毎日新聞 2009・8・7 朝刊

「医療観光」へ実証調査

経産省 受け入れ課題探る

 経済産業省は、外国人が日本の医療機関で健診や治療を受ける「医療観光」を後押しするため、病院や旅行業者などによる実証調査を秋にも始める。通訳や海外への情報提供など、受け入れに伴う課題を洗い出し、「医療観光」の環境整備に役立てる。

 健診などの医療サービスと、温泉やゴルフといったレジャーを組み合わせた「医療観光」は、外国人客の有力な誘致策として韓国やシンガポールなどが力を入れている。例えば韓国は、医療法を改正して外国人の治療費割引を可能にするなど、政府が全面的に誘致を後押ししており、08年は日本人を中心に約2万5000人を受け入れた。12年に10万人規模に拡大させる戦略だ。

 経産省によると、日本は高い医療技術がありながら、受け入れ態勢の不備や海外での認知度の低さから積極的に取組む病院は少ないという。独自の医療プランで誘致に乗り出した病院や旅行会社も一部あるが、国外でのPRなど医療サービス以外での難しさに苦労している。

 経産省は、外国人客の受け入れが増えれば、サービス産業としての医療の活性化につながると判断。国立がんセンターや東大病院など東京都内の主要病院が参加する研究会を発足させ、実証調査の実施を決めた。

 9月にも、複数の医療機関による共同事業体と、旅行業者などでつくる支援センターを設立。国内の患者の診療に影響を与えない範囲で、中国やロシアから富裕層を中心とした外国人客を受け入れ、課題を検証したうえで年度内に報告書をまとめる。【柳原美砂子】



産経新聞 2009年6月19日(金) 朝刊

知事日記  《18日》

 午前9時40分 登庁し、報道陣の取材に対応。

   10時   知事室へ。 報告を受けるなどする。

 午後1時    民主府議団から追加経済対策に関する補正予算についての申し入れを受ける。「指摘事項については検討します」

   1時半   自民党・維新の会から新型インフルエンザ対策に関する提言を受ける。

         「秋冬に向けて、しっかりと対応したい」

   1時45分 知事室で打ち合わせなどをする。

   7時50分 退庁。

読売新聞 2009年6月19日(金) 朝刊

新型インフル対策  補正活用や調査提言  府議会3会派

 民主党、共産党の両府議団は18日、政府の追加経済対策に伴い今月末開会の臨時府議会で提言する補正予算案について、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)対策の申し入れ書などを橋下知事に提言した。民主党は、ウイルス変異で感染が再拡大する恐れがあるとして、国の交付金を使い切らず計画的な活用を要望。共産党は感染防止策として、府の要請に伴い休業した、高齢者施設などへの収入減少分の補償などを求めた。

 一方、自民党・維新の会は、ウイルスの除去機能がある空気清浄機などを医療機関が導入するための調査を知事に提言した。

毎日新聞 2009年6月17日(水) 朝刊

発熱外来に空気清浄機  新型インフルウイルス抑制

大阪府、技術活用検討

 大阪府は、新型インフルエンザ感染者の診察拠点となる発熱外来に、空気清浄機のウイルス抑制技術を活用するため、調査に乗り出す。実現すれば全国初となる。発熱外来の設置には、医療従事者や他の患者への2次感染防止が課題になっており、技術の導入でこうした懸念を払しょくしたい考え。再流行が予想される秋に向け実現を目指す。

 府は、5月上旬の国内発生前後から、医療機関に発熱外来の設置を呼びかけた。しかし実際は、他の患者や医療従事者への2次感染を警戒し、弱毒性の可能性が高いとの認識が広まるまでは設置は進まなかった。都道府県と政令市の衛生担当部局長でつくる「全国衛生部長会」(会長、笹井康典・大阪府健康医療部長)も舛添要一厚生労働相に、発熱外来で感染した医師らへの補償制度創設を要望しているが実現のめどは立っていない。一方、家電各社は研究機関と連携した実験で、強毒性の鳥インフルエンザウイルスなどの活動をほぼ100%抑制することに成功している。現在は主に家庭用だが、今後はオフィスや飛行機などにも利用の幅を広げる模様だ。技術の活用については、橋下徹知事を支持する府議会会派「自民党・維新の会」が今週中にも知事に提言する。
 


