HOME >> 核兵器をめぐる情報
 
 
第69回国連総会における核兵器関連の諸決議について
核軍備撤廃に関する『包括的核兵器条約』の支持、3/4を超える
藤田 俊彦・前長崎総合科学大学教授・非核の政府を求める会常任世話人
(2015.02.15)

     ◇ 
 第69回国連総会はさる12月2日、第1委員会(軍備縮小撤廃・国際安全保障担当)の審議と承認をへた57決議案と6決定案を正式に採択した。総会全体の関心の高まりを反映して、これら決議・決定のおよそ3分の1が核軍備の縮小撤廃などにかかわる案件であった。
本稿では、まず、核軍備の縮小撤廃を正面から取り上げた5件の決議を検討する。ついで、核兵器の使用の禁止・制限や拡散の防止などを課す決議を分析する。そのあと、非核兵器国に対する核兵器の不使用をふくむ、非核地帯・非核空間の創設に関する決議を取り上げる。
最後に、核兵器なき世界の実現を目指す多国間交渉について、近年、その具体的な成果の乏しさゆえに主要核兵器国にたいする批判が高まるなか、あらためて強化策が模索されつつある。その状況を採択された決議から考察してみたい。
***
1. 核軍備の縮小・撤廃
?『2013年核軍備縮小撤廃に関する総会ハイレベル会合の後追い』決議[L44]は各国の元首・政府首脳らも参加した同会合が核兵器の禁止・廃棄を規定する「包括的核兵器条約」の締結を提唱したことを歓迎し、早急な交渉開始を求めた。
この決議は、同会合の提案国であるインドネシアが非同盟運動加入の国連加盟国を代表して提案し、賛成139、反対24、棄権19で採択された。賛成率は76.3%と4分の3を超え、前回2013年の同じ決議の賛成率74.0%をさらに上回った。(第1表参照)
しかし、核不拡散条約(NPT)加入の核兵器国5カ国のうち米、英、仏、露の4カ国がこの決議に反対し、わずかに中国1国のみが賛成した。他の核兵器保有国とされる国のなかではイスラエルが反対し、インド、パキスタン、北朝鮮は賛成した。日本は韓国などとともに棄権した。
決議は2013年9月26日に開催された総会ハイレベル会合を歓迎し、核兵器完全廃棄の目標の追求への貢献を認知すると明記し、核兵器なき世界の平和と安全を達成することの重要性を強調した。
決議は、核軍備縮小撤廃の分野における国連の中心的役割を強調し、国連総会により付託された多国間軍縮機関の任務の妥当性を再確認した。決議は、さらに、核軍備縮小撤廃の推進にあたって市民社会が果たす重要な役割を指摘し、とくに非政府組織や学界、議会人、マスメディアに言及した。
決議は、核兵器使用がもたらす破滅的な人道上の影響を指摘し、すべての国が国際人道法を遵守する必要があることを再確認した。決議は、とくにNPT第6条に言及して、締約国には核軍備縮小撤廃に関する効果的措置についての交渉を誠実に追求する条約義務があると指摘した。
決議は、「総会ハイレベル会合で表明された核兵器に関する包括的条約への広範な支持を確認する」と明言し、「核兵器の保有、開発、生産、取得、実験、貯蔵、移転、使用または使用の威嚇を禁止し、およびそれら兵器の破棄を規定する、包括的核兵器条約の早期締結のための交渉を(ジュネーブ)軍縮会議において早急に開始することを要請する」と強調した。
決議は前年の同名の決議に立ち返って、「この点に関する進捗状況を検討するために、核軍備縮小撤廃に関する国連ハイレベル国際会議を2018年よりも遅くない時期に開催するとした総会決定を想起する」と付記した。
米国代表は米英仏3国の共同声明を発表してこの決議に反対した。声明は「ハイレベル会合が核軍備の縮小撤廃と不拡散の双方をバランスよく扱わなかったことを遺憾に思う。核兵器拡散停止の成功は核軍備撤廃の最終目標に向かってのステップ・バイ・ステップの進歩を支える」とした。
また、この3国共同声明は、当面の核兵器関連の国際的課題として、分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉の早期開始と包括的核実験禁止条約(CTBT)の早急な発効の2点のみに言及し、包括的核兵器条約の交渉開始の要求を事実上無視し、拒絶した。
