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 ●例会リポート
 
原子力機構大洗のプルトニウム汚染事故について論議
非核政府の会・核問題調査専門委員会(2017/10/19)
17年10月19日

 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が9月21日、開かれ、「原子力機構大洗のプルトニウム汚染事故」について、専門委員の野口邦和・日本大学歯学部准教授(放射線防護学)が原子力機構の報告資料に即して問題提起を行いました。
 野口さんの報告要旨は次の通りです。
         ◇
 事故発生日時は6月6日11時15分頃。発生場所は茨城県大洗町にある大洗研究開発センター燃料研究棟108号室(管理区域内)で、核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中(フード内作業)に貯蔵容器内にある核燃料物質が入った容器を封入したビニルバッグの破裂を確認した身体サーベイを行った結果、作業員5名全員の手・足(手袋とか靴)の汚染を確認した――。
 管理区域内のプルトニウム・ダストモニターの指示値の上昇を確認。作業員に身体汚染検査を開始し、5名のうち3名の作業員から鼻腔内汚染を確認したということです。
 燃料研究棟に一番近いところのモニタリングポストの指示値のトレンドを見ると、事故のあった6月6日11時15分頃はまったく増えていないので、外部への影響はないと思います。
 ▼原子力機構の不可解
 な発表
 原子力機構は翌6月7日、「大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染について」というプレス発表をしています。6月8日付の朝日新聞朝刊には「50代の男性職員からは、2万2000ベクレルのプルトニウムが検出された。現時点の推計では1年間に1.2シーベルト、50年で12シーベルトの内部被ばくをする値」という記事が出ています。ところが、ホームページにはこの線量の値は一切出てこないんです。
 原子力機構の発表を見て私が不可解だと思ったのは、1年間に1.2シーベルト、50年で12シーベルトという内部被ばくの値です。何が変かというと、普通、内部被ばくは、成人の場合、体内摂取時から50年間分の積算した実効線量、乳幼児・小児の場合は体内摂取時から70歳になるまでの積算実効線量で評価することになっていて、体内摂取時から1年間の積算実効線量ということはしない。それなのに、なぜか1年間で1.2シーベルトという出し方をしている。
 それから、肺モニタで肺のプルトニウム239の沈着量を求めているのであれば、普通は肺がどれだけ被ばくしたかが問題なのに、50年間分の預託肺等価線量ではなく預託実効線量を発表している。この理由もわからない。
 ちなみに、1.2シーベルトとか、50年間で12シーベルトという線量がどれだけでかい値か。福島第一原発事故で事故直後に最も被ばくした作業員の被曝線量は 678.80ミリシーベルトで、50年間で1シーベルトもいってない。それと比べると1.2とか12というのはとんでもない値で、わかっている人は騒然としたはずです。

 ▼数字を小さく見せた
 い印象操作
 不可解なのはもう一つ、肺線量を発表せずに全身換算線量を発表している。要するに、被ばくしていない全身に換算してしまったら数値が小さくなるんです。
 結論から言うと、50年間で12シーベルトという全身換算線量でなく1年間なら1.2というのは、小さい数字を出したくて印象操作をしたのだと思います。肺線量を出さずに全身線量を出したのは、全身が12なら肺線量は100シーベルトで、それは出したくなかったのだと思います。ごまかしがあります。
 プルトニウムとウランの窒化物は、黄色いステンレス製の容器の中に二重になったビニール袋が入っていて、その中に入っている蓋をしたポリ容器の中にあります。
 今回の事故は、ステンレス容器の蓋のボルト6つのうち4つまで外したところで蓋が持ち上がってきた。中のビニール袋の中に気体が溜まっているようだということで、それを手で押し込めて、フードの中で残りのボルト2つを外した瞬間にビニール袋が破裂したということです。
 今回の作業は、個々の貯蔵容器にすでに入れられているものを、蓋を開けて点検することです。この作業では二重にシールされたビニル袋を意図的に開けることは計画されていない。ただ、ボルトを4つ外して蓋が持ち上がってきた段階で、蓋を元に戻してグローブボックスに持ち込むか、あるいはボルトを締め直して作業を中止して検討すればよかったわけで、作業をそのまま続行したのは、慎重さに欠けたと思います。

 ▼除染、汚染検査にも欠陥か
 実はこの5人は、事故を起こした翌日の6月7日に放医研に行っています。5名中4名から皮膚汚染が発覚しました。5人は管理区域から出る段階で、シャワー室で除染して、直後の汚染検査では全員が検出限界以下であることを確認した上で東海に行って測定しているわけです。だから、管理区域を出た段階で体表面は汚染していないはずなんですよ。ところが放医研に行ったら、皮膚が汚染していることがわかった。つまり、原子力大洗における除染にも直後の汚染検査にも欠陥があったのではないかと思います。
 作業員の被ばく評価結果は、外部被ばくによる実効線量は、5名全員が0.1マイクロシーベルト未満であったということですから、外部被ばくはまるで問題にならないと思います。
 ビニール袋が破裂した原因はヘリウムガスではないかという話がありますが、そうではありません。私の計算では、100グラムのプルトニウムの各同位体が26年間にアルファ壊変して生成するヘリウムガスの体積は数十ミリリットル程度なので、二重のビニール袋が破裂するはずがありません。だから破裂の原因は、気体が溜まっていたにしても、ヘリウムとは別のものです。
 問題点はもう一つあります。プルトニウム239でどれだけ汚染しているかは肺モニタでわかりますが、プルトニウムの他の同位体は測れてないんです。原子力機構は肺モニタからプルトニウム239の肺への沈着量を求め、預託実効線量を評価している。239以外のプルトニウム同位体を考慮すると、私の計算では当初発表の1.3〜2倍の預託実効線量になったはずですが、その計算をやってない。
 今回、内部被曝量が当初発表より100分の1ぐらいに減ったので、それはよかったのですが、原子力機構の問題点として発表の仕方にかなり作為性を感じるし、除染の不徹底さ、汚染検査の問題などがある。それから、発表されたものをそのまま流すだけのメディアの姿勢にも問題があると思います。