長崎先生講義録
「困る」と「わかる」 2002.6/2

「困る」とは
 カウンセリングには対象(=クライエント)がある。そしてたいてい対象は「困って」いる。では、困るとは何か。講義中に出された例は、

・思い通りにならない。
・理解してもらえない。
・反抗される。
・タイミングがつかめない(悪い)。
・自分と基準が異なる。
・自分が不快になる。
・自分が不利な状況。

など。
 こんな状況はどこにでもある。だが、たいていの人は何とかそれをクリアしていく。クリアとは課題を解決することである。



対処法
 ではどんな対処法coping skillがあるか。講義中に出された例は、

1 あきらめる。
2 怒る、怒鳴る。
3 気をそらして他に目をやる(現実逃避)。
4 (時間が解決するのを、次のチャンスが来るのを)待つ、先送り。
5 愚痴を聞いてもらう。※話す=放す(ただし、相手が必要)
6 落ち着かせる。(小学校では給食前のケンカが一番多い)
7 次のチャンスに備える。
8 お腹を満たす。
9 復讐を考える。

などがある。
 もちろん以上のものは例であるが、いずれにせよ、このような方法が思いつく場合は何とかなる。それが思いつかないとき、というのはかなり切羽詰まった状況である。クライエントはそのような状況にあるといえる。



状況が重くないクライエントの場合
1 やるべき対処法が選べない → 選ばせる
2 対処法がない。 → 対処法を教える。

といった方法で対応できる。



それよりも重い人であれば、
3 カラにこもって関係が取れない、話ができない。パニック状態。
ということもある。この場合は誉める、おだてる、個を認める、といった対処になる。



なぜ困る?
 「困る」とは自分の想定通りいかないことである。それを作り出しているのは自分の想定であり、自分の頭の中にある基準である。自分の基準を下げれば困ることは少なくなる。
 つまり「困る」という状況を作り出すのは自分の中にある、といえる。そして対処法を出し入れできる人は健康な人である。こういうことこそが「生きる力」であると考えた方がよい。
 9月11日の同時多発テロ以降、アメリカ人の行動に変化が起きたという。それはそれまで酒も飲まず、スポーツジムでエクササイズをしていたストイックな人が、酒におぼれ、自堕落な生活をするようになったのだ。想定外の出来事に絶望したことが原因であろう。もちろん、そういった人も次第に安定を取り戻し、元の生活に戻っていくのだが、それは老年世代の方が早かったという。若い世代の方がなかなか元に戻ることができなかったのだ。年をとることで、達観し、あらゆることを受け入れることができるようになっていったのだろうか。



後半
「わかる」こと

 わかるためには体験が必要である。体験に基づいてはじめて本当にわかる。どうも日本人には「みんな一緒」という発想がある。一方他民族の国では初めからお互いに異質な存在なので、マネをしようとか、同じでなければいけないなどとは思わない。
 現在様々な価値基準が崩壊し、緩くなっていく中で、学校は規範の最後の砦になっている。だが、学校の権威も雲散霧消し、誰も責任が持てない状況になっている。
 茶髪、ネイルアートなど様々な若者文化が流行している。だが茶髪で外国に行ったら帰って恥ずかしいものである。自分の外見とアイデンティティが一致していないのだ。村木さんの息子さんは外国から日本に帰ってくるときわざわざ髪を黒く染めたそうである。格好だけで作られたアイデンティティは空っぽでしかないということは、自分が体験しないと気づかないのだ。
 (文責:菊田)
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