編注:本紙今号の「世界の動き欄」はこの決議の全文仮訳を掲載している。ご参照頂きたい。
?『核軍備縮小撤廃』決議[L31Rev1]は非同盟諸国が第50回総会以来、20年にわたり提案してきた原則的な決議で、今回もアルジェリア、キューバ、インドネシア、ミャンマー、ベトナムなど約50カ国が提案し、賛成121、反対44、棄権17で採択された。
賛成率は前年とほぼ同じく66.4%であった。
決議は、前文で、NPTの諸規定および1995年、2000年、2010年NPT再検討会議の最終文書にもとづき、一定の時間枠のなかでの核軍備の段階的縮小と可能な限り早急な撤廃を求めた。
決議は、本文第1段落で「いまや、すべての核兵器国が最も早い時期に核兵器の完全廃棄を達成するために効果的な措置を講じる機が熟している」と訴え、第2段落で核軍備の縮小撤廃と不拡散が並行的に追求されねばならないと付言した。
決議は、核兵器なき世界への接近の施策として、とくに中東非核兵器地帯の創設の重要性を指摘したほか、東南アジア非核兵器地帯に関する域内諸国と核兵器国の間の議定書協議の進行を歓迎した。決議は核軍備撤廃に向けてのその他の諸施策を提起し、それらに取り組む国際会議の開催を呼びかけた。
決議は、総会参加国の3分の2の多数の支持をえて採択されたものの、NPT核兵器国5カ国のうち米英仏3カ国が反対し、露が棄権に回り、中国のみが賛成するという状況であった。
?『国際司法裁判所の勧告的意見の後追い』決議[L23]は年来、マレーシアなどの非同盟諸国が推進してきた案件で、今回は賛成134、反対23、棄権23で採択された。
決議は前文最終段落で「1996年7月8日に発出された核兵器の威嚇もしくは核兵器の使用の合法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見」を想起するとしたあと、本文冒頭で次のように指摘した。
総会は「厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的な核軍備撤廃へと導く交渉を誠実に行ないかつ完結させる義務が存在するとの国際司法裁判所の全員一致の結論」を再び強調する。(第1段落)
総会は「すべての国に対して、核兵器条約??核兵器の開発、生産、実験、配備、貯蔵、移転、威嚇もしくは使用を禁止するとともにそれら兵器の廃棄を規定する条約??の早期締結へとみちびく多国間交渉を開始することによって、その義務をただちに履行することを重ねて要請する。」(第2段落)
この決議は今回、賛成率74.4%で採択されている。前回の賛成率は73.1%であり、この決議についても国連総会のほぼ4分の3の支持が継続している。
?『核兵器なき世界に向けて、核軍備縮小撤廃約束の実行を加速する』決議 [L12Rev1]は新アジェンダ連合からスウェーデンが抜けた後の6カ国??ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ??が提案し、賛成169、反対7、棄権5で採択された。賛成率は93.3%であった。
今回の新アジェンダ決議は、ノルウェー、メキシコおよびオーストリアで2013?2014年間に開催された核兵器使用の人道上の影響に関する3回の国際会議に言及し、核兵器爆発によって生じる破滅的な結果が個々の国家はおろか国際機関すらも対処しえない深刻なものであることを指摘した。
さらに決議は、このような事態がますます周知の事実となる中で、核軍備縮小撤廃に関する2013年総会ハイレベル会合が開催され、さらに同会合の後追い決議が採択されるなどの経緯に注目し、その国際政治上の効果を高く評価した。
決議は、2015年NPT再検討会議がそうした流れの中で開催されることに注意を喚起し、今年がNPTの延長20周年にあたり、また広島・長崎の原爆被災70周年にあたることを指摘して、核軍備縮小撤廃公約の実行をさらに加速させる「歴史的な機会」であると訴えた。
決議は、本文冒頭で、NPT締約国にたいして条約上のすべての義務の履行を訴えると同時に、1995年、2000年、2010年の再検討会議のすべての決定、決議を遵守することを強調した。
