24.6.2

閑話休題18 中村靭負能ニ心を懸し事―渡邊幸庵対話記

一 細川越中守忠興家来に中村庄兵衛とて千石取し
  侍有り 此の子左馬介能越よくして役者にも増りたる
  とて時代讃談之 或時船弁慶を法楽の能を勤しに付
  洲の見物の内より あ連にても能の上手と云かと高声ニ
  欺笑越左馬助聞とか免て能済申刻かの者を引止メ
  様子越見るに 私船頭にて候故能ハ不存候 但波風あしき
  時の舟の漕様あれにてハ チカヒ候 艪の押様ひく様違申候
  又弁慶とても波風阿らき時ハあの様ニハ船中にたゝ連不
  申と難し申ニ付 波風の時の船中ニ立こたへ様並狭幾
  船の漕様なとかの船頭ニよくよ〱聞 左馬介得心しその後
  中村靭負と云類 何事も是の道ニたよりて聞事よし
寶永七年寅正月朔日○○○ニ参り対話ス

右は江戸初期の巷間に流布していた雑話を伝説の老人渡邊幸庵に仮託して後世に伝えたもので 史実とはかなりかけ離れているが、
中村父子の能が世に知られていた事が推測される。
 熊本県立図書館蔵「藻塩草 巻四六」の写しを 平成二四年
五月二〇日 熊本史談会で畏友真藤國男氏より頂戴したもの。