エーテルの存在が考え出されたのは近代になってからではなく、実際にはもっと古い時代からあったものです。
ただ古代の人が考えたエーテルというものは、近代のものとは少し違っていて一つの元素として考えられていたものです。
近代になってティコ・ブラーエやケプラーが惑星の運動に関する研究をしたのですが、この運動に関してデカルトは、こう言っています。
「宇宙にはエーテルという物質が満ちていて、それが渦を巻いていて、その渦に乗って惑星は動いている」、と。
昔の人は真空という空っぽの空間を嫌っていたふしがあって、そこに空気やエーテルといったものを当てがっていたようです。
かのアリストテレスも、物を放り投げたとき、物が移動したあとには真空が出来るという昔の考えを変えて、そこに空気が入り込んで物を後押しするから運動していると考えていました。
このデカルトの考えは今考えている光の媒質としての性質はありませんでしたが、それから約半世紀後にオランダのホイヘンスが、光は波動として伝わり、それを伝える媒質をエーテルだと考えました。
おそらく、これが光の媒質となるエーテルの最初の考え方だと思います。
これ以降、エーテルは光の伝播媒質としても考えられるようになります。
19世紀半ば過ぎに、マックスウェルによって確立された電磁気学において電磁波と光は同じ速さで伝わることが理論的に予言されました。
つまり、光は電磁波であるということが予言されたわけです。
電磁波というのは電気的な作用によって生じる波で、当時まだ検出されていない波でした。
電磁波が光と同じであるなら、電磁波もエーテルを媒質として伝わるわけ
です。つまり、電磁波を検出すれば、エーテルの存在を確認したことになるということです。
なぜ、そんなことが言えるのか?
例えば、音は空気や水などを媒質として伝わります。それがなければ伝わらないのです。海の波も水があるから出来るわけです。
こうした観点に立ってマックスウェルの予言から約20年後、ヘルツにより
電磁波が検出されることになります。
これによって、エーテルの存在は動かしがたいものになったのです。
これと同時に電磁波の伝播速度が光と同じであることも実験的に確かめられました。
エーテルの存在は確認されたわけですが、宇宙にエーテルがあるということは、地球の自転や公転によって、なにがしかの影響があるはずです。
でも、エーテルは光(電磁波)を伝える以外に何の影響も及ぼさないという奇妙な性質を持っていることも当時指摘されています。
地球が自転や公転をしているということは、地球は宇宙に満たされている
エーテルの中を移動しているわけだから、当然エーテルの風のようなもの
が存在するはずだと考えられます。
ということで、エーテルの風を検出する試みがなされます。
有名なものではマイケルソンとモーリーによる
光速度の測定、理論の立場ではローレンツの理論が挙げられます。
ローレンツの理論の中に出てくる
ローレンツ変換の名前は有名ですね。
このような試みがあったのですが、結局エーテルの風は検出されず、その存在の幕を下ろすことになります。
エーテルの存在に終止符を打ったのは、アインシュタインでした。
アインシュタインは当初エーテルの存在を信じていたのですが、実験からも明らかなようにエーテルの風は存在せず、光速度はどのように測定したとしても同じであることに気付きます。
このことからアインシュタインは、絶対静止のエーテルなどという考えは捨ててしまおう、光速度はどの様な
慣性系から測定しても同じなんだ、という新しい観点に立ちます。
これを
光速度不変の原理といいます。
こうしてエーテルの存在は否定されることになります。
しかし、誤解の無いよう申し上げておくと、絶対静止のエーテルの存在は
否定されましたが、光の伝播媒質としてのエーテルは否定されておらず、
その存在は今だに不明です。