心理学入門
(8)魅力の理由〜つづき
 この2つの絵を男性に見せると、Aの方が魅力的であると答える人が多いようです。同じ女性の絵なのですが、1ヶ所だけ違うところがあります。それはAの瞳がかなり大きく修正されている点です。瞳の大きい女性が美しく見えるという発見は、16世紀の中頃だったようです。イタリアやスペインの女性たちは、ベラドンナと呼ばれる植物の根から取った液を頬紅の代わりに塗っていました。

 ある時、この液を目に入れてしまった女性がいました。ところがどうでしょう。驚いたことに目がバッチリしてとてもきれいに見えたのです。それ以後、この液を薄めて目に付ける化粧法がはやることになりました。

 ベラドンナはナス科の有毒薬用植物で、イタリア語で美しい貴婦人という意味があるそうです。瞳孔拡散大薬のアトロピンにもベラドンナの成分が含まれているようです。

 光学機器メーカーのボシュロム・ジャパンが美しい目の有名人の調査をしています。それによれば美しい目のベスト3は、松坂慶子、大原麗子、多岐川裕美という順になりました。この女性たちはいずれも美人女優ですが、全員が近視なのだそうです。近視の人の瞳孔は開きかげんになるそうで、そのため瞳が大きく、うるんで見えるのだそうです。これが魅力の秘密だったのです。


松坂慶子 大原麗子 多岐川裕美

 
 
 
ベラドンナ Belladonna 
 強い毒性をもつためセイヨウハシリドコロともいう、ナス科の有毒植物。二年草または一年草で、大きな葉と鐘形の花がつく。暗紫色または赤紫色の花筒は先端が5つにさけてとがり、5個の緑色の萼(がく)にかこまれている。果実は1個の液果で、熟すにつれて緑から紫、黒へと変化する。
 北アメリカでは庭で栽培されることがあるが、野生化することはほとんどない。葉と根にふくまれるアルカロイド成分のひとつのアトロピンは、眼科の検査のときに瞳孔(どうこう)を拡大させたり、ぜんそくの治療で痙攣をとめたりするのにつかわれる。かつてイタリアの女性たちが、瞳を大きくうつくしくみせるためにベラドンナの抽出物をつかったため、イタリア語で「うつくしい女性」という意味のベラドンナという名でよばれるようになったという。
 分類:ナス科ベラドンナ属。ベラドンナの学名はAtropa belladonna


(9)瞳の秘密
 スタス達たちはこんな実験を試みています。
 実験のための被験者に、「信用できて、快活で、親しく話し合えるような実験のパートナー」を選ぶように依頼します。
 そこで2人の人が別々に紹介されます。事前の調査では、この2人の魅力はほとんど同じでしたが、面接の後でどちらか一方を選んでもらうと、いつも決まった方の人が選ばれました。

 実はよく選ばれた人の瞳孔は薬で拡大してあったのです。つまり瞳の大きい人は、信頼できて、快活で、話しやすい人だと見られていたわけです。

 被験者にその人を選んだ理由を聞いたところ、その理由として<瞳の大きさ>をあげた人は1人もいませんでした。こうしてみると、瞳の拡大というのは隠された重要なコミュニケーションであるといえます。

 多くの人々はこの事実に気づかないまま、一般的に、相手の人柄までよりよく評価してしまうのです。
 心理学者のヘスは読書に熱中している人やなにかに強い関心を示している人の瞳が大きくなっていることに気づき、瞳が<心の窓>になっていると考えました。

 例えば女性に赤ちゃんの写真や男性のヌード写真を見せると、瞳が20〜30%も拡大しました。また、男性に女性のヌード写真を見せると、瞳が20%も拡大しました。
 関心の強いものを見ているときの瞳は拡大しており、瞳の拡大にその人の気持ちが表れるのです。

 セールスマンやプロのギャンブラーは、相手の瞳の変化を見て手の内を読むことができるといわれています。優秀なセールスマンは、品物を見る客の瞳が大きくなっているのを手掛かりにして売り込みをしているものと思われるます。断るのが下手な人は品物を絶対見ないこと、目を合わせないことを心がけると良いでしょう。



 またガールフレンド、あるいはボーイフレンドと話しているとき相手の瞳がきれいで大きく見えたら、あなたに強い関心を寄せていると考えていいでしょう。


(10)最後に
 これらのわずかな実験の紹介からそれほど多くのことを導き出せるわけではありません。しかし、「第一印象が大きな結果につながる」ことを知るといろいろと参考になることも出てくるかもしれません。

 心理学は決して「相手の心が読める」とか「人を思い通りに動かすことができる」というものではありません。しかし「こんな時、人はこう考え、こう行動するのか」がわかれば、他人とトラブルを起こさずにすみます。つまり「他人と上手に接するために少し役立つ」というのは事実です。
 心理学とはそんな学問です。


参考文献
「心理学雑学事典」渋谷昌三 日本実業出版社
「電車で楽しむ心理学の本」渋谷昌三 三笠書房
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