オトガイ部からの骨採取と骨移植、インプラント同時埋入
インプラント手術で最も問題となるのは、インプラントを埋めたい場所に、インプラントを埋入するだけの十分な骨量がないことです。骨が無い場合に考えることは、骨を作るか、骨がある場所にインプラントを埋入するということになります。骨を作る方法としては骨移植、GBR、矯正の応用、ディストラクション、ボーンスプレッティングなどがあります。骨がある場所に埋めるというケースは傾斜埋入やカンチレバー、ナローインプラント、全長5ミリ以下のショートインプラントの使用、ザイゴマインプラントなどの考え方があります。
今回のような前歯部連続欠損のインプラント修復は、疑似歯間乳頭を作る為には左右側切歯部に2本のインプラントを埋入しブリッジで修復することが一般的です。
最高の仕上がりを望むのであれば、インプラントを埋入する前に、骨を造成してから2次的にインプラントを埋入するのが妥当です。どうしてかというと、骨造成は完全な結果を予測することは不可能だからです。骨造成の種類は前述しましたが、私が最も確実に骨造成できる手段は骨髄の海綿骨をチタンメッシュで固定する方法です。感染に強く、弁の裂開が少なく、未分化の細胞が確実に骨を作成してくれます。しかしながら口腔内から大量の骨髄を採取することは不可能で、通常は腸骨や脛骨からの採取になり、1週間程度の入院が必要となります。今回は患者さんの要望で口腔内からの採骨に
口腔外からの採骨をやめて口腔内から少しでも骨髄の海綿骨を採取できないか?ということになるとオトガイ部からの採取となります。オトガイ部からの採取は以前は一番ポピュラーな採骨部位だったのですが、術後の麻痺が高い確立で長期に残ることと、術後に顔がひどく腫れるなどの理由で、最近は敬遠されるようになってきました。
今回はインプラテックス社が輸入しているK-systemでオトガイ部から採骨しました。この辺の場所からこの程度の採骨量であれば術後麻痺の心配はありません。
左上はインプラント埋入前の上顎模型です。右上はインプラント埋入前の下顎模型です。
上顎と下顎を咬み合わせた状態ですが、歯が無いだけでなく、かなりの量の骨欠損があります。
上顎インプラント用ステントを試適したところ。
下顎インプラント用ステントです。
骨量が少なくて、骨移植するので、埋入位置が微調整が効くように舌側は解放されたステントになっています。
上顎のCTですが、歯が欲しい場所にインプラントを埋めることはできません。
骨移植を併用して可能な限りオリジナルの位置に埋めることになります。
下顎前歯部ですがぺらぺらの骨でインプラントを埋めるのに十分な骨量はありません。
インプラント埋入時に同時に骨採取をしますが、今回はインプラテックスが輸入しているK-systemで採取しました。
トレフィンバーと内部ドリルから構成されており、骨採取と骨粉砕が同時に出来る優れものです。
2cc程度採骨できました。
顎(オトガイ)から骨を採取した跡です。この場所から、このくらいの採取量であれば術後麻痺はほとんどでません。
上顎インプラント埋入部位です。骨を移植しますので、口腔前庭切開になります。
歯肉弁を隔離したところ
上顎インプラント埋入用ステントを装着したところ。
側切歯部に2本のインプラントを埋入しブリッジで修復する予定。
方向指示棒を挿入し、インプラントの埋入位置と方向を確認しています。
インプラントを埋入しました。骨量が少ないのでスレッドが露出しています。
インプラントにカバースクリューを取り付けたところ。
移植骨を固定する為のライビンガー社製チタンメッシュを、鋏で切り、吸収を見込んで十分な骨が入るように形を作ります。
チタンメッシュをいったん外し、採取した自家骨を露出したインプラントの上に押し付けます。
骨の上に先ほど調整したチタンメッシュを乗せます。
縫合して上顎インプラント手術は終了です。後は下顎インプラントです。
下顎も上顎と同様に2本のインプラントでブリッジで修復する予定です。
下顎にインプラントを埋入したところ。
採取骨を上顎でほとんど使い果たしたので、下顎のインプラントは当初の予定より骨内に埋入することになりました。
左側のインプラントはネジ山が露出しています。
インプラント上に採取骨をおいたところ
その上をチタンメッシュで覆いました。
粘膜骨膜弁の生着を良くする糊の目的でチタンメッシュの上からも粉砕骨を摺り込みます。
縫合をしてインプラント手術終了です。