヴを観てみたくなる。そんな機会がこの先あるのかどうかはわからないけれど。 セットリスト オフィシャル・サイトの掲示板にファンが投稿してたものなので、完璧かどうかは保証できません。 1. Wishing Well 2. Hoover Dam 3. Hear Me Calling 4. Your Favorite Thing 5. See A Little Light 6. I Apologize 7. Hardly Getting Over It 8. Thumbtack 9. Too Far Down 10. High Fidelity *11. Trade *12. Circles *+13. 180 Rain *+14. Sunset Safety Glass *+15. Semper Fi *+16. Lost Zoloft *+17. Without? *+18. The Receipt *+19. Sound On Sound -- *20. If I Can't Change Your Mind *21. Celebrated Summer *22. Makes No Sense At All -- *23. Chartered Trips *24. Man In The Moon Solo acoustic show except (*) solo electric and (*+) electric with backing tracks |
03年1月4日 |
Back |