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原発被曝労働者、JCO臨界事故被害者の課題で政府へ申し入れ  

私の後に続いてほしい。その為にも勝た
なくては。(長尾光明さん 2003年)

 2007年6月8日、「原発被曝労働者への健康管理手帳の交付、JCO臨界事故住民健康診断の長期継続」等を求め、57団体・185個人の賛同を得て、政府への申し入れ・交渉を行いました。
 東京、神奈川、茨城、福島、大阪、兵庫から17名がこの交渉に参加しました。政府側は、厚生労働省、文部科学省、原子力安全委員会から8名が出席しました。
 事前に質問書に対する文書回答を得たので、再質問書を提出し、交渉に臨みました。
 申し入れ  質問書・文書回答・再質問  交渉資料
 この取り組みは、反原子力茨城共同行動、原発 はごめんだヒロシマ市民の会、双葉地方原発反対同盟、原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーンの5団体の呼び掛けによるものです。

* 政府への申し入れ事項
 一、放射線被曝労働を労働安全衛生法の有害業務に加え、被曝労働者に健康管理手帳を発行すること
 一、例示に無い疾病の労災申請に対して、包括的救済規定により本省と労基局の共同責任で認定すること
 一、今回のずさんな審査による門前払いに対して謝罪し、繰り返されることの無いよう行政指導すること
 一、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫を放射線被曝労働の労災認定疾患に含めること
 一、原発労災の審査過程と関連資料を公開すること
 一、長尾さんの原子力損害賠償裁判で国が行っている「被告東電側に立つ補助参加」をとりやめること
 一、JCO臨界事故健康管理検討委員会の事故の健康影響は検出されないとする見解を撤回すること
 一、JCO臨界事故住民健康診断を長期に継続し、健診内容を充実し、精密検査の費用を公費負担すること
 一、JCO臨界事故後から長期通院状態になっている住民の医療費を補償すること
 一、JCO臨界事故被災住民に健康手帳を発行すること
   呼びかけ団体 反原子力茨城共同行動/原発はごめんだヒロシマ市民の会/双葉地方原発反対同盟/
          原子力資料情報室/ヒバク反対キャンペーン
引き続き、申し入れ事項の実現に向けて取り組みます。賛同を募っています
賛同、ご意見は → hibaku-hantai@nyc.odn.ne.jp

* 交渉の追及点と回答(Kさんの労災認定問題は別途この後に掲載)

①放置されている原発被曝労働者の健康被害について
 これまでの労災申請・認定は氷山の一角であり、原発被曝労働者の健康被害の規模は深刻であることを認めよと、アメリカ、イギリスの原子力施設労働者の補償実態を示して追りました。再質問書に資料の掲載されているホームページを紹介したにもかかわらず、厚生労働省は、それらの資料から学ぼうとせず、線量限度を守っているので深刻な被害とは認識していないと繰り返すばかりでした。
②原発被曝労働者の例示のない疾病の労災申請に関して
 新たな例示の必要性の有無について定期的に検討することになっている。2003年9月の長尾さんの多発性骨髄腫労災認定を求める交渉の席では3年ごとに行うとの説明であったがどうかと追及すると、放射線被曝労働に関しては全く検討していないことを認め、そのための検討会を今年度内に開くことを約束しました。
③情報開示
 原発被曝労働者の労災申請記録、病名、ヒバク線量、支給不支給とその理由を公開すべきと、被曝労働者の調査や支援の闘いを続けている福島の石丸さんを中心に執拗に追求したが、明確な回答は得られませんでした。個人情報を盾に事実上何も公表しないことに対する強い批判が多数出て、厚労省に公開のための圧力をかけました。
 厚生労働省は公開の範囲について検討すると回答しました。
④長尾さんの原子力損害賠償裁判への政府の補助参加問題
 文科省は「利害関係が存在し、裁判所でも認められている。」として逃げ切ろうとしたが、参加しない選択肢もあったのではとの追及には、「参加は機械的に判断した。」と述べるにとどまり、具体的な説明をすることはできませんでした。また、「相当因果関係については裁判にゆだねる。」として、厚生労働省の認めた因果関係にけちをつけることはしませんでした。しかし中立といいながら法廷では、文科省代理人が、原告本人尋問で労働環境について東電側に有利な答えを引き出す尋問をするなどの活動を行っています。
⑤JCO臨界事故被害に関して
事故によりPTSDが生じ得ると政府は考えているのか
 原子力安全委員会は、「防止するために心のケアを行っている」と答え、PTSDが事故によって起こ
ること自体は否定しませんでした。
住民健康診断の精密検査費用の無料化について
 精密検査は健康診断の一環、診断結果は公的性格を持つとの主張に、文部科学省は「そもそも健康影響はない事を前提とした健康診断である」と繰り返しました。健康診断の結果を引用した被ばく医療分科会報告は精密検査結果の公的性格を示すと執拗に追求し、報告の依拠する資料を調査すると約束させました。調査結果は原子力安全委員会から届きましたが資料名のみの形式的なものでした。なお、これまでの精密検査により住民7名ががんと診断されているとの口頭説明が議事録に残っています。
事故後長期通院状態の住民の医療費補償問題
  再質問書で、長期通院住民の存在を県が認めていると指摘しているのに、県に問い合わせもせず「承知していない」との回答を繰り返しました。まず事実を認めさせることが必要です。