決議は、次の段落で、2010年再検討会議が核兵器使用の破滅的な人道上の影響への不安を討議したことに触れて、国際人道法を含む適用可能な国際法を常時遵守する必要があると指摘した。
決議は、2015年再検討会議が正式決定において、そうした人道上の命題をしかるべく強調することを要請し、それらの人道的命題が核軍備撤廃の必要性を支えるとともに核兵器なき世界の達成と維持の緊急性を支えることにもなると訴えた。
決議は、核兵器国にたいして、1国的もしくは2国間の措置を通じて、あるいは地域的もしくは多国間の措置を通じて、配備済みであろうと未配備であろうとも、あらゆる型式の核兵器を削減し、究極的には廃棄するためにさらなる努力を払うことを要請した。
?『核兵器完全廃棄に向けての共同行動』決議[L36]は日本が中心となって米、英、独、伊、加、豪、韓など米国主導同盟網の諸国を共同提案国としてまとめたもので、賛成170、反対1(北朝鮮)、棄権14(露、中のほかイスラエル、インド、パキスタン、イランなど)で採択された。賛成率91.8%は前回とほぼ同率であった。
決議は前文冒頭で「すべての国が核兵器のない平和で安全な世界を達成することをめざして、核兵器の完全廃棄に向けてさらなる実際的かつ効果的措置をとる必要性を想起し」た。決議はそのあと「核兵器使用の破滅的な人道上の影響について深い懸念を表明し」た。
決議は、1995年、2000年、2010年NPT再検討会議の最終文書の重要性を強調し、とりわけ2010年再検討会議のまとめた行動計画にあらためて注意を喚起した。決議は広島・長崎原爆投下の70周年にあたる2015年の再検討会議に言及して、その重要性を強調した。
決議は、前文最終段落で、北朝鮮による核兵器の爆発・発射実験を厳しく批判し、北朝鮮がNPTの下で核兵器国としての地位を持つことは許されないと指摘した。
決議は、本文第1?第2段落で、締約国がNPT条文の規定をすべて遵守することが義務づけられていると指摘し、2015年再検討会議においてNPT体制強化のために協力するよう訴えた。
決議はNPTの3本柱??核軍備の縮小撤廃と不拡散、および原子力平和利用??に言及して、そのすべてについて2010年再検討会議で採択された行動計画を推進するよう要請した。決議は、NPTの普遍性の重要性に言及し、非締約国に対して非核兵器国として加入するよう求めた。
決議は、本文第4段落で核兵器国がそれぞれの核軍備の完全廃棄を達成するとした約束を再確認したうえで、第5段落では、核兵器国にたいして、あらゆる核兵器を削減し、究極的に廃棄するために、さらなる努力を払うことを要請した。
決議は、そのあと、NPT核兵器国の間の米露2国間交渉や5カ国間協議をふくめ核軍備縮小過程に関わる具体的な諸措置に言及した。しかし、決議の共同提案国でもある米国の基本方針を反映して、一定の時間枠のなかで核兵器を禁止・廃棄する包括的多国間条約の締結にはまったく言及されていない。

2. 核兵器使用の禁止と制限
?『核兵器使用禁止条約』決議[L16]はインド、マレーシア、ベトナムなど共同提案国30国あまりを集め、賛成125、反対50、棄権7で採択された。決議は前文冒頭で核兵器使用が人類存続にとって最も深刻な脅威であると指摘した。  
決議は「核兵器の使用もしくは使用の威嚇を禁止する」条約が核兵器の脅威の除去および究極的に核兵器禁止へとみちびく交渉の雰囲気作りに貢献することへの期待を表明した。
   決議は、本文冒頭で、ジュネーブ軍縮会議にたいし、「いかなる状況の下においても核兵器の使用もしくは使用の威嚇を禁止する国際条約」に関して合意に達するため交渉を開始することを要請した。
しかし米、英、仏やその同盟国の多くはこの決議に反対し、日,韓などの諸国は棄権した。
?『核の危険の減殺』決議[L18]は、核兵器の一触即発的な発進態勢が不本意なもしくは偶発的な核兵器の使用という許しがたいリスクをはらんでおり、人類皆殺しの破滅的な結果をもたらしかねないと指摘した(前文第6段落)。
