豊臣家と金春流 肥後中村家      07.5.26.

                            

    中村式部少輔孫平次一氏庶流の孫とされる勝三郎正長が 大阪城大奥に

   稚児小姓として召しだされ 能楽の修行を始めたのは 太閤秀吉公の命による

   ものであったと みられている。 当時 斯界第一人者であった 金春大太夫

   秦八郎安照(禅曲)は 関が原の役の後 勝三郎に膨大な秘伝書を 授けている.

    慶長11年から同15年に至る5年間の 一巻九冊から成立しているが 14世

   紀の世阿弥による名高い「花伝書」以来 金春流に引き継がれた能楽の伝書が

   金春禅竹の「六輪一露」、金春禅鵬を経て 慶長期の金春禅曲に至ったものである.

   1. 慶長15年金春安照相伝状 (師家印可状一巻)

      「聖徳太子秦川勝以来代々相伝書竝能諷之習雖為一子相伝 重      

      秀吉公御意貴殿深御執心別而依為勝能諷家之大事不残令相伝畢

      以来執心之輩於有之者堅改之能諷拍子方迄可有者也

         慶長15年正月吉日 竹田金春八郎秦安照(花押)

       中村勝三郎殿 参

                                                                                                            

   2. 慶長11年金春安照奥書 「秘伝書上」 一冊 墨付112丁

      「能の仕舞依御執心二不残相伝申候 於家極意條々別而書付進之候 少も

      他見不可有者也

         慶長11年2月吉日 竹田金春八郎秦安照(花押)

       中村勝三郎殿 参                     

   

   3. 慶長l2年金春安照奥書装束付 ll0番 一冊   

      「為能仕舞相伝出立様同面如此書立進之候.少も他見不可有者也

         慶長12年正月吉日 竹田金春八郎秦安照(花王)

       中村勝三郎 参                      

   4. 慶弔12年金春安照奥書装束付 122番 一冊          

      「同文 同年月 同名」                   

   5. 慶長15年金春安照伝書 其一 墨付41丁               

   6. 慶長l5年金春安照伝書 其二 墨付120丁              

                                        

   7. 慶長15年金春安照伝書 其三 墨付81丁

   8. 慶長15年金春安照仕舞付 脇能

   9. 慶長15年金春安照仕舞付 修羅能

  10. 慶長15年金春安照仕舞付 女能                 

                          

  但し 慶長15年伝書、仕舞付は何れも 正月吉日で 同文、、

     金春八郎秦安照(花押)、中村勝(少)三郎殿となっている.   

  勝三郎の生誕年は不明であるが 豊臣秀吉が能に耽溺する文禄元年以降児小姓

  としての稽古を命ぜられたと思はれる. シテ方としての稽古のみならず、四

  拍子即ち笛、小鼓、大鼓、太鼓などの稽古にも励んだと思われるが 特に笛の

  相伝状がのこされている. 

  11. 慶長九年宍戸伯耆守元富 笛相伝状                            

      「以上 笛の儀偏就御執心二千野与一左衛門尉殿ヨリ対牛尾玄笛二

      秘伝の条々我等江被相伝候分少茂無残所御方江申渡候.其上銘々之

      書物悉皆書進之候. 弥末々迄玄笛之筋御仕立尤二候. 以来別而

      笛執心之方江ハ可有御相伝候. 天罰起請文略       

          慶長九年10月10日  宍戸伯耆守元富(花押)

       中村勝三郎殿 参

   

   l2. 江戸初期転写本 宍戸伯耆守笛伝書 七冊              

      「笛秘伝書」 二冊、「花笛集」上下二冊、「名全笛集」上下二冊

      「教笛集」 一冊                 

  

  13. 室町末期ー江戸初期謡本

      イ. 「錦木・角田川」  金春喜勝筆

      ロ. 慶長八年中村勝三郎筆謡本

      ハ. 慶長九年奥書謡本「関寺小町」転写本 一冊

           右関寺之儀一子相伝之事二候へ共 秀吉公依御意令相伝

           申者也. 

                 慶長九年二月 竹田八郎秦安照 判

                 中村勝三郎殿 参         

      二. 細川三斎手沢本 「梅がえ仕舞付」 一冊

      ホ. 細川三斎手沢本 「班女・桜川仕舞付」 一冊

      へ. 細川三斎手沢本 「ひがき・あこぎ仕舞付」 一冊

      ト. 慶長頃筆謡本 「鸚鵡小町・班女」 一冊