ご注意
ここに書かれている人達には直接
私は会ったことはありませんが
本当に逢っていた人達から
聞いた話です

世間で流布している話と
違っていても責任取りません

                      第二回

                   左久弘(ひだり ひさひろ)

 

       「鑿の左久弘」、と言われ鑿特に叩き鑿と割り刃の穴屋鑿では
             並ぶ者無しと絶賛された名人

          
前回の予告に順って 左久弘師匠の仕事について

  年明けは二日に火造りを行って居ました。正月2日に鍛冶屋がドカンドカン音を出すと言うの
  は、今は近隣の方々にご迷惑ですので行いませんが、昔は働き者と賞賛されたようです。時代
  の変化だと思います
  我が家ではもう行わなくなりましたが鎌と剣と蔵の鍵を模した三種の神器を作って、神棚に
  奉納するのを吉例として  いました。
  蔵の鍵は、時代劇に登場する四角いあれではありません
  猿臂と呼ばれて居るもので俗称は「さる」
  剣はお不動様が持っていらっしゃる三角形の剣 このタイプを両刃と呼び、菜切り庖丁のように
  真ん中に刃が付いているタイプを諸刃と呼びます
  鎌は、農具ですから生産を意味します
  
  これらの神具を毎年作るのではなく、過去に作った物を火炉に入れて、チョコチョコッと叩いて
  神事を終えて居ましたが、新年に景気を付けろとわざと派手な音を出していたと聞いています
  ご近所迷惑な話です
  その後、七日までは休み

  鍛冶屋の一月は休みが多い
  七日まで休んで、15日からは小正月、藪入り大体20日位まで休み、月末は旧正月にあたり
  これまた休み、実質10日位しか働いていないようだったです。御客様の方でもこの習慣を
  心得ていらっしゃいまして、遊び半分で来られて、四方山話ついでにご注文をなされて
  行きます。このお正月の御客様が遊びに来られるのは変わりませんで、特段こちらに用事が
  ない限り御客様におつき合いしております。
  
  寒中の時期は行う行事が多い
  焼き入れを行う水場を焼き場樽と呼びます
  事実、木製の樽に雪を入れて、焼き入れに使っていたので今でもこの呼び方を行っている
  今は、コンクリート製の水槽に変わってはいるが呼び方だけは昔のままになっている
  この焼き場樽の大掃除は毎年寒さの厳しい寒中に行います
  なぜ寒中なのかは
  この時期には、東京でも雪が降りますので、雪の補充と雪には不思議な事に
  水中の微細なゴミを吸着する性質がありますので、それを利用して
  焼き場樽を攪拌して浮いたゴミを雪に吸い取らせて、ゴミが吸着した雪は外に放り出して、
  焼き入れ水を綺麗にしてから
  新しく雪を補充して、焼き入れに使用します

  今でこそ東京で雪が降る事は少なくなりましたが、昔は処理に困る程雪は降ったそうなので
  この様な事が出来たのかも知れません
  私がもう少し若い時には、雪を取りに行きながらスキーを楽しんだものです
  いえいえ 雪を取りに行くからついでにスキーを楽しんだので
  スキーをしたいからではありません
  今ではこの雪を使うお話も大勢の方々に伝わっって居りまして、雪の多い地方から善意で
  送って戴いております。

  年初めの仕事は、セン研ぎから始まります。センを研ぐのは小僧の仕事ですから
  (小僧=半人前の職人の意味)小僧が一番最初に仕事を始めるのはどの職人でも同じです
  師匠の後から仕事場に顔を出して仕事をするなどと言う事は職人の世界では許されません

  セン研ぎにはダイグチ、ナガオ、トラオ、ヌマタなどの砥石の種類がありまして、それぞれに
  長短があったようですこれらの砥石は今現在入手出来ない物ばかりでかろうじてヌマタが
  手に入りやすいようで、私達でもヌマタを使います。人造砥石も使いますが、昔のセン目の
  美しさを出すためには、天然砥石でセンを研いだ方が美しく見えます

  センの研ぎ方も難しくて、父に弟子入りしたとき、センの研ぎ方を最初に覚え、実際にセンで
  鑿の背中を削ります。裏はスク、背中は削ると言います。鑿の裏スキと表現します
  背中削りが一通り出来ると裏スキになりますが、この時に自分のセン研ぎの善し悪しが
  はっきりわかる瞬間が来ます。
  背中削りの時には鑿の背中ですから削る対象は地金ですから
  削りやすいのですが、裏は鋼ですからナマシて居るとは言いながら硬さは充分にあります
  上手くセンが研げていれば裏スキはスーッスーッとセンが動きますが、下手な研ぎですと
  ガリガリと力ばかり入ってセン目が揃いません。
  センには子トンボセントンボセン、竹セン、ムラスキ、の種類がありまして、ムラスキで
  仕上げになります。勿論ムラスキは師匠の仕事で、弟子はトンボセンで終わりです

    皆様から左久弘左市弘との関係について
    沢山のご質問がありましたが
    
弟子でも知り合いでも無く
    全く関係が有りません


    次回は引き続き左久弘の仕事の流れと逸話を予定しています
    三カ月に一度は更新したいと思っています

スペースの都合上連載ではありません。全部消えますので読み損なったから
もう一度出してと言う我儘は聞きませんあきらめて下さい


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