決議は本文冒頭で、核ドクトリンの再検討を求めて、核兵器発進態勢の解除などにより、意図せざる核兵器使用のリスクを減殺するよう要請したうえで、核兵器国5カ国がこの目的を果たすため具体策を講じるよう訴えた。
決議は、国連加盟国すべてに対して、核兵器の拡散防止を呼び掛けた。決議は賛成124、反対48、棄権10で採択された。ここでも米英仏3カ国とイスラエルその他の同盟国の多くが反対に回ったほか、一部が棄権した。
?『核軍備の作戦準備態勢の低減』決議[L22]はマレーシア、ニュージーランドなど5カ国が提案した。前文冒頭で、決議は、核兵器を高度な作戦態勢に維持することが冷戦の特徴の一つであったと指摘し、その緩和が進みつつあることを歓迎するとした。
そのうえで決議は、冷戦終了にも関わらず、数千基の核兵器がいぜんとして高度な発進態勢に置かれていると指摘し、本文第1段落で次のように訴えた。「すべての核兵器が高度な発進態勢から確実に外されることを目指して、核兵器システムの作戦準備状況を低減させるためのさらなる具体的措置を講じることを要請する。」
決議は賛成166、反対4、棄権11で採択された。ただし、ここでも米英仏3カ国(と露)がともに反対し、注目された。
?『不拡散・軍備制限・軍縮協定の遵守』決議[L45]は米、日、豪、イスラエルなど約60カ国が核不拡散に力点を置いて提案し、賛成170、反対1(北朝鮮)、棄権10(ベラルーシ、キューバ、エクアドル、エジプト、イラン、レバノン、ニカラグア、パキスタン、ロシア、シリア)で採択された。
?『包括的核実験禁止条約』決議[L56]は本文第1段落で「CTBTの最速の発効を確保するため」、あらためて署名・批准の重要性・緊急性を訴えた。決議は賛成179、反対1、棄権3で採択。
(6)『カットオフ条約』に関する決定[L20]は第70回国連総会の暫定議題に『核兵器その他の核爆発装置むけの分裂性物質の生産を禁止する条約』を組み入れるとした。賛成177、反対1、棄権5で採択。

3. 非核地帯・非核空間の創設続く
?『非核兵器国に対する核兵器不使用確約』決議[L27]は本文冒頭で「非核兵器国にたいして核兵器の使用もしくは使用の威嚇を行なわないと保証する効果的な国際取り決め」について早急に合意する必要性を再確認した。
さらに、決議は、非核兵器国に対してこうした核兵器不使用の保証を確約する国際条約の締結という考えに関して、ジュネーブ軍縮会議のなかで反対がないことに満足すると明記した。
しかし、決議は、その実際の作業について、すべての国に受け入れられる共通の方式が今のところ見当たらないとした。決議は賛成125、反対0、棄権56で採択されたが、米英仏露はいずれも棄権し、中国は賛成した。
?『中東非核兵器地帯』決議[L1]と『中東における核拡散のリスク』決議[L2Rev1]については、事実上の核兵器国イスラエルの存在が改めて浮き彫りとなった。
エジプトが提案した決議[L1]は、本文冒頭で「直接関係する諸国すべてに対して中東非核地帯の創設の提案に要する実際的かつ緊急の措置をとることを促す」とともに、その目標の達成を促進するため関係諸国が非核兵器国としてNPTに加入することを迫った。
討議の中では、イランがとくに発言を求めて、2015年NPT再検討会議を控えている状況の下、2010年NPT再検討会議の行動計画にそって実際的な措置をとるとの妥協的態度を表明した。
結局、決議[L1]は『中東非核兵器地帯』創設の大枠についての合意として無投票採択された。
しかし、同じくエジプト提案になる『中東における核拡散のリスク』決議[L2Rev1]は、討議の中で、イスラエルの核兵器保有をめぐり鋭い対立が表面化した。
米国代表は、この決議が「ある1国の活動に関する不安」??イスラエル核兵器保有をめぐる不安??にのみ焦点をあてて、中東における「深刻な核不拡散不安」現象??イランなどの諸国の核拡散の動向を示唆??を無視しているとし、反対を表明した。
決議は米国とイスラエルほか3国のみが反対し、賛成161、反対5、棄権18で採択された。
