LIVID

02年10月20日(日)ムーア・パーク
 オーストラリアに来て最初のライヴが野外フェスのLIVID。今年は数都市を周るツアーだけど、例年はブリスベーンでだけ開催されていたフェスらしい。オーストラリアのフェスといえばBig Day Outだけど、そちらほどメジャーじゃないのもそれじゃ仕方ないか。
 会場のムーア・パークは地図で見る限りそれなりに大きいけどフェスの会場はそのほんの一部で、狭いエリア内に2つのメイン・ステージ、テント・ステージのビッグトップ、パンク/ハードコア専門のラウドマウス、ダンス系のアネックスの計5ステージが詰め込まれてて、フジやレディング/リーズのスケールと比べるとずいぶん小さくまとめられた感じ。そのリーズのTシャツ、それも全出演アーティストがプリントされてるこれ見よがしなやつを「せっかくのフェスだし」と着ていく自分も単純だけど、それを見て話し掛けてくる人がやっぱりいたりするのがロックTシャツの面白さ(?)。98年のフジロック@東京にメタルTシャツで行ったらフジでそんなTシャツは珍しかったのか一人で来ていたメタルTシャツの人が声かけてきてしばらく話したけど、あの寂しそうな青年はどうしてるのだろうとふと思い出してしまったり。


