長崎先生講義録
ケーススタディ(3) 2001.7/1
 「良い子」とは何か。これは極めて抽象的な言葉である。講義では「思いやりのある子」「言うことを聞く子」「伸び伸びしている子」「素直な子」「わがままを言わない子」などといった意見が出た。

 ポイントは「誰にとって良い子か」ということ。「言うことを聞く」「素直」これは親や教師にとって都合がよい、ということである。わがままを言わないのは面従腹背で仮面をかぶっているだけかもしれない。

 会議中、心の中では反対だと思っていても、黙って従うこともある。そう思わせる会議はよくあること。つまり問題のある人に問題があるとは限らない、ということである。社会の側に問題があることもある。

 ADHDについて。ADHDも最近よく聞かれるようになった言葉である。ADHDの子どもは、三角柱を絵で表すと左図のようになることはわかる。だが、では「描いてごらん」というと右図のような絵を描くという。また「話」という字のヘンとつくりが逆になった字を書いたりもする、という。LD、ADHDの子にとってはみんな一緒にと小学校、中学校、高校と進んでいくのはとてもつらいことである。逆にその子たちの活躍できる場所を準備することが大切ではないか。


多動症候群 たどうしょうこうぐん Attetion-Deficit Hyperactivity Disorder 
I プロローグ
 ADHDと略称される。はっきりした概念は成立していない。知性は正常とされるが、特殊な行動をとったり学習障害がみられたりする。この障害のある子供は、同年齢のほかの子供にくらべて、落ち着きがない、集中力がなく注意力が散漫である、衝動をおさえられないといった行動が頻繁にみられるという特徴がある。注意欠陥障害ともよばれ、学校生活、仕事、友人関係、家族生活などに問題を生じる。多動症候群は、微細な脳機能不全や微小脳障害と関係があるともいわれている。
 多動症候群の症状は3〜4歳ころからあらわれるようになり、学童の3〜5%にみられるという。男児が女児の4倍以上と多い。ふつう年齢とともに症状はきえるが、思春期以降にものこる場合もある。成人の2%は多動症候群だともいわれ、不安症、抑うつなどの精神疾患、アルコール依存症や薬物依存症などにおちいりやすいといわれる。
II 診断
 子供はふつう、注意力が散漫で、よくうごき、ときには衝動的なため、診断はむずかしい。診断には、アメリカ精神医学会のDSM-IV「精神障害の診断・統計マニュアル」にあげられた注意欠陥/多動症候群診断のガイドラインがもちいられる。このガイドラインによれば、7歳前に典型的な行動の特徴をみせる、その特徴は6カ月以上つづいてみられる、同年齢の他の子供より頻繁である、1カ所だけでなく、教室と家庭というように2カ所以上でおこる、などの条件をみたしたものがADHDと診断される。
 しかし診断は慎重におこなわれなければならない。医師は、子供が活発すぎて大人がこまっているだけなのかどうか、よくみきわめて診断する必要がある。
III ADHDの行動の特徴
注意力散漫:ひとつのことになかなか集中できず、宿題などをしていても数分もするとあきてしまう。ケアレスミスをおかし、人のいうことをよく聞かず、ぼうっとしているようにみえる。しかし、とくに気をひかれることがあると熱中し、やりとげることもある。
多動:貧乏ゆすりのように、しょっちゅう体をうごかしている。学校では机の前でそわそわとおちつかず、たちあがって部屋じゅうをうろうろあるきまわる。常に何かをいじっていて、他人の邪魔をし、鉛筆をトントンたたき、しゃべりつづける。
衝動:ADHDの子供はきわめて衝動的で、考えるより前に行動をおこす。周りをみずに通りへとびだすので、事故にあう恐れが多い。また、教室でとつぜん突拍子もないことを口に出したり、会話をさえぎったりする。
 これらの症状は程度もさまざまで、またすべてがあらわれるわけではない。しかしADHDの子供は人の話をじっくり聞いたり、おちついて勉強することができないために、学業成績が低いことが多い。そのうえ、その場をひっかきまわし、他人にああしてくれこうしてくれとうるさくせがむため、友人になかなかうけいれられない。また、先生や親たちにはそうした行動をわざとしているのだと思われて、常に注意されたりしかられたりする。相手の気持ちに応じて自分の考えや行動をなおせないこと、学業成績が低いこと、社会的問題などが重なって、ADHDの子供は自己評価が低かったり、さまざまな感情的な問題をかかえることがある。

