八十川先生講義録
来談者中心療法(6) 2002.1/20

前回までの復習・まとめ

・来談者中心療法の特徴=非指示的nondelecive

一方

(参考)精神分析の考え方
 精神分析では、過去(子供のころ)の体験が人間を作る、と考える。つまり心の病気の全ては過去にある。ということである。過去に自分の心がかき乱された体験が、心の傷となって心身の不調を生み出す。この心の傷を解釈(=説明)する。それによって「あ、そうか」と納得がいくと病気も治る、と考える。もちろんこれで治る人もいるし、治らない人もいる。


・精神分析で治らない。ここで別の方法が登場する。来談者中心療法。受容、共感など非指示的な方法によって治療を行う。
・来談者中心療法ではクライエントのものの見方に立って(=自己の価値観を捨てて)相手の話を聞く。それによってカタルシス(浄化)が生まれ、洞察(気づき)に至る。この時、本人が気づく、というのが重要。精神分析ではドクターが気づく。
・なぜ来談者中心療法が有効なのか。カウンセリングの中で、クライエントは一度も攻撃されない。そして全てをはき出す(カタルシス)から。

・来談者中心療法では、心の病気の原因は「自己不一致」と考える(精神分析では過去の体験)。これは理想と現実が一致しないこと。だから「治る」とは「自己一致する」こと。
・行動療法では、心の病気は「誤った条件付け」が原因と考える。従って治療は「条件付けのやり直し」となる。
・精神分析・来談者中心療法・行動療法、これら3つの技法が使えれば、おおよその問題を解決できる。



技法の続き
7)洞察
テキストから
例A(イ) わかってきている。自分に原因があることに気づいている。

・対人関係に問題がある人は、たいてい本人に問題がある。自分のいいところ、悪いところがわかっていない。全てを周囲のせいにする生徒に「次郎物語」読むことを勧めたら自分の問題に気づいた、ということもある。
例B 自己愛(ナルシス=自分は人より優れていると感じる)のケース。自己愛自体は必要なもので、これがなければ人は自殺するしかない。だがそれも程度問題。こういう内容のことを他人から言われたのでは、自分ではなかなか納得できない。

・小中学校でこういう子がいるといじめられる事が多い。このような場合、いじめる側も「あの子にも問題がある」ということになり、なかなか解決しない。確かに本人にも問題はあるが、だからといっていじめられていい理由にはならない。このような場合、やはりいじめる側から介入していく。

例C 他人事だと思っている。江戸の狂歌に「今までは人のことだと思ったのに、俺が死ぬとはこれは困った」というのがあるが、自分の問題であると気づくことが大切。
例1 しゃべっているうちに気づいてくる。「これは大事なことだと思います」という発言は「支持(サポート)」である。これはロジャースの技法にはない。だが日本人は自分に自身がないことが多いので、積極的に支持してやった方がよい。

・洞察に至ったとき、テキストのように詳しく心の中を語ってくれるかというと、必ずしもそうではない。「先生、わかってきました」「カウンセリングを受けて良かったです」位の表現で終わることが多い。その際、カウンセラー側はそれ以上は深追いする必要はない。ただ、うまくいったのか不安に思うカウンセリングだった場合は「先生の勉強のために詳しく話してくれないか」などと内容を話してもらうこともある。




人格の再構成
テキストから
例3 「あるがままの自分」は難しい。あるがままの一方で他人との関係もある。



日常の中での洞察
・日記は秘密のうちに自分の気持ち(本音)を吐露するもの。それによって気づきが生まれることもおおい。つまり日記は一人カウンセリングであるといってよい。文字通りclient centerdである。



沈黙
・ロジャースはあまり沈黙には触れていない。だがカウンセリング中の沈黙には意味がある。



沈黙の種類
ァ)問題が解決した・・・問題なし
イ)考え中、点検中・・・よい沈黙
ウ)拒否「この人と話しても無駄だ」・・・比較的わかりやすい。挙動でわかる。ex.落ち着きがない。時計を見る。このような場合、「今日はうまくいかないな。仕切り直ししよう」と、カウンセリングを中止する。
エ)カウンセラーの言葉を待っている沈黙



対処
・相手が黙ったら自分も黙る。1〜2分は付き合う。
・再開は、カウンセラーが最後に話した言葉をもう一度繰り返して言う。



沈黙の処理
テキストから
例1 「ところで今日の相談は何ですか?」も悪くない。「相談に来たんだろうけど話しにくいだろうな。もしそうならまた今度でもおいいよ。」と言えば、「あ、この人は自分のことを考えていてくれるんだな」と、いいラポールができる。
例2 クラブと進学の両方がやりたい。行動療法的にいえば「どちらがしたいか」聞く。返事が「両方」であれば、「どっちが優先?」と聞く。順序をつけてひとつずつ対処する方法を教えるとよい。
例3 何か母親に対する怒りがあるのではないか。ここでは「直接子供さんに聞いてみてはどうですか」という対処もあり。

・相手が沈黙した場合、八十川先生は「何年カウンセラーやってても未熟なんだけど、今、何考えているか教えてくれるかい?」とざっくばらんに直接聞いてしまう、という。



沈黙の結果
テキストから
例1 理屈付けして自己防衛しているケース。ここまで助言を求められたら、「人生の先輩としてこんなふうに考えるけどどうかな」という形で答えても良い。また「君が親だったら子供にどういうかな」という返しや、この場合は「『逃げ』の理屈付けをしているのだとすればどうかな? どう思う?」という返しもあり。


次回は来談者中心療法のまとめ、整理。
その後は、教育学、人間とは何か、野生児のケース、遺伝など、学際的なものや周辺の勉強を。



 (文責:菊田)