Seafood

Bigtop
 シドニーに来てまだ間もないしムーア・パークは行くの初めてだしその上電車の運休もあって移動に手間取ったものの、どうにか最初のお目当てSeafoodに間に合う。このバンド(イギリス出身)、正直言って名前が妙に気になっただけで音は事前にはまったく聴いてなかったけど、Sonic Youthや初期Radioheadを連想させるノイジーかつ繊細なインディ・ロックは聴き応えありで幸先のいい一日の始まり。
The D4 Bigto
 続いてはちょうど新譜が出て雑誌にもよく載っているニュージーランドのバンド。ギターウルフの前座で来日したこともあるらしいが、それも納得のひたすらアグレッシヴなロケンロールを黒ずくめのメンバーたちがかき鳴らす。機材のトラブルでしばしば中断した上、Seafoodが延びて開演が遅れたのに終演は時間通りという短いセットで正味の演奏時間はかなり短かったのが惜しかったけど、こういう音は特に個性があるわけでもないけどライヴだと単純に体を揺らして楽しめていいね。最近のガレージ・ロックのブームにはあまり興味が持てないのは、こういう騒々しいバンドが主流じゃないからかな。
...And You Will Know Us By The Trail Of Dead Main Stage 1
 この会場は双子のようなメイン・ステージが横に2つ並んでいて、セット・チェンジによる時間の空白を省くビースト・フィースト方式(あそこまで矢継ぎ早ではないけど)。それにしても会場は本当に狭くて、テント内にいても比較的静かな時は他のステージの音が聞こえてきてたけど、The D4を観終えてテントから出るとすぐ目の前で...And You Will Know Us By The Trail Of Deadが始まっているのだからしょうがないか。しかし、大きなステージと澄んだ青空から照りつける太陽、そして何よりも単に野外で快晴で、というだけではないこの日の客のなんだかのんびりした解放感の前では彼らの音も空回り気味。ヤケクソに思える(雑という意味ではない)自己破壊的なパフォーマンスを叩きつけて去っていったこの日の彼らは、同じく楽器を壊していたとはいえ去年のサマソニとは後味がかなり違った。完成度の高いライヴ、とは言えないけどこれもまた彼ららしいライヴと言えるかも。
Mogwai Bigtop
 この日初めての休憩を取り(その間メイン・ステージではMotor Ace、続いてSomething For Kateと地元のバンドがプレイしているのが聞こえてきた)先週の金曜に...And You Will Know Us By The Trail Of Deadを前座に単独公演をやっていた(行ったけどソールドアウトで会場に入れず・・・)Mogwaiを観にテントへ戻る。開演前は誰だかわからない80年代メタルが延々かかってたけど、やはりこれはメタル好きを公言してるメンバーの趣味?
 入った時はまだ空いてたので調子に乗って最前列、それもスピーカーの前に陣取ったのが結果的に大正解。メンバーたちが緻密に組み立てていく分厚い轟音を何も考えずにただただ真正面から全身に浴びっぱなしで恍惚の45分。曲数は4曲ぐらいしかやってないような感じであっという間だったがフェスだししょうがないか。脳内を彼らの音に好き勝手にかきまわされて震えがきた去年の赤坂BLITZにはさすがに及ばないけど、間違いなくこの日のベスト・アクト。こんな音をライヴで出せるバンドはMogwaiしか知らない。
The (International) Noise Conspiracy Loudmouth
 Mogwaiの余韻を引きずりつつ、メイン・ステージでプレイする地元のヘヴィ・ロック・バンドGrinspoonの横を通り過ぎこの日初めてLoudmouthへ。メイン・ステージともテントのBigtopとも異なり、公園の端にある体育館のような建物を使用したステージで、この日の会場は地面の大半が砂利でホコリっぽかったので、コンクリートで舗装されたこの一帯が不思議と心地良く感じられる。
 リーズで見逃した悔しさをシドニーで、という意気込みで観にきたこのバンド、今は亡きポリティカル・ハードコア・バンドRefusedの元メンバーがいるので興味があったのだけど音を聴くのはこの日が初めて。Refusedが普通のハードコアに収まりきらない多彩な要素を取り入れた現代的な音だったのに対し、The (International) Noise Conspiracyは60年代ロック風。曲そのものが切れ味よい上に、一瞬も一箇所に留まらずぶつかるんじゃないかと心配になるぐらいステージの上を跳ね回るメンバーたちの動きから目が離せない、とにかくその勢いがたまらないライヴ。一方でそれなりに広いステージなのにメンバーたちが真中のあたりにぎゅっと集まって暴れているのが、いかにも普段小さい会場でプレイしているクセが出ていて微笑ましかった。今回観れて本当に良かった!
Mercury Rev Main Stage 1
 メイン・ステージへ戻ってみると既にOasis目当ての客が向かって右のMain Stage 2前に集結し始めているので慌ててその中へ。そのためMercury Revは姿は見えず音がするだけ。優しく美しい音だったけど、集中して聴くにはどうにも不向きなシチュエーションだけにそれ以上の詳しい感想は書けませぬ。
Oasis Main Stage 2
 2年前のレディングで観た時は「さすが母国の客はよく歌うね〜これぞ大衆芸能だね」という程度にしか思わなかった英語圏ならではの大合唱も、Oasisへの僕の評価が好転した今では素直に浸れる。しかし、2年前はそう思いつつも「さすがOasis、ろくに聴いてない僕でも知ってる曲ばかりだ」と素直に感心できたのに、この日は知らない曲が妙に多い。ヒット曲の数々が切り捨てられた選曲は「定番ヒット曲ばかりやるバンドにはまだまだならないぞ」の攻めの気持ちの表れかもしれないが、熱心なファンばかりとは限らないフェスでは素直にグレイテスト・ヒッツをやってよかったんじゃない?せめてこれだけはと思った"Champagne Supernova"すら無いなんて・・・。あと兄貴歌い過ぎ。もちろん良い瞬間もあったし、最後を締めくくるThe Who"My Generation"というサプライズもあったけど。
 単独公演もあったけどそちらではどんな選曲だったんだろう?
Powderfinger Main Stage 1
 なんとこの日のトリはOasisではなくてオーストラリアのこのバンド。Morrisseyの開演を待つ間数曲観たけど、90年代オルタナを吸収した歌中心のまろやかなロックで、個人的にはラジオでかかる分には悪くないいけど積極的にCDを買う気はしない音(もっと刺激がある方が好み)。なのでMorrisseyが始まりそうな頃にとっととテントへ移動。
Morrissey Bigtop
 つい2ヶ月前にサマソニで観たばかりだが、しばらく待たせた後にステージに登場したMorrisseyだけど・・・わずかの間に更に太ってないかい?菜食主義者でも不摂生すれば太るの?
 サマソニでのライヴはMorrisseyのソロ作品にはあまり馴染みが無くて何を期待していいか正直よくわからなかった事前の気持ちとは裏腹に音楽的に意外にもちゃんと聴けるものだったが、この日のMorrisseyも妙に上機嫌にしっかりと歌い、バック・バンドも存在感を増していて素直に聴き込める。客入りがちょっと寂しいとも言われたサマソニとは異なり、客も十分に人が入り曲が終われば大きな拍手&歓声を贈る暖かな歓迎ぶり。オーストラリアではそんなに人気があったの?
 ・・・と、ここまでは良かったのだけど、開演が押したせいでセットが短縮されたのか唐突にバンドはライヴを終わらせ、アンコールを求める客の声はスタッフが出てきて終演を告げるとブーイングに変わったけどだからといってどうにもならずがっくり。サマソニで最後に聴けたThe Smiths"There Is A Light That Never Goes Out"がいかに有り難かったか改めて噛み締めてしまったり。
おまけ
 その後Loudmouthのトリ(なんとSum41より後の出番)Unwritten Lawを観に行ったら満員で入場禁止!Sum41を上回る大人気・・・というよりはこことダンス・ステージ以外のステージは全部終わってるせいなのだろうけど、スケジュールを組んだ主催者は何を考えてたんだ?とぶつくさ言いつつダンス・ステージのアネックス(こっちは余裕があった)でThe Streetsを1曲の半分ぐらい観たけど、ヒップホップはどちらかといえば苦手なので早々と見切りをつけ、これで自分にとってのフェスは終了ということにしてえ帰宅。
 ライヴ自体は楽しめたものが多かったし、市内なので交通は便利だったけど仕切りははっきり言って悪かった。Unwritten Lawを見逃す原因になった妙なスケジュールに加え、飲食物を買うには1枚5ドルの食券(余っても払い戻し無し!)を買うのにまず行列しそれから飲食店でまた行列するという信じ難いシステムは本当にうんざり。
 あと、イギリスでもそうだったけど客のマナーの悪さにも呆れた。ゴミは地面にポイ捨てが当たり前、客がぎゅうぎゅうの状態でタバコ吸うバカもいるという有り様で、フジ・ロックの礼儀正しさは世界的には例外なんだろうか?苗場に落ち着く前のフジロックを体験してるせいか、フェスなんて何か問題があれば翌年は同じ場所でやらせてもらえるとは限らないと思って「せっかく来てくれたフェス、粗末に扱うと来年は無いかもよ」と忠告したくなるけど一年後はここにいないからおせっかいかな?
02年10月28日
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