The Raveonettes + Vue + The Sounds

03年5月30日(金)ホースシュー・タヴァーン


 "Seven Days A Week"のビデオクリップが何の予備知識も無い状態でテレビから流れてきたのは、手帳を見返してみると4月25日の夜。1度聴いただけでThe Soundsというあまりにストレートなバンド名ともどもしっかりと脳に刻み込まれていたこの曲に僕がどれだけ夢中になったかというと、、ライヴがあることに気付いた時にはアルバムをまだ手に入れてないことなどかまわずにチケットを購入してしまったほど。そう、たった1曲で僕はスウェーデン出身のこの新人バンドのファンになったのだった。

 当日になってトリのThe Raveonettes(キーは全曲Bマイナーのみを使用という「ドグマ95」的制約を自ら課しているのはデンマーク出身ならでは?!)がSARSを理由にドタキャンし不安にさせられたものの、前座の2バンドはショウを決行するということで一安心して会場へ(このキャンセルのおかげでチケット代は払い戻され、結果的に無料のライヴになるという意外なおまけ付き)。
 The Soundsの本来の予定時刻の10時を少々過ぎた頃にステージに登場したのは、埋め合わせ的に急遽出演したと思われる名前もわからないバンド。でも彼らの約40分の演奏の間も頭の中はThe Soundsのことでいっぱいで、普段からグッズはライヴの出来を見てから買うことにしているのだけれど、グッズ売り場に人の動きがあるたびにCDやTシャツが売り切れてしまったらどうしようと心配になってしまう始末(バカ)。
 なぜ僕がこれほどまでにこのバンドに夢中になったのかというと、10年早く生まれて80年代初頭にニュー・ウェーヴを聴きながら「200本のたばこ」のような青春を送ってみたかった(日本にそんな青春がそもそも存在しえたのかどうかという疑問はさておき)という夢を密かに隠し持っている僕にとって、The Soundsは存在しなかった青春をそんなものはるか昔に置いてきた今頃になってリアル・タイムで埋め合わせてくれる初めてのバンドだったから。ライヴ前には公式サイトで聴ける3曲しか予習できなかったのだけれども、他のレパートリーも僕のニュー・ウェーヴ・ノスタルジア(実体験していないものにノスタルジアを抱く、というのも変だけど)を満たしてくれる曲ばかり。往年のテクノ・ポップ調の"Rock'N Roll"と、タイトルから一体どんな曲なんだろうと楽しみにしていたら期待通り一発で覚えてしまえるキャッチーなサビだった"S.O.U.N.D.S."がとりわけ印象的。リアル・タイムで体験できなかったはずの音が今こうして小さなライヴ・ハウスで目の前で鳴らされているのを目撃していると今自分は20数年前のCBGBにいるようにすら思えてくる・・・?!
 そして、デボラ・ハリーが現代に若返ったかのような(実物はビデオや写真よりも若干ふっくらしていたけれど、その方がかえってちょうどいい感じ)ヴォーカリストのMajaがスーツ姿で汗だくになりながらステージ上を跳ね回る光景が今の若いバンドを目撃しているんだという特別な興奮を呼び起こしてくれる。今でも活動している往年のこの手のバンドはいくつもあるし、サマソニに出ちゃうBlondieが音も外見もお手本なのは露骨に明らかでオリジナリティーを問いただされれば困ってしまうのは事実。でも、その代わりヴェテラン達にはこればっかりはどうあがいても期待するべくもない若さと初々しさがThe Soundsにはある!レトロな音を今のバンドだからこその勢いで蘇生させたという意味では、音楽性は全く違うとはいえ、3月に観たThe Datsunsと同種の興奮だったのかも。

 ドラマーはメンバー中一番地味で、アルバム・ジャケットではデカい顔が幅を利かしているベーシストも生だとさほど目立たないものの、これまた往年のニュー・ウェーヴ・シーンから抜け出てきたようなギタリストとキーボーディスト(開演直前にトイレで出くわしたのがこの2人)はMajaと頻繁に絡んで盛り上げてくれたし、何よりもオープニングを飾った"Seven Days A Week"のキャッチーなのに嫌味のまったくないメロディーはやっぱり最高!40分前後の短いショウが終わるや否や駆けつけてゲットしたデビュー・アルバム"Living In America"もライヴの盛り上がりを裏切らない内容で、今年の夏のサウンドトラックに既に決定!デイヴ・グロール(Foo Fighters)が"Times Like These"のビデオで着てるのと同じTシャツもいっしょに買ったら1月にBig Day Outで観た時も着ていたと後で判明して不思議な縁をこじつけ的に感じてしまい、ますますThe Sounds熱が高まる毎日。デイヴの後押しに加えてアメリカでは元スマパンのイハのレーベル
Scratchie Recordsからリリースされている(アルバムではサックスも披露)という話題性も手伝って、まさかの世界的大ブレイクだってあるかも?!

 日付もとうに変わってからステージに上がったVueは往年のStonesあたりを思わせる古典的ロックで退屈ではなかったものの、良くも悪くもこの規模の会場にぴったりと収まってしまっていてThe Soundsの後ではあまりにも地味で小ぶりに見えてしまった。何せ生のThe Soundsの存在感はこんな小さな会場を埋め尽くすどころか遥かに越えていて、大会場で何の苦も無くプレイするバンドの姿が容易に想像できたのだから。
03年6月14日
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