?『核兵器なき南半球とその隣接地帯』決議[L10]は前文で、世界の115カ国が非核兵器地帯条約の締約国もしくは調印国であると指摘し、これらの諸国の協力の価値をあらためて強調した。
決議の本文第1?第3段落は、核不拡散体制の強化と非核兵器地帯の拡大における現存非核兵器地帯の重要な役割を再確認し、核兵器完全廃棄に向けての進行を訴えたほか、南極条約やトラテロルコ条約など一連の非核兵器地帯条約が南半球と同隣接地域の非核化に貢献していることを歓迎した。
さらに決議は、すべての関係国にたいして、非核兵器地帯条約の議定書に参入することを要請した。決議は賛成173、反対4、棄権3で採択された。反対は米英仏および露の4カ国のみで、米英仏3カ国はここでも共同の反対声明を米国から発出した。棄権3にはイスラエルが含まれていた。
?『第3回非核兵器地帯創設国会議、2015年』決議[L57]は『核兵器なき諸地域およびモンゴルを創設した条約の締約国および調印国の第3回会議を2015年に一日会議としてニューヨークにおいて開催することを決定する』と宣言した。
この決議についても、米国が米英仏3カ国の代表として異論を唱え、イスラエルとともに棄権した。決議は賛成176、反対0、棄権4で採択された。
?『宇宙空間』関連の決議が3件採択された。いずれも「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家の活動を管理する原則に関する条約」に関わる案件である。
『宇宙空間軍備競争の防止』決議 [L3Rev1]は、宇宙空間における軍備競争を防止することの重要性と緊急性を強調し、その共通目標に貢献する各国の準備状況を説明した。決議は賛成178、反対0、棄権2(米国、イスラエル)で採択された。
『宇宙空間における兵器先制配置の禁止』決議[L14]は、中国とロシアが共同提案してきた宇宙空間での兵器の配置を防止する条約をあらためて国際的に見直し、先制的配置を禁止することとした。賛成126、反対4(米、イスラエル、グルジア、ウクライナ)、棄権46(オーストラリアほか)。
『宇宙空間活動の透明性と信頼醸成の諸措置』決議[L15]は米露中3カ国の共同提案によるもので、無投票で採択された。そのもとの資料は、2013年12月、総会により採択された専門家集団報告を事務総長が覚え書きにまとめ、総会にあてて送付したものである。

4. 多国間軍備縮小撤廃交渉の強化
第69回総会が核兵器に関して果たした重要な役割の一つは、核軍備の縮小撤廃の促進のために、本稿冒頭の5決議を初めとする実質的な決議・決定の採択にとどまらず、多国間交渉の実際的・具体的な作動をめざす施策に僅かながら踏み出したことであろう。
?『多国間核軍備縮小撤廃交渉を前進させる』決議[L21]はオーストリア、メキシコ、ニュージーランド、スイスなど14カ国がいわば一時的な新連合として現状改革の予備的な試案を提起した。
決議は、前文で「10年以上もの間、国際連合の枠組みの中においては、核軍備縮小撤廃の多国間交渉がなんら具体的成果を上げていないと認識して(いる)」と現状を厳しく評価した。
しかし、そのうえで、決議は国際的な政治風土が多国間の軍備縮小撤廃の促進の一助となって、全体状況は「核兵器のない世界の方向に動きつつある」とも指摘した。
決議は、とりわけ、第67回総会の決議にもとづいて、核軍備縮小撤廃に関する総会ハイレベル会合が2013年9月26日に開催されたことを歓迎した。
決議は、本文冒頭で、核軍備縮小撤廃の交渉をいかにして前進させるかについての国連加盟国の見解をまとめた第68回総会の事務総長報告を歓迎すると強調した。
それとともに、決議は、国際団体や学界、研究活動、マスメディアなどを通じて、市民社会が常設作業部会と同様、核軍備縮小撤廃交渉の推進に貢献してきたと注目すべき評価を下している。
決議は、こんご核軍備に関する多国間交渉を前進させるにあたって、とくに「包括的な、相互作用的な、および建設的な方途により、核兵器関連の諸問題に対処することの重要性」を強調した。
?『軍縮・不拡散分野における多国間主義の推進』決議[L39]は、有志連合の提案した決議[L21]の指摘を受けて、インドネシアが国連加盟非同盟諸国を代表して提案した。
