あなたも庭師・入門編

2 雑木林 (雑木林はヒントの宝庫)

 落葉樹が一斉に芽吹きを始めています。生まれたての赤ん坊の手のような若葉が頼りなげに枝先で震えている姿を見ると、いとおしさが込み上げてくるのは私だけでしょうか。
 その若葉が次第に形を成し、夏には木洩れ日をつくって、秋にはとりどりの色をつけます。そんなふうに季節季節でさまざまな景色を見せてくれる雑木林の魅力的な姿を、自分の庭に再現しようとする人が増えてきました。
 今でこそケヤキやブナなどさまざまな雑木が庭に使われるようになりましたが、二十年前は「こんな木は、そこらの山に生えているじゃないか」と言われ、敬遠されたものでした。
 生活環境の変化ということもあるでしょう。それに伴って価値観が変わってきたのかもしれません。もしかしたらもっと簡単な、庭の維持が楽だという理由だけなのかもしれませんが、二十年という時間は、庭木に対する意識を大きく変えてしまったようです。
 実は雑木林には、庭作りのヒントがたくさん隠されています。
 例えば林には、ナラやケヤキなどの大きくなる木と、その下で木々の隙間を狙って枝を伸ばす中間の木。さらにその下で育つツバキなどの低木・・と、はっきりとした住み分けがおこなわれています。
 さらに林の一番下、林床といわれる部分を彩るさまざまな潅木や山野草には、日が当たらないと花の咲かないもの、またその逆で、日陰でなければ育たないもの、湿気を好むものや乾燥したところでないと駄目なものと、それぞれに特性があります。
 それらのことは林のなかに見える特性ですが、それは庭のなかの木や草の組み合わせでもいえることで、木や草それぞれの特性を無視して植えても、決してうまく育つことはないということなのです。
 ルネッサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ビンチやあるブレヒト・デューラーは、弟子たちに水の流れや変化する雲の動き、あるいは壁のしみを観察し、デッサンすることを勧めたそうです。
 何も芸術作品を目指そうというのではないのですが、自然のことは自然に学べ。これもまた、庭を作る上での大きなヒントといってよいでしょう。
                             (新潟日報 夕刊 2003・3・18)

写真説明
木がふたつで林だが、実際はもっと多くの木や草で構成されている。しかし雑木は一本でも雑木林の雰囲気を作ってくれるところがいい。写真は新潟市寺尾上のSさん宅の庭。右がガマズミで、左はウワミズザクラの芽吹き。

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