Anvil + Nightmare + Goathorn

03年6月27日(金)スニーキー・ディーズ


 あのスーパー・ロック84@西武球場にも出演したカナディアン・メタルの古豪Anvil・・・と言ってみても「どの?」と言われてしまっても2003年ではやむを得まい。かくいう僕も洋楽のよの字も知らない小学生だったので当然イヴェントの存在にすら気付いていなかったし、今に到るまでAnvilのアルバムは1枚も聞いていない。そんな僕にもヒマな金曜の夜にAnvilがトロントに来ていると聞けばライヴに行ってしまう程度には「スラッシュ/パワー・メタルの先駆的バンドの1つ」としての存在価値を感じさせてくれる、そのぐらいのネーム・ヴァリューが備わっているのはアルバム・ジャケットにバンドのマスコットよろしく必ず登場している鉄床(かなとこ=anvil)のインパクトのなせるわざか(多分違う)。

 初めて足を踏み入れたスニーキー・ディーズは1階は普通のパブ/レストランだが2階がライヴも聞けるバーという作りで、普通に飲み食いしに来た1階の客には特にこの日のような音楽のライヴがある日ははなはだ迷惑なのではないかといらぬ心配をしてしまう。ライヴ情報は相当マメにチェックしているつもりの僕ですら前日にこのギグの存在に気付くという宣伝の不十分さもあってか、客の入りはそこそこ。
 到着からしばらく経った頃演奏を始めたのは2番目の前座のNightmare(最初のGoathornはとっくに終わっていた模様)。ヴォーカルの吼え方はフィリップ・アンセルモ風なところもありつつ基本的にはモロに80年代スラッシュ・メタルそのものの楽曲をソツ無く聞かせてくれるが、まあいかにもB級以下という印象で取り立ててポジティヴな感想も持てないまま終了。

 このNightmareの出番が意外と長くて、会場に着いたのは11時をだいぶ回った頃だったのだけれどようやくAnvilのライヴが始まったのは12時40分頃。2曲目にいきなり初期の代表曲"School Love"がプレイされて、先述のスーパーロック84以来19年ぶりに生でこの曲を聴いた家族がいきなり興奮してしまってもう大変。その後は"Metal On Metal""Forged In Fire""Paper General""Blood On The Ice""Computer Drone"といった曲が演奏されたが、Anvilに非常に疎い僕が一部とはいえ曲名を覚えられたのはヴォーカリスト兼ギタリストのリップスが実によく喋るから。後日調べたら往年のメンバーは彼とドラマーだけだったのだが演奏はしっかりしていたし、それに加えてのこのキャラクターこそがライヴでの彼らの魅力なのだろう(リップスの往年の売りだったという大人のおもちゃでギターを弾くというMr.Bigもビックリな技はさすがに披露されなかったけれど)。ヴォーカルが高音でシャウト気味に歌えばリフは小気味よく、加えて流麗なツイン・リードもバッチリのまさに80年代からの生き残りならではのパワー・メタル路線をどの曲も貫いていて、MCから判断するに新旧の曲を織り交ぜた選曲ながら違和感無し(80年代から進歩していないってこと?)。
 その長いキャリアもファンあってこそということか、多くはないものの客の盛り上がりもかなりのもの。モスラについての詳細な(?)解説付きで披露されたアンコールでの"Mothra"(まさか会場に日本人がいたとは彼らも夢にも思うまい)でバンドが熱いライヴを締めくくった時は既に午前2時。
 ただ、ライヴ後には普通のパブになる海外の小さなクラブではよくあることでこの夜も終演後もメンバーはウロウロしていて気軽に話し掛けられそうだったけれども、家族は「自分で楽器を片付けている今のAnvilに西武球場でプレイした栄光の日々を思い出させてかえって辛い気持ちにさせるかも」と思って遠慮したのだとか。
「Metallicaもかつては自分たちと同じような音楽をプレイしていた」というMCも今の両者の天と地ほどの差を意識させられて負け犬の遠吠えに聞こえてしまうなど、現在の彼らのうだつの上がらなさも感じてしまったのも事実。伊達に長くやっているわけではないことがしっかりと伝わってきたし、カナダにいるうちにCD買ってちゃんと聴かないとと思わせてくれたのだけどね。
03年7月6日
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