決議は、核兵器を初めとする軍備の諸分野における交渉の基本原則としてあらためて多国間主義を強調したあと、決議68/38に則って提出された軍備の縮小撤廃と不拡散の分野における多国間主義の促進に関する事務総長報告に言及した。
決議は、そのうえで、事務総長に対して、軍備の縮小撤廃と不拡散の分野における多国間主義の問題に関して、重ねて加盟国の見解を求めること、および、それに関する報告を第70回総会に提出することを要請した。
決議[L21]は賛成154、反対5(米英仏露ほか)、棄権20(中国、イスラエルを含む)で採択された。ただし、その賛成率の高さとともに米など4カ国の結束した反対、中国、イスラエルの棄権が今後の多国間主義の有り様の困難さとの関連で注目された。
一方、決議[L39]は賛成131、反対5、棄権49で採択されており、露・中は賛成、反対は米・英・イスラエルほか2国で、仏は棄権に回った。少数ながら反対国の結束ぶりとともに棄権国の多さは今後の多国間主義の先行きについて楽観を許さない。
核軍備の縮小撤廃関連の決議について、北大西洋同盟の核戦力中枢である米英仏3カ国の反対・抵抗の意向は固く、イスラエルとの協調も顕著である。ロシアがそれら諸国と対抗する立場から似通った否定的態度をとっていることも見て取れる。NPT締約国の5核兵器国のなかで、中国はこうしたネガティブな潮流から一定の距離を保っている。(第2表参照)
ところで、『2013年核軍備縮小撤廃に関する総会ハイレベル会合の後追い』決議[L44]は前文で同年9月26日の会合を歓迎し、とくに同会合での「各国の元首・政府首脳の決意を想起し」た。
決議は、そのうえで軍備縮小撤廃における「国連の中心的役割」を確認するとともに広く世界各国の政府と諸機関の必須の役割を再確認した。決議は、あわせて、非政府組織、大学人、議会人、マスメディアなどを含む市民社会が核軍備縮小撤廃に果たす重要な役割を認知したと明記している。
決議は、さらに、市民社会の諸階層のそうした潜在力を地球規模で引き出しつつ多国間的運動を振興するために、9月26日を国際的核兵器廃絶デーとして祝うことを改めて強調していた。
?『女性、軍縮、不拡散、軍備管理』決議[L47]は前文冒頭で「国連憲章が女性と男性の平等の権利を再確認」していることを認知して、軍備の縮小撤廃、不拡散および管理における女性の役割がさらに拡充されるべきであると指摘した。
決議は本文第1段落で国連加盟国、国連そのものおよび専門機関にたいし、軍備の縮小撤廃、不拡散および管理に関わるすべての事案についての決定過程において、女性の果たす役割を強化することを要請した。
決議は、さらに、国連加盟国に対して「地方レベル、一国レベル、小地域レベルおよび地域レベルにおいて、軍備の縮小撤廃に関わる諸組織における女性の効果的な参加を支持し、強化する」よう訴えた。決議は全会一致、賛成183、反対および棄権0で採択された。
?『第4回軍縮特別総会に関する常設作業部会』決定[L37]は賛成175、反対0、棄権4(米、英、仏、イスラエル)の圧倒的な支持を受けて採択された。この決定も非同盟運動加入の国連加盟国を代表して、インドネシアが提案した。
決定は、第70回総会暫定議題の「全般的にして完全な軍備の縮小撤廃」項目の中に「軍備の縮小撤廃に関する第4回国連特別総会を開催する」と題する小項目を組み入れるとした。
米英仏3カ国を代表して米国大使が発言し、前回、この問題が65/66決議に基づき提案されたとき、「予算および実質的な諸問題のゆえに棄権した。今回もそれらの問題が解決されていない」ので再び棄権すると発言したことが記録されている。
こうした一連の否定的行動は、米国をはじめとする主な核兵器国が核軍備の縮小撤廃、不拡散、管理に関する過程を可能な限り独自のイニシアティブの下におき、国連総会その他の多国間機関による介入を排除する意向の表れといえるであろう。

5.核兵器なき世界に向けての模索