IV 原因
 ADHDの原因についてはさまざまな説があったが、現在ではどれも否定され、くわしいことはわかっていない。1970年代初期には、感染または出生時の合併症によってついた頭の小さな傷や小さな脳の損傷が原因だとする説が出て、ADHDは「微細脳機能障害」とか「微細脳機能不全」などとよばれた。また白砂糖や食品添加物が原因だとする説もあったが、砂糖や添加物をへらしてもADHDの子供たちにはほとんど効果はなかった。育児の方法や環境に問題があるという説も、否定されている。
現在では、脳になんらかの異常があるためにおこる生物学的な障害だと考えられている。ADHDの人間の脳では、注意力をつかさどり、衝動的な行動をおさえる分野の活動が活発でないといわれている。

V 治療
 ADHDには根本的な治療法はないが、いくつかの方法によって症状をやわらげることはできる。
1薬物療法
 症状を軽減する目的で、メチルフェニデート、ぺモリンなど神経伝達物質の働きをかえる作用のある精神刺激性の薬がつかわれる。これらの薬には胃痛、食欲不振、いらいら、不眠などの副作用がみられることがある。また子供の成長を一時的におくらせる恐れがあるが、ふつう思春期には正常にもどる。週末や休日は服用しないなど、休薬日、休薬期をもうけるようにして副作用に対応する。精神刺激薬で効果がみられない場合はその他の向精神薬がもちいられることもある。
 アレルギー、抑うつ、不安、先生や親との葛藤(かっとう)などの問題によって、ADHDでない子供まで注意力散漫、多動、衝動的だとみなされ、薬が処方されているという批判がある。薬物療法をおこなう前に、まずただしい診断が必要とされよう。
2その他の治療法
 ADHDに必要なのは薬物療法だけではない。薬はADHDの症状をやわらげるだけであり、ふつうは薬をやめると症状がふたたびあらわれる。薬によって集中力がつき、学校の勉強をやりとげることができたとしても、薬は子供の知識をふやしたり学習の仕方をおしえてはくれないし、学習障害やその他の問題を直接解決してくれるわけではない。薬がその後の子供の生涯にどのような影響をあたえるかについて、多くの情報がもとめられる。
 薬物療法以外には、心理学的カウンセリング、社会技能訓練などの治療法がある。カウンセリングは、症状からくるネガティブな感情に気づかせ、それをうまくコントロールできるよう手助けをする。社会技能訓練は、自分の行動が他人にどのような影響をあたえているかをおしえ、適切な行動がとれるよう指導をする。学校の勉強をこまかくわけ、ひとつずつやりとげていく方法をおしえてくれる特別な家庭教師も有効である。ADHDの子供は家庭騒動の原因となることが多いため、家族もカウンセリングをうけるとよい。

 さて事例は「生活習慣が身に付いていない女児」について。インシデント法で事例検討を行う。(詳細はオフレコとする)
 自分のバックボーンがあるので質問する内容は固まってくる。だがそれは人によって異なる。他人は同じように感じないんだ、ということがわかる。

 ある国では、2km離れた水くみ場まで1時間かけて水をくみに行くのは女性の仕事とされていた。それはあまりにも大変だと、海外協力隊が村の近くに井戸を掘ろうとしたところ、女性達から総スカンを食らったそうである。村の長老やお偉方の目から逃れておしゃべりをする時間を奪われることになるからである。

 8月の長崎先生の講義は納涼会とします。会場はNORI。8月5日(日)6時30分〜です。


 (文責:菊田)
index
この印刷物は、伊東カウンセリング研究会のウェブサイトからプリントアウトされたものです。著作権は全て伊東カウンセリング研究会とそのウェブサイト管理者にあります。URL:http://www1.odn.ne.jp/k2/counsering/counsering.htm