伊東カウンセリング研究会の本棚
本棚について
 最近実際に読んだ本を紹介しています。当分の間、新しく紹介するもの順で上から下へ並べていきます。
 ご意見等ありましたらご連絡下さい。また、よい本がありましたらご紹介ください。

■オンライン書店について

※ 「書名」 著者名 出版社 発行年月 定価 の順で表示(のつもり)。
本の紹介

「破獄」
吉村昭 新潮文庫 1986.12 552円
 ずいぶん前に読んだ本だが、部屋の片づけの際に出てきたため、読み返してみた。
 監獄への憎悪に燃え、犯罪史上未曾有の4度もの脱獄を繰り返す佐久間。だが作者の興味は、脱獄の手口よりもその内面にある。彼がなぜ脱獄を止めたのか。事実を淡々と描く中で精緻にすくい取る。(2001.8/9)


「少年犯罪 ほんとうに多発化・凶悪化しているのか」
 鮎川潤 平凡社新書 2001.3 660円
  少年による犯罪が増えている、よくそう言われる。だが一部には知られているように、少年の検挙者数は決してピークを迎えているわけではない。第三のピークと呼ばれる昭和58年頃から比べれば、大きく減少していると言っても良い。また殺人による逮捕者もこのところほぼ一定で推移している。
 しかしその前に、このような数字は信頼できるものだろうか。「警察の公式統計に示される交通スピード違反者や駐車違反者の数が実際にそれを行った人の数であると信じる人は誰もいまい」(本文より) 取り締まりの対象、強化その他もろもろの事情によってその数字は変化するだろう。そのような視点から書かれた本。 


「自白の心理学」
 浜田寿美男 岩波新書 2001.3 700円
 身に覚えのない犯罪で警察に逮捕され、ウソの自白をする。そんなことがあるのだろうか、と思われるかもしれない。だがあるもと警察官が「3日あればどんなヤツにも(ウソの)自白をさせることはできる。涙を流しながら人殺しを自白して拇印も押すよ」と語ったのを聞いたことがある。警察に逮捕され、孤立無援のままで留置場におかれ罵声をあびながら取り調べを受け続ける、何日も、何日も。そんなとき人はどうなるのか、どうしてそんなことになるのか。
 自分がその立場になる前に、一読したい。そうなったとき、「夜と霧」の作者フランクルのように、自分と周囲を冷静に観察して「本に書いてやる!」と思えるだろうか。


「ブレンダと呼ばれた少年」
 ジョン・コラピント 無名舎 2000.10 1800円
 「男性・女性という性別は生まれる前から決まっているのか、あるいは環境によって変えることができるのか」という問題についての具体的症例。双子の男の子として生まれた少年は、ある事故からペニスを除去され、女の子として育てられる。ブレンダと名付けられたその子は、結局男の子になったのか、女の子になったのか。あなたはどう思いますか?


「子どもを救う学校カウンセリングの進め方」
 蔭山昌弘 黎明書房 1999.2 1800円 
 現場教師のために書かれたカウンセリングの本。学校におけるカウンセリング(的対応)の必要性について、あくまでも現場の視点で書かれている。特に後半、進路、クラス、クラブ活動など具体的にそれぞれの対応のしかた、その時の考え方がきめ細かにあげられている。蔭山先生のこれまでの経験とそこから得られた事柄のエッセンスと言える。
 特に「HRつうしん」によるクラス経営は圧巻。担任をつとめる教員にはぜひ読んで欲しい。


「チーズはどこへ消えた?」 
 スペンサー・ジョンソン 扶桑社 2000.11 838円 
 ネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホー。彼らは迷路の中でチーズを探す。チーズはいつもそこにあるとは限らない。そこにあるものだ、と思った瞬間、人は新しいものにチャレンジしなくなる。新しいことにチャレンジすることを恐れるな。安住するな。常に次を目指せ。そんなメッセージの本。
 今あるものを大切にすることも大事。必ずしもこのメッセージが常に有効とも限らない。アメリカでベストセラーになったそうだが、なぜこの本、この内容が受け入れられるのか、その背景まで考えることも必要だろう。
 だが寓話の揚げ足を取ることは無粋であろう。その意図するところを自分なりに受け取ればよい。今の生活、仕事、財産、家族、健康、そんなチーズを大事に思うあまり守りに入っていないか。少しでもそんな気がする人は読んでみるとよいだろう。
 

 
「プロカウンセラーの聞く技術」 
 東山紘久 創元社 2000.9 1400円
 
 臨床心理士である著者がカウンセラーとしての聞く技術をもとに、普段の生活の中で「聞き上手」になるための利点と方法を紹介している。人はつい話したがる傾向がある。
 そこをあえて聞き手に徹することで人間関係を上手に、豊かにすることができる。平易で具体的な文章のおかげで大変読みやすい。いつもかも聞いてばかりいる必要はない。だが聞く技術を知っていればそれを適切に活用できるだろう。