(1)主要核兵器国の核軍備への固執:第69回国連総会の決議状況についてあらためて痛感するのは、米国など主な核兵器国が究極的目標として核兵器なき世界の実現を公言する一方で、実際には、財政上の必要も絡んだステップ・バイ・ステップの漸進的削減の必要に対応しつつ、さらなる近代化を含めて核軍備の維持に固執し続けていることである。
見てきたように、圧倒的な多数の諸国の賛成により採択された一連の核軍備関連の決議について、米国は、米英仏3カ国の共同意見として反対を表明し、あるいはイスラエルとのペアで反対し、ときにロシアとも事実上連携して反対した。中国はこうした米国などの動向とは一定の距離を保っている。
国連総会において、数のうえで極めて限定的な少数派であるものの人類の破滅をもたらしうる核爆発能力をもつ核兵器国と、数のうえでは圧倒的な多数派であるものの核爆発能力を欠く非核兵器国との間の対抗のボルテージがこれまで以上に高まっていることは想像に難くない。
(2)2013年総会ハイレベル会合のインパクト:こうした核兵器をめぐる厳しい対抗状況の下、今回の国連総会において非同盟諸国はきわめて積極的な役割を果たした。とりわけ、インドネシアは、少なからぬ決議について国連加盟の非同盟諸国を代表して提案し、非同盟運動外の中立その他の諸国をふくめてこれまで以上に多くの賛成を集めて採択にこぎつけた。
一連の決議のなかで、とくに注目の焦点となった案件は、『2013年核軍備縮小撤廃に関する総会ハイレベル会合の後追い』決議であった。それは、非同盟諸国により年来推進されてきた『核軍備縮小撤廃』と『国際司法裁判所の勧告的意見の後追い』の2決議に加えて、前回総会に続いて非同盟諸国の努力によって勝ち取られた第3の原則的な核軍備縮小撤廃決議であった。
この決議は、国連加盟国の元首・政府首脳らを初めとする「ハイレベル」指導者が総会特別会合で賛同した「包括的核兵器条約」締結の意向を確認した。しかも、それは、核軍備撤廃を厳しく求める原則性をもちつつ、4分の3を超える賛成を勝ち取っており、その賛成率は前回の同様の決議を僅かながら上回っていた。この決議が2015年以降も国際的に重要な影響を及ぼすことが望まれる。
(3)市民社会参加への期待:もう一つの注目すべき動向は、少なからぬ国連総会決議が今後の核軍備縮小撤廃運動のさらなる発展をめぐって、国連とその専門機関の中枢的役割を確認しつつ、また国連加盟国の政府や各種機関のさらなる貢献を求めると同時に、民間の国際団体や学界、言論界、マスメディアなど市民社会の諸部門のより積極的な非核運動への参加・協力を訴え、要請したことである。
それは、市民社会の非核運動のさらなる発展が国連加盟各国の政府や支配層にたいして、核兵器廃絶の実現に向けて核兵器条約締結の交渉を始動させるためにも不可欠であるとの認識に支えられている。それは、また、原爆被災70周年を迎えた日本の被爆者をはじめとする原水爆禁止運動の長年の国際的な努力にたいする国連加盟国や国連事務局の高い評価を反映している。
こうした重要な局面打開の動向の下、唯一の被爆国日本の政府が包括的な核兵器禁止・廃棄条約の締結のために新鮮な指導力を国際的に発揮することがこれまでに増して強く求められている。
日本は、米国の核抑止世界戦略の継続に協力し、その核の傘の庇護の下に居続けながら、時間枠のないステップ・バイ・ステップの核兵器削減を支持するという現行の基本方針を払拭せねばならない。そして、日本は、核軍備撤廃運動の先頭に立っているアジアその他の各地域の諸国と地球規模で協力することが必要である。
今年、4月から5月にかけて5年に一回のNPT再検討会議が開催される。8月、広島・長崎原爆投下70周年を迎えて、両都市をはじめ日本全土で市民参加の式典、集会その他の行事が取り組まれる。9月には、第70回国連総会が始まり、第1委員会は核兵器を含む軍備の縮小撤廃に取り組む。
日本の市民社会は、真に平和で安全な核兵器なき世界の実現のために、日本国内でまた国際的な場において、新たな努力を傾注することが期待されている。私たちの非核の政府を求める会も「一日も早く核兵器ゼロに!」の合言葉のもと、この運動への参加・貢献を強めることが求められている。
以上