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(1)研究の目的及びその内容 軽量、コンパクトで製造コストの安い新階段昇降装置を取付けた段差対応型の半自動階段昇降車椅子、半自動階段昇降台車、昇降装置付き手動キャリーカート、昇降装置付き手動ショッピングカートの応用開発、製造販売を目的とします。 半自動階段昇降車椅子(台車)とは、牽引者の手元に負荷が掛かると動力(バッテリー)が作動し1人の牽引者で楽に階段昇降のできる装置の付いた車椅子(台車)のことです。半自動にすることにより軽量化する事ができます。 |
(2)研究着手の背景及び動機 車椅子の利用時にもっとも困難な状況に出会う場合の一つとして階段を昇降する時の問題があります。現在では多くの公共機関などで積極的にエレベーターを設置して車椅子利用者の方々が利用できるようになりつつありますが、まだまだエレベーターが設置されていない場合も多く、また、そのような設置スペースを設定することが困難な場合もあるようです。 そこで既設の階段を利用して車椅子に乗ったまま階段を昇降する装置を開発する努力が内外でなされ、一部実用化されています。しかし装置が大きく簡単に移動できなかったり、取り扱いが面倒であったり価格が高いなどの問題点も多いようです 公共機関だけではなく、エレベーターの設置されていない中低層マンションにお住みで苦労されている方のことが新聞やテレビのニュースになることもあります。 公団のマンションの82%がエレベーターのない建物であり、車椅子と同様、引越し業務に携る人達も、段差に苦労しているのが現状です。昇降装置の付いたショッピングカートやベビーカーを希望する声もありました。(市場調査の結果) 平成9年度厚生省発表の身体障害者の数は3,177,000人です。その中で姿態不自由者は1,657,000人といわれております。 これらの方々のために1日も早く持ち運びが楽な軽量コンパクトで安価な階段昇降車椅子や台車を提供したいと考えています。安全性、材質、強度、耐久性、使いやすさ等の追加研究が必要ではありますが、後少しでそれが可能になります。 何の変哲もない技術ですが、先端技術の谷間にこそ社会に貢献し、また、利益をもたらす宝の山が存在すると確信しています。 |
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(3)従来技術、従来品との比較 従来、移動物体の底に複数のローラーを取付け、該ローラーに無端状のベルトを掛け渡し(キャタピラ型)、そのベルトを周回させながら階段を昇降する技術があり、特開昭62−16703号に開示されている。また、移動物体の底にソリを取付けたものとか、キャリーの接地車輪を3個円形状に並べて2セット併設したものなどがある。 上記従来の技術は、移動物体の底にキャタピラを取付けてあるが、ベルトが弱かったりベルトの内側のローラーの数が少ないと階段コーナー部に押されて凸凹して滑らかな走行が得られない。また、組立コストが高くつき、さらには、ローラーやベルトがかさ張るからコンパクト化が難しく、重いなどの問題点があった。また、キャタピラ型装置は、手動で軽く回転させることが出来ない。 これに対し、低コストで軽量化が可能な技術として、荷台の底に「ソリ」を付設する方法もあるが(例えば、実開昭56−142616号、実開昭58−159921号など)、この方法では、第一に階段の材質や形態などによって全く滑らない場合がある。第二に「ソリ」の損傷が激しく寿命が短い。第三に「ソリ」で階段の角を損傷させる可能性が高い。――などの問題点があった。 また、接地車輪を3個円形状に並べたものは、定められた車軸の高さにしか対応できない欠点があった。特に階段を上がる時、荷台部分が上下動するため車椅子には不向きである。関東の大学が試作した(車輪を4個円形状に)車椅子があるが希望売価が75万円程度と高価格である。最大の難点は、大きくて重いという事である。他にもアメリカ製で(車輪を2個円形状に)介添者の必要な車椅子があるが、操作が面倒で非常に重く100万円以上する。 岐阜県の会社と関西の大学の研究しているキャタピラタイプの車椅子があるが、これも大きく非常に重い。 これらの問題点を解消できるのが新階段昇降装置であり、半自動階段昇降車椅子(台車)だと考えております。 |
キャタピラ型(クローラー)昇降装置との比較 |
キャタピラ型昇降装置
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新昇降装置
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(4) 昇降装置 1、新昇降装置は、軽量・コンパクトで手動でも滑らかな回転が得られる。 2、樹脂による成形で製造コストが安くなる。 3、使用する樹脂は、摩擦係数が小さく、引っ張り、曲げ、伸び、圧縮、硬度、衝撃にすべてに優れており、比重は鋼鉄の1/7で硬度は鋼鉄と変わらない。 |
(5)半自動昇降装置。
台車に荷物を乗せて運搬する時、牽引者が台車の握り手を持って引き上げます。20Kg以下の積載の場合は、モーターのスイッチは入りません。握り手の部分に20Kg以上の負荷がかかるとモーターのスイッチが自動的に入るようになっています。
モーターの力は人力の補助として働きます。下りる時、重い荷物の場合はモーター駆動でスピードコントロールしながら下ります。軽い荷物の場合は、モーターのスイッチを切断して手動で下りることが出来ます。電源の切られたモーターは逆回転してブレーキの役目を果たします。手元のレバーでモーターと昇降装置の接続を切り離すことにより、手動でいっそう軽く速やかに上がったり下りたりすることも出来ます。
(6)研究の先端性又は独創性
段差対応型階段昇降装置(電子制御式)を車椅子(台車)に取り付ける計画です。 自走できる全自動階段昇降車椅子(台車)ではありません。1人の牽引者で楽々階段昇降が出来る車椅子(台車)を前提に開発します。まずは、軽量・コンパクト(折りたたみ式)で安価な階段昇降車椅子(台車)を提供して、そのノ ウハウを基に自走型全自動階段昇降車椅子を開発する計画です。 先端技術ではありません。しかし最大の特徴は、軽量・コンパクトで安価な階段昇降車椅子(台車)を福祉社会や産業界に提供出来る事です。 |
(7)現在までに得られた研究成果 階段昇降装置を(7件の特許、請求項16の申請中)手動キャリーカートに取り付け、使用テスト中です。非常に回転も滑らかであり、従来にはまったくない軽量・コンパクトで製造コストの安い階段昇降装置が出来あがっています。 (8)研究上、解決すべき問題点 半自動昇降装置の原理は、機械的に操作されたもので、現在それを電子制御式にするため開発中です。安全、材質、強度、耐久、使いやすさ等の追加研究が必要です。 (9)研究協力者の略歴及びその者の技術的特色 信州大学工学部 教授 理学博士 中村八束 (10)特許 特許申請 海外申請10ヶ国、国内特許申請7件請求項16です。 |
(11)周辺技術への波及効果及び応用範囲
この階段昇降装置は、ベビーカー、ショッピングカート、大型旅行鞄等にも取り付けることが可能です。公団のマンションの82%がエレベーターのない建物であり、車椅子と同様、段差に苦労しているのが現状です。