「河合隼雄のカウンセリング講座」 
 河合隼雄 創元社 2000.6 1400円 
 
 カウンセリングを語る(上・下)、カウンセリングを考える(上・下)に続くシリーズ。いずれも四天王寺のカウンセリング講座での講義をもとにしたもの。かつてカウンセリングを学ぼうと思ったとき最初に手にとったのが「カウンセリングを語る」だった。カウンセリングとは何か、心とは何か、を極めて平易に語っている。 特にさいごの質疑応答は大変刺激的。
 國分先生の本が分かり易いという人も、河合隼雄先生の方が分かり易いという人もいる。自分に合った本を読めばよいと思うが、河合隼雄さんの本で、まずカウンセリングとはどんなものか勉強しようという人には、このシリーズはオススメ。


 
「子供が育つ魔法の言葉」  
 ドロシー・ロー・ノルト レイチャル・ハリス著 石井千春訳 PHP研究所 1500円
     けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
    とげとげした家庭で育つと、子どもは乱暴になる
     誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ
 
   認めてあげれば、子どもは、がんばり屋になる

 時々見かける上記(抜粋)の詩の作者による本。一見の価値あり。  



「本物の心理テスト」  
 別冊宝島493 宝島社
 いわゆる心理テストについて、かつての「それいけ!ココロジー」のような怪しげなものでなく、精神医学者・心理学者の使うテストを翻案したものが13種。
 一方で、心理テストをやってみたいという自分の心は何を示しているのか考えたい。「お手軽に心の中を覗いてみたい」という気持ちがどこかにあるのかもしれない。その点に関する自己認識とテストの限界を知った上で利用できるものは上手に使いたいですね。


 
「いのちに触れる 生と性と死の授業」 
 鳥山敏子 太郎次郎社 1985 ISBN4-8118-0051-6 2095円
 生まれて初めて鶏を絞めた。足を左手で、頭を右手で掴み、ぐーっと引っ張って気絶させ、まな板の上で頸動脈を切る。血を抜き、毛をむしり、解体して食べた。生きてる鶏とスーパーでパック詰めされている鶏肉とが初めてつながった。人間は他の生き物のいのちをもらって生きている。当たり前のことに改めて気付かされた。
 そんなことを学校でやった人がいる。鳥山敏子さん。一読したい。「『生き物を殺すことはいけないこと』という単純な考えが、『しかし他人の殺したものは平気で食べられる』という行動と、なんの迷いもなく同居していることがおそろしくてならない。/自分の手ではっきりと他のいのちを奪い、それを口にしたことがないということが、ほんとうの命の尊さをわかりにくくしている」(本文より)


「催眠」「千里眼」
 松岡圭祐 小学館文庫
 東京カウンセリング心理センター、東京晴海医科大付属病院カウンセリング科(ともに架空)のカウンセラーを主人公とする小説。あちらこちらにでてくる技法・技術がどれくらい現実のものかは判断つかない。お話としては大変面白い。夏休みに入って読んでみたい本がようやく何冊か読めた。その中の2冊。


「カウンセリング心理学入門」 
 國分康孝 PHP新書053
 極めて分かり易い「カウンセリング心理学」の入門書。
 病理的なものを扱う「臨床心理学」ではなく、「カウンセリング心理学」は健常者に対して予防的・開発的な働きかけをする。従って、いろいろな立場の人がそれぞれの役割の中で「カウンセリング心理学」を活かして行くことができる。例えば職場、教育、家庭において。個人的には、これこそが自分の求めていたカウンセリングの形である、と思える。具体的かつ平易な内容は示唆に富む。絶対的オススメの本。よむべし。


「マンガフロイトの『心の神秘』入門−無意識と夢判断の自己分析」 
 福島章=監修 石田おさむ=絵 講談社1500円
 手っ取り早くフロイトと精神分析について知る本。マンガだが福島章教授が監修しているので内容は確か。福島教授は犯罪心理学が専門。特異な事件があるとよくインタビューを受けている人。


 
「DNAに負けない心」 
 新潮OH文庫 片山恭一
 教育、市民社会、テクノロジー様々な事柄を俎上にあげる。正しいのかどうかはよくわからない。だが、考える必要のある、考えねばならない問題を扱っている。一読して一考せられたし。


          
「『五歳児の大人』とそのまわりの人のための心理学」
 PHP 加藤諦三
 子供の頃、無理矢理お伝いをさせられた人は、他の人が手伝いをしないのが許せない。そんな人をここでは「五歳児の大人」と呼んでいる。そんな人は子育てが重荷である。なぜなら自分が五歳児であるから。子供の頃に思いっきり遊ばなかった人は大人になってから困難を生じる。どうしてそんな人が生じるのか、そんな人はどうしたらよいのか。フロイトなら何らかの固着というかもしれない。自分にもそんなところはある。そんな人へのメッセージである。


「社会的ひきこもり」
 PHP新書 齋藤環
 新潟の事件あたりから特にクローズアップされるようになった「ひきこもり」。これに対して詳細な検討を行いその内容を明らかにした本。何よりもすごいのは、ひきこもりに対してどのように対処したらよいのか具体的に記述していること。


 (文責:菊田)
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