産経新聞 2009年5月27日(水)

無記名投票の廃止を   府議会規則の改正案提出   維新の会

 橋下徹知事が2月定例府議会で提案したWTC(大阪市住之江区)への府庁舎移転条例案をめぐって、執行部の対応に反発して結成された新会派「自民党・維新の会」(今井豊代表)は26日、無記名投票での採決を廃止するように府議会会議規則の一部改正を求める議案を畠成章議長に提出した。27日の議会運営委員会で取り扱いについて協議され、本会議で議員提案される見通し。採決は議会最終日の29日に行われる。

 提案理由として「投票内容などを府民に分かりやすく示す必要がある」と指摘したうえで、採決方法について無記名投票を廃止するように求めた。

 同会は、所属議員が10人に満たないため他の会派の府議と共同で提出した。

 無記名、記名投票をめぐっては、府庁移転条例案の採決が無記名投票で行われたことについて橋下知事が「記名投票で行うべきだった」と厳しく批判。これに対し、府議会側が「民主的な手続きで決めたもの」として反発し、言動には十分に留意するようにと、文書で求めた経緯がある。



産経新聞 2009年4月25日(土)朝刊

大阪府議会橋下派♀揚げ  自民若手ら6人が新会派

大阪府の橋下徹知事が全力を注いだ府庁のWTCビル移転条例案の賛否をめぐり、執行部の対応に反発した自民党大阪府議団の若手議員ら6人が24日、同府議団を飛び出して新会派「自民党・維新の会」を正式に結成した。他会派から「どうみても橋下派」と揶揄する声が上がり、橋下知事は「自分の派ではないが、議会が活気づく」と歓迎。橋下派与党として、府議会をかき回す台風に目≠ノなる可能性もある。

「活気づく」知事大歓迎

「脱中央集権、脱官僚政治を強く主張する橋下知事に強く共鳴して立ち上がることを決めた」

代表に就任した今井豊議員は記者会見で、こう宣言した。新会派には同府議団の前政調会長の松井一郎議員らが参加。全員が当選1,2期目で自民党は離党しない。

新会派の結成は、3月に府庁舎移転条例案が否決されたことがきっかけ。当初、松井議員らは移転賛成派の取りまとめに奔走し党議拘束を取り付けた。しかし、最終的に本会議では無記名投票となり、自民内から造反議員が続出したため、夢に終わった。

松井議員も橋下改革を評価したうえで、「重要な政策を決定するプロセスは府民にオープンにし、記名投票にすべきだ」と記名投票を推す橋下流に賛同した。

 しかし、自民の一部の古参議員からは「橋下知事に近い存在ということを示すことで(次の)府議選を有利に運びたいという考えが見え隠れする」と指摘する声も。
 一方の自民党府議団はこの日、新会派から出ていた離団届を受理するとともに、離党を要請することを議員団総会で決めた。浅田均幹事長は「説得したが、決意が固かった。責任を感じている」沈痛な表情を浮かべた。

 こうした自民の内部分裂に、民主の西脇邦雄幹事長は「自民内部でシビアな議論があったとは聞いていたが、分裂に至るとは」と驚いた様子。「知事の応援団にしか見えない」と首をかしげた。



毎日新聞  2009・3・30 

寺島 実郎(てらしま じつろう)さん

日本総合研究所会長

47年北海道出身。早稲田大学大学院修士課程(政治学研究科)修了。三井物産ワシントン事務所長などを経て、三井物産戦略研究所所長、三井物産常務執行役員、財団法人日本総合研究所会長。大阪・梅田北ヤード再開発事業の中核プロジェクトとして「アジア太平洋研究所」を提唱、2011年春設立を目指して同研究所推進協議会議長を務める。

聞きたい

深呼吸が必要だ

大阪府庁WTC移転ご破算

議会の否決で頓挫した大阪府庁の大阪ワールドトレーディングセンタービルディング(WTC)移転。論客として活躍する寺島実郎・財団法人日本総合研究所会長の目にこの結果がどう映ったのか聞きたくて東京のオフィスを尋ねると、「大阪は大きな深呼吸が必要」との言葉が何度も飛び出した。疲労で一歩も進まなくなった足を再び動かしたのは深呼吸だった、とは比叡山千日回峰行を2度達成した酒井雄哉大阿闍(だいあじゃ)()から聞いたエピソードだが、今回の問題での「深呼吸」とはどういう意味なのか。【聞き手 編集局・渡辺悟】