労災申請却下(2006年9月4日)をりん伺に戻し、再検討・・・厚生労働省回答
 悪性リンパ腫で死亡した原発被曝労働者Kさんの遺族からの労災申請が、例にないとして、門前払い同然に却下されたことについて、その不当性を追及しました。今回の交渉で最も具体的で白熱した論争を経て、長尾さんの多発性骨髄腫労災認定の運動の成果を継承し、更に一歩前進した回答を得ることができました。
  ①例示にない疾病の労災申請には、包括的救済規定を守る。
  ②悪性リンパ腫は、広く海外の被曝補償及び日本の原爆症補償に於いて認定対象である
  ③悪性リンパ腫は、放射線起因性があり、白血病類縁の疾患である。
  ④例示に有るなしにかかわらず、判断が困難な場合はすべて「りん伺」の対象
  ⑤この件について把握していないので、調査する。

 交渉での確認を踏まえて、6月19日、「手続き上の不備があり、審査が十分行われなかった事を伺わせる。りん伺に戻し、再検討を求める」との要請を行いました。翌日、 厚生労働省労働基準局労災補償部職業病認定対策室から、「大阪と連絡をとったところ、ご指摘の通りでした。要請の通り、りん伺にもどし、再検討をいたします。」との回答を得ました。
 昨年9月に淀川労基署が下した不支給決定を取り消させ、労災認定させるための大きな一歩を踏み出すことができました。


当時の最も過酷な被曝労働に従事したKさん
 Kさんは、1997年9月から2003年1月までの6年4ヶ月間、泊、伊方、高浜、大飯、敦賀、美浜、高浜、玄海など全国の原発、六ヶ所再処理施設などの定期検査の現場で放射能漏れの非破壊検査に従事し、99.76ミリシーベルト被曝しました。記録によれば、何度も被曝限度近く被曝させられています。

年度 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 6年4ヶ月間
の累計
平成 10 11 12 13 14 15
被曝線量(mSv) 6.3 13.0 11.1 17.33 17.8 18.28 15.95 99.76

 Kさんは、30万人規模の日本の原発被曝労働者(疫学調査の対象は27万4560人)のうち、累積被曝線量が最も高い5325人のグループに入ります。
 また、平成13年度から公表されている累積被曝線量の追跡統計によれば、Kさんが働いていた当時の原発被曝労働者(労働者総数88077人)の中では累積線量が最も高い100人の中に含まれます。

   資料    放射線業務従事者の関係事業所数及び経過線量(平成13年度~平成15年度)

被曝線量区分
    mSv
3年間関係事業所(ヶ所)
以上 計(人)
5以下 54,021
11,677
4,313
1,955
946
439
191
155
73,694
5を超え10以下 2,193 1,490 956 523 298 174 90 38 5,762
10を超え15以下 903 780 525 356 212 116 60 28 2,980
15を超え20以下 458 497 354 256 171 92 50 33 1,911
20を超え25以下 236 315 231 160 119 59 45 28 1,193
25を超え30以下 176 207 180 136 81 59 35 25 899
30を超え40以下 178 226 208 161 112 72 41 55 1,053
40を超え50以下 100 81 96 61 49 46 23 26 482
50を超え60以下 24 15 16 15 14 7 4   103
60を超える 0 0 0 0 0 0 0 0 0
計(人) 58,289 15,288 6,879 3,623 1,999 1,064 539 396 88,077
平均線量(mSv) 1.4 4.2 6.8 8.8 10.5 12.1 13.3 15.6 3.1

注 平成13年度~平成15年度のKさんの累積被曝線量は52mSv、従事した事業所は8ヶ所
   Kさんは、表の50mSv超60mSv以下、関係事業所8ヶ所以上の該当者8人に含まれる。


放射線ヒバクによるKさんの悪性リンパ腫
 体調不良による退職の後、悪性リンパ腫に襲われ、2005年3月に死去されました。同年10月、遺族が淀川労基署に労災申請しましたが、2006年9月、「例にない」として申請は却下されました。
 悪性リンパ腫は、日本の放射線従事者の補償対象として例示はされていませんが、原爆被爆者、アメリカ、マーシャルの核実験被曝者、アメリカのエネルギー省雇用者、イギリスの原子力施設被曝労働者などで広く補償の対象となっています。
 悪性リンパ腫は白血病類縁で放射線起因性があります。Kさんは白血病認定基準(年あたり5ミリシーベルト)の3倍以上(年あたり15.8ミリシーベルト)被曝しています。当然、被曝労働による労災として認定されるべきです。

Kさんの悪性リンパ腫を労災認定させよう
 申し入れの成果のうえに、認定を求める運動を拡大し強めることが求められています。
 Kさんは、日本の原発被曝労働者のうちでも最も過酷な被曝労働に従事し、命を奪われたのです。これを労災認定させることは切実な課題です。また、・長尾さんの多発性骨髄腫労災認定に続き、悪性リンパ腫を労災認定させることは、日本の原発被曝労災補償の狭い門をこじ開ける重要な意義があります。
 認定せよとの声を全国から厚生労働省に集中し、また、検討会に向けて認定の根拠を明確に主張することにより、Kさんの労災を認定させましょう。

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全体報告(2007年6月)
申し入れ書(20070608)
交渉資料(20070608)
質問書・文書回答・再質問
関連資料

パンフレット
長尾原発労災(2003年8月発行)