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Ilium Bone Harvest 腸骨移植

筆者情報

腸骨移植

インプラント治療において常に問題になることはインプラントを埋入するだけの十分な骨量が無いということです。インプラント手術自体は、しっかりとした骨さえあれば99%成功します。全身状態に問題の無い患者さんでインプラント治療が失敗する(骨とくっつかない状態や審美的に問題がでる場合)原因のほとんどは、十分な骨が無い為におこります。骨造成における王道はやっぱり腸骨移植です。歴史も長く、おおがかりな顎骨再建にはかかせない手技です。GBRやその他の骨補填材より短期間で確実な骨造成が可能となります。かつては皮質骨ブロックを切り出してスクリューで固定する方法が一般的でしたが、最近は骨髄の幹細胞の骨造成能力や、感染に対する抵抗力から海綿骨と骨髄をチタンメッシュで固定する使用法にシフトしてきています。

インプラント埋入の為の腸骨採取とサイナスリフト

インプラント術前レントゲン

術前のCT画像です。既存骨は薄くこのままでは長いインプラントの植立はできません。
ブラキシズムとクレンチングが認められるので16ミリの長いインプラントを10本埋める予定です。

CT上ではまだ歯が存在しますが、歯牙は既に抜歯済みで手術時は無歯顎状態です。
右側上顎洞粘膜の肥厚は術前に穿針しましたが内容物は透明な液体で粘液膿胞と判断しました。
インプラントの埋入手術は骨移植後4ヶ月で行います。
インプラント埋入時には再度CTを撮影し骨量を確認にて行います。

インプラントシュミレーション

インプラントシュミレーション

インプラント埋入イメージをシンプラントでシュミレーションします。

インプラント埋入の為のドナーサイト腸骨 インプラント骨採取

腸骨陵にトレフィンバーで孔をあけ、そこから骨髄を鋭匙で採取します。

インプラント手術の為の腸骨採取風景

腸骨採取とサイナスグラフトの手術は同時に開始します。
左右の上顎洞前壁にウインドウが開けられ、シュナイダー膜を挙上したころに、骨採取が終了するタイミングになります。

腸骨採取

欲しいのは骨髄と海綿骨なので通常は1つしかホールを開けませんが、今回は大量の骨が必要なので3つホールを開けました。

右側サイナスリフト 右側サイナスリフト

サイナスを開け扉は上部にヒンジ状にもちあげサイナスリフトをします。

左側サイナスリフト 採取骨

左右のサイナスリフトを行い腸骨骨随を入れるところです。

骨髄液 サイナスリフト完了

腸骨の骨髄液をあらかじめ採取しておきます。15分くらいたつとゲル化してくるので糊目的でサイナスの開窓部に塗ります。

腸骨採取部縫合 口腔内縫合

腸骨部は内部は吸収性の縫合糸で縫い、外部はナイロン糸で縫います。
傷跡はあまり目立ちません。

手術時間

手術時間は2時間18分でした。

術後3ヶ月から4ヶ月で再度骨量をCTで確認しインプラントを埋入します。

腸骨移植は全身麻酔ですが、インプラント埋入は十分な骨量が確保されているので、局所麻酔でフラップレスで行います。

インプラント埋入用ステント作成

シンプラントデータを実寸でプリントし、プラスチックプレートにマジックでトレースします。
インプラント間距離は3ミリ空けます。

インプラント埋入ステント1

口腔内にプレートを4箇所方向指示棒で固定します。

インプラントドリル2ミリツイスト

インプラント埋入予定位置に2ミリのツイストドリルでドリリング終了

インプラント埋入位置の確認

ステントを撤去し、インプラントの埋入方向に問題が無いか確認します。

インプラントドリルのサイズアップ

インプラントの埋入方向に注意しながらドリルサイズをあげていきます。
3ミリのツイストが終了したところです。

インプラント埋入

インプラントを埋入終了

インプラント手術終了

カバースクリューを装着したところです。

インプラント埋入後パントモ

16ミリの長さのインプラントをフラップレスで埋入しました。

腸骨移植

腸骨移植は口腔外科の分野では、腫瘍や膿胞切除後の顎骨再建などにスタンダードに用いる術式です。成人になってからの顎裂などでも腸骨の骨随は確実に骨を再建してくれます。
ただ、採取後1ヶ月程度の疼痛による歩行障害や1週間程度の入院が必要な点がネックになってきます。今後は術後の痛みが少なく、入院期間が短くて済むとされている脛骨に採取部位を代えていく傾向があります。脛骨移植はアメリカでは日帰り手術で行われているそうですが、日本で一般的になるのにはもう少し時間がかかりそうです。

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