賛否を言える立場ではないが、活性化問題を抱えた地域にとって、行政の中心機関を都心から郊外の離れたところに移すというのは大いに検討に値する。適度な距離感をつくることが新しいパラダイム(考え方の枠組み)への転換には必要なことだ。

 東京は霞ヶ関、永田町、丸の内が接近していて便利と考えがちだが、大きな転換点では、その便利さが発想の転換を拘束してしまう。

便利さの落とし穴

 大阪でもなんで中心地を離れる必要があるかという意見があるわけだが、ニューヨーク州や僕が住んでいたメリーランド州などは州都が遠くても当たり前として受け止められている。その方が落ち着いた議論がしやすいのだ。

 固定観念にはまるのではなく、離れて不便だからこそ、逆に双方をつなぐ必要が生じる。コミュニケートする必要性が生まれる。新しい都市やビジネスもそうしたところから生まれるものだ。

 WTC移転がベストかどうかは別として、総合的なエンジニアリングの視野で広域関西圏を再構築し、活性化させていくきっかけとしていい機会だったことは間違いない。エンジニアリングとは個別要素を組み合わせて、いかに最適な回答を得るか。僕のキーワードだ。

再配置で相乗効果

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市此花区)は巨大テーマパークだが、その周辺にサービス・エンターテイメント系人材育成のための教育機関や、医療施設などを併設していけば、産業とアカデミズムの融合による新しい相乗効果は計り知れない。梅田北ヤードで進めている中立系シンクタンク「アジア太平洋研究所」がスタートして国内外の研究機関とネットワークされれば、パリのアラブ世界研究所のようにアジアや世界中から人が集まる契機になる。情報と研究者を引き付ける「磁場」作ろうというわけだ。

 府庁移転もそうした都市再開発のための機能再配置の一環になるのであれば大いに前向きの話だ。

 WTCなら関西空港に近いから府政の東南アジア展開に面白い発想が生まれたかもしれない。移転計画は頓挫したわけだが、こういうのは瞬間風速的なレベルの話ではない。粘り強く、柔らかく構想を詰めて行けばいい。要は、NOから入っちゃいけないということだ。

 経済情勢もこんなだからとかく短兵急な成果を求めがちだが、大きな時代の流れを実現するには構想力が必要だ。来年は平城京遷都1300年。仏教も大仏殿もすべてユーラシアのダイナミズムを吸収してここまで育ってきたことを忘れてはいけない。

歴史を見据えて

大阪の最大の強みはコミュニケーション能力の高さだ。北海道出身で東京にいる僕にはこの地域的特性が実によく分かる。台湾などアジアから来日した人が大阪に感じる親近感はすごい。人的ネットワークもすごい。これを生かしながら、大中華圏からユーラシア大陸をにらんだネットワーク基盤を構築することが、大阪を躍動する地域にするカギになると思う。

そためには戦略的な「もうかりまっか」でなければならない。固定観念にとらわれない、柔らかな発想をどう得るかが最大のポイントだ。

 歴史軸と空間軸を見据えて視野をどう広げるか。大阪はいま大きく深呼吸して考えるべきときだ。

WTC移転

088月、橋下徹・大阪府知事が平松邦夫・大阪市長に同市の第三セクター、大阪ワールドトレードセンタービルディング(住之江区、地上55階)買い取りと府庁舎移転構想を表明。府庁(中央区、1926年完成)の耐震補強よりも200億円以上経費削減できる▽8000億円の経済波及効果など都市活性化のはずみになる▽府市連携のモデルになる▽関西州の拠点機能を担える−などのメリットを挙げ、042月に破綻(はたん)したWTC再建問題の決着を図りたい大阪市と利害が一致した。しかし、府議会は「防災上の問題がある」「論議が尽くされていない」などを理由に否決。WTCは26日会社更生法の適用を申請、2次破綻した。