あなたも庭師・研究編

9 ICBM (便利な道具も使いよう)

 携帯電話とパソコンは、一生使うまいと思っていました。便利な道具だということは分かっていましたが、我も我もという、そんな流れのなかにいる自分を想像しただけで、怖気を振るってしまったからです。
 それがいつの間にか携帯電話を持ち、パソコンを使うようになりました。以来どこにいっても電話の呼び出し音に追いかけられています。パソコンで書くということに慣れ、すっかり漢字を忘れてしまいました。そして、自分の作ったホームページの、その管理に汲々とするありさまです。
 道具は日々進化をしています。そして多かれ少なかれ、私たちはその便利な道具の恩恵に与っています。一方で私のように、本来使うはずの道具に使われているという人もいて、道具との間合いをしっかりと見極めないと、とんでもないことになってしまうという、大変な世の中になってしまいました。
 庭作りの世界でも、さまざまな新しい道具が使われています。重い物を運ぶ、土を掘る、木を切り、竹や木の細工をする。それまですべて人力の作業だったことを、モーターが、エンジンが、代わりにやってくれるようになってきました。
 道具ばかりではありません。材料もそう。腐りにくい木の代表だった栗丸太や良質の杉丸太が手に入らなくなったと思ったら、代わりにアルミニュームの柱が登場しました。飛び石として使われていた鞍馬石がとても手の出せない値段になってきたら、それに似せた加工品が現われました。
 便利にはなりました。しかしその便利に慣れてしまうと、ついつい工夫を怠ってしまいます。例えば竹細工。竹はナタを使い、手もみの錐を使って初めてその性質が分かるのです。その手順をはしょっては、決して良い垣根や棚は作れません。
 便利な道具や新しい材料も、使い方、使う場所を間違うと、怪我のもとですし、間抜けな仕上がりになってしまうことを肝に銘じてください。
 かつて石斧や竹槍で狩をしていた人類も、今では地球のどこでも狙い打ちできるミサイルを手に入れました。そのミサイルがどんな役に立つのかは私には分かりませんが、どうかゴキブリ退治に使わないでほしいものだと、切に祈るばかりです。
                           (新潟日報夕刊 2004・12・14)
写真説明
アルミ建材を使った、フジ棚とモッコウバラのアーチ。使う場所を間違うと、風情がなくなる。

モッコウバラとフジが咲いています。クッキングサロンを開いておられる山田さんのお宅のアーチです。

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